米ウ首脳会談と梯子を下りないゼレンスキー

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2025-03-01-204900.jpg


1.決裂したトランプ・ゼレンスキー会談


2月28日、アメリカのトランプ大統領はウクライナのゼレンスキー大統領とホワイトハウスで会談しました。トランプ大統領の大統領就任後、両首脳の対面での会談は初めてとなります。

テレビカメラが入った大統領執務室での会談冒頭、トランプ氏はウクライナの鉱物資源を共同開発する協定の合意を「素晴らしい結果だ」と歓迎し、昼食後に署名すると述べた。ゼレンスキー氏も「真の安全への第一歩になることを願っている」と応じました。

会談は約50分行われたのですけれども、40分頃から両首脳はロシアの侵略を巡り激しい口論となりました。

結局、ゼレンスキー大統領は合意文書に署名せず、トランプ大統領の指示でホワイトハウスを後にしました。会談が口論に終わったことで、トランプ大統領とゼレンスキー大統領の共同記者会見は中止。ゼレンスキー大統領がワシントンのハドソン研究所で行う予定だった講演も中止されました。




2.ラスト10分の口論


問題の口論となった最後の10分の会話は次の通りです。
記者:プーチン大統領と「同調」しすぎているのではないか

トランプ大統領:もし私がプーチンともプーチンとも手を組まなければ、取引は成立しない。私にプーチンについて本当にひどいことを言って、『ウラジーミル、取引はどうなっているんだ』と言いたいんだろう。それではうまくいかない。私はプーチンと同盟を結んでいるわけではないし、誰と同盟を結んでいるわけでもない。私は世界と手を組んでいる。彼がプーチンに対して抱いている憎悪を見ればわかるだろう。彼はものすごい憎しみを抱いているし、それは理解できるが、向こうも彼を愛しているわけではない。だから、それはアライメントの問題ではなく、私は世界とアライメントをとっているんだ。私はヨーロッパと同盟を結んでいる。タフになれというのか?私はどんな人間よりもタフになれる、とてもタフになれる、でもそんなやり方では決して取引は成立しない、だからそういうことだ。 よし、もうひとつ質問だ......。

ヴァンス副大統領:やあ、これに答えたい。アメリカには4年間、記者会見に立ち、ウラジーミル・プーチンについて厳しく語る大統領がいた。平和への道、繁栄への道は、外交に携わることかもしれない。私たちはジョー・バイデンのような、胸を張り、合衆国大統領の言葉よりも合衆国大統領の行動の方が重要であるかのように装うやり方を試した。アメリカを良い国にするのは、アメリカが外交に関与することだ。それがトランプ大統領のやっていることだ。

ゼレンスキー大統領:質問してもいいか?

ヴァンス副大統領:もちろんだ。

ゼレンスキー大統領:うん?

ヴァンス副大統領:そうだ。

ゼレンスキー大統領:なるほど。彼はウクライナの大部分、東ウクライナとクリミアの一部を占領した。2014年に占領した。だから、何年もの間、私はバイデン氏だけを言っているのではないが、当時はオバマ大統領、トランプ大統領、バイデン大統領、そして今はトランプ大統領、そして、ありがたいことに、今はトランプ大統領が彼を止めている。しかし、2014年には誰も彼を止めなかった。彼はただ占領して奪い取った。彼は人々を殺した。わかるか? 接触ラインは…

トランプ大統領: 2015年。

ゼレンスキー大統領: 2014年。

ヴァンス副大統領: 2014年から2015年。

トランプ大統領:ああ、2014年か。

ゼレンスキー大統領:そうそう、それで。

トランプ大統領:私はここにいなかった。

ゼレンスキー大統領:ええ、でも…

ヴァンス副大統領:まさにその通り。

ゼレンスキー大統領:そうだ。しかし2014年から2022年まで、接触ラインで人々が亡くなるという状況は変わらなかった。誰も彼を止めなかった。ご存知のとおり、私たちは彼と話し合い、多くの話し合い、多国間協議を行った。そして、2019年に新大統領となった私と彼と協定に署名した。彼とマクロン、メルケル両氏と署名し、停戦協定に署名した。停戦協定では、彼ら全員が彼は決して行かないと私に言った。私たちはガス契約に署名した…そう。しかしその後、彼は停戦協定を破り、私たちの国民を殺し、捕虜を交換しなかった。私たちは捕虜交換に署名したが、彼はそれをしなかった。外交とはなんだ? JD、どういう意味なんだ?

