米に対する日本人の心情

今日はこの話題です。
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1.備蓄米追加放出


3月24日、石破総理は自民党役員会で、米高騰が続いていることについて、「今週にも店頭に備蓄米が並ぶと聞いている。流通の目詰まりが解消し、米価が落ち着くことを期待している。必要ならば、躊躇なく更なる対応を行う」と述べたことを森山幹事長が記者会見で明らかにしました。

米の供給状況については、3月21日に、自民党が開いた農業基本政策委員会で報告されていますけれども、自民党のホームページでは次のように公表されています。
党農業基本政策委員会(委員長・金子恭之衆院議員)は3月21日、コメ政策の推進状況について農林水産省から報告を受けました。米価の高止まりが続く中、金子委員長は「コメの生産・流通について実態を把握し、対策を打つことが重要」と述べ、党として適正な米価となるよう、コメの安定的な生産・販売に取り組むことを強調しました。

令和6年産米は農林水産省の統計に基づく作況指数で算出すると679万2千トンで、同5年産よりも18万2千トンの増加となりました。しかしながら同6年産米の1月末時点の集荷数量は対前年度比23万トン少なく、2月の相対取引価格は全銘柄平均で60キロ当たり2万6485円を記録し、平成2年以降最も高い価格となっています。

農林水産省では生産者や小規模の集荷業者が在庫を保有し、積み増していると推察されることから、政府備蓄米21万トンを事後に買い戻すことを条件に市場への売り渡しを実施。前例のない対応を行い、コメの円滑な供給に努めています。
作況指数では去年より採れているにも関わらず、供給量は減っていることで、生産者や小規模の集荷業者がため込んでいると見ているようです。

ネットでは、岩屋毅外相が22日の「日中ハイレベル経済対話」で中国に精米の輸入拡大を求めたことについて、「中国に売る前に日本人が食べられるようにすべきだ」、「国民はコメが高くなったと嘆いているのに、まだ痛めつけるつもりのようです」などと批判の声が上がっていますけれども、当然の声といえます。

そんな中、同じく22日に総務省が発表した、家計調査の分析で2024年の2人以上世帯のコメ購入量は60.20キロで、前年から3.55キロ(6.3%)増加したことが明らかになりました。月別の購入量を比較すると、24年7月まではおおむね前年並みで推移していたのが、店頭で品不足にが始まった8月に前年同月比29%増と大幅に伸びています。

購入量がプラスとなったのは新型コロナ流行で巣篭り需要のあった20年以来4年ぶりのことで、流通関係者は「米価が上がりすぎれば消費者のコメ離れが進む」と懸念。

ニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員は、価格が上がっても購入量が増えた背景に「品不足と価格上昇への消費者の不安感があるのではないか」と分析しています。




2.米に対する日本人の心情


今のところ、政府が備蓄米を放出すると発表しても、米価は高止まりのままで推移しています。

これについて、元東京大学大学院農学生命科学研究科准教授で、ベトナム・ビングループ Martial Research & Management 主席経済顧問の川島博之氏は、3月17日付のJBPressへの寄稿記事「米価高騰に鈍感な石破内閣が残念なほど理解していない「日本人の心情」備蓄米放出でも沈静化しない「令和の米騒動」、コメ不足に敏感に反応する日本人」で次のように述べています。
【前略】

十分な供給があるのに米が店頭で不足している理由について、次のような情報が飛び回っている。(1)流通業者の買い占め、(2)農家の売り惜しみ、(3)農協(JA)が故意に流通量を減らしている、(4)中国人やベトナム人が転売目的で買い占めている、などである。これらは部分的には事実であろうが、騒動の主因ではない。

推理小説ではないが、真犯人は全国民である。多くの場合、食糧高騰の原因は国民がつくる。米が不足しているとの噂が流れると、人々は心配になって通常より多く買う。いつもは1袋買っていた人が2袋、3袋と買う。米は備蓄が可能だからこのような現象が起きる。

