出汁にされた石破政権と面子の中国

今日はこの話題です。
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1.対中関税245%


4月15日、アメリカのホワイトハウスはファクトシートで、中国への関税率が「相互関税」125%、フェンタニル危機を受けた関税20%、不公正な貿易慣行に対処するための特定商品への関税7.5~100%が含まれると発表しました。

件のファクトシートの内容は次の通りです。
アメリカの重要鉱物の未来を強化:本日、ドナルド・J・トランプ大統領は、輸入加工重要鉱物とその派生製品への米国の依存によりもたらされる国家安全保障上のリスクの調査を開始する大統領令に署名しました。

・この命令は、商務長官に対し、1962年通商拡大法に基づく第232条の調査を開始し、これらの物資の輸入がアメリカの安全保障と回復力に与える影響を評価するよう指示しています。
・この調査では、サプライチェーンの脆弱性、外国市場の歪みによる経済的影響、そしてこれらの必須材料の安全かつ持続可能な国内供給を確保するための潜在的な貿易救済策を評価します。
。調査の結果、リスクの詳細と、国内生産の強化、外国サプライヤーへの依存度の低減、経済と国家の安全保障の強化に関する提言をまとめた報告書が作成される予定です。
・商務長官が重要鉱物の輸入が国家安全保障を損なう恐れがあるとの報告書を提出し、大統領が関税を課すことを決定した場合、第232条に基づいて課される結果としての関税率は、トランプ大統領の4月2日の命令に従って、現在の相互関税率に取って代わることになります。

国家安全保障と経済安定への脅威への対抗:トランプ大統領は、外国の重要鉱物とその派生製品への過度の依存が米国の防衛力、インフラ開発、技術革新を危険にさらす可能性があることを認識しています。

・希土類元素を含む重要な鉱物は、国家安全保障と経済の回復力にとって不可欠です。
  〇加工された重要鉱物とその派生製品は、我が国の防衛産業基盤の重要な構成要素であり、ジェットエンジン、ミサイル誘導システム、高度なコンピューティング、レーダーシステム、高度な光学機器、安全な通信機器などの用途に不可欠です。
・米国はこれらの重要な物資を外国、特に敵対国からの供給に大きく依存しており、経済と防衛部門はサプライチェーンの混乱と経済的圧力にさらされています。
。外国の生産者は、米国に対する地政学的および経済的影響力を行使するための手段としてサプライチェーンの優位性を利用し、価格操作、過剰生産能力、および恣意的な輸出制限を行ってきました。
・数か月前、中国はガリウム、ゲルマニウム、アンチモンなど、軍事用途の可能性のある重要なハイテク素材の米国への輸出を禁止した。
今週、中国は世界中の自動車メーカー、航空宇宙メーカー、半導体企業、軍事請負業者にとって重要な部品の供給を遮断するため、6種の重希土類金属と希土類磁石の輸出を停止しました。

アメリカの産業強化:この大統領令は、米国の貿易政策が国の長期的な利益にかなうようにするためにトランプ政権がこれまでに講じてきた措置に基づいています。
・就任初日、トランプ大統領はアメリカ経済を再び繁栄させるために「アメリカ第一主義」の貿易政策を開始しました。
トランプ大統領は解放記念日に、すべての国に10%の関税を課し、米国の国家安全保障を守るために、米国との貿易赤字が最も大きい国には相互に高い関税を個別に課しました。
  〇すでに75カ国以上が新たな貿易協定について協議しています。
  〇その結果、報復措置を取った中国を除き、個別的な高関税の導入は協議が続く中で現在一時停止されています。
  〇中国は報復措置の結果、米国への輸入品に最大245%の関税を課せられることになります。
    +これには、125%の相互関税、フェンタニル危機に対処するための20%の関税、および特定品目に対する7.5%から100%のセクション301関税が含まれます。
・トランプ大統領は、既存の抜け穴や免除を閉鎖し、鉄鋼に対する真の25%の関税を復活させ、アルミニウムに対する関税を25%に引き上げるという布告に署名しました。
・トランプ大統領は、米国の貿易関係の公平性を回復し、非互恵的な貿易協定に対抗するための貿易に関する「公正かつ互恵的な計画」を発表しました。
・トランプ大統領は、外国政府が米国企業に課すデジタルサービス税(DST)、罰金、慣行、政策に対抗するための関税の検討を含む、米国のイノベーションを保護するための覚書に署名しました。
・トランプ大統領は、銅の輸入や木材、製材品、その派生製品の輸入がアメリカの国家安全保障と経済の安定を脅かすかどうかの調査を開始する同様の大統領令に署名しました。
トランプ大統領が新たに課した125%の税率は、多くの場合、以前からある関税に上乗せされることになります。それで最大245%。凄まじい関税です。

