

1.私はすべて存じません
石破総理の商品券問題で野党の追及が続いています。
3月17日、参議院予算委員会で立憲民主党の石垣のりこ氏は、「地元では『何をやってるんだ』『そんな余裕があるんだったら私たちに配ってほしい』との声をいただいた。きのう『歴代の総理大臣が慣例として普通にやっていたことだ』と自民党の舞立昇治参議院議員が地元で発言していたが、事実なのか」と追及しました。
これに対し、石破総理は「歴代の首相がそうであったかどうか、私はすべて存じません。お答えする立場にもない」と答えるに留めました。
石垣議員が「国民、有権者は納得していない。政治倫理審査会も含めて説明の場を設け、弁明をすべきではないかという声もある」と詰め寄ると、石破総理は「法的に正しいと言っても、道義的にどうなんだい、社会通念上どうなんだいというのはあると痛切に認識をしている。世の中の方々の感覚と乖離をした部分が大きくあった。大変申し訳ない。すべて私費でやっているが、もし、疑義があるということなら、またお尋ねをいただきたい」と改めて陳謝しました。
石破総理は、新人議員との会食について「政治活動として行ったものではない」と説明し、政治資金規正法違反にあたるとの指摘を否定していますけれども、流石に苦しい答弁です。
京都大学大学院教授の藤井聡氏は「10万円のお土産としては常識逸脱してます。事前に事務所行って、秘書が10万円封筒を渡してる。社会通念上、常識ではないので、お土産とは考えられないので、これはアウト!」と指摘。経済学者の高橋洋一氏も「公邸で、国会議員だけの会食でしょ?!これ、政治活動じゃないって…言えないでしょ……これが政治活動じゃなかったら、何なの?!政治以外の何者でもない……石破さんって、法律にも違反していない人を非公認とかいろいろやったじゃない? そういう人が自分に甘くてどうすんの? ……トップに立つ人で、自分に甘い、はダメですよ。ありえない。ツッコミどころ満載」とボロカスに批判しています。
2.慣例として普通にやっていたこと
石垣議員が指摘したとおり、前日16日、自民党所属で、石破総理と同じく鳥取県が地元の舞立昇治参議院議員が県連の会合で「歴代の総理が慣例として普通にやっていたことが、ここまで問題になるというところは、現代の情勢なり、物価高の厳しい状況の中で一般常識と懸け離れているという指摘については真摯に受け止めないといけない」と商品券配布が慣例だった発言をしています。
ところが翌17日、舞立議員は、自身の慣例発言について「事実誤認、推測に基づく発言であり撤回する」とのコメントを出しています。おそらくは、執行部など上から圧力が掛かったのだろうと穿ってしまいますけれども、商品券配布が『ここまで問題になる』といっておきながら、自分の慣例発言も『ここまで問題になる』とは予想できなかったのかというあたりに、感覚のズレを感じてしまいます。
自民党執行部は、今回の問題の火消しに躍起になっています。
17日、東京都内のホテルで自民党の森山裕幹事長と松山政司参院幹事長、そして、小野寺五典政調会長、坂本哲志国対委員長、古川俊治政審会長、橘慶一郎、青木一彦両官房副長官といった幹部の会談が行われ、橘副長官が「ご迷惑をおかけして申し訳ない」と陳謝。会談では、この問題に対する世論の反応は厳しいとして信頼回復に努めることで一致しました。
会談後、坂本国対委員長が記者団の取材に「特に選挙を控える参議院側は厳しい雰囲気だった。国民の理解を得るような行動を党としてもしていかなければならないということで一致した……これまで審査会で弁明してきた収支報告書の不記載などのケースとは少し違う気がする。総理大臣として審査会で発言すべきものかどうか難しい問題だ……石破総理大臣としては、反省も込めて、国民感覚との違いも実感しながら説明していると思う」と述べました。
また、森山幹事長も記者会見で「石破総理大臣は、これまでも繰り返し説明し、きょうの参議院予算委員会でも、真摯な答弁に努めている。引き続き、趣旨や経過について、丁寧に説明を尽くす強い気持ちを持っている。党として、わが国が直面する内外の課題に1つ1つ答えを出すことによって国民の期待に応え、信頼を回復する努力を重ねていきたい」と述べています。
説明、説明、と釈明していますけれども、どんなに説明したとしても、その「慣例」とやらが正されず、何も変わらないのであれば、その「説明」はつまるところ、現状を受け入れろという要求と変わりません。
国民が求めているのは説明は勿論のこと、その先にあるもの、つまり、再発防止と実行に他なりません。
3.自民党に自浄能力はない
