名誉棄損と言論弾圧

今日はこの話題です。
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1.河野太郎の名誉棄損裁判


3月21日、ブログの投稿で名誉を傷付けられたとして、河野太郎衆院議員が元東京都豊島区議の沓沢亮治氏に損害賠償などを求めた訴訟で、東京地裁が名誉毀損の成立を認め、沓沢氏に33万円の支払いと投稿の削除を命じる判決を出しました。

判決によると、沓沢氏は2021年、「河野太郎は一族ぐるみ中国共産党に飼われてました」「河野一族は中共(中国共産党)の犬」などと投稿。訴訟で沓沢氏側は「正当な政治批判だ」と主張したのですけれども、判決は、投稿内容が真実との証明はなく、真実と信じる相当な理由もないと指摘。「外交関連も含む要職を歴任した河野氏への侮辱行為にあたる」と認定しました。

沓澤氏はこの判決に対し、控訴するとし、自身の動画で解説をしています。

沓澤氏によると、判決の結論は次の通りです。
被告の摘示事実は真実及び真実相当性があるとは認められず、この適時事実を前提に「犬」という表現を繰り返し用い「スパイ」表現も用いて原告の総理大臣としての適格性に疑問を呈した。この行為は閣僚を歴任し自民党総裁選に立候補したこともあり原告の人格的利益を著しく損ねるものであり、許される限度を超える侮辱行為と認める。
沓澤氏は判決で真実相当性がないとされた摘示事実について、次の4つを適時したとしています。
被告が示した4つの摘示事実
・河野太郎と河野太郎の親族が日本端子の支配権を有している
・日本端子は中国共産党エリート党員が責任者を務める京東と共同出資した会社を中国に有している
・日本端子はソーラパネルの周辺機器によって利益を得ている
・日本端子はウイグル人を奴隷のように使役してソーラーパネルを作っている
沓澤氏は、判決について「この4つの事実の4つ目の真実相当性がないから上の3つもあの認められないっていうことにしたみたいなんですよね」と指摘。しかも4つ目の「事実」については投稿してもいないと述べています。

沓澤氏は「書いてもない枝葉が真実と証明できないから他も全部真実でないってどういうこと?」と反論していますけれども、この通りであれば、そう反論するのも理解できます。




2.線引きが難しい情報流通プラットフォーム対処法


誹謗中傷に関連して、今、ネットを騒がせているのは、SNS規制です。

4月1日から「情報流通プラットフォーム対処法」が施行されますけれども、権利の侵害を受けた人が、投稿の削除申請などを短期間で、より簡単に行えるようにしていることから、言論弾圧に繋がるのではないかと懸念する声が上がっています。

これについて、「ABEMAタイムス」は3月23日付の記事「“情プラ法”で誹謗中傷なくなる?第三者による通報はSNS規制?「線引きが難しい法律を作っている」プラットフォームの対応どこまで」で解説しています。

件の記事の概要は次のとおりです。
【前略】

4月施行の情報流通プラットフォーム法では、事業者にいくつかの対応を義務づけている。まずは削除要請対応窓口を設置・公表し、削除などの申し出から7日以内の通知を規定。明確な削除基準の作成と公表を行い、侵害情報調査専門員を選任(プラットフォームごとに1人以上)する。これらの実施状況を年1回公表し、罰則として法人には1億円以下の罰金などが課せられる。また、ガイドラインでは「第三者からの削除要請についても、速やかに対応を行うことが望ましい」とした。

自民党のネット誹謗中傷対策プロジェクトで事務局長を務めた三谷英弘衆院議員が、今後の流れについて、「まずは人口の約1割(約1000万ユーザー)などの条件を満たしたものを“大規模なプラットフォーマー”として指定する。指定されたプラットフォーマーは通報窓口の設置が義務づけられ、そこへの通報に対しては7日以内に『削除する』『削除しない』といった返事をする義務も課せられる」と説明した。

一方で、メディア社会学を専門とする法政大学の藤代裕之教授は、この法律の実効性に疑念がある。削除基準制定と侵害情報調査専門員設置に対しては、「プラットフォームはあくまで“場”」であるとして、「調査員は信用できるのか」「言論を選別したら“メディア”」と指摘する。また、第三者が削除要請可能になることには、「対応すべきは当事者で、第三者やプラットフォーマーの介入はすべきでない」と考える。加えて、海外プラットフォームへの対応についても、「そもそも、Xのイーロン・マスク氏が言うことをきくのか」と問う。

