維新に傾いた天秤

今日はこの話題です。
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1.自公維が高校無償化で合意


2月20日、高校授業料の無償化などを巡り、自民・公明両党と日本維新の会の政調会長会談が行われました。

与党側はこれまでに、高校授業料無償化については2026年度から高校授業料の支援金の上限を所得制限なく45万7000円に引き上げるなど「諸改革の実現に取り組む」としたほか、社会保険料の引き下げについては「3党の協議体の設置」に言及する案などを出していたのですけれども、維新が修正要望を示しましたが、与党側は難色を示して合意には至りませんでした。

維新の青柳政調会長は「現時点ではお互いの意見を言い合ったという状況。いったん協議としては中断しまして、明日の朝10時に再開をするということで決まりました」と述べ、社会保険料改革を巡り、維新が主張する医療費の4兆円削減と、社会保険料の国民負担を年間1人当たり6万円軽減する目標を盛り込むよう、与党に求めたことを明らかにしました。

翌21日に引き続きの協議が行われ、大筋で纏まったようです。

焦点となっていた私立高校の支援金については、結局、現行の39万6千円を平均授業料の45万7千円に加算し、低所得者向けの奨学給付金を拡充することで折り合いました。

社会保険料の引き下げでは、実現に向けて3党による協議体を設置する一方、社会保障費の削減額や実施時期については、合意文書への明記を求める維新との間で最後まで調整が続きました。

政策担当者の間で合意文書がまとまったことから、3党はそれぞれ党内で了承を得る手続きに入り、その後、石破総理、公明の斉藤鉄夫代表、維新の吉村洋文代表が会談し、合意文書に署名する見通しです。


2.維新に傾いた天秤


ただ、それでも、維新が教育無償化与党案で手を握ることで、25年予算案の年度内成立の目途が立ったことは事実です。

17日夜、石破総理は「維新とはもう大丈夫だ」と周囲に語り、高校授業料無償化などでの譲歩と引き換えに、維新の賛成を得て予算案を成立させることに自信を見せました。そして翌18日には、公明党の斉藤代表と首相官邸で昼食をともにし、予算案成立に向けた連携を確認しています。

自民は当初、野党第3党で「年収103万円の壁」の見直しなどを訴える国民民主を協力相手として期待し調整を進めていたのですけれども、自民税調が強烈に抵抗し、自公国の3党協議は昨年12月半ば以降、停滞しています。

けれども自民はその裏で維新と国民を両天秤に掛けていました。

石破総理と仲のよい前原誠司・元外相は、昨年12月に維新の共同代表に就任したことを皮切りに、自民の森山幹事長らとパイプを持つ遠藤敬・前国会対策委員長に水面下の交渉を委ね、今年1月27日夜には前原、遠藤、森山の3氏らが会食するなど、急接近しました。

2月17日の衆院予算委員会で質問に立った前原氏に対し、石破総理は、26年度から就学支援金の上限額を引き上げる方針や所得制限の撤廃などを表明。前原氏は周囲に「満額回答に近い」と評価したそうです。


3.割れる民意


高校授業料無償化について世論はどうみているか。

共同通信社の世論調査では、所得制限のない高校の授業料無償化への賛否は、賛成60.8%、反対は35.6%だったのですけれども、年代別に見ると、若年層(30代以下)は賛成80.9%、反対18.6%、中年層(40~50代)は賛成67.8%、反対29.6%だったのに対し、高年層(60代以上)は賛成42.6%、反対51.1%と逆転。若い世代ほど無償化を望む傾向となっています。

マスコミ記事の見出しだけみると、一見、世論も賛成しているかに見えるのですけれども、中身をみると分断というか意見は分かれています。

また、専門家はどうみているかというと、こちらも分かれています。

2月13日から18日に掛けて、日本経済研究センターと日経新聞が、マクロ経済学や社会保障、計量経済学など専門の異なる経済学者47人を対象に、高校授業料の実質的な無償化に関して、所得制限の撤廃や支給額の引き上げについてのアンケート調査を行っています。

アンケートは、経済政策等への評価について、「そう思う」「そう思わない」などの項目から選択する形式で尋ね、回答への自信の度合い(5 段階)と、回答についてのコメントも募っています。

各設問とその結果の概要は次の通りです。

問1. 高校授業料に関わる家計への支援は所得制限を撤廃するのが望ましい。
高校授業料に関わる支援対象について、所得制限を撤廃するのが望ましいか尋ねたところ「そう思わない」が最も多く、「全くそう思わないと」と合わせて49%と約半数を占めた。一方で「強くそう思う」「そう思う」も計39%と、賛否が分かれた。

