あなたが合意するか、我々が撤退するかのどちらかだ

今日はこの話題です。
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1.ゼレンスキーに背を向けるアメリカ


2月28日に行われ、激しい口論となった、アメリカトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談が波紋を呼んでいます。

会談後予定されていたものが全てキャンセルされましたけれども、報道陣が退出後に開いたアメリカ側の会議では、トランプ大統領に対し出席者ほぼ全員一致して打ち切りを進言していたことが明らかになりました。

その後、各メディアに出演したトランプ政権高官はインタビュー等で次のように答えています。
ウォルツ大統領補佐官:
言ったことすべてに反論したがる元恋人だ……首を振ったり、腕を組んだりといった動作は、非常に失礼だと感じた……我々には、我々と交渉し、最終的にはロシアと交渉し、この戦争を終わらせることができる指導者が必要だ。そして、ゼレンスキー大統領の個人的な動機、あるいは政治的な動機が、この国での戦闘を終わらせることから乖離していることが明らかになれば、我々は本当に問題を抱えることになると思う。

マイク・ジョンソン下院議長:
ゼレンスキー大統領がホワイトハウスで行ったことは、事実上、準備ができていないというシグナルであり、非常に残念だ。彼が正気に戻って感謝の気持ちを持って交渉のテーブルに戻るか、他の誰かが国を率いてそうする必要がある。

マルコ・ルビオ国務長官:
あらゆる問題について『ウクライナの説明』をしようとあらゆる機会を探していた。

ハワード・ラトニック商務長官:
彼は平和の使者だ。もしゼレンスキー氏が平和に興味がないのなら、家に帰って考えるべきだ。

マイク・ターナー元下院情報委員会委員長:
トランプ大統領の話を聞かなければなりません。つまり…彼は、人々が死んでいると言って交渉に臨んだのです……私たちは死を止めなければなりません…和平交渉を進め、その後和平交渉にどのような安全保障上の取り決めが必要かを判断しましょう。

トランプ大統領:
ゼレンスキー大統領は、アメリカが関与すれば和平の準備ができていないと判断した。なぜなら、彼は我々の関与が交渉で大きな優位性を与えると感じているからだ……彼は大切な大統領執務室でアメリカ合衆国を軽視した。平和への準備ができたら戻ってくるだろう。
カンカンです。

CNNの世論調査でも、「アメリカのウクライナに対する支援は過剰だ」の問いに、2022年7月は7%だったものが今回2025年2月の調査では41%に激増。ロシアとウクライナ間の平和協定を支持する人は78%に上っています。




2.ERAローン・イニシアティブ


3月2日、ロンドンを訪問したウクライナのゼレンスキー大統領は、記者団からアメリカとウクライナの関係をどう修復するかとの質問に対し、「我々の関係は今後も続くと思う……我々を支援してくれる各国の社会すべてに感謝している。本当に感謝しているし、超党派の支援は常に我々の味方であり、同じレベルで支援は今後も続くと思う」と発言。アメリカを「戦略的パートナー」と呼び、アメリカのウクライナ支援が停止してもロシア以外の誰にも利益はないと語りました。

昨年10月、G7諸国はウクライナに約500億ドルの融資を提供することを約束する合意(ERAローン・イニシアティブ)を行っているのですけれども、そのうち200億ドルはアメリカが負担。それにフランス、ドイツ、イタリアを含む欧州連合諸国が続き、合計194億ドルを拠出することになっています。残りの約100億ドルは、カナダが37億ドル、日本が30億7000万ドル、英国が28億ドルの融資資金を拠出する形で分配されています。

この融資についてこれまでウクライナは、アメリカから10億ドル、EUから31億ドルを受け取っています。

ERAローン・イニシアティブは、G7メンバーからの二国間融資から成っており、遅くとも2025年6月30 日までに発効し、融資は分割にて、2024年12月1 日から2027年12月31日までの間に行われることになっています。

ゼレンスキー大統領は「アメリカのウクライナ支援が停止してもロシア以外の誰にも利益はない」と述べていますけれども、二国間融資である以上、支援を止めれば、残額分だけ得することになります。

