日米関税交渉始まる

今日はこの話題です。
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1.日米関税交渉


4月17日、アメリカ・ワシントンを訪れている赤澤経済再生担当相は、トランプ関税交渉に臨みました。

赤澤担当相は、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談したのに続き、ベッセント財務長官、アメリカ通商代表部のグリア代表との閣僚交渉を行いました。

トランプ大統領との会談は大統領執務室でおよそ50分間、トランプ大統領と赤澤担当相が向かい合う形で行われました。2人に加えてアメリカ側からはベッセント財務長官、ラトニック商務長官、アメリカ通商代表部のグリア代表が、日本側からは外務省の経済局長、経済産業省の通商政策局長、それに財務省の国際部門トップの財務官がそれぞれ同席しました。

赤澤担当相は、日米双方の経済が強くなるような包括的な合意を、可能なかぎり早期に実現したいという石破総理大臣のメッセージを伝えたのに対し、トランプ大統領は、国際経済の中でアメリカが置かれている状況に関する認識や関税措置について説明し、日本との協議が最優先だという考えを示したとのことです。

続く閣僚との交渉で、赤澤大臣は自動車や鉄鋼、10%の「相互関税」などの一連の関税措置は、今後の日本からの投資やアメリカでの雇用への影響を踏まえれば、極めて遺憾だとした上で、措置を見直すよう強く求めました。

そして、双方は「率直かつ建設的な姿勢で交渉に臨み、可能な限り早期に合意し、首脳間で発表できるよう目指すこと」「次回の交渉を今月中に実施すべく日程調整をすること」「閣僚レベルに加え、事務レベルでの交渉も継続すること」で一致しました。

赤澤担当相は記者団に対し「トランプ大統領が会ってくれたことは大変ありがたいことだ。トランプ大統領が『これをやるのだ』というようなことを、強く述べたことはまったくなく『日本が協議の最優先だ』とのことだった。今回の協議も踏まえつつ、引き続き政府一丸となって最優先かつ全力で取り組んでいきたい」と述べています。

政府関係者によると、今回の協議は当初、アメリカ財務省で行われる予定だったのが、急遽トランプ大統領も参加する意向を示したことで、トランプ大統領と赤澤担当相との会談が設定され、会場もホワイトハウスに変更されたということです。


2.炭鉱のカナリア


今回の会談について、ホワイトハウス関係者は「合意が近くなければトランプ氏は出席しなかった」としていて、トランプ大統領が「最優先」とした日本との早期の交渉合意を目指すことを確認した形です。

トランプ大統領との会談後の閣僚会合では、1時間15分にわたってお互いの要求について協議。その中身について赤澤担当相は「コメントは差し控えたい」としたものの外務省関係者は「トランプ大統領本人から『日本との協議が最優先』という発言もあった。厳しい内容、難しい問題だが、雰囲気としては日米関係が重要だとお互い理解した上での協議だった。トランプ大統領との会議、閣僚級の会議、いずれも活発なやりとりが行われた」としています。

交渉のテーマについては、日米双方がカードを出し合うというようなやりとりもあったそうで、日本側は「流れの変化がある」として前向きに受け止めているそうです。

複数の日本政府関係者によると、トランプ大統領は、「在日米軍の駐留経費負担」「米国製自動車の販売」「貿易赤字」の三つの柱を具体的に示し、改善を要求したようです。

外務省関係者は「日本の立場を伝え、トランプ大統領から率直で寛大な発言があった」と述べており、日本側としてはアメリカの要求を一度持ち帰った上で日本経済の影響なども踏まえてどの程度受け入れられるものなのか改めて検証し、次の交渉に臨む方針としています。

交渉について、石破総理は赤澤担当相から電話で報告を受けたあと記者団に対し、「日米間では、依然として立場には隔たりがある。トランプ大統領からは国際経済において、アメリカが置かれている状況について率直な認識が示され、赤澤大臣からは、アメリカの関税措置は極めて遺憾であり、一連の措置の見直しを強く申し入れたと報告を受けている……今後とも容易な協議とはならないが、トランプ大統領は、日本との協議を最優先としたと述べている。次につながる協議が行われたと認識し、評価している。推移を見ながら私自身、最も適切な時期に訪米し、トランプ大統領と直接、会談することを当然考えている……今回の協議も踏まえ、今後とも政府一丸となり、この問題に全力で、最優先として取り組んでいきたい」と述べました。