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問2. 高校授業料に関わる家計支援の上限額は多くの私立高をカバーできるよう引き上げるのが望ましい。
家計支援の上限額が多くの私立高をカバーできるよう引き上げるのが望ましいかとの問いには「そう思わない」の57%が最も多く、「全くそう思わない」と合わせて7割を占めた。

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問3. 高校無償化の対象拡大は、教育向けの財政支出として優先順位が高い政策である。
高校無償化の対象拡大は教育向けの財政支援として優先順位が高いか尋ねたところ、「どちらともいえない」(45%)が最も多くなった。「全くそう思わない」「そう思わない」(計41%)が「強くそう思う」「そう思う」(計15%)よりも多かった。

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このように賛否が分かれる結果となりましたけれども、家計支援の上限額引き上げについては反対が7割を占めています。

反対理由の主なものは次の通りです。
・「私立校が授業料を引き上げることで、支給額の大部分が私立校への間接的な補助となる」(東京大学/重岡仁教授)
・「現在の私立高校授業料相当まで無償化(家計に現金給付)すると、私立高校はさらに授業料を引き上げるか、定員を増やして、収入最大化を図る。その結果、公立高校の質の低下、定員割れにつながる」(コロンビア大学/伊藤隆敏教授)
・「私立も含めた完全無償化をすれば、私立間の競争が制限されてしまう。競争によって新しい発想・教育法が生み出される可能性に鑑み、価格競争を含めた競争環境の維持は必要であろう」(東京大学/松井彰彦教授)

一方、賛成理由の主なものは次の通りです。
・「3割の高校生は私学に通っており(都市部では約半数)、現状で私学進学は「富裕層の例外的選択肢」では全くない。普通の選択肢が金銭的理由で選べない場合に負の影響は小さくないと考えられるので、カバーするのが妥当」(一橋大学/高久玲音教授)
・「私立高にもいろいろあり・・・通信や定時制など、貧困層や(元)不登校の子どもを対象とした高校への支援を増やすべきである」(東京都立大学/阿部彩教授)

更に、どちらともいえないとする回答理由の主なものは次の通りでした。
・「私立高の無償化の影響は、各都道府県における公立高と私立高の役割や棲み分けにも大きく依存するため、判断が難しい」(一橋大学/森口千晶教授)
こんなに意見が分かれるものに対し、急いでやる必要があるのか。それよりは103万円の壁を撤廃し大幅に引き上げる方を優先すべきだと思います。

実際、2月15、16日に毎日新聞と社会調査研究センターが実施した世論調査で、所得税がかかり始める「年収103万円の壁」をどこまで引き上げるべきだと思うかを聞いたところ、国民民主党が目標とする「178万円」が37%で最も多く、昨年末に閣議決定された123万円と178万円の中間に当たる「150万円程度」が29%。「123万円」は13%にとどまり、「壁を引き上げる必要はない」はわずか9%となっています。

9割以上は103万円の壁引き上げを望んでいるのですね。


4.世論は103万円の壁撤廃


年収103万円の壁の引き上げを巡っては、18日、自民は年収200万円以下については、非課税枠を160万円まで引き上げる新たな案を提示しました。具体的には、年収200万円から500万円の層については、2025年度と26年度に限り、133万円まで引き上げるとし、それ以上は政府が提出している法案の通り、123万円までの引き上げにとどめるというものです。

この案に国民民主の古川税調会長は「基礎控除に所得制限を入れるということ自体、税の理屈からするとおかしい。新たな壁を設けるような話だ」と所得制限について強く反発。

国民民主党の玉木氏は「壁を引き上げようという議論をしてるのに、次々と新しい壁が作られていて、非常に当惑しています。ことしから178万円を目指して引き上げると、このことに沿った内容になるよう、さらなる努力を求めていきたい」と不満をあらわにしています。

更に、国民民主幹部も「この案では中間層は恩恵を受けない……党支持層は圧倒的に現役世代が多く、受け入れられない」と述べています。

また、公明党は自民党案について、「対象となる範囲を広げるべきだ」とし、2年間の特例措置として年収制限を撤廃する案など2つの案を示したものの、自民党は難色を示しています。

与党内で案がまとまらない中、自民・公明・国民民主3党の税制協議について、今後の見通しは立っていないのですけれども、衆院での予算案審議が大詰めを迎える中、国民民主党は協議がまとまらなければ、石破茂政権が早期成立を目指す令和7年度予算案に反対する構えを見せ始めました。

国民民主の玉木氏は「参院選は手取りを増やす勢力と増やさない勢力の戦いだ」と周囲に、与党との協議結果は参院選の争点に直結すると述べたそうですけれども、今や、国民民主は報道各社の世論調査で政党支持率も堅調で、北九州市議選や横浜市議補選など地方選にも勝利して勢いを見せています。

参院選が大分面白くなってきたと思いますね。



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