これは第一次石油ショック(1973年)の際にトイレットペーパーがなくなった現象にそっくりである。政府が紙の節約を要請するとトイレットペーパーがなくなるとの噂が流れて、多くの人が買い占めに走った。その結果、店頭からトイレットペーパーが消えた。

だがトイレットペーパーは十分に生産されており、騒動が一段落すると多くの家庭に大量のトイレットペーパーが残ることになった。

米は日本人の主食であり、その不足は生命に関わる。そのため人々はコメ不足に敏感に反応する。それは江戸時代の「打ち壊し」や1918(大正7)年の米騒動の原因になった。

1918年の米騒動は、米価が高騰した際に富山県の漁村の住民が、米の県外流出を阻止しようと立ち上がったことが発端とされる。米どころである県内の米が関西や関東に流出することを阻止しようとしたのだ。運動の中心に主婦が多かったことから「越中女房一揆」などと報道されて、それを契機に民衆が米問屋を襲うなど、江戸時代の「打ち壊し」さながらの現象が全国に広がった。政府は警察力で騒動を鎮圧したが、これを受けて時の寺内正毅(てらうち・まさたけ)内閣が瓦解した。寺内はこの心労もあってか翌年に死去している。

1918年は凶作ではなかった。米高騰の原因は第一次世界大戦に伴うインフレであった。1914年に戦争が始まると日本は英仏側に立って参戦したが、戦場から遠いこともあって武器などの供給基地の役割を担い、産業界は好景気に沸いた。それがインフレを招いた。

今回の米価高騰も1918年によく似ている。凶作が原因ではない。真の原因は経済の基調が、バブル崩壊以来続いていたデフレからインフレに変わったことにある。

【中略】

結局のところ、米価格は厳格に管理するよりも市場によって調節することが最も効率が良い。ただ忘れてはいけないのは、日本人が米に対して特殊な感情を抱いていることだ。平成になって細川護熙内閣の時に米を輸入することになったが、それは大きな政治問題になった。日本人はトウモロコシの自給率には無頓着だが、米の自給率には敏感に反応する。

しかし石破茂内閣は米価高騰に対して鈍感である。それは、石破首相も森山裕幹事長も選挙区が地方であることと無縁ではないだろう。両人は農水大臣経験者であり農水族である。JAなど農業団体と深く関係しており、米価高騰は両人にとって好ましい。そのために米価高騰に対して、積極的な対策を打ち出さないのだと思われる。対策を打ち出すことで米価高騰が今以上に話題になり、それがJAの在り方などに波及することを恐れているのかもしれない。

「打ち壊し」が起きた江戸時代や米騒動があった大正時代に比べて現代は格段に豊かになり、米の以外の食品も容易に入手できることから、米価高騰は日本人の生活にとって致命的に大きな問題ではない。だが、日本人の遺伝子は米不足に敏感である。そのために、いくら米は足りているとの報道があっても高騰が続き、スーパーの店頭で品薄状態が続く。

石破内閣がなんらかの手を打つとしたら、もはや食管法の時代ではないが、ガソリン価格の高騰に対して岸田内閣が打ち出した補助金のような対応は可能であろう。補助金行政は好ましくないが、政権の人気取りとしては有効である。

東條内閣は石破内閣より米不足に対して感度が良かった。

食管法は1942年2月に制定された。太平洋戦争は1941年12月に始まったが、食管法が制定された時点において日本軍は東南アジアで快進撃を続けていた。日本の南方進出は石油などの資源確保が目的であったが、当時から東南アジアでは米が大量に生産されており、そこを確保すれば米不足も解決できると考えられていた。

それにもかかわらず東條内閣は食管法を制定した。それは寺内内閣が倒れた記憶から、主婦層が米価に関して敏感であることをよく理解していたからだろう。

石破内閣は東條内閣より日本人の心情への理解が足らないようだ。石破内閣がいつまで続くか分からないが、この7月には参議院選挙がある。その選挙で国民が米高騰に無関心だった自民党にどのような審判を下すか見物である。
川島氏は、米不足、米価高騰の犯人は、米に敏感な日本国民全てにあるというのですね。