ヴァンス副大統領:私は、あなたの国の破滅を終わらせるような外交について話しているんだ。

ゼレンスキー大統領:あぁ、だが、もしあなたが……

ヴァンス副大統領:大統領、大統領、失礼ながら、あなたが大統領執務室に入ってきて、アメリカのメディアの前でこの問題を訴えようとするのは失礼だと思いる。今、あなた方は人員不足を理由に徴兵を前線に押し出している。この紛争を終わらせようと努力している大統領に感謝すべきである。

ゼレンスキー大統領:ウクライナを訪れて、私たちが抱えている問題を見たことがあるか?

ヴァンス副大統領:私は行ったことがあるが…

ゼレンスキー大統領:一度来てくれ。

ヴァンス副大統領:私は実際に見てきたし、物語も見た。あなたが人々を率いて、プロパガンダツアーに連れて行くと何が起こるかを知っている。大統領。軍隊に人を連れてくるのに問題があったということに同意しないのか?

ゼレンスキー大統領:我々は問題を抱えている。

ヴァンス副大統領:アメリカ合衆国の大統領執務室に来て、自国の破滅を阻止しようとしている政権を攻撃するのは、敬意を表す行為だと思っているのか?

ゼレンスキー大統領:質問が多い。最初から始めよう。

ヴァンス副大統領:もちろんだ。

ゼレンスキー大統領:まず第一に、戦争中は誰もが問題を抱えている。あなたもそうだが、あなたは素晴らしい海を持っていて、今はそれを感じていないが、将来は感じるだろう。神のご加護を……、神の……

トランプ大統領:そんなことはわからない。あなたには分からない。私たちが何を感じるかなんて。私たちは問題を解決しようとしているんだ。私たちが何を感じるかなんて言わないでくれ。

ゼレンスキー大統領:私はあなたに話しているのではなく、質問に答えているんだ。

トランプ大統領:なぜなら、あなたはそれを指示する立場にないからだ。

ヴァンス副大統領:まさにそれをやっているんだ。

トランプ大統領:あなたは私たちがどう感じるかを決める立場にない。私たちはとても良い気分になるだろう。私たちはとても良い気分になって、とても強く……

ゼレンスキー大統領:あなたは影響力を感じるだろう。

トランプ大統領:あなたは今、あまり良い立場にない。あなたは自分自身を非常に悪い立場に追い込んでしまったのだが、彼はたまたま正しいだけなのだ。

ゼレンスキー大統領:戦争が始まった当初から……

トランプ大統領:あなたはあまり良い立場にない。あなたは今、カードを持ってない。私たちと一緒にいれば、カードを持ち始めることができる。

ゼレンスキー大統領:私はカードを持ってない。 大統領。

トランプ大統領:今、あなたはカードゲームしている。あなたは何百万人もの人々の命を賭けているのだ。第三次世界大戦を賭けているのだ。そして、あなたがしていることは、この国、この国に対する非常に無礼な行為だ。多くの人々が言うよりもはるかに多くの支援をあなたに与えてきた。

ヴァンス副大統領:この間、一度でも「ありがとう」と言ったことがあるのか?

ゼレンスキー大統領:何度もある。

ヴァンス副大統領:いや、この中では

ゼレンスキー大統領:今日でさえも。今日だって...

