迷走する石破政権

今日はこの話題です。
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1.高額療養費引き上げ撤回


8月7日、政府は、医療費の支払いを抑える「高額療養費制度」について、今年8月からの負担上限額の引き上げを見送る方針を表明しました。

石破総理は、官邸で全国癌患者団体連合会の代表者らと初めて面会した後、記者団に対し「決定プロセスに丁寧さを欠いた。不安を抱えたまま実施するのは望ましくない……本年8月に予定されている定率改定を含め、見直し全体について実施を見合わせるという決断をした。患者の皆様にとって大切な制度が、持続可能なものとして次の世代に引き継がれるよう努力したい……今年秋までに改めて方針を検討し、決定する」と述べました。

政府が一時、上限額引き上げを目指したのは、制度の持続可能性を高めるためでした。医療技術の高度化や高額薬剤の普及で医療費は押し上げられ、現役世代の保険料が上昇。保険財政を安定化させる必要があることに加え、岸田・前政権で決定された子供関連政策の財源確保のため、社会保障の歳出削減を図る狙いもあったとされています。

ところが、厚生労働省での議論の過程では患者らの意見を聞く機会がなく、患者団体が強く反発。立憲民主党も政府方針は「受診控えにつながる」などと批判されていました。

石破総理は2月28日の衆院予算委で一部見直しを表明し、8月の引き上げのみを維持する方針を示すなど、こだわりをみせていたのですけれども、患者団体などの反発は収まらず、与党内からも夏の参院選への影響を念頭に、上限額引き上げの凍結に向け「政治判断すべきだ」との意見が噴出。3月7日には自民の松山政司参院幹事長が森山裕幹事長に「参院自民の総意」として「国民の理解を得られない」と伝え、結局、白紙撤回に追い込まれた訳です。


2.迷走の裏側


この撤回判断について、3月7日、BSフジ「BSフジLIVEプライムニュース」に出演した政治ジャーナリストの田崎史郎氏は、次のようにその背景を説明しています。
・二転三転したのは、厚生労働省と財務省の判断ミスと、そして、石破総理自身の判断ミス、2つが重なり合った結果
・方針転換の1番大きかったのは、2月28日に野田さんに答弁した時のことなんですよ。この答弁について、石破さんは答弁書を読み上げたんです。石破さんは普段は読み上げないんですよ。わざわざ紙を読み上げたのは、その紙で野田さんサイドもOKしたというふうに官僚が上げてきたので、石破さんはその通り答弁した。しかし、全然話が違った。そこは財務省と厚労省の官僚の根回し不足というか判断ミスなんですよ。
・これは参議院の予算委員会で患者団体の方が意見陳述されたのがきっかけ。意見陳述は、立憲民主党が要求したんですけれども、自民党がOKしないとできないんですよ。自民党もOKしたってことは、自民党の中でも火が付いていたということなんです。火が付いていたのは参院選への影響というか、こんなことをしたら選挙で負けるという恐怖感。恐怖感が働いた結果、方針転換せざるを得なくなった。そこは石破さんの判断ミス
・石破政権の決定の仕方で別の問題点を指摘しておきたい……石破さんが途中頑なになったんです。変えましょうと役所が言っても応じなかった時間がある。これは自分が答弁重ねてきてるから変えたくないっていう話。それが先週金曜日の野田さんに対する答弁だった
・総理の参謀がいない……安倍さんにとっての菅さん、岸田さんにとっての木原さんみたいな方がいなくて、本当の側近といえる人がいないので、そういう人を作らなければ同じようなことが起こる。
メタメタです。本当に危機感を感じていたのなら、とっととひっこめるべきだったと思うのですけれども、役所が「変えましょう」といっても変えなかったということは、まだどこかでいけるのではないかと多寡を括っていたのではないかという気もしてきます。

3月8日、自民党は党本部で全国幹事長会議を開いているのですけれども、挨拶に立った石破総理は冒頭、昨年の衆院選大敗について「深くおわびする」と陳謝。6月の東京都議選と夏の参院選に触れ「極めて厳しい選挙が控えている……次の時代のため総力を挙げて勝ち抜く。国家、国民のために支援をお願いしたい」と結束を呼び掛け、参院選を念頭に「物価高にどのように打ち勝つか、安心できる社会保障をどう示すかだ……地域の思い、願いを一番知っているのは自民党だと有権者に理解してもらうのが最も肝要だ……政治を信じている方は多くない。『国民はそのうち忘れるだろう』と思ってはならない」と信頼回復に努める考えを示しています。

なんだか、理解してくれ理解してくれと国民に求めるばかりで、国民が政治に求めているものを理解しているのか疑問です。現実には「地域の思い、願いを一番知っているのは自民党だ」と思われていないと知っているからこそ、理解して貰おうと言っているだけのようにも聞こえます。


3.選挙に負けるからで制度や税金を決めるのか


当然ながら、この対応に野党は批判の声を上げています。

3月7日、立憲民主党の野田代表は記者会見で 「政府・与党が再検討せざるを得なくなって追い込まれた。行政のトップとして優柔不断だった……総力戦で実現のため奮闘してきた。『熟議の国会』の一つの成果になる」と批判。