前述した、総務省の家計調査で、米不足が公になってから、逆に米の購入量が増えたという結果をみれば、川島氏の指摘も的外れとはいえません。


3.転売ヤーの誤算


では、ひところ騒がれた、米の転売ヤー達は今、どうなっているのか。

3月3日、NEWSポストセブンは、「今も続く「令和の米騒動」一攫千金を狙って買い込んだ”転売ヤー”たちの嘆き「SNSやフリマアプリでもほとんど売れない」」という記事で、その実態を報じています。

件の記事を引用すると次の通りです。
全国のスーパーで販売されている米の平均価格が5kgあたり3892円(2月16日までの一週間、農林水産省調べ)まで上昇した。一年前は5kgあたり約2000円で、対前年同期比較で90%上昇した計算で、日本人の主食である「米」が足りず、価格が高止まりしている。1918年米騒動の前には買い占めなどの米穀投機が発生し、それがさらに庶民の怒りを買った。「令和の米騒動」でも投機目的の買い占めが発生していると言われるが、買われた米はどんなもので、どこに保管されているのか。ライターの宮添優氏がレポートする。

「あなたたちが私たちを悪いというから、商品がマッタク売れないよ!どうするの?」

筆者の取材に対し、こうまくし立ててきたのは、群馬県南部在住のベトナム国籍の男性(40代)。男性が同郷の仲間数人と暮らす平屋の賃貸住宅の玄関脇には、群馬県産や茨城県産と書かれた米袋が何十と積み上がっている。しかし、袋に記載されるはずの生産地などの情報欄は空欄のまま。風湯で肌寒いとはいえ、居室から流れてくる暖房の空気も、米袋を直撃しているような状況だ。

これらの米は昨年秋から今年にかけて、仲間うちで日本国内の農家やブローカーを訪ねて買い集めた「新米(の玄米)」なのだという。玄関に積み上げられた米袋を見て「米の管理は適切なのか」と質問したところ、男性は血相を変えたのだ。

「うちのお米は怪しくない、ちゃんとしていますよ。日本のお米。あなたが来て、悪く言うから売れない!」(ベトナム人の男性)

米価が急上昇し「令和の米騒動」という言葉が定着しつつある昨今。農業に関わる実績が全くない「ブローカー」などが買い占めていることが、今般の米不足の原因の一つ、と指摘する声も相次いでいる。一方、冒頭で紹介した事例を含め、実際に「米を貯め込んでいる」という複数の日本国内の事業者、日本在住の外国人に取材すると「高額転売」を狙った彼らの目論見は、実はことごとく外れている事もわかる。前出ベトナム人男性から「米の営業」を受けたという、埼玉県在住の飲食店経営の男性(60代)が振り返る。

「今年になって急に店に来て”お米あります、買ってくれ”とチラシを置いていった。そんなもん、いくら米が足りなくても、怪しくて買うわけがないでしょう(笑)。というか、ほとんどの飲食店は米屋や食料品の卸業者に年間を通してお願いをしているわけ。だから、多少の値上がりはあっても、米が入ってこないということはないし、訳のわからない業者に頼むわけがない。こちらも客商売だし、何より食べ物ですよ。食べ物を、怪しいところから買おうなんて、現代の日本人は思わないでしょう」(飲食店経営の男性)

埼玉県内で雑貨輸入業を営む中国籍の女性(50代)も昨年秋頃、ビジネス仲間の中国人や東南アジア人らと一緒に金を出し合い、大量の「新米」を購入した。現在も県内の貸倉庫に「保管」していると話すが、トラブルになっていると打ち明ける。

「知らない業者から”米を安く売らないと(米を貯め込んでいると)日本人に言いつける”なんて、仲間内からの脅迫みたいなこともある。しかも、高値で売れると思っていたのに、SNSやアプリ(フリマアプリ)を使ってもほとんど売れない」(中国籍の女性)

女性は2024年から2025年にかけて、本職の雑貨輸入業で付き合いがある同郷出身の経営者から「米を買わないか」と何度も打診された。また、その際に「米は値上がりしているから必ず儲かる」とも念押しされたという。しかし、手元に届いた大量の米は、それぞれ産地名の記載もなく、袋もバラバラの米だった。