ヴァンス副大統領:いや、この会議全体で、だ。あなたは10月にペンシルベニアに行って、野党のために選挙活動を行った。アメリカ合衆国と、あなたの国を救おうとしている大統領に感謝の言葉を述べてくれ。

ゼレンスキー大統領:お願いだ、戦争について大声で話せば…

トランプ大統領:彼は大声で話していない。彼は大声で話していない。あなたの国は大きな問題を抱えている。

ゼレンスキー大統領:いいか? 答えてもいいか?—

トランプ大統領:ちょっと待て。違う、違う、あなたはたくさん話した。あなたの国は大きな問題を抱えている。

ゼレンスキー大統領:わかっている。わかっている。

トランプ大統領:あなたは勝てない、あたなでは勝てない。我々のおかげであなたが無事に終わる可能性は十分にある。

ゼレンスキー大統領:大統領、私たちは国に留まり、強くあり続けている。戦争が始まった当初から私たちは孤独であり、感謝している。私は自分の内閣で感謝の意を表した。

トランプ大統領:あなたは一人ではなかった。一人ではなかった。私たちはこの愚かな大統領を通じて、3500億ドルを与えた。

ゼレンスキー大統領氏:皆さんが大統領に投票したんだ。

トランプ大統領:我々はあなた方に軍事装備を与えたし、あなた方の兵士たちは勇敢だが、彼らは我々の軍隊を使わざるを得なかった。もしあなた方が我々の軍事装備を持っていなかったら、この戦争は2週間で終わっていただろう。

ゼレンスキー大統領: 3日で、私はプーチン大統領からそれを聞きた、3日で…

トランプ大統領:もっと短いかもしれない。

ゼレンスキー大統領:もちろん2週間後には…

トランプ大統領:こんなビジネスをするのは非常に困難になるだろう。私はそう思う。

ヴァンス副大統領:ただありがとうと言おう。

ゼレンスキー大統領:私は何度もアメリカ国民に感謝を述べてきた。

ヴァンス副大統領:意見の相違があることを認め、あなたが間違っているときにアメリカのメディアで争うのではなく、その意見の相違を訴訟で解決しよう。私たちはあなたが間違っていることを知っている。

トランプ大統領:だが、アメリカ国民が今何が起きているのかを知ることは良いことだと私は思う。とても重要なことだと思う。だから私はこれを長く続けてきたのだ。感謝しなければならない。

ゼレンスキー大統領:感謝している。

トランプ大統領:あなたたちはカードを持っていない。あなたたちはあそこに埋もれ、国民は死につつあり、兵士も不足している。聞いてくれ。兵士が不足しているのなら、それはとてもよいことだ。それなのに、『停戦はイヤだ、停戦はイヤだ、俺は行きたいんだ、これが欲しいんだ』と言うんだ。いいか、もし今すぐ停戦できるのなら、銃弾が飛び交うのを止め、部下が殺されるのを止めるために停戦するはずだ。

ゼレンスキー大統領:もちろん、私たちは戦争を止めたいと思っている。

トランプ大統領:しかし、あなたは停戦を望んでいないと言っているが…

ゼレンスキー大統領:私があなたに言ったことは…

トランプ大統領:私は停戦を望んでいる。なぜなら停戦の方が合意よりも早く実現するからだ。

ゼレンスキー大統領:保証があればね。停戦についてどう考えているか、私たちの国民に聞いてみてくれ。あなたにとって重要なのは.....

トランプ大統領:それは私とは関係ない。それは私とは関係ない。それはバイデンという名の賢い人間ではない男とのものだった。それはオバマとのものだった。

ゼレンスキー大統領:それはあなた方の大統領だった。それはあなた方の大統領だった。

トランプ大統領:失礼だが、それはオバマ大統領とのものだった。オバマ大統領があなた方にシーツを渡し、私があなた方に槍を渡した時のことだ。

ゼレンスキー大統領:そうだ。

トランプ大統領:私はあなた方に戦車を破壊するための槍を与えた。オバマはあなた方にシーツを与えた。実際、声明はこうだ: オバマはシーツを与え、トランプは槍を与えた。もっと感謝しろ。言っておくが、君たちはカードを持っていない。私たちがいれば、カードはある。しかし、私たちがいなければ、あなた方はどんなカードも持っていないのだ。

記者:もう1つ質問があります。

トランプ大統領:これは難しい取引になるだろう。なぜなら態度が変わらなければいけないからだ。

記者:ロシアが停戦を破ったらどうなるのでしょうかか? ロシアが……を破ったらどうなるのろうか?