一方アメリカ側は、ホワイトハウスのレビット報道官が16日、FOXニュースの番組に出演し、日本との交渉についてベッセント財務長官と話す機会があったとしたうえで、「『会議は生産的で前進している』と話していた」と述べ、トランプ大統領が赤澤担当相と会談した理由について、「トランプ大統領が交渉と協議に直接、関与したいと考えているからだ」と述べています。

ただ、海外メディアは、日米関税交渉について、他国に対するモデルケースになると見ているようで、AP通信は、トランプ大統領が自ら交渉に乗り出した理由について、「中国が独自の合意を進めようとする中で、多数の貿易協定を迅速に締結したいという彼の意欲の表れだ」と指摘し、トランプ大統領の「ディールメーカー(交渉の達人)」としての評判を左右するテストになるとした上で、トランプ政権が同盟国などを安心させられる合意を導けるかどうかの「重要な指標になる」とも述べています。

また、ロイター通信はアメリカが各国に譲歩する意思があるかどうかを測る「試金石」になると報じ、イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙は、日本が各国の関税交渉にとって「モルモット」になっていると例えた外交関係者の発言を紹介しています。

専門家の見方も大体同じで、AFP通信は経済専門家の分析を引用し、日米の交渉について「炭鉱のカナリア」だと評し、「日本が合意を得られれば、たとえ不完全なものであってもそれがひな型になる。何も得られないなら覚悟が必要だ。他の国々は協調ではなく、対立を前提に値踏みを始めるだろう」との分析を紹介しています。

更に、ハドソン研究所の上級研究員、ライリー・ウォルターズ氏は3月の段階で「日米交渉は興味深いケーススタディとなるだろう。ある意味では、他国政府は貿易や経済問題でトランプ政権とどのように交渉するかを学ぶことができるだろう……しかし、米国と日本の関係もまた特異だ。米国と日本の間に存在するような経済、安全保障、政治関係の水準を、他のほとんどの国が共有しているわけではない」と論じています。

これは裏を返せば、アメリカは日本を落とすことができれば、他の国も一斉に靡かせることができるだろうと見ているともいえ、ある意味、いきなり大将首を狙った戦略だともいえます。


3.二〇二五年版外国貿易障壁報告書


果たして、アメリカとの交渉に、日本政府はどういう戦略で立ち向かうのか。

これについて、政治ジャーナリストの青山和弘氏は「日本側にある意味で主導権はないのです。トランプ氏が何を言ってくるか、非常に受け身な交渉になるので、こっちがカードを切りすぎることは日本側も良くないと思っている。向こうが何を言ってくるのか、まず見てということになると思う……これから株価の問題とか出てくる、物価も上がるかもしれない。そうするとトランプ氏の頭も少し冷えてくる。少し妥協しなきゃいけないとなる可能性もあるので、あまり焦って安売りするのは良くないという考えは、石破政権は持っています」とコメントしていますけれども、あえて時間をかけて交渉する腹積もりのようです。

ただ、石破総理は国会答弁で非関税障壁について「彼らが“非関税障壁”と思っているものに対して『我が国はこう対応をする』というのは、早急に出していかねばならない」と述べています。

アメリカは先月末、米通商代表部(USTR)が「2025年版、外国貿易“障壁”報告書」を公表していますけれども、この中にも日本の「非関税障壁」のことが記されています。

