

1.習近平のベトナム訪問
4月14日、中国の習近平国家主席ベトナムを訪問しました。
習主席はベトナム共産党のトー・ラム書記長との会談で、アメリカのトランプ政権による相互関税を念頭に、「両国は一方的ないじめに共に反対すべきだ……世界の自由貿易システムやサプライチェーンの安定を守る必要がある」とし、協力強化を呼びかけました。
そのうえで「中国の巨大市場は、ベトナムに対し常に開かれている」と述べ中国との連携強化のメリットを強調しました。これに対しトー・ラム書記長は「中国との関係発展はベトナムにとって戦略的選択で最優先事項だ……二国間の協力を向上させ経済や貿易分野などで成果を生み出すことを期待する……多国間主義や国際貿易ルールを守ることを中国と共に望む」と応じました。
習主席のベトナム訪問はおととし12月以来で、中国外務省によると、習主席は訪問にあわせて談話を発表し、「両国は、互いに成果を挙げ、ともに発展していて、グローバル・サウスの国々の団結と協力の意味を体現している……中国は周辺国との外交政策の継続性と安定性を維持し、親しみや誠実さ、互恵、そして包容の理念を堅持する。周辺国との友好協力を深化させ、ともにアジアの近代化プロセスを推進していく……貿易戦争や関税戦争に勝者はなく、保護主義に出口はない。多国間の貿易体制を断固して守り、世界的な産業チェーンとサプライチェーンの安定を保ち、開かれた協力的な国際環境を維持していかなければならない……中国とベトナムの運命共同体の建設の新たな青写真を描くことを期待している」と関係強化を呼びかけました。
そして、両国はサプライチェーンや鉄道をはじめ、多くの分野での協力協定に調印。中国とベトナムの国営メディアは45件の協定が締結されたと報じています。
ベトナムのトー・ラム書記長は、この日、国営メディアで防衛、安全保障、鉄道を中心としたインフラ分野での協力拡大を望むと表明したのですけれども、協定の内容は公表されていません。
習主席はハノイに2日間滞在した後、15~18日にかけてマレーシアとカンボジアを訪問するとのことです。
2.中国のレアアース輸出規制
米中貿易戦争の中、中国は関税以外で反撃しています。
4月4日、中国政府の商務省と海関総署(税関)は、レアアースのうち中・重希土類に分類される7種の元素を輸出規制の対象に加えると発表し、即日実施しています。
対象となるレアアースはサマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの金属、合金、化合物、混合物などで、所管当局の許可を得なければ輸出できなくなりました。無論、トランプ関税に対する報復措置です。
中国商務省の報道官は声明で「わが国は法律に基づいて対象物資の輸出規制を実施する。その目的は国家安全保障および国益保護を強化し、軍事転用が可能な物資の拡散を防ぐ国際的義務を果たすことにある」と述べています。
中国のあるレアアース・トレーダーは「顧客から船舶がいつ中国を出港できるのかを聞かれた際、60日後程度と考えられると答えたが、実際にはそれより長くなるかもしれない」と話しています。
レアアースは民生用の電子機器や高性能磁石に広く用いられる一方、軍事転用が可能なデュアルユース(軍民両用)物資でもあり、特に中・重希土類は、弾道ミサイルを追跡する人工衛星の性能確保に欠かせないとされています。
アメリカ地質調査所(USGS)のデータによれば、中国は2024年に27万トンのレアアースを生産し、世界全体の生産量の約7割を占めるとのことです。
この措置に、4月14日、ホワイトハウス国家経済会議(NEC)のハセット委員長は記者らに対し、「レアアース制限措置と関連したあらゆるオプションをとても慎重に検討している」とコメントしています。
3.アメリカが中国に要求する3つのポイント
このような中国の動きに対し、ジャーナリストの須田慎一郎氏は自身の動画で次のように解説しています。
・トランプ関税が新たな局面を迎えた須田氏によると、トランプ関税に対し、中国のアメリカvs世界という構図を作り出すという基本戦略を描いたものの、今のところうまくいっておらず、トランプ政権と交渉するにしても、報復するにしても苦境に陥ることになり焦っているというのですね。
・中国は今、想定外というかま思惑が狂ってきたということを受けてですね焦りまくっている