トランプ大統領:何を言っているんだ?

ヴァンス副大統領:彼女は「もしロシアが停戦を破ったらどうなるのか?」と尋ねているんだ。

トランプ大統領:もしロシアが停戦を破ったら?もし今あなたの頭に爆弾が落ちたら? いいか? もしロシアが停戦を破ったら? わからない。彼らはバイデンを尊敬していなかったし、オバマも尊敬していなかった。彼らは私を尊敬している。

言っておくが、プーチンは私と一緒に地獄のような経験をした。彼はインチキ魔女狩りを経験し、彼らは彼とロシア、ロシア、ロシアを利用した。あれはインチキで、ハンター・バイデン、ジョー・バイデンの詐欺だった。ヒラリー・クリントン、ずる賢いアダム・シフ、民主党の詐欺だった。彼はそれを経験しなければならなかった。そして彼はそれをくぐり抜け、戦争には至らなかった。彼はそれを経験し、あらゆることで非難された。彼はそれとは何の関係もない。それはハンター・バイデンのバスルームから出てきたんだ。それはハンター・バイデンの寝室から出てきたんだ。最低だった。

そして、彼らは『ああ、ああ、地獄のラップトップはロシア製だった』と言った。51人の諜報員、すべてが詐欺で、彼はそれに耐えなければならなかった。彼はそんなことで非難されていたんだ。私が言えるのはこれだけだ。

彼はオバマやブッシュとの取引を破ったかもしれないし、バイデンとも破ったかもしれない。そうだったかもしれないし、そうでなかったかもしれない。でも、彼は私とは破らなかった。彼は取引を望んでいる。彼と取引できるかどうかはわからない。

問題は、私があなたにタフガイになる権限を与えたことだ。アメリカがなければ、あなたはタフガイにはなれないと思う。あなたの国民はとても勇敢だ。

ゼレンスキー大統領:ありがとう。

トランプ大統領:しかし、合意するか、我々が離脱するかのどちらかだ。もし離脱したら、君たちは戦うことになる。いい結果にはならないと思うが、君たちは戦うことになる。しかし、君たちはカードを持っていない。しかし、我々が合意に署名すれば、君たちはずっと有利な立場になる。しかし、君はまったく感謝しているようには振舞っていない。それはいいことではない。正直に言うと、いいことではない。

トランプ大統領:さて、もう十分見ただろう。これは素晴らしいテレビになりそうだ。そう言っておこう。
勿論、議論すること自体は悪いことではありません。双方、自分の立場ありますからね。だからこそ首脳会談前に事前にすり合わせをおこなって、ある程度の合意に達しているのが普通です。

実際、会談までにそれが行われていたからこそ、合意文書や、共同記者会見、そしてゼレンスキー大統領のハドソン研究所での講演がセットされていた訳です。

けれども、それらが全部キャンセルされた。これが今回の会談の成果がどうだったのかを物語っているといえます。


3.結ばれかけた停戦は崩壊するかもしれない


今回の会談について、スカイニュースの安全保障・防衛担当編集者であるデボラ・ヘインズ氏は次のように述べています。
ドナルド・トランプとウォロディミル・ゼレンスキーの間の激しい、そして非常に公然とした口論は、ウクライナとそのヨーロッパの同盟国にとっては災難であり、ロシアにとっては勝利である。

米国大統領がウクライナ大統領を叱責し、第三次世界大戦に賭けていると告げる光景が、大統領執務室からテレビで放映されたが、見るのがつらいものだった。

ゼレンスキー大統領は、ますます不安に駆られた様子で、反撃することを決意した。おそらく、自分自身と戦争で荒廃した国を守る以外に選択肢はほとんどないと感じたのだろう。