「料理店をやっている(同胞の)友達に見せても、これは買えない、レベルの低い米だと笑われました。自分たちで食べようにも確かに美味しくない。保管も出来ないし、なんとかして売りたい」(中国籍の女性)

日本人の食事には絶対に欠かせない「米」だから、足りなくなれば高くても日本人は「買う」に違いない、そんな思惑が米を買い占める外国人たちにはあったのかもしれない。しかし、欠かせないものだからこそ、それは絶対的に安心できるものでなければならない、という日本人の感覚までは理解できなかったのではないか。

【以下略】
このように、全然売れないようなのですね。これも先述した川島氏が指摘するように米に敏感な「日本人の心情」の為せる業なのではないかと思います。


4.足りないのは安すぎる米


冒頭で取り上げたとおり、石破総理は米の流通で目詰まりを起こしていると述べていますけれども、ではどこで目詰まりが起こっているのか。

昨年9月、NEWSポストセブンは取材を基に、不足しているのは「安すぎる米」だとリポートしています。

件の記事から、取材先の声をいくつか拾うと次の通りです。
都内米穀店店主:
・この通り米がないわけじゃない、米不足じゃなくて『安すぎる米不足』なんですよ。地域にもよりますがね
・すでに新米も入荷し始めています。例年に比べれば減ったのは事実ですが、米をあらそって買い占めるほどじゃないし米騒動なんか起きていない。ただ、いままでの安すぎる米はなかなか手に入らないでしょうね。これまでの一般販売価格の安さ、とくに一部店舗の安さが異常なだけですから
・もう少し高くてもいいくらいですよ。物流コストや燃料費、米農家の負担を考えたらこれまでが異常だったんです。安すぎる米って、誰かが泣いていたから安かっただけですよ。
・一部のスーパーや激安店はスポット買いで安値になったところを大量に買い叩いて客寄せに使っていた。もうしばらくは仕入れ値の安いバイヤーの相手はしないでしょう。さっきも言いましたが米の流通も本当にいろいろなんです。だから安すぎる米が不足しているだけ、と言ったのですが、新米が入ってくれば不足している地域でも徐々に解消されます。もちろん値段は高いかもしれませんが。でも、本来のお米の価格というか、いまでも安いとすら私は思っていますよ
・宣伝ではないのですが、生活の知恵として……みなさんお忙しいでしょうし、量販店でお米を買うのも結構ですが、地元の米穀店ともお付き合いしておいたほうがいいです。少し高いかもしれませんが、主食と考えればね。それに自然のものですから、不作のときは今回以上に不足することだってあるかもしれません。米穀店も普段のお客様を優先しますから困ったときだけ、と言われても売れないことだってあります。それはどんな商売もそうでしょう。もちろんルートは米穀店だけではないので米農家さんと直接とか、ネットでも事前契約はできるはずですから、そういう日ごろの万が一への心がけが大切だと思います」

スーパーの50代店員:
・米は入荷していますが、高くても開店と同時になくなりますね。ほとんどが高齢のお客様です。うちは5キロ2000円とか、それより安い価格でまあ、客寄せにしていた部分もありますから、そういうお米に慣れたお客様には『いま高い』と言われますね
・お客様から米不足だ、大変だとお話いただくこともありますが『そんなことはありません、もうすぐ解消されますよ』と言ってはいるんですけどね。新米も続々入荷しますが安くはできませんね。しばらくは、これまでのような5キロで2000円を切るようなブランド米を出すことはないと思います

食品専門商社のバイヤー:
・外食チェーン、とくに牛丼チェーンに『お前のところが買い占めているんだろう』『そんなに米があるのはおかしい』という意見が届いていると聞く。当たり前の話だが外食チェーンなどの米と一般小売りの米では経路が違う。事前契約で確保しているので米が足りないことはない、というだけだ。大手のほとんどは不作の予想が出た今年すぐ米の追加確保に動いた。それも小売りにまわる米とは別だ。冷静になってほしいと思う

