スターマーのウクライナ平和維持部隊派遣計画

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2025-03-21-203600.jpg


1.スターマーのウクライナ平和維持部隊派遣計画


3月15日、イギリスのキール・スターマー首相は、ロンドンで行われた高官級オンライン首脳会談で、ウクライナに平和維持部隊を派遣する計画を発表しました。

ロシアとの和平協定が成立した場合にウクライナを安全に守ることができる「有志連合」を創設することを目的としてイギリスが主催したこの首脳会談には29人の国際指導者が参加したのですけれども、今のところ、35ヶ国が平和維持活動に武器、兵站、諜報支援を提供することに合意しています。

政府高官は、平和維持活動は「相当数の国が部隊を派遣し、さらにはるかに大規模なグループが他の形で貢献する、重要な部隊となる」と語ったとのことです。

そして、翌17日、イギリスのスターマー首相の報道官は、記者団に対し、「貢献能力は様々だが、相当数の国が兵士を派遣する重要な部隊となるだろう」と、ロシアとウクライナの和平協定が成立した場合、ウクライナを支援するため、いわゆる「有志連合」に30カ国以上が参加すると予想されると語りました。

記者団から、モスクワはウクライナに欧州の平和維持軍を受け入れないと発言したことについて問われると、報道官は「ロシアが昨年、北朝鮮軍を前線に派遣した際にウクライナに問い合わせなかったことは覚えておく価値がある」と反論。平和維持部隊が攻撃対象になった場合、反撃することは許されるのかとの質問には、詳細を検討するために軍事計画会議が開かれていると答えました。

やる気満々です。

もっとも、平和維持軍について、イギリス軍筋の話によると、平和維持部隊には約1万人の兵士が含まれるものの、そのほとんどはイギリスとフランスから派遣されると、サンデー・タイムズが報じています。

また、提案された1万人の兵力は、2月20日のホワイトハウスでの会談でスターマー首相がアメリカのトランプ大統領に提案したとされる3万人の兵力より大幅に少なくなっています。

以前、ウクライナのゼレンスキー大統領が、ロシアを効果的に抑止するためには、欧州のパートナーはウクライナの最前線に10万から15万人の軍隊を駐留させる必要があると述べていたことを考えると、1万人の兵士を派遣してもどれほどの抑止効果があるのかは疑問です。

ウクライナへの部隊派遣について最も声高に主張しているのはフランスとイギリスで、イタリアやフィンランドなど一部の国は留保を表明しています。イタリアのジョルジャ・メローニ首相は、ウクライナへの支持を表明したものの、提案されている平和維持軍に参加する予定はないとしています。


2.激怒したショルツ


もともと、平和維持軍構想について、欧州は足並みが揃っていませんでした。

2月17日にパリで行われたウクライナ紛争に関する欧州首脳緊急会議で、イギリスのスターマー首相はウクライナへの平和維持軍派遣方針を提案しました。

この提案に猛反対したのがドイツです。

ドイツのショルツ首相は、この提案は「完全に時期尚早」、「極めて不適切」であり、キール首相の提案を拒否しました。

ショルツ氏は会談後に記者団に対し、「今この議論をするのは全く時期尚早であり、全く間違ったタイミングだ。私はこうした議論に少々いらだちさえ感じている」と語り、当時、まだ始まってもいない和平交渉の結果について、欧州軍の派遣の可能性に関する議論が「ウクライナ人の目の前で」行われていると主張し、「率直に言って、これは極めて不適切だ。結果がどうなるかさえ分からない」とコメントしています。

この時の会議では、ドイツ、ポーランド、スペインも、和平協定の一環としてウクライナに軍隊を派遣することに消極的だと表明。イギリス、フランス、スウェーデンは賛成の立場を表明しています。

また、軍派遣推進の立場を取る、イギリスのハイディ・アレクサンダー運輸大臣は、他の欧州諸国の支援なしにイギリス軍がウクライナの平和維持活動に派遣されるかどうかという質問に「首相はこれまで、米国との協力関係が絶対的に不可欠であり、いかなる安全保障の保証も欧州の同盟国と米国の両方と協議して実現されなければならないと明確に述べてきた」と述べた上で、「私の理解では、状況が許せば、いかなる軍隊派遣の前にも議会に相談するのが普通です。しかし、私が言うように、現時点では、その段階には程遠いと思います」とイギリス軍をウクライナに派遣する前に国会議員による投票が行われるだろうと指摘しています。