しかし、この反抗的な行為はトランプ大統領だけでなく、ウクライナの指導者を攻撃し始めたJ・D・ヴァンス氏からもさらなる非難を招いた。

サー・キール・スターマー氏とトランプ大統領の仲睦まじい場面と、アメリカ大統領がゼレンスキー氏に対して、時には彼をいたずらっ子のように叱責する言葉遣いとの間に、これ以上の対照を想像するのは難しい。

ウクライナ大統領は腕を組み、声を上げようと全力を尽くしたが、明らかに負け戦を戦っていた。この異例の崩壊は、単なるテレビドラマよりもはるかに深刻だ。

キエフがロシアの戦争に耐えるためには、米国によるウクライナへの支援が不可欠だ。英国、フランス、ウクライナの他のヨーロッパ同盟国は、トランプ大統領を味方につけておくために全力を尽くしている。

米大統領は戦争を終わらせると誓い、ウラジーミル・プーチン大統領との会談を開始した。両大統領は会談も計画している。それだけでもウクライナにとっては辛いことだ。

しかし、ウクライナ側は、トランプ大統領をウクライナとの長期的パートナーシップに縛り付ける見返りとして、鉱物やその他の天然資源から得られる利益を手放すこともいとわないなど、米国と対立するのではなく、米国と協力しようと努めてきた。

これらすべてが崩壊しそうだ、あるいは最悪の場合でも深刻な危機に瀕しているようだ。

もしトランプ大統領が怒りのあまりウクライナへの軍事支援を全て撤回すれば、キエフがロシア軍に抵抗する能力は著しく低下するだろう。

ヨーロッパにはその空白を埋める能力がない。このシナリオで勝利するのはウラジミール・プーチンだけだ。
折角結ばれかけた停戦が崩壊するかもしれないと危惧を表明しています。


4.感情の不安定さと無能さ


果たして、今回の会談をぶち壊したのは、誰だったのか。

これについて、アメリカの政治学研究者で政治評論家のリチャード・ハナニア氏はXに次のように投稿しています。
私はゼレンスキー大統領との記者会見を全部見ました。口論に至るまで40分間の議論がありました。ほとんどの人は最後の10分くらいしか見ませんでした。ビデオ全体で適切な文脈が伝わってきます。

適切な文脈を知らずにこの議論を初めて見たとき、トランプ氏とヴァンス氏がゼレンスキー氏を待ち伏せしていたか、あるいは侮辱しようとしていたのではないかとさえ思った。しかし、実際にはそうではなかった。

40分間の穏やかな会話でした。ヴァンス氏はゼレンスキー氏を攻撃するものではなく、ゼレンスキー氏に向けたものでもない主張をしましたが、議論を始めたのは明らかにゼレンスキー氏でした。

最初の40分間、ゼレンスキー氏は合意内容以上のことを言おうとし続けた。トランプ氏が質問されると、いつも「様子を見よう」と答えた。ゼレンスキー氏はプーチン氏と交渉するつもりはなく、戦争費用はロシアが負担すると全面的に主張した。トランプ氏が、双方の人々が死んでいるのは悲劇だと言うと、ゼレンスキー氏はロシアが侵略者だと口を挟んだ。

一方、トランプ氏は米国が軍事援助を継続することを明らかにした。ゼレンスキー氏はあと数分間冷静さを保っていれば合意に署名できたはずだ。

議論は、トランプ氏が、プーチン氏についてゼレンスキー氏のような言い方をすれば合意は難しいだろうと指摘したことから始まった。ヴァンス氏は、バイデン氏がプーチン氏を罵倒したが、それでは何も解決しないというもっともな指摘を口にした。

ゼレンスキーとトランプの関係は穏やかで安定していた。ヴァンスが話し始めたとき、ゼレンスキーは彼を尋問し始めた。その時点までの記者会見の間、誰もが聴衆に直接主張していた。ゼレンスキーはヴァンスに挑み、敵対的な質問をすることにした。彼は、プーチンが停戦を決して守らないという主張に戻り、交渉は無意味であると再びほのめかした。一体なぜこんなことをするのか?そして、私たち全員が目にした戦いが始まった。