これに対し、17日、中国外務省は関税の「数字遊び」を続けるなら、中国は気に留めないと述べています。


2.中国とも全ての国とも合意できる


4月17日、トランプ大統領はホワイトハウスで記者団に対し、貿易関係などを巡る交渉に関して、トランプ大統領は記者団から中国の習近平国家主席との直接交渉は行われたのかと問われると「それについては言いたくない。適切でないからだ……彼らは何度か連絡を取ってきているとはいえる……われわれは、いくつかのとても良い協議ができた」と中国の間で交渉が進んでいるという認識を示した上で「中国とも、全ての国とも合意できる」と述べて、期待感を示しました。

そして、交渉にどれだけの時間がかかりそうか問われると「今後3、4週間でおそらく全てが解決すると思う。もし、合意に至らなければ、制限や関税を課すだけだ」と述べました。

トランプ大統領のいうとおりであれば、報復措置をとって強がっていた中国とて、何のことはない、腰砕けになっていることになります。

4月18日のエントリーで筆者は、トランプ関税交渉について、アメリカは交渉する貿易相手国に対して、関税や貿易障壁の削減と引き換えに中国との取引を制限するよう要求する腹積もりである報道を紹介しましたけれども、ジャーナリストの須田慎一郎は、先日行われた日米関税交渉でアメリカ側はその要求をしたようだ、と述べています。

須田氏は、石破政権にこの話をすれば、中国に筒抜けになることを承知の上で、あえて要求し、中国を交渉の場に引きずり出そうとしている、つまり、石破政権は中国と交渉するための出汁にされたのだと指摘しています。

なるほど、十分あり得る話です。




3.我が中国に敬意を示すなら交渉してもよい


果たして中国はアメリカとの交渉に乗り出しているようです。

4月16日、ブルームバーグは、「中国、協議に応じる用意-米国が敬意示し交渉責任者指名なら」という記事を掲載しています。

件の記事の概要は次の通りです。
・中国は、米国との貿易交渉に応じる前に、トランプ政権が複数の措置を取ることを望んでいる。その中には、米高官が無礼な発言を慎み、中国に対して敬意を示すことなどが含まれると、中国政府の考えを知る関係者が明らかにした。

・その他の条件としては、米国がより一貫した立場を取ることや、制裁および台湾に関する中国の懸念に対処する意思を米国が示すことが挙げられると、関係者が政府内部の議論に関する内容だとして匿名を条件に述べた。

・中国政府はまた、米国が大統領による支持を受けた交渉責任者を指名することを望んでいる。トランプ氏と中国の習近平国家主席が会談した際に署名できる合意の準備を進められる人物を窓口に任命することを希望しているという。

・世界経済と金融市場の命運は、米国と中国が貿易戦争の長期化を回避する方法を見つけられるかどうかに懸かっている。トランプ大統領はほとんどの中国製品に145%の関税を課した。高関税は中国による報復につながり、米中間の貿易の大半を消滅させる恐れがある。

・報道を受け、オフショア人民元は対ドルで0.2%上昇した。中国経済の影響を受けやすいオーストラリア・ドルも0.5%上昇。S&P500種株価指数先物は一時の1.6%安から0.4%安に下げを縮めた。

・米国の急進的な関税攻勢により、中国では報復を求める声が国民の間で高まっており、習氏がトランプ氏の度重なる電話会談要請を拒絶する政治的な理由になっている。トランプ氏は15日にも、貿易戦争の解決に向けた交渉を開始するために歩み寄るよう中国に呼びかけた。

・中国政府の考え方に詳しい関係者によると、協議の最も重要な前提条件は、米国側が敬意を持って接する考えであることが中国側に伝わることだという。

・トランプ氏が公の場で習氏について語る際には比較的穏やかな発言をしている一方で、政権内の他のメンバーは強硬な発言をしており、米国の立場について中国政府は確信が持てないでいると関係者は述べた。

・関係者によれば、中国当局は現在、トランプ氏が政権を完全に掌握していると考えている。その結果、米当局者が中国について厳しい発言をし、トランプ氏がその見解を否定しない場合、中国側はトランプ氏がそうした立場を容認していると受け止めるという。

・関係者は米当局者の具体的な発言を挙げなかったが、バンス副大統領が最近、「中国の農民」について発言したことに中国政府は顕著な不快感を示している。

・中国外務省の林剣報道官は先週、この発言を「無知で無礼」と非難した。米高官が名指しで非難されることは珍しい。

・米国からの一貫したメッセージを望むことに加え、中国政府は米政府が中国の懸念の一部に対処する用意があることも確認したいと考えていると関係者は述べた。中国側の懸念の最たるものとして、米国が中国の近代化を封じ込め抑制する政策を取っているという認識が中国の当局者の間で広まっているという。

・米国は近年、中国が最先端の半導体やその他の先進技術を入手するのを防ぐため、中国関連の輸出規制を強化している。

・中国はまた、自国の国家安全保障上の懸念、特に台湾に関する懸念に米国が対処することを望んでいると関係者は述べた。中国政府は、台湾は中国の一部だと主張しており、必要であれば軍事行動を含む措置を辞さないとしている。中国は台湾に関して挑発的な行動は起こさないが、挑発されれば対応すると関係者は述べた。

・関係者によるとまた、中国は米国が対話を統括す交渉責任者を指名することを望んでいる。その人物が誰であるかについては特に希望はないが、トランプ大統領から明瞭に権限を委ねられ、その立場で発言、行動する人物を望んでいる。

・交渉が、トランプ氏と習氏による有意義な首脳会談につながるための最も効果的な方法は、両首脳が指名した高官が責任者として交渉を統括することだと考えているという。

・トランプ政権は16日午前、中国からの輸入品に対する関税率が計145%で変わりがないことを改めて確認した。ホワイトハウスが15日午後にリリースした資料では、中国は「報復的な行動の結果として、現在は最大245%の関税に直面している」としていた。

・ホワイトハウス当局者によれば、245%という数字は、今回の関税導入前から存在していた一部製品への関税も加味したもの。例えば中国製の電気自動車(EV)には以前から100%の関税が課されており、それが今回の145%と合算される形で最大245%となっている。

・中国商務省は声明で、対米輸出の一部品目に対する関税が計245%に達していることを認識していると表明。米国が引き続き中国の利益を損なうのであれば、「最後まで闘う」と改めて強調した。
交渉したいくせに条件を付ける。その中に「高官が無礼な発言を慎み、中国に対して敬意を示すこと」があるとは、つくづく面子の国だと感じます。


4.中国を孤立化させるプロセス


トランプ関税に関し、第一期トランプ政権で、商務長官を務めたウィルバー・ロス氏は、4月9日、NHKのインタビューで次のように述べています。
・トランプ大統領が世界に対して送りたかったメッセージは、関税は懲罰を意図したものではなく、アメリカの貿易赤字を減らすことにねらいがあり、そのために協力する国については今後、とてもよく扱うということです。

・中南米諸国は、非常に軽い関税で済んだことに注目してください。これらの国の関税は10%で済みました。10%であれば、政府が少し負担し、輸出業者が一部を持ち、輸入業者も負担すれば、吸収できます。これが50%や100%ではとても吸収できません。「全面的な改善が必要であり、さもなくばあなたの国とはビジネスはしない」という意味です。トランプ大統領は国によって異なる態度をとっているのです。

・トランプ大統領は中国を孤立化させるためのプロセスにあると思います。中国は交渉において、最も困難な立場に置かれることになります。トランプ氏は、ほかの国々とともにそうした流れをつくろうとしているのです。

・日本はそのために一番重要か、それに近い位置に置かれることになるでしょう。日本はいち早くやって来て「誠意を持って交渉にあたる」と述べました。このことが日本の立ち位置をよくしたと思いますし、トランプ大統領は非常に感謝しています。

・1980年代のレーガン政権のときを思い出してください。当時、日本はある意味で似たような脅威に直面していましたが、交渉を行い、最終的にはとてもうまくいきました。日本には、右派のアメリカ大統領と非常に建設的な交渉を行った前例がすでにあるのです。

・日本企業がアメリカ国内でいっそうモノを作ることを、トランプ大統領が望んでいるのは間違いありません。すでに日本企業の一部は多くの生産をアメリカに移していますし、このよい流れを継続すべきです。また、アメリカ製品を日本に輸出するにあたって、関税障壁や非関税障壁による制限が存在するので、これらを減らすことも助けになります。

・道筋は非常に明快です。トランプ氏はいま、日本とは交渉したいという姿勢を明確にしています。

・われわれは何か行動を起こさなければなりません。中国には「知的財産権を尊重しない」という非常にやっかいな非関税障壁があります。一方で、日本は知的財産権を尊重しており、特に科学を基盤とする産業にとってはこれが生命線です。

・もう1つの中国の問題は、あらゆることに政府の支援があるということです。輸出業者に補助金を払うなど、ありとあらゆることをしています。時には意図的に産業を大きくし、鉄鋼の余剰生産分を輸出に回さなければならないようにしました。

・中国の鉄鋼の余剰生産能力は、アメリカの総生産量に匹敵するほどです。これはまったく不均衡な状態です。余剰生産分を輸出することで他国の雇用を犠牲にし、自国の雇用を維持しているのです。

・私は、大きな“戦争”になるとは見ていません。最終的には交渉によって解決されるだろうと思います。それがどのような形で実現するのか、誰が最初に電話をかけるのか、それは誰にもわかりません。

・ほかの国々がアメリカとディールをするなかで、中国はみずからに課せられた関税をめぐり、ディールをせざるを得なくなる可能性が高いと思います。中国からアメリカに来るあらゆる製品に関税が課せられることになるのですから。

・中国が歩み寄らないかぎり、対応はさらに厳しくなるでしょう。トランプ大統領は輸出業者を傷つけたいと思っているわけではありません。彼が望んでいるのは、貿易収支を均衡したものに近づけることです。

・トランプ大統領は複数の目標を持っていると思います。1つ目の目標は明らかに貿易赤字の削減です。私たちは巨額の貿易赤字と巨額の財政赤字を同時に抱えることはできません。とても無理な話です。このため、貿易赤字を削減する必要があります。

・2つ目の目標は、財政を均衡化するための手段として追加関税を活用することです。アメリカがGDPのおよそ6%にも及ぶ赤字を抱えているのは多すぎます。そんな余裕はありません。トランプ大統領は減税をしたいのですが、相殺できる収入源を見つけなければならないのです。

・そして3つ目は外交上の目標です。薬物のフェンタニルや国境管理といった問題、そして防衛費の公平な負担などです。

・日本は防衛費をかなり増額しています。私たちはこれが非常にデリケートな問題であることは理解しています。しかし、私たちはいま、非常に問題の多い世界に生きており、日本は非常に危険な近隣国に囲まれています。ですから、日本の防衛費を増額することは日本自身の利益につながると思います。そうしたことをトランプ大統領は望んでいます。

・もし私が日本企業の立場だったら、ほっとするでしょう。なぜなら日本は明確に「好ましい国」だと位置づけられたからです。どの国も同じ10%の税率ということになれば、日本にとってそれほど問題にはならないはずです。競争力という観点で日本の優位性が損なわれることがないからです。

・ただ、生産の多様化を検討するべきだと思います。日本には非常に優位性のある技術がたくさんあります。例えば半導体産業においては、セラミックスの分野が世界で最も優れていると思います。

・日本は熟練した技術も持っています。アメリカで半導体産業が発展しているいま、こうした日本の生産の一部がアメリカに来ればすばらしいことだと思います。
ロス氏は中国には「知的財産権を尊重しない非関税障壁」、「あらゆることに政府の支援がある」という問題があると指摘していますけれども、これは、4月16日のエントリー「アメリカが中国に要求する3つのポイント」で取り上げた、ジャーナリストの須田慎一郎氏が指摘する、アメリカが中国に要求する3つのポイント「中国の輸出産業に対する補助金の是正」「中国の生産力と市場をカードにした中国国内への投資推進」「ルールに基づいた取引」と同じです。

ただ、口でいくら約束しても、やらないのが、かの国ですからね。もちろん、その時は、トランプ大統領が報復関税をするでしょうから、米中の交渉は長引く可能性も考えられます。なんとなれば、トランプ大統領の任期が切れるまでのらりくらりと交渉すればよいくらいに思っているかもしれません。

トランプ大統領は、3、4週間で全てが解決すると述べていますけれども、3~4週間といったらわずか1カ月ですからね。多少ブラフも入っている気もしますけれども、米中関税交渉がどうなっていくのか。世界に大きく影響を及ぼすだけに、目が離せません。



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