IT系企業の編集者:
・SNSには『大手商社が買い占めて横流ししている』『農協が値段を釣り上げるために米を売り惜しみしている』といったデマが拡散されています。もちろん政府批判と絡めている。意見はさまざまだし自由ですが、憶測に基づくデマはだめでしょう。とくにXはひどい。インプレッション目的でこれでもかと陰謀論を撒き散らしている

北関東の米農家(兼業):
・米を売ってくれという連絡はある
・米を分けてあげたいのは山々だが、いつもの利用者の分もあるから新規は受けつけていない。それに値段を言うと電話を切られる。東京がほとんどだ
・値段を言うと『高い』『負けろ』だ。以前の格安スーパーとか激安ネットショップの感覚で米の値段を考えているのだろうか。こちらも偉そうにしているつもりはないが、新規で電話してくる人たちは態度もよくないように思う
・1年を通して作ってみたが少なかった、というだけだ。自然と共に作るものだから当たり外れはある。ずっと減反政策でただでさえ供給源を絞ってもいた。それでも豊作不作は当たり前の話で、こうなることがあることもみなさん知っていてほしい。それに、こちらの都合かもしれないがいままでが安すぎた。あれでは米農家も減るいっぽうだ

大手ネットニュース記者:
・吉村知事の備蓄米放出要請はまたかと思いました。コロナ禍にうがい薬が効くという会見をして買い占めが起きたのに
・はっきり言ってマクロな意味で『米不足』というほどではない。かなり地域格差、とくに都市部の一般消費者に限られているので政府も大規模な備蓄米の放出はないと考える。放出すれば新米が出回りきったあとに価格暴落の危険性すらある
・それに現場(米農家)のためには、以前までの極端な安すぎる米が出回り、それを消費者が当たり前のように捉える風潮は変えたほうがいい。米は不足していない、むしろ米の価格が値上がりしているというのは現場の今後を考えれば、値上がりでなく適正価格に戻りつつあるだけ、と考えてもいいのでは
記事の著者は、日本ペンクラブ会員の日野百草氏という人ですけれども、日野氏は、「近年、この国は円安と買い負け、金にならない日本に船が寄ってもらえない抜港やコンテナ不足などに苦しんできた。日本の食料自給率はカロリーベースで47%、生産額ベースでも61%、飼料自給率に至っては27%(農林水産省、2023年度)と多くは他国に依存している。それも現場がなんとかしてきただけで限界が迫りつつある。そして現場軽視が拍車をかける。激安であれば誰がどうなろうと、どうでもいいと」指摘しています。


5.米高騰の真犯人


一方、ジャーナリストの浅川芳裕氏は米高騰の犯人は農水省だと一連のツイートで説明しています。

件のツイートは次の通りです。
コメ高騰の真犯人は農水省。作況指数の2年連続ミスで不作を隠し、「消えた21万トン」などと供給不足を誤魔化してきた。時代遅れの収穫量予想が市場を混乱させ、価格高騰を招いた。国民の主食が危機に瀕する中、一切責任を取らない。解決策は農水省の統計部解体と科学的な統計手法導入しかない

農水省の作況調査は8,000圃場を道府県別の無作為抽出で実施。分散が大きい(品種・地域・微気象・技術差)母集団で代表性が低く、異常気象も反映しない。2023・24年ともに不作だが101(平年並み)と過大評価し、農家・コメ業界を混乱させた。統計学的欠陥で、今もなお市場の信頼性を損なった状態 

農水省は層別に水田サンプルを抽出するというが、基準が曖昧で、品種差・地域差を十分補正できていない。また、水田農家の観察眼を反映せず、坪刈り調査に過大に依存する。微気象や生育の変動を捕捉できず、サンプル配分の不均衡で信頼区間が広い。その結果、不作を見逃し、市場からの信頼は失墜

言い換えれば、農水省はバラツキが多い田んぼをきっちりグループ分けせずランダムに選ぶから、収量のバラツキが大きくて予想がアバウトになる。たとえば、多収品種と一般品種、水不足のあった地域となかった地域などのズレが混ざり、平均収量が実態からズレ、どのくらいズレるかわからないまま 

