

1.補正予算見送り
4月15日、石破総理は、2025年度補正予算案について、今国会への提出を見送る方向で調整に入ったと報じられました。
政府は、物価高やトランプ関税を受け、新たな経済対策の裏付けとなる補正編成を検討していたのですけれども、ある自民党幹部は補正に関し「出さないと思う。関税の影響がどの程度出てくるかまだ分からない」と語り、少数与党であることを踏まえ、野党との協議に時間を要することもその理由に挙げました。
これにより、当面は、今年度予算の予備費の範囲内での対策となり、囁かれていた3万~5万円の現金給付や消費税率の引き下げも胡散霧消してしまいました。
もっとも、この幹部は、参院選を前に「経済対策の内容を示すことはできる」と述べていて、ガソリン価格の引き下げは、6月ごろから1リットル当たり10円程度で調整を進める考えを示したそうです。
ただ、首相周辺は「まだ何も決まっていない」と話し、自民の松山参議院幹事長は「給付や減税、二者択一ではないと思っている。景気のプラスの効果も見込まれるという視点も大切なのではないか」と述べています。
2.そこまでされていたのですか
それにしても、最近の石破総理は、「見送り」ばかりが目立ちます。
4月21~23日に行われる靖国神舎の春季例大祭に合わせた参拝を見送りますし、戦後80年の総理談話も見送る方針とされています。
もっとも、総理談話については、危惧する声があり、見送りそのものはよかったと思いますけれども、その裏には、党内保守派の反発と麻生太郎党最高顧問の説得がありました。
関係者によると、麻生氏は石破総理に対し「絶対に出すべきではない。安倍晋三氏がどれだけ苦労したか分かっているのか」と、戦後70年談話は安倍氏が半年ほどかけて準備したと伝え、外交上も影響が大きいと説きました。
その言葉に石破総理は「そこまでされていたのですか」と漏らし、その後の発言は徐々に後退し、最近では「談話にはこだわっていない」と語るようになったそうです。
ただ、気になるのは、石破総理の「そこまでされていたのですか」といった認識です。軽いというか、ちょっと能天気に過ぎる印象を受けます。
また、今回の補正予算見送りで給付金や減税もパーになったことについても、総理周辺からは「何をやっても評価されないならやらない方がいい」といった声も漏れていると伝えられています。
怒られるからやらない、なんて、「子供か!」とツッコミたくなってしまいます。
3.自民党ごとトランプにつぶされる
こんな状態で参院選を迎えそうな雲行きの中、集英社オンラインは18日「現金給付見送りの石破政権「参院選の目玉がない」「自民党ごとトランプにつぶされる」消費減税をめぐっては公明と国民民主が“接近”、立憲は内紛勃発」という記事を掲載しています。
件の記事の概要は次の通りです。
・「トランプ関税」や物価高への対策として石破政権が検討していた国民一律の現金給付は、二転三転の末に見送られることとなった。大型の経済対策の裏付けとなる補正予算も編成されず、自民党は国民にアピールできる「目玉」がないなかで夏の参院選に突入することになる。党内からは「現金給付をしてもバラマキと批判され、しなくても有権者にアピールできることがない。打つ手がない」との嘆きが聞こえる。其々はみな自分の立場で上に言いたいことやりたいことを言うものです。それを取り纏めあるいは説き伏せ、一つの方向にもっていくのが長たるものの責任です。
・日経平均株価が大幅に下落するなど「トランプ関税」の影響の大きさに、国民への一律現金給付案が政府・与党内で浮上したのは4月8日ごろ。1人5万円など具体的な金額が検討され、公明党からは10万円給付を主張する声も出た。
・しかし、参院選前の「バラマキ」に有権者からの反応はイマイチだった。NHKが4月11日からの3日間で実施した世論調査では、国民への給付に「反対」が50%で、「賛成」の38%を上回った。
・さらに、野党からも「バラマキ」との批判が相次いだ。一律給付には財源の裏付けとなる補正予算の編成が必要とされたが、少数与党では野党の協力が得られないと、補正予算を成立させることも難しい。
・政府・与党は、参院選前に有権者にアピールできる「目玉施策」を取り下げ、ガソリン価格の引き下げや電気・ガス料金への補助再開といった物価高対策にとどめることにした。
・自民党内からは「現金給付をしてもバラマキと批判される。ただ、それもないと有権者にアピールできることがない。石破政権は打つ手がなくなっている状況。このまま参院選に突入しては、自民党がトランプ大統領につぶされてしまう」との嘆きの声が上がる。
・ 「バラマキ」批判が強かった一律給付を断念した石破政権だが、物価高対策を求める声は相変わらず根強い。代表的なものが消費減税だ。
・「石破首相も食料品の消費減税について検討を始めています。一律給付がなくなった今、党内からは参院選公約に消費減税を掲げるよう求める声も高まっています」(全国紙政治部記者)
・ただ自民党内では、財政規律の観点から消費減税への慎重論も根強い。石破首相は難しい判断を迫られそうだ。
・一方で、党として消費減税に前向きな姿勢を示しているのが公明党と国民民主党だ。