3.有志連合軍事協議


3月20日、イギリスは、ウクライナの停戦後の平和維持のあり方について、ウクライナのほかヨーロッパ各国やカナダなど、停戦後の平和維持にあたる有志連合の枠組みに賛同する国々の軍関係者による会合を開きました。

会合でスターマー首相は「停戦合意が成立した場合、合意を保証するための安全保障体制が整って初めて、ウクライナは安全と主権を保てる」と強調したとのことですけれども、会談後、スターマー首相は、「安全保障協定の目的は、ロシアが合意に違反した場合には厳しい結果を招くことをロシアに明確にすることだ……だからこそ、アメリカの関与が必要なのだ。プーチン大統領に、境界線を破れば厳しい結果を招くと明確に伝える必要があるからだ。だから、この計画の目的は、エストニアや我々が派遣されている他のすべての国と同じように、平和を維持することなのだ」と記者団に語りました。

更に、スターマー首相は、以前示唆したように英国軍がウクライナに派遣される可能性はあるかとの質問に対し、軍の計画担当者らは陸海空の支援を協議していると述べるにとどめ、「過去3年間の出来事により、ウクライナ軍は今や欧州最強の軍の一つであるという強い認識がある。彼らには能力があり、人数も多く、実際に前線での経験もある……我々は能力を置き換えるものについて話しているのではなく、それを強化し、その周りに空、水、海、陸に関する能力を配置するものについて話しているのだ」と述べています。

スターマー首相のウクライナへの軍派遣計画については、イタリアのメローニ首相が「危険で効果がない」とし、ホワイトハウスはウクライナにおける西側諸国のいかなる勢力への支援も約束しないとしています。

もっとも、この会合には、アメリカとイタリアの当局者も出席したそうです。


4.アメリカの支援が無ければ軍は派遣しない


スターマー首相は、ウクライナに軍を派遣する、派遣すると吠えていますけれども、それにはアメリカの助けが必要だと繰り返しています。

3月20日、イギリスのルーク・ポラード国防相は、タイムズ・ラジオのインタビューに応じ、もしアメリカが撤退したら、英国政府はウクライナに軍を派遣する用意があるかとの質問に対し、「いいえ、首相は、平和を確保する軍隊を準備するために欧州諸国と世界中の他の同盟国を集めるには、アメリカの支援、アメリカの関与が必要だと明言しています……それが彼が大統領執務室で大統領と交わした会話です。それが我々が続けている対話です」と答えました。

要するに、アメリカから支援がなければ、ウクライナに平和維持軍を派遣することはないだろうと言っているのですね。

スターマー首相は、この平和維持軍派遣計画をフランスのマクロン大統領と共に強く推進していますけれども、イギリスの関与が無期限になる可能性や、アメリカが長年担ってきた欧州の安全保障の保証人としての役割を果たさない中でも、本当に実行可能かどうかといった指摘がなされています。

ポラード国防相は「人々を結集させることで、欧州と同盟国が彼らの望むものを実現し、我々が支援を強化していることをアメリカの友人たちに示すことができると、我々は楽観している」と語っていますけれども、トランプ大統領は、アメリカはそのような計画に直接関与しないと述べています。

にも関わらず楽観できるとの発言には、まだ公になってない何かがあるのかと気になります。

少なくとも、トランプ大統領がスターマー首相の計画に賛同しない限り、この計画は頓挫する可能性が高いと思いますけれども、果たして英仏が単独でも軍の派遣に不見切るのかどうか。

もしも、ロシアが要求している「ウクライナに欧州の平和維持軍を受け入れない」という案を飲んで和平合意がなされたとしたら、スターマー首相の平和維持軍派遣計画は合意破りになります。

第三次世界大戦を回避するためには、トランプ大統領の判断と、和平合意の中身がポイントになってくると思いますね。



  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント