中国の敵の敵

今日はこの話題です。
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1.中国太陽電池に関税3500%


米中関税戦争が激化しています。

4月21日、アメリカ通商当局は、東南アジアから輸入する大半の太陽電池について、最高3521%に及ぶ高率の関税を最終決定しました。

これは、中国の大手太陽光パネルメーカーが不当な補助金を得て製造コスト以下の価格でマレーシア、カンボジア、タイ、ベトナムなどを経由して大量に製品を輸出していると、昨年、アメリカの太陽光発電施設業界団体が苦情を上げていたことを踏まえた措置です。

これは、1年前に大手太陽光発電機器メーカー数社が当時のジョー・バイデン大統領の政権にアメリカ事業の保護を要請したことから始まった調査が切っ掛けとなっています。

これにより、中国を拠点とし、東南アジア全域で事業を展開する太陽光発電機器メーカーの天合光能(トリナ・ソーラー)のタイから輸入される製品には375.15%の関税が課されることになります。

また、アメリカの調査に協力しなかったカンボジアのメーカーからの輸入には3521%課すようです。

一方、マレーシアを経由して輸入している中国の晶科能源(ジンコソーラー)の製品への関税率は41.56%と最低水準のようです。

アメリカ国際貿易委員会(ITC)は、6月の投票で、ダンピングと補助金によって業界が大きな被害を受けていると認定すれば、関税は最終的に発効するとのことです。

この決定に全米太陽光発電製造業連盟貿易委員会のティム・ブライトビル主任顧問は「これは米国の製造業にとって決定的な勝利であり、中国に本社を置く太陽光発電企業がシステムを欺いてきたという、われわれが以前から知っていた事実を裏付けるものだ」と歓迎の声を上げています。

アメリカ国勢調査局の統計によると、2023年にアメリカはマレーシア、カンボジア、タイ、ベトナムの4ヶ国から約120億ドル相当の太陽光発電設備を輸入しています。


2.アメリカの御機嫌を取るべきではない


先週、アメリカは数十ヶ国の政府に対し、関税の免除と引き換えに、中国との貿易を制限するよう圧力をかける計画だと、メディアが報じていますけれども、これに対し、中国も報復に動いています。

4月21日、中国商務省の報道官は、「御機嫌取りで平和はもたらされず、妥協で尊敬を得ることもない……中国は、いかなる当事者も中国の国益を犠牲にして取引をすることに、断固反対する。もしそうしたことがあれば、中国は決してそれを受け入れず、きっぱりと対抗措置を取る」と報復措置を取るとしました。

やはり中国は、アメリカvs世界の構図を作り出し、中国がアメリカに対抗する世界の盟主になろうと画策を続けるようです。

4月17日、チャイナ・デイリー紙は、「宥和政策はEUへの圧力を軽減しない」という社説を掲載しています。

件の記事の概要は次の通りです。
・主要な経済大国であり貿易主体である欧州連合(EU)は、開かれた世界経済の維持に重大な責任を負っている。したがって、地政学的目的を追求するために不当な国際貿易・関税紛争に関与している米国に対し、誤ったシグナルを送ることを避けなければならない。

・ブリュッセルは最近、米国に対し、EU産鉄鋼、アルミニウム、自動車への25%の制裁関税を含む制裁関税の適用を免除するよう働きかけ、懸命に努力している。火曜日、EUは米国が金属関税を停止していないにもかかわらず、米国の鉄鋼・アルミニウム関税に対する報復関税を90日間正式に停止した。

・欧州委員会のマロス・セフチョヴィッチ委員は、工業製品に対する関税ゼロの取り決めや非関税障壁への対処など、EUが公正な取引と相互主義の用意があることを強調し、今週初めにワシントンを訪れ、90日間の期限内での相互解決策を探った。

・しかし、先週、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が初めて提案したゼロ関税案は、ドナルド・トランプ米大統領によって既に拒否され、代わりにEUは年間3,500億ドル相当の米国産エネルギーを購入するよう要求されている。この動きは、大統領選の主要献金者である米国のエネルギー大手を喜ばせるだろう。しかし、専門家や環境保護団体からは、EUの米国化石燃料への新たな依存を生み出すとして厳しい批判を浴びている。さらに、米国産液化天然ガス(LNG)は高価であり、EU内での需要は限られているという問題もある。

・さらに、一部のEU首脳が米国製兵器への依存を減らし、EU内での調達を優先するよう求めているにもかかわらず、EUが米国製兵器の調達拡大に意欲を示していることは懸念材料である。EUの米国製兵器への過度の依存は、EUの脆弱性と戦略的自立の必要性を浮き彫りにするだけだ。

・1月のトランプ大統領就任式にEU首脳として唯一出席したイタリアのジョルジャ・メローニ首相は、木曜日にワシントンでトランプ大統領と、金曜日にイタリアに帰国するJ・D・ヴァンス副大統領と会談する予定だ。ヴァンス副大統領の最近の発言は、EUの安全保障上の米国依存と大西洋横断関係の複雑さを浮き彫りにし、EUが自らの戦略的自立性を確立する必要性を再認識させた。EUは、宥和政策によって米国政権の地政学的野心を煽ってはならない。

