Xの大規模障害とトランプの交渉術

今日はこの話題です。
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1.Xの大規模障害


3月10日、SNSのX(旧ツイッター)でシステム障害が起き、アプリなどの利用ができなくなる障害が発生しました。

ブルームバーグは、アメリカ、イギリス、フランス、インドなどの利用者が、アプリに接続できなくなるなど広域で影響が出たと報じています。

障害のピーク時には、アメリカで3万9000人余りのユーザーがアクセスできない状態になったとのことで、インターネットインフラ業界に詳しい関係筋はXがDoS(サービス拒否)攻撃を繰り返し受けたと明らかにしています。

この障害について、X社を所有するイーロン・マスク氏は「われわれは毎日攻撃を受けているが、これは大規模で組織化されたグループか国が関与している……何が起こったのか正確には分からないが、ウクライナ地域を発信源とするIPアドレスを持つXシステムをダウンさせようとする大規模なサイバー攻撃があった」と語っています。

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2.ウクライナからのサイバー攻撃


今回の障害について、3月10日、ニューヨーク・ポスト紙が「イーロン・マスク氏、Xは「ウクライナ地域」から発生した「大規模なサイバー攻撃」によってオフラインになったと語る」という記事を掲載しています。

件の記事の概要は次の通りです。
・億万長者の起業家でDOGEの最高責任者であるイーロン・マスク氏は月曜日、Xがダウンしたのは「ウクライナ地域」から発生した「大規模なサイバー攻撃」の結果であると主張し た。

・「何が起こったのか正確には分からない」とマスク氏は、自身のソーシャルメディアプラットフォームを狙ったと思われる作戦についてフォックス・ビジネス・ネットワークの司会者ラリー・クドロー氏に語った。

・「しかし、ウクライナ地域を発信源とするIPアドレスを使って、Xシステムをダウンさせようとする大規模なサイバー攻撃があった」と世界一の富豪は付け加えた。

・53歳のマスク氏は、誰が責任者であったかについての追加証拠をすぐには提供しなかった。

・サイバー犯罪者は、偽の IP アドレスを作成して世界各地のコンピュータ システムになりすますことが知られています。これは「スプーフィング」と呼ばれる行為だ。

・専門家らはワシントン・ポスト紙に対し、ワシントンとキエフの外交官らがサウジアラビアで会談する前日に、ウクライナ政府関係者がこのような大胆かつ広範囲にわたる攻撃を実行したというのは極めてありそうにないと語った。

・「ウクライナのハッカーが、米国とウクライナの会談の前日にイーロン・マスク氏を攻撃したのは全く意味不明だ。会談では、ウクライナのハッカーらは、大統領執務室訪問以来疑問視されてきた和平協定に向けて、米国に再び情報共有と援助の提供を求めようとしている」と、アトランティック・カウンシルのアレックス・プリツァス氏は月曜日、ワシントンポスト紙に語った。

・「これを見ている誰もが自問すべき質問は、『これで誰が利益を得るのか?』だ。そして、利益を得るのはウクライナではない」

・マスク氏への反対を声高に訴えてきたサイバーハッカー集団「アノニマス」など、他の関係者にはXを攻撃する動機があるかもしれないが、ウクライナをハッキングに結び付けたり、ハッキングに仕立て上げたりする動機があるのはロシアだけだ。

・「匿名は、彼らが公にした声明や、マスク氏を攻撃する能力と意欲から判断すると、もうひとつの可能性が高い。しかし、タイミングから見て誰が利益を得るかという点では、唯一はロシアだ。なぜなら、今日やれば明日予定されている会談が中断されるからだ」とプリツァス氏は語った。「それによって利益を得るのは、ウクライナを非難しているという意味でロシアだけだろう。彼らはウクライナの評判を落とし、会談を中断させたいのだ」

・さらに、米国が先週 モスクワに対する攻撃的なサイバー作戦を停止したため、ロシアのサイバー攻撃者は、このような攻撃を実行するためのより多くの時間を持っている可能性が高い。

・何千人ものソーシャルメディアユーザーが、月曜日の一日中Xのサービスが停止したと報告した。

・DownDetector.comによると、午前6時から報告が殺到し始め、午前10時までに4万人以上のユーザーがプラットフォームに問題があると主張した。

・クラッシュ追跡サイトによると、月曜日の午後時点でさらに2万5000人のユーザーがXアプリで問題に遭遇した。

・「稼働しています」とマスク氏は、東部標準時午後5時直前にクドロー氏からプラットフォームの現状について質問された際に答えた。

・Xの責任者は同日早朝の広範囲にわたる障害について「大規模なサイバー攻撃」のせいだと主張したが、攻撃の中心地は特定しなかった。

・「私たちは毎日攻撃を受けているが、今回の攻撃は多くのリソースを使って行われた」と彼はXに書いた。「大規模で組織化されたグループや国が関与している」

・その前日、 マスク氏は 自社の技術がウクライナ軍を支えていると自慢していた。

・このハイテク界の大物は、2022年2月のロシアの侵攻直後にキエフ政府にスターリンク端末へのアクセスを提供した。端末の継続的な運用はウクライナ軍の作戦の鍵となっている。

・「ウクライナをめぐって私は文字通りプーチン大統領に一対一の肉体的な戦いを挑んだ。私のスターリンクシステムはウクライナ軍のバックボーンだ」とマスク氏はXに書いた。これは、第二次世界大戦以来最大の欧州紛争で彼がウクライナよりもロシアを優先していると非難したユーザーへの返答だ。

・「私がそれを止めれば、彼らの前線全体が崩壊するだろう」と彼は付け加えた。

・マスク氏はトランプ大統領同様、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がクレムリンとの和平交渉に消極的であることに批判的だ。