同じく7日、国民民主党の玉木代表も自身のXで、「決断が遅いしブレまくり。石破内閣は国会をなめている。ガバナンスがめちゃくちゃだ……上限額の)引き上げを前提とした予算案に賛成した自民党、公明党、維新の議員は修正を認めるのか」と政府・与党の対応を批判しています。

ガバナンスが滅茶苦茶だということについては、同じく国民民主の榛葉幹事長も指摘しています。

8日、静岡市での街頭演説に立った榛葉幹事長は、「我々は命に関わる問題だから、立ち止まって、しっかり考えようと言っていたが、自民党はやると言って、衆院で来年度予算案を通した。参院の審議に入った途端にやめるというのは、政策の中身の賛否ではなく、やり方がめちゃくちゃだ……なぜやめるのか。ある自民党議員が『これをやったら選挙に負ける』と言った……自民党の参院議員も『ガソリン減税をやれ。これをやらないと選挙に負ける』……友達のため政治家のために、制度をやめたり始めたり、税金を上げたり下げたりするのか」と非難しています。

榛葉幹事長は演説後、記者団に対し、今回の政府・与党の対応について「右往、左往して決断が遅いし、ガバナンスが効いてない……予算をやり直すのだったら、103万円の壁とガソリン税もやればいい」と述べています。

決断が遅いというのは要するに判断力がないということでしょう。判断力がないというのは、つまるところ、結論が見えないということになります。

こうすれば、どうなるというのが見えない、分からないものだから、あーでもない、こーでもないと逡巡する。こういう時のために、先が見える、しっかりとした相談役なり、参謀がいればよいのですけれども、前述した田崎史郎氏によると、石破総理にはそういう参謀役がいないそうですから、確かに今後も迷走がなんども続くことは予想できます。


4.反対56%から見えてくるもの


実際のところ、世間は、高額療養費制度見直しについてどう見ているのか。これについて、「TBS NEWS DIG」は3月8日の記事で次の様に解説しています。

【前略】

■高額療養費制度見直し「反対56%」から見えてくるもの

維新との「高校授業料無償化」、国民民主との「103万円の壁の見直し」協議と並行して予算審議の中で炙り出された問題が「高額療養費制度」の負担額の引き上げだった。厚労省は制度の見直しについて、現役世代の保険料負担を軽減するためと説明していた。しかし自身もがん治療を経験した立憲民主党・酒井菜摘衆院議員が、涙ながらに負担額引き上げの凍結を求めた予算審議の中で、がん患者など当事者の意見も聞かず進めていたことが明らかとなり、引き上げを見送る動きが一気に加速した。

この制度の見直しについての賛否を聞くと、「納得できる」は「十分」と「ある程度」をあわせて42%、「納得できない」は「あまり」と「全く」をあわせて56%だった。

ただ、こちらも世代別につぶさに分析すると、傾向が異なる。

調査では「十分納得できる」「ある程度納得できる」「あまり納得できない」「全く納得できない」の4択で聞いたが下の表では、「十分」と「ある程度」を「納得できる」に分類した。「納得できない」も同様。

【世代別】   「納得できる」  「納得できない」
18歳〜29歳     51%      45%
30代        39%      60%
40代        39%      61%
50代        43%      55%
60歳以上      40%      55%

予算審議の中で、野党や一部の与党から「見直しは国民の理解が得られていない」との声があがっているが、この結果だけ見るとそうも断言できない。現役世代の負担増が見込まれることから、30代未満の若者世代の理解は相対的に進んでいるし、がんになる率が急激に高くなる50歳以降の世代でも、見直しに40%以上が理解を示している。

この数字をみた官邸幹部は「極端に偏った意見じゃなく、正直ほっとした。やはり苦しくても決めないといけないことは決めるというのが長の役割だ」と話した。

この数字について様々な見方ができると思うが、少子・高齢化、医療の発達による医療費や高額医薬品の増加傾向は、避けられそうもない事実であり、政府も制度を維持するためには負担額の見直しが必要、現役世代の負担が膨らむ一方だと説明する。

ただ問題なのは、圧倒的に説明が足りなかったということだろう。当事者との対話など十分な理解が得られないままに進めたことが、結果的に大きなブレーキとなった。

与党・公明党からも「国民の理解が十分になっていない」と指摘され、石破総理もこう反省を口にした。

「増大する高額療養費をそれぞれの方々の能力に応じてどのように分かち合うかということに対して答えを出していかなければならない。私どもとしても、丁寧な御説明が十分ではないという反省は持っておるところでございます」(3月6日石破総理)

【以下略】
半数から6割くらいが納得できないという回答で、全然納得できないという数字ではありません。これなら、ガソリン税の二重課税や、103万の壁の方がよっぽど納得できないという回答が多いと思います。国民は分からず屋ではないのです。

この状況で高額療養費制度が撤回に追い込まれたということは、ガバナンスがなってないといわれても仕方ありません。なんとなればガソリン税の二重課税撤廃とセットで進めていたら、まだチャンスがあったのではないかとさえ。

石破政権ももっともっと国民の声に耳を傾けなければ、先はないと言うしかないと思いますね。



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