農水省のランダム標本の選び方自体も、統計学上、怪しい。たとえば、コメ生産量日本一の新潟県で370筆に対し、石川県185筆。新潟は石川の5.5倍の面積なのに標本は2倍。農水省にその理由を聞くと「昔からそうしてる」と埒が明かない。新潟予想が外れると全国への影響は多大だが改善しない 

コメ生産量1位の新潟県と2位北海道の統計問題が全国値を歪める。新潟(370筆)と北海道(600筆)は面積比1.07倍なのにサンプル数は1.62倍。分け方が曖昧でサンプルが偏り精度が落ちる。異常気象も補正せず、両地域の収量誤差が増えた場合、広大な面積ゆえ全国値に影響するリスクが極めて高い 

品質差が作況指数に反映されない問題も大きい。たとえば、新潟の2023年作況指数は98だが、猛暑で品質が低下。コシヒカリの一等米比率は5%未満と過去最低で、例年80%から激減。白濁や胴割れが増え、歩留まりが低下し食用米が減少。農水省は品質低下を反映せず、供給量を過大評価した 

現場調査は欠陥だらけ。水田の借地増加で耕作者不明の場合、代替圃場選びが現場に任され、農水省調査の要であるランダム性が損なわれる。計測後、水田農家からの7確認サインが不要なルールで、まともに調査したか疑わしい。適当に選んだ田んぼデータが大量に混入しても、まかり通るリスクが高い

農業評論家の土門剛氏は「農家のサインなしで調査費用を税金から計上するのか」と統計部に問うが一向に返答なし。農水省の作況調査で「空出張」疑惑が浮上。空出張とは実態のない出張で経費を請求する行為。農水省は不正経費や統計不備で追及された過去もあり、調査への不信感は高まるばかり

データの非公開性が信頼を低下。農水省は作況指数のもととなるデータの外部検証を拒み、統計的改善が進まない。アメリカ農務省の場合、データを公開し、民間の専門家検証により、精度向上を促進。競合する民間サービスもあり、国と切磋琢磨する。農水省は閉鎖性が杜撰さを隠し、不信を招く

長年、現場から指摘されるふるい目問題も深刻。農家は1.8~2.0mmのふるいで小粒やくず米を除くが、「平年収穫量」の基準は1.70mmのまま固定され、問題を放置したまま。農家の実態とズレた基準で、収量誤差を助長している。農水省の硬直的な統計により、市場の信頼性は下がるばかり 

平年収穫量は「栽培前に気象や低温・日照不足などの被害を平年並みとみなし、直近30年の実収量から10a当たり収量を予想し、作況指数の基準とする」と定義するが、統計学的に時代遅れ。異常気象が常態化する中、平年並み仮定は非現実的で、実際の収量との間に誤差を生む。仮定と実態が乖離

平年収穫量は検討会委員の口頭意見をもとに、官僚が決める旧態依然の体制で、主観的かつ不透明。技術進歩の反映も定量基準がなく、異常気象の評価も不足。統計学的にデータの客観性や再現性が損なわれ、バイアス混入のリスクが高い。農水省の閉鎖的な手法では政治的な意図で、介入が自由自在 

アメリカの場合、農水省と同様の実測に加え、衛星データ(気象・土壌・葉緑素)、農家報告を統合し、週次更新で生育状況を検証。広大な面積に対し2000サンプルで効率的に予想。層別サンプリングで高い精度を実現。農水省は坪刈り調査依存がゆえ動的要因を反映できず、誤っても原因特定が困難 

アメリカは当年の収量予測だけでなく、線形トレンドモデルで将来の収量トレンドも予測。過去100年の収量データや技術進歩を基に、コメは年約70ポンド/エーカー増、2034/35年度生産量は252百万cwtと推定。日本でも将来のコメ生産量は国民にとって大きな関心事。科学的予測で透明なコメ業界に 