今、アメリカがウクライナ融資を止めれば総額200億ドル融資するところ、10億ドルで済むことなりますから、大分得します。


3.あなたが合意するか、我々が撤退するかのどちらかだ


今回のトランプ・ゼレンスキー会談の決裂で、ウクライナでは動揺が広がっています。

会談決裂についてウクライナメディアは「大スキャンダル」と報道。「ウクライナは厳しい状況に置かれた」とする欧米メディアの報道も引用するなどして、アメリカとの関係断絶や米露連携への危機感を募らせています。

イギリスBBC放送ウクライナ語版によると、地元著名実業家のゴロホフスキー氏は会談決裂後、「核のため」として募金を開始。金額は1日夕時点で2300万フリブナ(約8300万円)に上ったそうです。その内訳は、ウクライナ国内からが最多で、2位はアメリカだったとしています。ゴロホフスキー氏は後に「核のため」としたのは「冗談だった」と謝罪し、募金はドローンや人道支援物資の購入費として寄付すると表明しています。

一方、ウクライナの識者らは、希望を失うのはまだ早いなどとする見方を示しています。

地元紙ウクラインスカヤ・プラウダの創設者シドレンコ氏は、ゼレンスキー氏がウクライナの「譲れない一線」を守ったことで、欧州諸国の強い支持を引き出したと評価。この結果、将来的にウクライナとアメリカの首脳会談が再設定される可能性も排除できないとの観測を示し、地元政治アナリストのゴロブツキー氏も、今回の会談について「トランプ氏がロシアの主張を代弁するだけで終わる可能性もあった」とし、そうした事態を避けられたのは良かったとする考えを示唆しました。

ただ、件の会談でトランプ大統領は「問題は、私があなたにタフガイになる権限を与えたことだ。米国なしでは彼はタフガイになれないと思う……あなたの国民は非常に勇敢だが、あなたは合意するか、われわれが撤退するかのどちらかであり、撤退するなら、戦うことになるだろう」と述べているのですね。

ゼレンスキー大統領はそういう立場に置かれているのであり、それを自覚できているのなら、合意するほかないと思います。


4.停戦交渉を成功させるための有志連合


前述したように、ウクラインスカヤ・プラウダの創設者シドレンコ氏は、ゼレンスキー大統領がウクライナの「譲れない一線」を守ったことで、欧州諸国の強い支持を引き出したと述べていますけれども、肝心なのは、その支持の中身です。

3月1日、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長は、BBCのインタビューで、ゼレンスキー大統領に対し、関係修復の方法を見つける必要があると伝えたと述べました。

ルッテ事務総長の発言の概要は次の通りです。
・私はゼレンスキー大統領とこれまで2回電話で話し、ウクライナに永続的な平和をもたらすためには米国、ウクライナ、欧州が団結する必要があると伝えた。
・私はこう言った。『親愛なるウォロディミル、あなたはドナルド・トランプおよびアメリカ政権との関係を修復する方法を見つけなければならないと思う。それが今後重要だ』
・我々はトランプ大統領がこれまでウクライナのためにしてきたことを本当に尊重しなければならない。
・2022年に本格的な攻撃が始まったとき、ジャベリンがなければ、ウクライナは何もできなかっただろう……私はトランプ氏に、当時の彼の行動、それ以降のアメリカの行動、そして今もアメリカが行っていることについて、本当に感謝しなければならないと伝えた。
・米国はウクライナに永続的な平和をもたらしたいと望んでいると私は確信している...そして当然、そこに到達するには我々全員が協力して取り組むことが不可欠だ。

ー米国がウクライナからの軍事支援を撤回した場合、NATO同盟国はその穴を埋めることができるか

・この問題を乗り越えよう。米国、ウクライナ、欧州が一致団結してウクライナに平和をもたらすことが重要だ。これこそまさにトランプ大統領が求めていることであり、私たち全員が求めていることだ。
ルッテ事務総長は、トランプ大統領と仲直りしろと伝えたと明かしています。

そして、3月2日、イギリスのスターマー首相はイギリスやフランスを含む欧州諸国がウクライナの停戦交渉を成功させるために「空軍と地上軍」を含む「有志連合」を結成していると述べています。