ゼレンスキー氏はあと数分で釈放されるところだった。そうすればトランプ政権から合意と新たな約束を得られるはずだった。ヴァンス氏の指摘はバイデン氏とメディアに向けられたもので、道徳的な言葉で発言したとして非難するものだった。これがゼレンスキー氏の気分を害し、論争が始まった。

私はこれまでゼレンスキー氏のファンだったが、今回の件は感情の不安定さではないにしても、あまりにも無能すぎるため、彼がこれから立ち直れるとは思えない。政権との関係は破綻している。ウクライナはこの時点で新しい指導者を迎えるべきだろう。
ハナニア氏は50分の会談で最初の40分は穏やかなものであったものの、ゼレンスキー大統領の感情の不安定さと無能さが会談を決裂させたと指摘しています。




5.社交辞令の西欧各国と現実をみたメローニ


一方、他国はこの会談をどう見たのか。

各国の反応は次の通りです。
ロシア:
ロシア安全保障会議のメドベージェフ副議長:恩知らずな豚が、豚小屋の主人から、しっかりと平手打ちをくらった
ロシアの外交筋:見苦しいやり取りだったが、個性の強い2人がぶつかりあったので、当然だとも言える。いずれにしても、アメリカはウクライナを支援するだろう。

EU:
フォンデアライエンEU委員長:強く、勇敢に、そして恐れないことだ。ゼレンスキー大統領、あなたは決してひとりではない。私たちはウクライナの公正で永続的な平和のために、あなたたちとともに取り組み続ける

フランス:
マクロン大統領:ロシアという侵略者がいて戦っているウクライナの人々がいる。私たちがウクライナを支援し、ロシアに制裁を科してきたことは正しかった。最初から戦ってきた人々に敬意を払わなければならない。彼らは自分たちの尊厳や独立、子どもたち、そしてヨーロッパの安全保障のために戦っているからだ。このことを忘れてはならない

ポーランド:
トゥスク首相:親愛なるゼレンスキー大統領、親愛なるウクライナの人々、あなたたちはひとりではない。

スペイン:
サンチェス首相:ウクライナ、スペインはあなたたちを支える

スウェーデン:
クリステション首相:スウェーデンはウクライナとともにある。あなたたちはみずからの自由だけでなく、ヨーロッパ全体の自由のために戦っている……ウクライナに勝利を!」

エストニア:
ミハル首相:われわれの自由のために戦うゼレンスキー大統領とウクライナと結束する。常にだ。なぜならそれが正しいからだ

イタリア:
メローニ首相:西側諸国の分裂は、私たちを弱体化させ、私たちの衰退を望むものたちを有利にする……分裂は誰のためにもならない。アメリカとヨーロッパ、同盟国などとの間で早急に首脳会議を開き、ともに守ってきたウクライナをはじめとする大きな課題にどう対処するか、率直に話し合う必要がある
イタリア以外の各国はみな「我々はウクライナと共にある」と言っていますけれども、具体的に何をどうすると言った訳ではありません。その意味では、ただの「社交辞令」のように聞えなくもありません。

具体的に、西側諸国で分裂してはいけない。解決策を話し合おうと言っているのは、イタリアのメローニ首相だけです。


6.梯子を下りないゼレンスキーと新しい指導者


筆者は2022年10月のエントリー「ウクライナのNATO加盟申請とエスカレーション・ラダー」でグラスルの紛争エスカレーションモデルを紹介し、この時点でウクライナは既に「建設的に見える相手の動きはすべて欺瞞として片付けられ、たった一つの否定的な出来事が相手の本性を示す決定的な証拠となる」という9段階中5段階目の「面目失墜」にあると述べましたけれども、ゼレンスキー大統領のプーチン大統領を何一つ信じないという態度は、依然この「面目失墜」の状態にあるのではないかと思われます。

因みに、グラスルの紛争エスカレーションモデルでは、この「面目失墜」の一つ前の第4段階目に「イメージ、連合」というのがあるのですけれども、これは「相手のイメージを拒絶し、自分のイメージを相手に認めさせようとする。それぞれ積極的に傍観者の支持を得ようとする」というものです。