業界事情として、「プラットフォーマーは、言うことを聞かない。あくまで“場所貸し”で、そこで勝手なことをやっても対応してくれないから、対応してくれという法律が情プラ法」と説明しつつ、「事業者に透明化や対応を求めるもので、“国のSNS規制”というのは誤解だ」と語る。

とはいえ、「プラットフォームは、そもそも色が付いていない場所」だと考えると、昨今の動きには疑問を感じるという。「米トランプ政権についてのX投稿のように、単なる“場所貸し”ではなく、色が付いている。あれは『イーロン・マスク新聞』というメディアだ。メディアとプラットフォームの境目が曖昧なまま、プラットフォーマーに規制を任せると、異なる“誹謗中傷”の判断基準になるおそれがある」。

三谷氏は、この指摘に「プラットフォームは責任の主体が“発信者”にあるが、メディアは“媒体社”になる。書き込みの責任は、投稿者にあるという立て付けは今後も変わらない」と返答する。

情プラ法の前身となるプロバイダ責任制限法は「副次的にプラットフォーマーが責任を負い得ることを前提に、削除すれば免責する法律だった」として、今回の法施行で「プラットフォーマーの義務は『削除しなければならない』と重くなったが、本来的な『責任の主体はユーザーにある』という立て付けは変わらない」と念を押す。

アクティビスト個人投資家の田端信太郎氏は、かつてLINEの上級執行役員だった経験から、プラットフォームによる違いを論点として挙げる。「みんなが見られるYahoo!掲示板での悪口と、“特定少数”である10人のLINEグループで『担任教師はクソ』と言うこと、どちらもプラットフォームだが、LINEグループには通信の秘密が適用される」。

しかしながら、「これが1000人のLINEグループだったらどうなるか。もし1万人のLINEグループがあったときに、もはや“特定少数”とは言えないのではないか。グラデーションのある中で、線引きが難しい法律を作ってしまっている」とも述べる。

Yahoo!ファイナンス掲示板では、禁止行為として、「つるし上げ、晒し上げを目的とした投稿」「取引や保有銘柄のスクリーンショットなどを要求し不快にさせる投稿」「公人や社長、あるいは企業などに対する苛烈な表現を用いた批判」などを定めている。また「脳無しの経営陣は、さっさと消えろ」「このクソ会社が」といった例文も示されている。

このガイドラインに、田端氏は「『さっさと消えろ』は、『殺す』『死ね』とは異なり、辞任を求めているだけで、物理的な危害を加えるとは解釈できない。あくまで言論の自由における批判や意見、論評の範囲ではないか」と反論した上で、「これはあくまでLINEヤフーがサービスポリシーとして決めたことで、法律はそこまで求めていないと明言されるならば、それは経営判断として良いと思う」と語った。

誹謗中傷による被害が「野放しなのはおかしい」としながら、「適用除外を明言してほしい」とも求める。「条文に『公職選挙法に定める首長や議員、上場企業の商法・会社法で定める役員はこの限りではない』と1行入っていれば、バランスの取れた法律だと思うが、すでに言論の萎縮を招いている。おそらくLINEヤフーは『自社の判断だ』と言わずに、『法律の要請に基づき、コンプライアンス順守のためにやっている』と言うだろう」。

各プラットフォームの現在の削除基準について、Facebookは「身体の安全に危害を及ぼすリスクある投稿」「違法・誤解を招く・差別的・不正な投稿」「知財権などを侵害する投稿」などが対象で、Xでは「ヘイトへの言及」「中傷・差別的揶揄」「嫌がらせ」「侮辱」「名誉毀損」などの投稿について、違反の場合は投稿者に削除要請し、一定期間読み取り専用のペナルティーが与えられる。

起業家で投資家の成田修造氏は、法整備に加えて「プラットフォーマーも、『暴力的な表現があるため非表示』のように、AIなどで誹謗中傷対応をしつつある。自浄作用として、今後も発展するのでは」と話す。

加えて、情プラ法の対案として、「プラットフォーマーが、国に『どういうロジックでAIが判断しているのか』のアルゴリズムを提出する。そこに対してガイドラインを作った方が、実効性が高い」とアドバイスする。

藤代氏は、別の法規制も必要だと主張する。「誹謗中傷や目立つことを行うと、もうかる。訴えられても稼げる状態で、むしろ訴えてくる電話をYouTube公開すれば、さらにPVが稼げる」といった実情があるとして、「被害者と加害者の便益が釣り合わず、やったもん勝ちになっている。被害者は弁護士が必要だし、メンタルもやられてつらい。『自分で通報して』『当事者同士で戦って』と言われても、普通の人はやれない」と話す。