たとえば自動車については次のとおりです。
・米国は、米国の自動車企業にとって日本の自動車市場へのアクセスが全体的に不十分であることに強い懸念を表明してきた。
・様々な非関税障壁が日本の自動車市場へのアクセスを妨げており、日本における米国製自動車および自動車部品の販売は全体的に低水準にとどまっている。
・非関税障壁には、米国連邦自動車安全基準認証が日本の自動車安全基準と同等レベルの保護 を提供するものとして受け入れられていないこと、独自の基準および試験プロトコル、短距離車両通信システム用の 独特の周波数割り当て、規制の策定過程を通じて利害関係者が意見を述べる機会がないこと、流通・サー ビス・ネットワークの発展の妨げとなっていることなどが含まれる。
・日本は、2035年までに、日本で販売される電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池電気自動車(FCEV)を含 む、クリーンエネルギー車100%への移行を目指している。
・日本は、従来のバッテリー式電気自動車(BEV)には最高85万円(約5,614ドル)の購入補助金を提供している。
・しかし、主に日本企業が生産するFCEVには、車種にもよるが、最大255万円(約1万6843ドル)と、BEVよりもはるかに高額な補助金が支給される。
・日本はまた、BEV、プラグインハイブリッド車(PHEV)、FCEVの消費者購入に対する補助金制度を再編成した。
・これまでは、ほぼすべての自動車に同様の補助金が支給されていた。
・旧制度では、BEVが65万円(約4,293ドル)、PHEVが45万円(約2,972ドル)、FCEVが230万円(約15,192ドル)だった。BEVについては、12万円(約793ドル)から85万円(約5,614ドル)の補助金が支給され、主に日本メーカーが最も恩恵を受ける。
・日本も自動車充電ステーションに補助金を支給するが、日本で独自に開発され、日本の業界団体が支援する充電規格であるCHAdeMOへの準拠を義務付けている。
・この規格は以前、他国の初期モデルの電気自動車に採用されていたが、日本の自動車メーカーは2023年に、北米、欧州、中国で販売するために、米国と欧州の自動車メーカーとともに他の規格を支持した。
・これは、日本を充電技術に関する異端児として残し、補助金を受け取るために時代遅れの技術を要求することで、外国の自動車メーカーや充電サプライヤーが日本で事業を展開する意欲を失わせる。
・2025年2月、日本は電波法施行規則を改正し、リモート・キーレス・エントリーやタイヤ空気圧モニタリング・システム を含む近距離自動車通信システムに433.92MHzの無線周波数の使用を認める。
・日本の433.92MHzへの移行は、グローバルな整合に向けた重要な一歩である。
・この変更に先立ち、日本は世界的に認知された433.92MHzの周波数から逸脱していたため、米国の自動車メーカーを含む外国の自動車メーカーにとってはコストのかかる変更が必要となり、長年の非関税障壁となっていた。
・米国企業は、433.92MHzの周波数に移行する間、キーフォブに使用される機器はまず、日本が定めた技術基準を満たす認証を国内または海外の認証機関から取得しなければならないと指摘している。
・さらに、業界は、米国のEV充電インフラが日本のEV充電インフラと比較して差別的な扱いを受けていることに懸念を表明している。
・国土交通省は、日本企業が高速道路の休憩所にスーパーチャージャーを建設することを認めている。
・対照的に、米国企業が製造したEV充電インフラにアクセスするためには、車両は有料高速道路を出たり入ったりする際に通行料を支払う必要がある。
・国土交通省は2023年から、充電を目的とするEV所有者が高速道路を無料で出入りできる2時間の枠を設ける取り組みを実施すると主張してきた。
・しかし、2024年12月31日現在、国交省は、岐阜県の遠隔地にある米国の高速道路外スーパーチャージャーに無料でアクセスできる出入り口を1カ所しか設けていない。
・関係者によると、日本の公正取引委員会がこの構想に賛成するよう提唱しているにもかかわらず、国交省はこの構想につい て他の進展も見せていないという。
EVの補助金制度が「主に日本メーカーが恩恵を受ける」と指摘しているほか、日本独自の急速充電の規格も「アメリカ車を締め出す要因」とみなすなど、実に細かく調べ上げています。

理詰めで責められたときに、なんと応じるのか。簡単な交渉ではなさそうです。


4.中国を孤立させる計画


しかも、この交渉は日米二国間だけの問題にはならない可能性があります。

4月16日、FOXニュースは「トランプ政権は関税圧力キャンペーンで中国を孤立させる計画 ~トランプ政権は、70カ国以上の米国貿易相手国に対し、中国を自国の経済から孤立させれば関税を引き下げると提案する~」という記事を掲載しました。

件の記事の概要は次の通りです。
・ドナルド・トランプ大統領と政権は、関税引き下げと引き換えに米国の貿易相手国に中国を孤立させるよう説得するための圧力作戦を計画していると報じられている。

・ウォール・ストリート・ジャーナル紙が関係筋の話として報じたところによると、米政権は関税や貿易障壁の削減と引き換えに中国との取引を制限する約束を取り付けるため、70カ国以上と交渉している。

