

1.自公維合意文書案纏まる
2月21日、自民、公明両党と日本維新の会の政調会長は2025年度予算案の修正に向けた合意文書案をまとめました。維新は文書案が受け入れ可能か週明けの25日にも党内で議論するとしています。
この日、維新の吉村代表は、BSフジ番組で文書案に関し「実行すれば維新が掲げたことを実現できる。社会を変えられるなら、そちらの方に進んでいくべきだ」と表明し、その後、記者団に「明確な案ができた。大きく前進している」と語っています。
当初、維新側は合意文書案について、事業の裏付けとなる「安定財源の確保」との表現について「増税につながりかねない」として削除を求めたほか、「実施を目指す」などの文言も「実施する」と修正するよう求めていました。また社会保険料の負担軽減に向けた項目が少ないことを問題視し、加筆を求める声もありました。
前日20日、前原誠司共同代表は記者会見で、「明確に言い切り、やるということを明確にすることが大事だ。修飾語や前提がつくと、やらない理由にもなる」と述べていました。
昨年の通常国会で、維新は、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)改革で自民と合意文書を交わしたものの、実施時期が盛り込まれなかったことから、棚上げの状況が続き、当時の馬場代表は党内外から批判を浴び、後に代表を退く遠因ともなりました。
また、吉村代表が大阪市長を務めていた2017年には、公明と大阪都構想の住民投票を巡って合意文書を交わしたものの反故にされた経緯もあります。
その苦い経験から吉村氏は、自ら書きぶりを指示するなど、とりわけ文案に固執し、維新幹部は「できるだけ与党の逃げ道をつぶしたい」と述べていました。
2.厳しい審議日程
こうしたことを背景に、自民の小野寺五典、公明の岡本三成、維新の青柳仁士各政調会長は21日に断続的に協議し、合意文書案で一致したという訳です。
文書案は維新が教育無償化について、私立高校生向け就学支援金を「45万7000円に引き上げる」と明記。もう一つの条件である社会保障改革に関しては「国民医療費を最低4兆円削減し、現役世代の社会保険料を年間6万円引き下げる」との維新の主張を念頭に置くと記しました。そして、25年度予算案を「年度内の早期に成立させる」との方針も盛り込んだとのことです。
会談後、小野寺氏は石破総理に協議の結果を報告。青柳氏は記者団に「協議はこれで終結する。党内で判断を仰ぎたい」と語っています。
与野党は予算案採決の前提となる中央公聴会を25日、教育・社会保障に関する集中審議を26日に行うことで合意。与党は了承が得られ次第、3党党首会談で正式に文書案に署名し、予算案の衆院通過を急ぎたいとしていますけれども、維新が最終合意の条件としている旧安倍派会計責任者の参考人聴取が確定していないことから憲法に基づき年度内の自然成立が確定する3月2日までの衆院通過は依然困難な情勢で、自民幹部は3月2日までの衆院通過は「厳しい」と語っています。
3.国民民主党の番犬
同じく21日、国民民主党の榛葉賀津也幹事長が、国会内での定例会見で「協議が難航しているのは日本維新の会のせいではありません。協議が難航しているのは、自民党のせい」と「年収103万円の壁」引き上げをめぐる与党との3党協議が停滞していることについて、日本維新の会をやり玉に挙げた意図はないとしました。
榛葉幹事長は「私は別に、維新さんとケンカしているわけでも何でもないですし『協議が難航しているのが維新さんのせい』だと榛葉が言ったと。そんなことはひと言も言ってませんよ……一般紙含めて、各社がいろいろ煽った記事を書いてますけど……明らかに報道力がないのか、取材力が足りないのか、文章力が足りないのかわかりませんが……」と、一連の報道にも苦言を呈し、「維新さんは維新さんでやりたい政策があるのはよくわかりますし、我々もそれを邪魔するつもりは毛頭ありません……国民が欲しがっているこの政策実現を助け船を出して安易に予算成立すれば、国民が望んでいる減税が実現できなくなる。その際には、減税をやらずして予算を通した政党にも責任が生じるんじゃないですかと申し上げた」と釈明しました。