・アメリカのトランプ関税の発動が90日間延期された
・ただし、中国を除いて他の国々に関して90日間適用延期になった
・では唯一猶予が与えられてない中国と、猶予が与えられた日本以下の国々にはどう違いがあるのか
・アメリカとの交渉の意欲を示して、なおかつ報復措置を取っていない国々に関して90日間の猶予が与えられた
・報復措置を取った中国はアメリカの逆鱗に触れて、124%というですねもう笑うしかないようなえ高率の関税が適用された
・中国の基本的戦略は、アメリカvs世界という構図を作り出そうとした
・トランプ大統領率いるアメリカは世界の無法者だという位置づけをして、それに立ち向かう正義の味方の中国という構図を作り出してアメリカvs世界、その世界のリーダーである中国という形に持っていこうとした
・ところが周りを見回してみると中国以外の国々はアメリカとの交渉に乗り出し、中国は1人取り残された形になってしまった
・中国サイドから入ってくる情報によると、今、習近平国家主席周辺は焦りに焦りまくってる
・しかし、交渉に乗り出したくても中国は簡単に交渉に乗り出せない
・アメリカの大元の狙いは、中国がこれまで好き勝ってやってきた貿易、サービスを辞めさせたい、改善させたいというのがある
・アメリカの国務省サイドに取材をすると、大きく3つのポイントがある。
・これは、中国が交渉してきた時にアメリカが中国側に要求するポイントになる
・まず1つ目が、これが1番重要なポイントだが中国の輸出製品、輸出産業というのは中国政府から巨額の補助金を得ている
・結果、非常に安い価格で製品を作れるような体制になっている。
・これまでは、中国が高度経済成長というか不動産開発に乗っかって、国内のマーケットで十分に吸収できるような状況だった
・今、中国は不動産開発バブルが崩壊して多額の不良債権がある。それは金融機関だけではなくて地方政府にドーンと詰みあがっている
・中国で今深刻なリセッション状態に入ってきている
・そういった過剰生産になったものがどんどん海外向け、海外市場へ輸出されている状況にある
・国内の成長がないから海外に輸出することによってリカバリーしようという動きが中国政府共産党にはある
・アメリカはその構造そのものが問題なんだと認識している
・中国共産党政府に対してそんな凶悪な補助金をするんだったら我々は関税かけるぞという理屈。
・そして2点目が、中国の13億8000万人の人口を背景に非常に安価な安い労働力が提供できる。つまり世界の工場としての中国を世界各国
の企業に対してのセールスポイントにして、中国国内に生産拠点を移すように促してきた
・中国がどんどん経済的に成長してくれば、13億8000万人自体が巨大な消費マーケットになる
・中国に生産拠点を置いて、中国と関係を深めていくことによってその巨大なマーケットを手中に納めることができるんだよというのが中国のセールスポイントだった。
・それに伴って、生産拠点を移すにあたって強制的な技術移転。先端技術、最新の技術をですねどんどん持ち込んでその技術を共有しなさいと、中国国内での生産はさせてあげないと先段技術の移転を要求していた。
・結果的に各国のメーカーはどんどんどんどん中国サイドに技術が吸収されていく状況になってしまった
・3つ目のポイントとしてルールが成立してない
・不当な政府や共産党の介入が外国企業に対して行われていてですね公平に扱われない。外国企業は中国系の企業や政府系企業と違って不当に差別されている
・これを西側先進国のようなきちんとルールに基づいた形の中でやるように中国に強制的に促していく
・これらがアメリカの基本戦略
・中国が2001年にWTOに加盟し以降、こういったことが要求されても全く実現実行しないためアメリカの堪忍袋の緒を切れた。何もトランプ政権だけに限った話ではない
・ただ、これに対して中国側が交渉のねテーブルに乗っかることができるのかというとできない
・なぜならばこれこそが近年中国が経済成長をしてきた限動力だから。
・これを改善してしまうと中国の開発戦略が全否定されることになる
・アメリカとの交渉に乗り出して、アメリカに譲歩するということは、今後経済成長が実現できないことになる
・あるいは、その抜け穴を探す、または違った新たなやり口を探すっていうことがあるかもしれないが、これも基本的にはこれまでの中国の成長戦略を全否定することになる。