・ウォール・ストリート・ジャーナルによると、トランプ政権当局者は米国の貿易相手国に対し、自国を通過する中国製品の輸送を阻止し、中国企業が自国領土内に工場を設立するのを阻止し、自国経済への安価な中国工業製品の流入をなくすよう約束するよう要求するだろう。

・政権は、中国との関わりの度合いに応じて各国で大きく異なる可能性のあるこれらのコミットメントを用いて、中国を交渉のテーブルに着かせるつもりだ。米中当局者は、貿易戦争が激化する中、過去数ヶ月にわたり、トランプ大統領と習近平国家主席との会談の可能性について公に協議してきた。

・ウォール・ストリート・ジャーナルによると、スコット・ベセント財務長官は4月6日、マール・アー・ラーゴでトランプ大統領に孤立戦略を提案した。ベセント長官は、トランプ大統領が大半の国に対する相互関税の90日間の一時停止を発表して以来、貿易交渉を主導してきた。政権は中国に対する関税を撤廃しなかった。

・ホワイトハウスは火曜日、トランプ大統領の「輸入加工済み重要鉱物への依存がもたらす国家安全保障上のリスク」に関する調査を開始する大統領令に付随して発表されたファクトシートによると、中国は「報復措置の結果として」米国への輸入品に最大245%の関税を課せられることになると述べた。

・トランプ大統領は、ベセント財務長官とハワード・ラトニック商務長官が水曜日に日本政府関係者と関税、軍事支援費用、そして「貿易の公平性」について交渉するために開催する会合に出席すると発表した。「日本と米国にとって良い(素晴らしい!)解決策が見つかることを願っています!」とトランプ大統領は水曜日の朝、トゥルース・ソーシャルに投稿した。

・ホワイトハウス報道官のキャロライン・リービット氏は火曜日の記者会見で、トランプ大統領が大統領執務室で彼女に渡したという声明文を記者らに読み上げた。

・「ボールは中国のコートにあります。中国は我々と取引をする必要があります。我々が彼らと取引する必要はありません」とリーヴィット氏は述べた。「中国と他の国の間には、はるかに大きいという点を除けば何の違いもありません。そして中国は我々が持っているもの、あらゆる国が求めているもの、つまりアメリカの消費者を欲している。言い換えれば、彼らは我々のお金を必要としているのです」

・フォックスニュースデジタルは水曜日、報道された「隔離」戦略についてホワイトハウスに連絡を取ったが、すぐには返答を得られなかった。

・ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ベセント氏は、関税による中国と米国経済の更なる遮断や、米国証券取引所からの中国株の排除など、他の潜在的な対中措置を検討している。フォックス・ビジネスとの最近のインタビューで、ベセント氏は中国株の上場廃止も依然として選択肢の一つであると示唆した。

・一方、北京も独自の影響力拡大キャンペーンを展開している。習近平国家主席は今週、東南アジアを積極的に宣伝し、マレーシアとベトナムの中国市場へのアクセス拡大を約束した。

・フォックス・ノティシアスとのインタビューでトランプ大統領は、パナマ運河の米国による管理を中国から確保する取り組みに言及し、貿易相手国に選択を迫る可能性を示唆した。

・「現状の運営方法も、中国の影響力も気に入らない」とトランプ氏は述べた。「中国の影響力は消え去ったようだ。1年前に確認した時には、ほぼ全ての国旗と全ての声明が中国語で書かれていた。中国に渡したのではなく、パナマに渡したのだと言った。パナマに渡すべきではなかった。現在、パナマと協力している。どう対処すべきか、決定を下すつもりだ」
中国による迂回輸出のみならず、工場建設も許さない、ということです。中国べったりの石破政権がこれを飲めるのか。確かに日本がこれを飲むようなことがあれば、他の国々も右へ倣えすると思います。

トランプ関税の狙いが対中デカップリングであり、今回の日米関税交渉が他の国々に対する「モデルケース」であるとするならば、トランプ大統領は、一切の妥協なしで日本に要求してくる筈です。

石破政権という「炭鉱のカナリア」がどういう結末を辿るかは、ある意味、世界の行く末を決めることになるのではないかと思いますね。



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