スターマー首相の発言の概要は次の通りです。
・ウクライナの合意を守り、平和を保証するために『有志連合』を結成する。
・すべての国が貢献できるとは思わないだろうが、だからといって手をこまねいているわけにはいかない。むしろ、意欲のある国は今、真に緊急に計画を強化するだろう
・英国は地上部隊と航空機でこれを支援する用意がある。欧州は他国と共に重い責任を負わなければならない。
・今はこれ以上話をしている場合ではない。平和を維持したいのであれば、平和を守らなければならない。
・3月1日にトランプ大統領と会談し連合案の計画を伝えた
・アメリカと協力し、アメリカの支援を受けるという前提で連合案は成功するだろう
・多くの国が、我々が策定中の計画に参加したいと表明している
・本日の会談の目的は、この取り組みでパートナーを団結させることだった。ウクライナを強化し、我々全員の利益となる公正で永続的な平和を確保することだ。
・我々は過去の過ちから学ばなければならない。ロシアが簡単に破ってしまうようなミンスク合意のような合意を受け入れることはできない。
3月1日、イギリスは、凍結されたロシア資産を担保にウクライナに22億6000万ポンド(28億4000万ドル)相当の融資を行うことでウクライナと合意していますけれども、この融資は前述したERAローン・イニシアティブのことです。

西側諸国はロシアの資産3000億ドルを凍結していますけれども、アクセスできるのはこれらの資金が生み出す年間収入、およそ32億ドルのみです。その資産の大部分は欧州諸国で凍結されています。

翌2日、イギリスは更に、防空ミサイル5000発の購入費として16億ポンド(20億ドル)をウクライナに提供することで合意したと発表しています。

スターマー首相は、1日にトランプ大統領と会談し、有志連合についての計画を伝えたそうですけれども、この案の成功は「アメリカと協力し、アメリカの支援を受けるという前提」というのですから、相当アメリカを当てにしていることになります。

最終的にはゼレンスキー大統領が折れるしかないと思いますけれども、欧州各国がどう説得させるのか。早く折り合いをつけていただきたいですね。



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この記事へのコメント

  • かも

    有志連合についての私見です。
    NATOにも、継戦能力も,ロシアに対抗してウクライナを防御する力はないのです。
    ロシアに対抗出来るのはアメリカだけです。
    有志連合などと言っても単にロシアを刺激するだけの集団にしかならないでしょう。何故なら、ウクライナを守るために,パリを火の海にする覚悟は出来ているか、ロンドンにロシアから核ミサイルが飛んでくることを受け入れるか。
    その覚悟がイギリス人にもフランス人にもあるのか。
    勿論アメリカ人とて望まないことでしょう。
    其れでもロシアに対抗して抑止力を持っているのはアメリカだけです。
    未来永劫ウクライナの安全を保証する方法などないのです。出来ることは,今起きている戦争を止めることだけです。
    トランプの言う,停戦を先ず実行するという発想は全く正しいのです。
    ゼレンスキーのその間違いが露呈したことは何よりの成果です
    地下資源をアメリカが入り守ることはことは十分な抑止力になり得るのですです
    有志連合で,団結して何をどう守るのでしょう。
    武力を持ってすると言うことが既に破綻しています。
    其れは他でもない,ロシアを敗戦に追い込むという宣言に他ならないからです。其れは既に停戦ではなくヨーロッパが協力し応戦して勝利を収める宣言です。
    そんなことで絶対にロシアは引き下がらないでしょう。
    敗戦を認めるくらいなら、ロンドンにもパリにも核攻撃を辞さないと考えるからです。
    その覚悟で有志連合を作ろうというのがヨーロッパ首脳の考えなのでしょうか。
    これこそ狂気です。ロシアがどれ程に落ちぶれても核がそこにあるのです。
    ロシアは降伏も,名誉のない停戦受け入れもないのです。
    私は,此処で動けるのは日本だけだと考えています。
    停戦を実現するにはNATOを説得し、ウクライナを説得し、ゼレンスキーの一切の主張を取り下げて全面的にトランプの停戦構想を受け入れるという謝罪をさせることしかないのです。
    石破総理が,先ずイギリスに向かい,フランスに対面して,その構想を申し入れることです。
    其れをゼレンスキーに伝えて、NATOも其れしかないとの結論を伝えることです。
    ウクライ未来未来永劫の安全を担保するのは、誰かに守って貰うことでは無くてウクライナの自らの外交努力によってするしかないのです。
    そのことを説得するしか有りません。
    現状のままで放置すれば欧露戦争に発展してしまいます。其れを止めるのです。
    其れが出来るのは,G7の議長国であった日本しかないのです。
    2025年03月04日 23:10