前述のリチャード・ハナニア氏の指摘を見る限り、ゼレンスキー大統領はトランプ大統領に対して、「イメージ、連合」で対応し、自分の主張を認めさせようとしていたのではないかと思います。

けれども、トランプ大統領は「様子をみよう」とそれには乗りませんでした。もし、トランプ大統領がそれに乗ってしまうと、アメリカ自身がロシアに対する「紛争の梯子の4段目」に上ることになるからです。

会談では、トランプ大統領はゼレンスキー大統領に対し、プーチン大統領を信じない、自分の意見をアメリカに認めさせようとする、梯子の5段目、4段目の態度では停戦交渉はうまくいかない、と諭そうとしたのですけれども、失敗に終わりました。

ハナニア氏のいう「ゼレンスキー氏はあと数分間冷静さを保っていれば合意に署名できたはず」をゼレンスキー大統領自ら壊してしまった訳です。

グラスルは、自身の紛争エスカレーションモデルで、1~3段階目迄は、WIN-WINの関係が成り立つものの、4~6段階目になると、一方が負け、もう一方が勝ち。7~9段階目では両方が負けになるとしています。

つまり、「ウクライナが勝ち、ロシアが負け」という光景しかみえない段数まで梯子を上っているゼレンスキー大統領に対し、トランプ大統領は、ロシアもウクライナも、そしてアメリカも全部WIN-WINの関係が成り立つ段階、つまり第3段階以下にまで梯子を下りさせるように努力しているようにさえ見えます。

付け加えるならば、梯子の5段目に上っているゼレンスキー大統領に対し、「我々はウクライナと共にある」と”社交辞令”を述べたイタリア以外の欧州各国は、「そこから一段も梯子を下りるな」と言っているともいえ、これでは紛争はいつまで経っても終わらないことになります。

2月2日、ウクライナ侵攻の終結に向け、アメリカのケロッグ担当特使が、ウクライナで戒厳令などを理由に実施が見送られている大統領選挙について「行われなければならない……ほとんどの民主主義国家は戦争中であっても選挙を行っており、そうすることが重要だ」と述べています。

これをみると、あるいはトランプ大統領は、すでにゼレンスキー大統領を見限っていて、ゼレンスキー大統領ではロシアとの停戦交渉が進まないから、大統領を変えてほしいと考えているのではないかとさえ。

今回の会談でゼレンスキー大統領は、自分で梯子を下りる積もりがないことが明らかになりました。

残念ながら、ハナニア氏が指摘するように、ウクライナはこの時点で新しい指導者を迎えるべきではないかと思いますね。


  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント

  • かも

    私の考察です。ご笑覧下さい。
    それにしても、地下資源条約資源のあめりかの権益を守ることを口実にした米ウ安全保障条約も可能だったのにと思うと残念なことだね。
    日米安全保障条約と同じものでいい。
    東部4州の地下資源も拡大解釈して米ロ共同開発もあった。
    つまり其れこそが究極の平和条約になり得る。
    トランプに理念などに合わないと軽んずるが、先の先、裏の裏を読んで相手の見透かして仕掛けをするのがつまりはディールだ。
    その仕掛けを公衆の面前で公開してしまっては仕掛けが仕掛けにならない。
    ゼレンスキーの未熟さ故の浅慮が図らずも露呈してしまった。
    政治家になれなかったコメディアンの朝墓が露呈してしまった。
    トランプにしても悔やんでも悔やみ蹴れないだろう。
    もう一度此の猿志美を猿芝居にして、何食わぬ顔で対ウ地下資源条約を結んでしまえばトランプの思い通りになる。
    その仲介をするのは日本なのだが、扨、石破にその胆力があるかどうか。
    ロシアが気付く前に、此の条約を結んでしまえば、自今プーチンは、ウクライナ問題についてアメリカを正面に迎え撃つことになる。
    誰かその労を担う日本人はいないものだろうか。