・だからアメリカとの交渉に乗り出すことはできない
・したがって、中国はアメリカに挑まれたこの経済全面戦争に乗かっていかざる得ないところに追い込まれている
・だから、アメリカvs世界という構図をつくって中国有利な状況に持っていこうとしたところ、蓋を開けてみたら中国は孤立してたということが分かった。
・ですから日本のメーカーも考え直したほうがいい
・どっちに転んでも中国にとって地獄を見ることになります
・このままアメリカとの対決を強めていけばどんどんどんどん中国経済は失速していく
・今慌てて内需に転換しようとしているけどももう時すでに恐しですよ
・しかもバブル崩壊して内需がですね非常に今弱い状況で推移してますから、内需型の経済に転換するというのもスムーズに進まない
・その一方で、アメリカとの交渉に乗り出すね有和策に乗り出しても、結果的に中国の開発戦略をですね全否定されることになるからここも地獄を見る
・これこそがアメリカの思う壺だったんではないか。アメリカは非常に着々と精密に精緻に中国を追い込んでいく戦略を描き、その罠にまんまと嵌ってしまった中国という構図
・今後中国がどういう風に動くのか習近平国会主席はどう動くのかというところが見所になってきた
この文脈からみると、冒頭で述べた習近平主席のベトナムとマレーシア、カンボジア訪問はアメリカvs世界にできずとも、アメリカvs中越+マレーシア、カンボジアの構図構築の試みと見ることができますし、レアアース輸出規制は関税以外での報復措置であると考えると、すぐにトランプ政権と交渉する気はなさそうです。
4.日中友好議連
そんな中、日本は怪しい動きを見せています。
4月2日、自民党の森山幹事長が会長を務める超党派の日中友好議連は今月27〜29日に中国を訪問すると発表しました。議連の訪中は2024年8月以来で、会長の森山幹事長や、事務局長の小渕優子自民党組織運動本部長ら国会議員15人が参加する予定とのことです。
森山会長は3月に来日中の王毅共産党政治局員兼外相と都内で会談し、その場で4月に訪中する意向を伝えていました。
日中友好議連は、この訪中で、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に伴う日本産水産物の輸入規制撤廃など課題解決に向けて働きかけを行うとしています。
案の定、ネットでは「このトランプ政権下で与野党問わずの中国詣。阿呆か」とか「日本は何方に付くんだと問われて居るのに日中韓外相会議だの日中友好議連会議だのトランプ氏の感情を逆撫でし続け相互関税を突き付けられて慌ててる?アホとしか言いようが無い」とか非難の声が集まっています。
日本保守党の島田洋一議員は「首相、外相、防衛相が北に宥和的な「日朝議連」の活動的メンバー。
“内閣の要”官房長官と“与党の要”自民党幹事長が、アメリカが中国共産党の対日ロビー窓口と見なす「日中友好議連」の前と現の会長。
これで、トランプ政権に信用してくれと言う方が無理だろう。」とツイートしていますけれども、全くその通りです。
トランプ政権との関税交渉も相当厳しいものになる可能性が考えられます。
先日、トランプ大統領は相互関税の発動を90日延期しましたけれども、これも見方によっては、各国がアメリカと中国のどちらにつくのか、あるいは両天秤なのかを見ている期間だといえなくもありません。
もし、トランプ政権が、石破政権を"親中"と見限ってしまえば、何を仕掛けてくるか分かりません。90日後といえば、参院選直前ですからね。なんとなれば石破総理や閣僚のスキャンダルが明るみになることだってないとはいえません。
日本は結構際どい状況にあると自覚を強くもったほうがいいのではないかと思いますね。
首相、外相、防衛相が北に宥和的な「日朝議連」の活動的メンバー。
— 島田洋一(Shimada Yoichi) (@ProfShimada) January 23, 2025
“内閣の要”官房長官と“与党の要”自民党幹事長が、アメリカが中国共産党の対日ロビー窓口と見なす「日中友好議連」の前と現の会長。
これで、トランプ政権に信用してくれと言う方が無理だろう。
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