・「私がうんざりしているのは、ウクライナが必ず負ける膠着状態の中で何年にもわたって虐殺が行われていることだ」と彼は日曜日に語った。「本当に気にかけている人、本当に考えている人、本当に理解している人は誰でも、肉挽き機を止めてほしいと願っている。今すぐ平和を!!」
記事では、ウクライナにはこんなことをする動機はなく、得をするのはロシアだけだと述べていますけれども、アメリカとウクライナの高官協議をぶち壊したいと思っているのがロシアだけならばそうかもしれません。

ただ、ネットではウクライナ軍がゼレンスキー大統領に反旗を翻したなんて噂も流れているようです。事の真偽は不明ですけれども、Xへのサイバーアタックする動機を持つ者はロシアだけだと決めつけるのは、ちょっと危ないかもしれません。


3.アメリカの圧力カード


前述の記事では、マスク氏がスターリンクを止めればウクライナ軍が崩壊するだろうと述べたことを紹介していますけれども、スターリンクとは地球の低軌道に多数の衛星を打ち上げることで、高速かつ低遅延なインターネット通信を提供するシステムのことです。

現在、通信インフラに大きなダメージを受けているウクライナ軍はスターリンクによる衛星通信や米政府からの衛星画像の提供に大きく依存しています。

マスク氏はXへの投稿で「私のスターリンクシステムはウクライナ軍のバックボーンだ。もし私がそれをオフにしたら、彼らの前線全体が崩壊するだろう」と述べたことは事実です。けれども、止めるから言うことを聞け、と脅している訳ではありません。

これに対し、ポーランドのシコルスキ外相は、「ウクライナ向けのスターリンクは、ポーランドのデジタル化省が年間約5000万ドルを負担している……侵略の犠牲者を脅すことの倫理は別として、スペースXが信頼できないプロバイダーであることが証明されれば、われわれは他のサプライヤーを探さざるを得なくなるだろう」と応じています。

これにマスク氏は一連の投稿で「お前(シコルスキ氏)が払うコストはほんのわずかだ。スターリンクに代わるものはない」、「明確にしておくが、ウクライナの政策にどれだけ反対であろうと、スターリンクがターミナルを遮断することはない。われわれはそのようなことは決してしないし、交渉材料に使うこともない」とも述べています。

更に、アメリカのマルコ・ルビオ国務長官も「ウクライナをStarlinkから遮断すると脅した者は誰もいない……そして、スターリンクがなければウクライナはとっくの昔にこの戦争に負けていただろうし、ロシア軍は今頃ポーランドとの国境にいただろうから、感謝を述べなさい」とコメント。スターリンクを切断しないといいながら、なんだかんだで今のウクライナがスターリンク頼みであると宣言している訳です。

ただ、アメリカ国家地理空間情報局(National Geospatial-Intelligence Agency:NGA)は、2022年以降、ウクライナに複数の商業リモートセンシング衛星画像を提供していたのを3月7日に停止したと発表しています。

海外メディアのSpaceNewsは「情報共有の一時停止は、ウクライナに外交的圧力をかけ、指導者をモスクワとの和平交渉に向かわせるための戦術的な動き」と分析していますけれども、アメリカは、何もスターリンクを切断しなくても、いくらでも圧力を掛ける手段を持っている訳です。


4.紛争を終わらせるには譲歩が必要だ


3月7日に、アメリカ国家地理空間情報局(NGA)が、衛星画像を停止した翌8日、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ウクライナとアメリカの高官らが11日にサウジアラビアで会談を行う」と自身のSNSで公表し「我々はこの戦争の最初の瞬間から平和を望んでいる……現実的な提案がある」と和平合意への意欲を示しました。

すると、更に翌9日、アメリカのトランプ大統領は、大統領専用機エアフォースワンで記者団からウクライナへの情報共有の再開を検討するか問われると「まあ、ほぼ実現した……ウクライナが真剣に何かを実行するよう働きかけるために、できることは何でもしたい」と答えています。

衛星画像提供停止、米ウ高官協議再開、情報共有再開と、ウクライナが、トランプ大統領の圧力に折れて、協議したいといったのでしょう。それを受けて情報提供再開、と、まぁ、なんとも分かりやすい圧力の掛け方です。

サウジアラビアに派遣されるアメリカ代表団には、マルコ・ルビオ国務長官とマイク・ウォルツ国家安全保障担当大統領補佐官が含まれ、ウクライナ代表団は、ゼレンスキー大統領府長官のアンドリー・イェルマーク氏が率いるとのことで、トランプ大統領は「我々は多くのことを検討するだろう……大きな会議が近づいている……サウジアラビアで会議がある。ロシアとウクライナも参加する。今週は多くの人が亡くなった。ウクライナ人だけでなく、ロシア人も。誰もがそれが終わるのを望んでいると思う……我々は大きな進歩を遂げるだろう……彼らは鉱物資源協定に署名するだろうと思う……彼らに平和を望んでほしい」と述べています。

また、マルコ・ルビオ国務長官は記者団に対し、ウクライナの部分的停戦提案には一定の期待があるとした上で、「それだけで十分だと言っているのではないが、この紛争を終わらせるには、このような譲歩が必要だ」と述べ、ウクライナとの鉱物資源取引の締結については「重要な議題だが、議題の主要議題ではない……大統領が実現を望んでいる合意であることは確かだが、必ずしも明日実現する必要はない……まだ詳細を詰める必要がある」とコメントしています。

これをみると、まずは停戦を最優先とした会談が行われるものと思われます。

果たして、何が決まって、何が決まらないのか。注目したいと思います。



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