・公明は経済対策として、減税の必要を訴えている。斉藤鉄夫代表は11日の記者会見で食料品に限った消費減税についても「あらゆる手段のひとつの方法として検討している」と言及した。
・また、国民民主は時限的な消費税率5%への引き下げを求めている。
・「公明と国民民主は企業・団体献金をめぐっても、共同で規制強化策を提案するなど“接近”してきました。公明は、大阪で続けてきた維新との選挙協力が終わり、関係が悪化。勢いのある国民民主を新たに味方につけつつ、与党内で存在感を強めるねらいもありそうです」(同前)
・国民民主もいち早く消費減税を主張し、政府に実現を求めることで、参院選を前に政策立案能力や実現力をアピールしたい考えだ。
・一方、消費税をめぐって党内の路線対立が顕在化しているのが立憲民主党だ。
・立憲内では、江田憲司元代表代行が会長を務める党内勉強会が食料品の消費税を時限的にゼロとするよう主張。末松義規衆院議員らの党内勉強会も、消費税を時限的に5%へ引き下げることを求めている。
・江田氏の勉強会には党所属国会議員の4割近くがメンバーとして参加。末松氏の勉強会にも江田氏の勉強会と重複している議員もいるとはいえ40人ほどが参加しており、党内で「減税派」は無視できない規模となっている。
・ただ、こうした減税派の台頭に釘を刺したのが立憲の創始者である枝野幸男最高顧問だ。
・減税派を念頭に「減税ポピュリズムに走りたいなら別の党をつくってください」と牽制。それに対し江田氏が「言論の自由を封殺しようというのは看過できない」と反発するなど、党内に大きな亀裂が走った。
・減税に慎重な野田佳彦代表も「今の(減税を求める)党内議論をポピュリズムとは思わない」と減税派に一定の配慮を見せるなど、対応に苦慮している。
・「民主党は消費税引き上げをめぐる対立から分裂した過去があり、消費税議論は立憲にとって鬼門。枝野氏は『分党』発言後、『言ってやった』とご満悦の様子だったそうですが、あまりに党内からの反発が強く、今は『一部メディアが印象で記事を書いている』と火消しに躍起になっています」(立憲民主党関係者)
・それでも、党内での枝野氏への不満は消えそうにない。江田氏らの求心力は決して高くなく、減税派が新党を結成することは現実的には容易ではないため、党内には火種が残ったままになりそうだ。
・一律給付がなくなり、焦点は有権者の関心も高い消費税議論に移りつつある。減税派、慎重派双方からの突き上げに、石破首相や、立憲の野田代表の苦悩は続きそうだ。
それができないから、何もしない、では本末転倒です。
4.石破は期待外れ
ロイターは4月2日から11日に掛けて企業に対する4月のアンケート調査を行いました。調査票発送企業は505社、回答社数は222社でした。
調査で石破総理の政権運営の評価を聞いたところ、「期待通り」と回答したのは9%、「やや期待外れ」は58%、「大いに期待外れ」は33%でした。
コメントとしては、「景気対策が不十分」(卸売)、「国民との対話で経済を活性化させる施策展開に期待していた」(輸送用機器)、「地方創生、デフレ脱却を掲げていたが現状取り立てて目ぼしい成果は感じられない」(窯業)などの声があり、株価が低迷していることを評価しない理由に挙げる企業(サービス)もありました。
「やや期待外れ」と「大いに期待外れ」が合わせて9割を超え、「期待通り」の1割。ボロクソの低評価です。
取り組むべき最優先課題については、物価高対策が61%でトップ、次いで景気対策とトランプ政権への対応がそれぞれ55%。成長戦略は35%、少子化対策は32%でした。
そして、次の総理として望ましいのは誰かとの問いには、高市元総務相が30%でトップ、2位は石破総理で10%、3位は8%の同率で林芳正官房長官と国民民主党の玉木雄一郎代表でした。また、適当な候補が見当たらないという趣旨のコメントも多かったようです。
更に今夏の参院選後の望ましい政権の枠組みについて聞いたところ、現在の自公連立政権が31%で最も多く、次いで自公に国民民主党を加えた連立が26%の支持を集め、野党連合による連立政権への支持は11%でした。
民意ははっきりと物価高対策をやれ、です。にも拘らず、補正も提出できず、給付金も減税もできずでは、支持が集まる道理もありません。予備費で出来ることも限られるでしょう。
「トランプ大統領につぶされてしまう」という自民党内の嘆きの声も分からなくもありませんけれども、昨年のアメリカ大統領選のときから、こうなることは見えていた筈です。それが目の前にきて慌てふためく。もう少し事前になんとかならなかったのかと思わざるを得ません。
参院選公約に消費減税を掲げろという党内の声もありますけれども、おそらくそれでは遅い。なにせ石破総理自ら「公約の通りはやらない」と国会で発言したくらいですからね。国民は石破総理の言葉を信じられなくなっています。
書生論よりも実行力。トランプ関税に対する交渉で、石破政権の実力が誰の眼にも明らかになるのではないかと思いますね。
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