これは、19日、榛葉幹事長が国会内での会見で「もしこんな中途半端な案で維新さんが自民党と握るようなことがあれば、手取りを増やして税金を国民の元に返していく、103万円の壁を178万円に近づけて上げていく。そしてガソリン減税をする。これを骨抜きにして邪魔をしたのは、維新さんもその責任があるということになりますよ」と述べていたのですけれども、維新の国会議員などからの反発が相次いだことから、釈明に至った訳です。
ただ、榛葉幹事長は維新からの反発に対し、「ナメクジに塩をかけるようなツイートもありますけど、それも御褒美だと思って喜んで受けたいと思います……ガソリン減税をする、103万円の壁を引き上げて、手取りを増やす。そのために悪役はなんでも買ってやりますよ。国民民主党の番犬ですから」と述べています。腹を固めている印象を受けます。
4.予備費一兆円の枠
2月22日、経済学者の高橋洋一氏がABCテレビ「教えて!ニュースライブ正義のミカタ」に出演し、「年収の壁」引き上げをめぐる自民、公明、国民民主の3党協議に言及した上で、結果として自民は日本維新の会と組むと述べました。
同じく番組に出演したジャーナリストの岩田明子氏は、その結果「石破氏が組む本命は維新?第2希望が国民では」と述べると、高橋氏は「財務省は、維新が言ってるのはすごく楽なんです……基礎控除と、給与所得控除を一緒にしてるから混乱してる。でも財務省は、わざとしない。予算作る方の立場からしたら決着が読める」とし、予算には1兆円の予備費があると指摘。この予備費の枠に収められれば「簡単に修正できる」と指摘しました。
現在、この1兆円の予備費の枠に収まるのは維新しかないと高橋氏は指摘しています。
当初、立民は学校給食無償化を要求し、その額が1000億だったのですけれども、日本銀行保有の上場投資信託(ETF)を活用し、分配金を次世代支援に充てるよう求め、その予算が1兆2000億、合わせて1兆3000億となりました。
高橋氏は、「国民が言ってるのは7兆円だから絶対にはまらない、論外。立民も、日銀の話したでしょ? 1兆3000億円必要になる。選択肢として維新しか残らない……維新の場合は、一番お安い。2000億円ぐらい」と解説しました。
そして、更に「2000億円というのは当初予算なので、次の年度になると6000億円になる。これの増税もあるかもしれない。ただし、当面、一番予算修正が簡単なのは維新なんです」と述べました。
番組では、パネラーのほんこん氏が、次の参院選で自民も維新も負けると述べていましたけれども、それはそうでしょう。国民が求めているのは、「年収の壁」引き上げによる手取り増ですからね。
維新がなんといおうが、榛葉幹事長がどう釈明しようが、これで維新が自民と手を握って予算を通せば、世間は「維新が邪魔した」と受け取ることは間違いありません。
仮に、自民が石破総理を引きずり降ろして、新しい顔で参院選に臨んだとしても、自民はともかく、維新は負けることになると思います。
畢竟、維新は、吉村代表の辞任か、分裂の憂き目にあう可能性が出てきました。
維新の前原氏は政界の「壊し屋」という綽名がついているようですけれども、筆者はどちらかというと「厄病神」のようにみえます。
国民民主は前原氏が離党してから躍進を始め、維新は前原氏を受け入れてから衰退を始めました。
維新の命運は、今後、前原氏をどう扱うかに掛かっているように思いますね。
これはいい死神ぶり(・ω・) https://t.co/d36ss0m5Uf pic.twitter.com/atZna0YGeP
— 🇺🇦小動物を愛するしんさん🇺🇦 (@aphros67) October 3, 2024
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