車関税とコメ関税

今日はこの話題です。
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1.ビッグスリーの追加コスト


4月10日、アメリカのミシガン州にある自動車研究センターは、輸入自動車部品および軽自動車への潜在的な関税の影響に関する新たな分析を発表しました。

トランプ大統領は、4月3日に25%の自動車関税を発動しましたけれども、この分析によると、2025年にはアメリカの自動車メーカーのコストが約1080億ドル増加し、業界に大きな財政的圧力がかかると推定しています。

アメリカの3大自動車メーカーをみると、フォード、ゼネラルモーターズ、ステランティスは、この総額のうち約420億ドルを負担することになり、これらのメーカーは輸入部品にかかる追加コストとして、平均で車両1台あたり4911ドルと業界平均の4239ドルを大幅に上回る額を負担することになります。

これが完全輸入車の場合、平均コストは8722ドルに上昇するとのことです。

これにより、ゼネラルモーターズはインディアナ州工場でトラックの生産を増強し、ステランティスはメキシコとカナダの工場で生産を一時停止しました。これらの動きは、米国関連の5つの施設の操業に支障をきたしています。

メキシコやカナダを含む国々からの輸入品に適用されるこの関税は、製造業者が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の基準を満たしている場合、米国産部品の減税を認めるものです。これらの規定にもかかわらず、国際的な部品への依存度が高いサプライチェーン全体により広範な影響が現れている形です。

3大自動車メーカーを代表する米自動車政策評議会は声明で、この調査は「25%の関税が自動車業界に大きなコストを強いることを示している」とし、3社はアメリカの自動車生産拡大という共通の目標を達成するために政権との対話を続けていく意向を表明しています。

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2.いらん!デカい!


これは日本でも同じです。

県内の製造業で、自動車部品の輸出も多く抱える長野県は、知事や経済団体、金融機関などが参加して連絡協議会を立ち上げました。

県によると、県内の製造業の輸出額は自動車用部品や建設機械を中心に1兆1934億円で、このうち、アメリカ向けは全体の20%以上の2633億円と、国・地域別ではトップとなっています。

4月11日、長野県庁では、阿部知事を会長とする連絡協議会の初会合が開かれ、県中小企業団体中央会や県農業協同組合中央会など10の団体から代表者が出席しました。

会議の冒頭、阿部知事が、「長野県の製造業や農産物にとって、海外への輸出は重要で、世界経済との関係性を踏まえた上で、まずは影響をしっかり把握し対応を考えなければならない」と述べました。

このあと会合は非公開で行われたのですけれども、出席者からは「状況が日々変化していて影響はまだよく分からない」といった戸惑いの声が多く聞かれたほか、一部の団体からは「自動車関連で受注量を調整する打診を受けた」などといった報告があったということです。

県産業政策課の渡辺雅道課長は「早急な情報収集と、県や各団体の取り組みを共有し、しっかりと伝えていく」と、アメリカの関税措置について詳細な情報の収集や分析を進め、必要に応じて支援策などを検討するとしています。

また、八十二銀行と長野銀行も事業者向けに資金繰りや経営支援などの相談窓口を設置しています。

トランプ大統領は、日本でアメリカ製の車が売れないのは不公正な税制度や貿易慣行のせいだと繰り返し非難していますけれども、日本は1978年から、自動車輸入に関税を掛けていません。売れないのは単純に馬鹿でかいアメ車が日本の道路事情に合わないだけです。

要は、それをきちんと説明するだけでなく、安倍元総理が心掛けた「常に会い、アップデートし、刷り込んだ瞬間にトランプから指示を出してもらう」というトランプ操縦法を日本が駆使できるかどうかだと思います。





3.日本のコメ関税は700%


無論、トランプ関税の影響は他の品目にも幅広く及んでいます。

トランプ大統領は、4月2日に相互関税の詳細を発表した際、日本が「コメに700%の関税をかけている」と発言しました。

この発言に対して、翌3日、藤拓農林水産相は記者会見で、「理解不能だ……論理的に計算してもそういう数字(700%)は出てこない」と述べ、トランプ大統領が日本は平均で関税を46%課していると主張していることに関しては「全く根拠が分からない。日米は友好な関係を築いてきた。計算式や算出基準をしっかり説明してもらわないと分析のしようがない」と語っています。