コメの作況調査・改善案①は層別分析の導入。品種・地域で分散を層化し、特に面積に応じサンプル数を割り当て、層内のバラツキも補正する。恣意的なサンプル数の決定を改め、アメリカの手法に倣い効率性と精度を高め、科学的な収穫量予想の基盤を構築。異常気象下でも信頼性の高い推定を可能に

コメの作況調査・改善案②は農家報告の追加。地域別に代表的な農家を抽出し、異常気象や生育状況、直播普及など技術変化や報告を受け、分散の変動要因を補完。アメリカのように実測と連携し、無作為サンプルでの坪刈り調査依存を脱却。①の層別分析と統合し予測の現実性と正確性を向上 

コメの作況調査・改善案③は速報性と透明性。現状の年3回(夏1回・収穫前1回・収穫時1回)公開では少なすぎる。生育の初期から予測を開始し、誤差を修正・更新しながら、データ公開で外部検証を促進。アメリカから生育進捗報告と統計データ公開手法を学び、精度向上と信頼回復につなげる 

コメの作況調査・改善案④は飼料用米混入の防止強化。調査対象外かつ多収品種が多い飼料用米が混入すると、平均が過大となり不作が隠れる。調査前に圃場の用途を厳格に定義し、農地台帳と衛星データ連携で飼料用米圃場を事前除外する仕組みを構築。調査対象を明確化し、統計の信頼性を高める 

コメの作況調査・改善案⑤はふるい目幅と品質基準の改定。平年収穫量の基準を1.70mmから農家の1.8~2.0mmに合わせ、一等米比率や歩留まり低下まで予想に反映させ、目的である食用米供給量を正確に把握。農家やコメ事業者の現場感覚との乖離を減らし、過大・過小評価を防いで信頼性を高める 

コメの作況調査・改善案⑥は品質データを加味した総合的な予測モデルの導入。収穫量(kg/ha)に一等米比率と歩留まり率を乗じた「食用米供給量=収穫量 ×一等米比率 ×歩留まり率」を予測。品質を説明変数に追加し、統計モデルを向上させ、過大評価のバイアスを補正し、供給予測の精度を高める

コメの作況調査・改善案⑦は将来トレンドの予測と公表。アメリカの線形トレンドモデルなどを参考に、過去の収量データや農家の技術進歩を基にして、長期予測を構築し、毎年公表。異常気象や需要変化にも対応し、国民がコメ生産の将来像を把握。持続可能でオープンな農業政策の基盤を築く 

ただ、いくら農家や米業者が誤りを指摘しても、一切認めない“無謬性”体制の農水省には自己改革は期待できない。志ある稲作農家とコメ業者が協業し、科学的な作況指数を構築する時。自ら資金を出し、収穫量予想システムを整え、不足時・過剰時の説明責任を負う。生産者主導で高騰危機を解決せよ

最終的に全ての責任の所在は農水省ではなく、コメ供給者である稲作農家に帰する。コメの量・質・価格、そして将来に対し責任を負い、国民から広く信頼を得る。高騰危機の解決には農家主導でコメの安定供給を果たし、供給責任を全うする他ない。国民から見放されれば、米産業の未来はない 

有益な参考記事:
https://note.com/nbusiness/n/nd51a8f3805c9?magazine_key=m0a66ccf6cf27
https://note.com/nbusiness/n/n667c73232beb?magazine_key=m0a66ccf6cf27
https://note.com/nbusiness/n/n88b17ed905a9?magazine_key=m0a66ccf6cf27
前節まででは、米自体の供給量は足りていて、不足しているのは「安すぎる米」にしか過ぎないと述べましたけれども、浅川氏は、そもそも農水省の統計から間違っているというのですね。

まぁ、これまで農水省が減反政策を進めてきたことは事実ですけれども、それに加えて統計自身が間違っているのが本当であれば、無茶苦茶です。

日本人の米に対する特殊な感情が拍車を掛けている面があるとはいえ、政府含めて国民も「今だけ、金だけ、自分だけ」に陥っていないか、振り返ってみる必要があるのではないかと思いますね。




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