3月15~16日に朝日新聞が行った全国世論調査によると、石破茂内閣の支持率は26%で、前回2月調査の40%から大幅に下落し、昨年10月の内閣発足以降で最低となった。不支持率は59%(前回44%)だった。石破総理事務所の自民党国会議員15人への1人10万円相当の商品券配布問題については、「問題だ」が計75%と「問題ではない」計23%を大きく上回りました。そしてm配布問題を受けて、石破総理は、首相をやめるべきだと思うか尋ねたところ、「その必要はない」60%が、「やめるべきだ」32%を上回りました。
また、自民党は「政治とカネ」の問題を繰り返してきた体質を変えられると思うかを質問したところ、「変えられない」が79%と「変えられる」の15%を大きく上回り、自民支持層でも「変えられない」が65%、「変えられる」が28%とダブルスコアの大差をつけています。
この結果に、JX通信社代表取締役の米重克洋氏は、「石破内閣の支持率が急落したのに、首相の辞任は「必要ない」が60%に上っている」点に注目し「これは、他の人に代わったからと言って何か良くなるわけではない、という有権者の諦めだろう」とツイートしています。
もし、この通りだとすると、有権者はもはや自民党に自浄能力はないと見限っていることになります。
米重氏が先のツイートに続いて次のように述べています。
・実際、読売の調査を見ると、石破内閣を支持する理由として「他に良い人がいない」が51%(前月比+7pt)に上っている。朝日の調査でも、自民党が政治とカネの問題を繰り返してきた体質を「変えられない」とする回答が79%(自民党支持層でも65%)に上ったという。
・こうした状況だと、石破内閣の支持率が急落したとて「選挙の顔」として他の新しい総裁・首相に交代しようという機運が自民党内でどこまで盛り上がるのか疑問がある。代わったとてかつての首相交代時のような内閣支持率上昇を伴う可能性が低いからだ。言い換えると、党内での"疑似政権交代"への期待感の弱さが垣間見える。それは自民党の政党支持や比例得票にも重しになる。
・対照的なのは国民民主党だ。3月に入って再上昇の基調が明確になっている。現時点では、参院選でも強いモメンタムを示す可能性が高い。」
石破内閣の支持率が急落したのに、首相の辞任は「必要ない」が60%に上っている(朝日)のは興味深い。これは「他の人に代わったからと言って何か良くなるわけではない」という有権者の諦めだろう。…
— 米重 克洋 (@kyoneshige) March 16, 2025
4.総理退陣求めない
この米重氏のツイートに対して、「このまま石破でいって自民がぼろ負けすることを期待してのことでしょう」とか「参院選できっちり惨敗してもらって敗残処理させてから引責辞任からの体制刷新が丸い。と各方面思ってるんでしょうね」などという趣旨のリツイートがバンバン寄せられています。要するに、諦めではなく、自民大敗を望んでいるがゆえに、このまま石破総理のままで参院選に突入してほしいという気持ちの顕れだというのですね。
勿論、野党もそれを計算しています。
3月16日、立憲民主党の野田佳彦代表は、青森市内で講演し、「徹底して説明を求める。内閣不信任決議案提出や退陣を求める声があるが、私は簡単に求めない」と石破総理が商品券問題で説明責任を果たさないまま退陣して幕引きを図るのは認めないとの考えを示しました。
そして、「トップを代えて清新なイメージで参院選に臨みたい、衆院を解散したいということだろうが、そうは問屋が卸さない……政治資金規正法に抵触する可能性が十分ある」と、自民内で出ている総理退陣論を牽制。総理の説明責任に関し「政倫審で説明を聞こうじゃないか。何回やったのか、歴代首相もやっていたのかなど自民党の政治文化について説明責任を果たすまで追及する」と国会の政治倫理審査会への出席も要求しました。
内閣不信任案を提出するには、最低でも発議者1人と賛成者50人の計51人が必要となりますから、単独で提出できる野党は立憲民主しかありません。その立憲民主が不信任案をださず、延々と商品券問題を説明させてはイメージダウンさせていく。その分参院選で有利になると計算すればこそ、石破総理のままで居てほしいのでしょう。実に分かりやすい。
ただ、原理原則でいえば、政治は国民のためにあるものです。野党には、あまり党利党略に走り過ぎることなく、本当に国民の為の政策を選挙で訴え、それを実際に行えるだけの政治力を見せていただきたいですね。
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