4月8日、江藤農水相は記者会見で、「先ほど、アメリカ向け輸出の影響の分析をするということでしたが、先週までは、アメリカからの輸入については、輸入枠拡大や関税の見直しなどは、今のところ考えていないということでしたが、現時点でもそのスタンスに変わりはありませんか」との問いに対しても 「変わりはありません」と一言だけ答えています。

日本の米輸入はいま、大きく2種類の方法が採られています。一つは国家貿易としての輸入で、もう一つは民間貿易での輸入です。

国家貿易とは、政府が特定の農産物を輸出入することで、日本では米と麦がその代表格となっています。

そのうち米は年間約77万トンと定められています。これは、1986年から1994年にかけて行われた多角的貿易交渉「ガット・ウルグアイ・ラウンド」で「最低限の輸入の機会を提供する」として決まったもので、1995年以降、この仕組みが30年間継続しています。

この最低限輸入する米は「ミニマム・アクセス米」とも呼ばれ、アメリカやタイ、中国から輸入しています。

輸入される米の多くは、加工用や飼料用に回され、主食向けはこのうち年10万トンという枠があります。日本人の米の消費量が年間700万トンと比較すると、わずか1.4%ほどで微々たるものです。

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民間貿易は、商社などが国に関税を支払って行う輸入で、その量は記録が残る2019年度以降、2020年度の426トンが最多で、例年200~400トン程度だったのですけれども、2024年度は昨年12月末時点で468トンと過去最多を更新しています。

現在、米の関税額は「ミニマム・アクセス米」の枠内であれば無税なのですけれども、それを超える分は1キログラムあたり341円と比較的高額になっています。これが日本の米市場を閉鎖的にしてきたと言われて来ました。

2000年からWTOで行われた農業交渉「ドーハ・ラウンド」の交渉過程で、日本政府は米の関税を778%と説明したことがあります。これは、当時のコメ国際相場を勘案して算出したものです。

その計算は単純で、2004年の枠組み合意時における輸入米の価格が1キロ当たり43.8円だったことから、これを関税率に換算(341円÷43.8円=7.78=778%)しただけに過ぎません。

どうもこの778%が一人歩きしてしまっていて、トランプ大統領はこの数字を丸めて700%と言ったのではないかという推測もあるようです。

もちろん、海外の米価格も国によって様々で、品種やその年によっても大きく違いますから、一概に700%というのは乱暴ですけれども、778%という数字を出してしまった以上、それは「時価」だ、と速やかに反論してしかるべきではないかと思います。

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4.米農政の根本的見直し


4月10日、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏は、ダイヤモンドオンライン紙に「トランプ相互関税に日本は反論すべきだが、「コメ政策の根本的見直し」が大前提」という寄稿記事で、日本の米政策を根本から見直すべきだと主張しています。

件の記事を一部引用すると次の通りです。
【前略】

日本に対する24%という相互関税税率がどういった根拠に基づいたものなのか、日本政府はまずは24%の根拠を精査し、そこに問題があれば、アメリカ政府に指摘し再計算を求める必要がある。

以上は最低限必要とされる対応だが、日本政府はさらに、相互関税は、第2次大戦後の世界経済の拡大を支えた自由貿易に対する重大な挑戦であること、関税が課される国の経済活動に深刻な影響を与えるだけでなく、関税負担をアメリカの消費者が負担することになるため、アメリカでも物価上昇など深刻な負の影響が生じること、その半面で生産活動のアメリカへの復帰は期待できないこと、などを正面から指摘し、その撤回を要求する必要がある。

WTOへの提訴やEUやカナダとの共同戦線の形成などを行うことも必要だ。

ただし、正攻法で反論するには重要な前提条件がある。

その前提条件は、アメリカから批判されるような関税障壁を日本が設けていないことだ。しかし、この点で日本は大きな問題を抱えている。

コメの関税率が著しく高いことだ。

相互関税の実施前から、ホワイトハウスのレビット報道官は、「コメに対する日本の関税率は700%」と、繰り返し主張していた。「700%」という数字はだいぶ昔のもので、誤りだが、それでも直近の実質関税率は400%近くとされており、著しく高税率であることは間違いない。

だから、トランプ政権が相互関税に関連して言っていることの中には日本に対する正しい指摘も含まれている。

現在、国内で生産されるコメは登録さえすれば誰もが自由に販売先を決めて、需給に応じて市場価格で取引がされている。だが輸入については、日本は、年間約77万トンの輸入枠を設けてミニマムアクセスとして無関税で輸入することと引き換えに、この枠以外は高関税を課している。