三谷氏は「『どういう発信を規制するか』ではなく、違法なものの責任を取れる仕組みづくりが必要だ」と考えている。「一線を越えた“違法な発信”には責任を取ってもらうが、それに満たないものは『どうぞご自由に』があるべき姿だ。そこに近づけていかなくてはならない」とした。
記事では、今回の「情プラ法」について、「事業者に透明化や対応を求めるもので、“国のSNS規制”というのは誤解だ」とする一方、判断基準が曖昧になる懸念があるとも指摘しています。


3.冷酷三兄弟とクラウドワークス


3月13日、衆院予算委員会で質疑に立った、れいわ新選組の櫛渕万里氏に対し、石破総理が憤る場面がありました。

これは、質疑で櫛渕氏が「自公維の『冷酷3兄弟』で合意した国民医療費4兆円削減を撤回して……」と述べたことに対し、石破総理が「冷酷3兄弟などではない。そのような決め付けは甚だ心外だ……決め付けた議論をされると世の中の方が誤解する」と反発しました。

けれども、櫛渕氏は「医療費4兆円削減なんて国家的殺人だ」と譲らず、撤回しませんでした。

また、3月21日の参院予算委員会で、立憲民主党の杉尾秀哉参院議員が、SNSでの政治関連の投稿についての質疑で「かつてクラウドワークスに掲載された仕事です」として、動画や原稿作成者の募集が仕事仲介サービス・クラウドワークス上で行われている例を挙げた上で「クラウドワークスが募集するのは選挙に関することだけではない。かつては、自民党、立憲民主党、財務省を批判して、国民民主党、参政党を称賛するような書き込みの仕事を募集している……カネの力で一定の世論誘導を行うことが可能だ。カネで偽の世論を作ることが野放しになっていてもいいのか」などと指摘し、政府側の見解を質しました。

この発言に、名指しされた参政党と国民民主党は猛反発。

参政党の神谷宗幣代表は「我が党も抗議します。参政党からクラウドワークスに仕事を依頼したことがありません……参政党は、業者を介した依頼して他党の批判投稿などしたことは一切ありません。ネットを使ったネガティヴキャンペーンや印象操作をしてはいけないといいながら、国会を使って印象操作するのはいいのですか? ……カネで世論を動かしてはいけないならテレビや新聞も廃止しないといけませんね。広告代理店にたくさんカネを渡して広告を打ってはいけませんよね?要は自分たちに不利になるものはダメと言っているに過ぎないのでは?なんかSNSに規制をかけようという人達のホンネを垣間見た気がします。」とツイートしました。

このツイートにフォロワーから、政治系YouTubeチャンネルの運営者がクラウドワークスに「政治系ショートのシナリオライター様を探しております*政府批判系(自民党・立憲民主党・財務省)*保守系称賛(国民民主党・参政党)」などとの募集をかけていたとの指摘があり、神谷代表は「この情報を使われたのですね。なら余計に悪質ですね。募集者が載っているのに、それを敢えてカットすることで、参政党や国民民主党がやっているような印象を与えます……参政党や国民民主の支持をしているであろう政治系チャンネルの運営者が、こんな募集をかけていた、と言えば良いのです。まさに切り取りによる印象操作だと思いました」と反論しています。

また、国民民主党の榛葉幹事長も21日の記者会見で「国民民主党があたかもクラウドワークスを利用し、わが党に有利な記事や動画を作成させて流させているかのような質疑は大変遺憾……一般論として、報道の自由や表現の自由は絶対に侵されてはならない。選挙によっては、さまざまなネットが影響した事実はあるかもしれないが、基本は報道や表現の自由は絶対に侵されてはならない……印象操作で、我々がクラウドワークスを使っているかのような、ああいう、誘導的というか誤解を生むような発言は本当に遺憾ですね。テレビを見てびっくりしたよ……我々は一生懸命に頑張って、支援者のみなさまが呼応してさまざまに情報発信してくださり、支持率が若干、上がっている。それを、自分たちの支持率が上がらないのをネットや報道のせいにしたり、他党の足を引っ張って上にいこうなどということは、一般論ですが、やめた方がいい」と、批判しました。

そして、榛葉幹事長は「いつの時代もメディアのあり方は変わるが、いつの時代も報道する側は、あり方、姿勢に常に気をつけていかないといけない。今年は地下鉄サリン事件から30年だが、当時鮮明に覚えていますが、松本サリン事件では、第一通報者を犯人扱いする報道があった。メディアに携わる方からすると、悔やんでも悔やみきれない事案だと思いますよ……杉尾さんもメディア人でしたからお分かりになると思うが、きちんとそういったところは気をつけていかないといけない……とりわけ事件報道や政治報道については、よくよく気をつけていく必要があると思います」と述べています。