    さすれば、ウクライナに最早NATOは要らない。
    アメリカが占領するのでもなく、アメリカがウクライナの利権を奪うのでもなく、共有して共同開発して応分の利益を分け合うのは、ウクライナの政治の領域だ。
    同じことを日本では、首都圏の制空権を米軍に分け与える特権で対処しているし、地位協定という不平等条約を受け入れた、曲がりなりにも円満な統治構造を構築している。
    日本こそ先例になり得る。其れこそが平和国家日本の平和を実現する宝になっている。
    アメリカを追い出せば日本などたちどころに敵国に踏み潰されてしまうだろう。
    其れこそが日本人の先人の知恵だ。


    アメリカはウクライナを守るか。其れはアメリカは日本を守るかという問いとと全く相似形になる。
    外見上は、資源を共有することによってその対価としてウクライナの安全を保証するという口実が成立する。
    植民地でもない、支配者でもない共同体の運営者としてアメリカは如何なる事業でも投資でも、軍隊の駐留でも実現可能となる。
    其れをどうコントロールし、どう制御し手綱を操るかはもっぱらウクライナの力量にかかっている。
    面従腹背もある.利権の駆け引きもある。べんちゃらも,おべっか使いも其れを利用してしこたま利権を吸い込む手管もある。
    さすれば,ウクライナの復興も平和維持も思うがままだ。
    世界に向かって堂々とウクライナを利用出来る。
    アメリカはロシアに対する橋頭堡として堂々と利用出来る。
    その延長線上に,NATOのような対決態勢ではなしに、ロシアの資源を協働して開発するというディールも成立する。
    其れをトランプの私利私権にしてしまうか,アメリカの国益にすることが出来るかどうかはアメリカ人の器量にかかっている。
    今のトランプを見ていいるのと気まぐれや思いつきでする独裁者のようには見えない。
    アメリカを豊かにしろと請求書を出すのはアメリカ人の権利だ。がんばれ。
    2025年03月02日 08:29
  • 名無しの者

    ゼレンスキーにも問題があるがプーチンを信用する事を前提の合意は無意味
    プーチンの立場上ウクライナの領土の半分以上の併合が条件だろう
    米国と違ってEUや日本は国境が接しているから切迫さが違う
    特に周りに中国や北朝鮮(韓国)も接している日本は
    もっと危機感を持たなくてはいけない
    核を持たない日本は残念ながら米国だよりになるしかないがトランプみてると不安が大きくなる
    2025年03月02日 10:05
  • 日比野

    かも様。おはようございます。

    >それにしても、地下資源条約資源のあめりかの権益を守ることを口実にした米ウ安全保障条約も可能だったのにと思うと残念なことだね。

    ここは全く同意見ですね。

    焦点の地下資源がドンバス地方にあるといわれてますから、そこにアメリカ企業、あるいはロシアーアメリカで共同開発すれば、事実上の安全保障になるのに。残念なことです。

    ネットの一部では、ゼレンスキーの激高は、そうでもしないとウクライナ国内が持たないからというトランプと示し合わせた上での芝居だった説も流れているようですけど。それならまだ望みもあるのですけどねぇ。

    もし、そうなら、ゼレンスキーが土下座して詫びて条約を結ぶ流れになる筈ですけど、トランプが会談後公に謝罪しろと手を差し伸べたのに、謝罪しないと突っぱねましたからね。

    今後ともよろしくお願いいたします。
    2025年03月02日 10:08
  • 日比野

    名無しの者様。おはようございます。

    プーチンをどうみるかで対応が全然変わる/変えるべき、というのはそのとおりだと思います。

    ただ、ウクライナ戦争を見る限り、プーチンは手心を加えているというか、本気でやっているようには見えないのですよね。

    本気なら、先日、弾頭を”外して”打ち込んで見せた極超音速ミサイル「オレシュニク」を、それこそキーウに打ち込んでやれば終わると思います。

    プーチンは物凄い忍耐の末、トランプの返り咲きを待っていた、やっとその時がきた、というあたりでしょうか。

    今後ともよろしくお願いいたします。
    2025年03月02日 10:20