ミニマムアクセス分は政府が管理し、主に加工用や援助用に、一部が主食用や飼料用に使われ在庫に回されている。

ミニマムアクセス以外については、高率の関税によって国内市場を国際市場から遮断している状況だ。そして農水省が備蓄米を通じて価格を管理する。

備蓄米とは、政府が凶作や不作時に備えてコメを買い入れて保管し、需要に応じて放出するものだ。毎年約20万トンずつ、5年分を全国の倉庫に保管する。5年間利用がなかった場合には家畜の餌として販売する。

しかしこのやり方は、「令和の米騒動」といわれる昨年夏以降のコメ不足・価格高騰で、その本質を露呈した。夏の終わりごろからコメ不足が顕在化し、価格も高騰した。それにもかかわらず政府備蓄米が大量に存在するという、奇妙な事態が起きたのだ。

コメ不足になったら政府が備蓄米を放出すればよいだろうと、多くの人が考えた。備蓄米とは、まさにそのためにこそ存在しているはずのものだからだ。そして、なぜ備蓄米を放出しないのかとの批判が強まった。

ところが、農水省はこれを認めなかった。

理由は、備蓄米は緊急の事態に対応するためのもので、昨年夏のような状況では、その要件を満たさないということだった。秋になれば24年産米の新米が出て来るので、価格は落ち着く。だからコメ不足ではないという判断だ。

多くの人は、備蓄米とは、不作などで供給が減ってしまった場合に価格の高騰を避けるためのものだと考えていた。しかし、その実態は全く逆であり、一定量のコメをマーケットから外してしまうことによって供給を減らし、価格を高値に維持するための仕組みだったのだ。

農水省が備蓄米の放出をしなかったのは、価格が下落することを恐れたからだと考えられる。

コメ価格は高騰。23年1月に5kg当たり約2030円だったコメの価格は、24年1月には約2170円、12月には約3680円になり、そして25年2月上旬では約3829円まで上がった。

これが、消費者物価を引き上げる大きな要因となり、家計は圧迫された。

そこで、25年3月になって農水省は備蓄米の放出を始めた。

しかし、価格は下がらなかった。その原因として、流通段階で「コメが消えた」と言われた。卸売り段階で、値上がり待ちの投機的な保有が増えたのだ。こうなったのは当然だ。何より放出の規模が小さい。3月に2回行なわれた備蓄米の放出量は21万トンだが、これは24年産の収穫量679万トンの3.1%にすぎない。

なお、4月1日に、農水省は「投機的な中小業者が売り渋っている」との説明を撤回し、「消費者や流通業者が、先々を心配して少しずつ在庫を増やしたのが原因」との説明に転換したことが報じられている。

政府は9日、急きょ、4月から7月まで毎月、備蓄米を放出することを表明した。

以上で見たように、日本のコメの市場は、著しくゆがんだものになっており、海外の生産者に対する関税障壁だけでなく、日本の消費者にも多大の負担を強いることになっている。

そうかと言って、生産者がコメの高値で潤っているわけでもない。だから、生産者も現在の状況に不満を抱いている。結局、日本のコメ政策は破綻しているのだ。

政府は、コメの需要が減り続けてきたなかで、コメの市場価格を維持するために、コメの生産量を制限する「減反政策」を1971年から本格的に始め、2018年まで続けた。

いまは、コメの生産量は民間が自主的に決めて、価格は市場で決まっているというのが農水省の公式見解だ。だが実際には都道府県ごとに生産目標量が決定され、一方、水田でコメ以外の作物を作れば補助金がもらえるようにして、大きく言えば農水省が事実上、生産量をコントロールしている。

この結果、コメの価格は上昇した。しかし米作の大規模化などは十分に進まず、労働生産性が上がらないままの米作から脱却できないでいる。

この機会に根本から見直す必要がある。

生産性が高まって生産量が国内需要を超えれば、輸出すればよい。逆に国内で不足すれば、輸入すればよい。そうしたシンプルなメカニズムにすべきだ。農水省が国内で需給を調整し、価格をコントロールしようとするから失敗しているのだ。
確かに、昨今の米不足騒動と米価格高騰は、国民に政府の米政策に疑問を抱かせる切っ掛けになっていることは否めません。車は輸入関税ゼロで何も問題ないのに、米となると大問題になる。これは政府の失政だと言わざるを得ません。

トランプ関税を機に、日本は米農政を抜本的に見直すべきではないかと思いますね。




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