榛葉幹事長は、松本サリン事件で、第一通報者を犯人扱いする報道があったと指摘していますけれども、これは、1994年に起きた松本サリン事件で奥さんを亡くし、最大の被害者のだった河野義行さんを、捜査当局とマスコミによって、容疑者に仕立てられかけた冤罪事件のことです。

このとき、TBSの「ニュースの森」に河野さんを疑惑の人として呼びつけ、生放送で犯人として決めつけるような質問を浴びせたキャスターが、杉尾秀哉参院議員でした。

榛葉幹事長は皮肉を込める意味で、松本サリン事件を口にしたのかもしれませんけれども、杉尾議員は当時の反省がされてないと批判を浴びても仕方ありません。




4.報道特集のおまゆう


TBSといえば、兵庫県斎藤知事に関する報道で、ネットを中心に批判を浴びていますけれども、3月22日、TBS系報道番組「報道特集」は公式Xで、放送についての応援に感謝するメッセージとともに、番組としての見解をツイートしました。

この日の放送では、兵庫県の斎藤元彦知事に対して、県の第三者委員会がパワハラ10件を認定した問題を取り上げ、斎藤知事の疑惑を追及する百条委員会のメンバーがSNS上で誹謗中傷を受けたことや、委員の1人だった竹内英明元県議が亡くなったことについて、竹内元県議の妻が取材に応じた様子も報じました。

公式Xでは、放送直前に「今日のこの兵庫の特集は、取材にご協力頂いた方の要望などもあり、全編をyoutubeやTVerで公開する予定になっておりません……「放送前に#報道特集がんばれの拡散や、バトンの受け渡し、本当にありがとうございました……一番の願いはもうこれ以上、死者とご遺族に鞭打つ行為はやめて頂きたいということです。もちろん、そのための抗議の手段として、暴力を振るうことには断固として反対します」と、ツイートしました。

そして、竹内元県議の妻のコメントとして「私どもにとりましては、皆様が主人を偲び、思いを寄せてくださることが何よりありがたく心の支えとなっています。社会に絶望し命を絶った主人ですが、残された私どもがただ一筋、希望の光を感じることができるとするならば、使命感をもってその職務を全うしようとする、皆様の思いです。その思いはいつの日か必ずや混乱の世の中を鎮め、希望ある社会を導いてくれることと信じています」とも伝えています。

案の定、このTBSの見解は炎上。「TBSこそ死者やご遺族に鞭打ちかつ利用してるようにしか見えない。」「その通りだ。報道特集は死者に鞭を打つべきではない。安倍晋三元総理にも散々鞭を打ってきた。さらに竹内議員にまで。」「元県民局長もそうだけど、斎藤知事を貶めたいがために自分達でキッカケ作ってるのに何を言ってるんだか。。」「自殺者の墓を掘り返し遺族にあんたたちは知事や立花のせいで可哀想だと欺瞞をし飯のタネにしている放送局。昔からの伝統だわな。お家芸に磨きがかかってきましたね。」など、批判の声が殺到しています。

報道特集の報道が完全に正しくて全てを報じているかというと、もちろんそんなことはありません。

3月22日、日本維新の会所属の門隆志・兵庫県議は自身のX(旧ツイッター)で「報道特集を見た。昨年3月からの出来事は同じものを見ているにも関わらず真反対な意見の対立となっている事をまずご認識いただき、いつもの向山議員(のち迎山志保議員と訂正)や丸尾議員だけでなく私を含め違う立場の議員にも取材して頂ければ違った角度からの見方というものをご理解頂けるかと存じますのでご連絡お待ちしております」と番組の取材を受けていた2議員とは騒動に対するスタンスが違うことを明言し、自分への取材も要求しています。

マスコミの報道すら一方的ではないかと指摘される状況で、SNSのみ情プラ法で規制しようというのは、こちらも一方的に感じてしまいます。

なんとなれば、冒頭で取り上げた、沓澤氏に下された名誉棄損判決のように、SNSでなんらかの投稿があったとして、そのうちの一つに「真実相当性」がない場合、その投稿者の全ての投稿に真実相当性がないとして、他の投稿含めての全削除や、アカBANといった措置をしてしまわないのかとさえ。

情プラ法をやるのであれば、オールドメディアにも同等のものを課すようにしない限り、国民の理解は中々得られないのではないかと思いますね。






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