・ヴァンス副大統領は月曜日、米メディアに対し、「欧州が米国の安全保障上の永久従属国となるのは良くない」と述べた。これは、米国副大統領らしい率直なメッセージだった。しかし、これは、米国の対EU関税措置は、米国政権が欧州に自らの安全保障に対する責任をより重くさせるための単なる手段に過ぎないと考える人々の意見とも一致する。こうすることで、米国がアジア太平洋地域に注力する一方で、EUはロシアに対する封じ込め圧力を継続することができる。米国の安全保障の傘とエネルギーへの依存は、EUがトランプ政権の圧力戦術に対して脆弱な主な理由の一つである。

・もちろん、ブリュッセルは、貿易戦争が既に厳しいEU経済にさらなる打撃を与えることを懸念している。また、27加盟国が米国への報復措置、特に反強制措置(ATI)の活用について合意するのは困難だろう。しかし、米国大統領が貿易とは全く関係のない問題に対して関税をちらつかせている以上、交渉力の弱いEUが、取引好きな米国大統領が一歩でも譲歩すれば、それを宥められると考えるのは甘すぎるだろう。

・したがって、EUは、同じ志を持つ国々と協力し、関税を振りかざすワシントンの横暴者たちに対抗することで、決意を固め、世界的なリーダーシップを発揮すべきである。彼らは、過去の栄光を追い求め、世界貿易システムを破壊し、世界経済に甚大な損害を与えている。トランプ政権が開始した関税戦争に反対する中国やその他のパートナーとの関係を強化することで、より強靭でルールに基づく世界経済秩序への道を切り開くことができる。

・EUによる中国をはじめとする一部の国々への最新の働きかけは、正しい方向への一歩であり、より断固とした姿勢で臨むべきである。米国が世界貿易システムと国際条約から撤退し、風車との戦いに注力する中で、EUは他の国々と共に歩み寄り、その空白を埋める機会を捉え、開放的な世界経済の原則を強化し、ルールに基づく貿易体制を提唱していくことが期待される。EUは毅然とした態度で国際協力を結集することで、世界のリーダーとしての地位を確立し、より安定的で繁栄した世界経済の構築に貢献することができるだろう。
トランプ大統領が貿易とは関係ない問題にも関税をチラつかせていることを考えると、EUが少し譲れば収まるなんてのは甘いと述べ、だから、EUは自分達を協力してトランプ大統領に対抗すべきだ、と述べています。

チャイナ・デイリーが、中国共産党・中央宣伝部が保有していることを考えると、この社説は中国政府の意向を汲んでいることはほぼ確実です。中国は、EUも東南アジアも巻き込んで対アメリカ連合を作ろうと必死になっています。


3.敵の敵は味方


中国は、アメリカが「貿易とは関係ない問題にも関税をチラつかせている」と批判していますけれども、自動車とか半導体とか分野でいわず「貿易」と大きく括っているのがミソです。

なぜなら、中国は分野を問わず、アメリカに報復しているからです。

4月22日、FRIDAYデジタル紙は、「「トランプ関税」で中国がハリウッド映画を“報復”に選んだ「深すぎる戦略」」という記事を掲載しました。

件の記事の概要は次の通りです。
トランプ米大統領(78)が中国に対する145%の追加関税を発表し、これに対して中国が対米関税率を125%に引き上げるなどエスカレートしている米中関税戦争が、ハリウッドを直撃している。

中国政府は4月10日、報復としてハリウッド映画の国内での公開の本数を減らすことを発表した。

中国の国家電影局の公式サイトは10日、

《米国政府が中国に無差別に関税をかけるという不当な行為は、必然的に国内の観客の米国映画に対する好感度を下げることになる》

と警告した上で、

《我々は市場の法則に従い、観客の選択を尊重し、米国映画の輸入本数を適度に減らしていく》

と明らかにした。そして

《中国は世界第2位の映画市場であり、われわれは常に高いレベルで対外開放を主張しており、市場の需要に応えるため、より多くの国の優れた映画を紹介していく》

と米国以外の映画の輸入を増やすことを示唆したのだ。

そして翌11日にはさっそく実行に移した。

スペインのペドロ・サンチェス首相が中国を公式訪問した際、中国とスペインが映画で協力することで合意し文書に調印したと同サイトで明らかにした。

そもそもここ数年、中国でのハリウッド映画の収益が減少しているといわれる。

昨年の中国の興行収入トップ10には1位の『YOLO百元の恋』など中国映画が8位までを占め、ハリウッド映画は『ゴジラ×コング新たなる帝国』が9位、10位に日本の宮﨑駿監督(84)の『君たちはどう生きるか』がランクインした。

また今年1月に公開された中国のアニメ映画『ナタ魔童の大暴れ』が中国国内で大ヒットしただけでなく、アメリカでも2月に公開されて3週連続で週末興行トップになり、全世界の興行収入が145億元(約3000億円)を記録。ハリウッドのアニメ『インサイド・ヘッド2』を超えてアニメ映画の世界歴代興収1位になった。実写を含めた映画ランキングでも、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を抜いて5位にランクインするなど、中国映画の興隆が目立つ。

いずれにしても人口14.8億人の中国は「世界第2位」の市場で、米国にとって日本を上回る“ドル箱”市場であることには変わりない。

ちなみに、4月4日から中国でも公開されている、ジェイソン・モモア、ジャック・ブラックなどが出演するアドベンチャー・コメディ映画『マインクラフト/ザ・ムービー』は、米興行サイト『Box Office Mojo』によると、4日から6日までの週末3日間の興行収入が約1450万ドル(約20億7000万円)を記録して中国国内で1位の大ヒットとなった。北米でも4日に公開され週末3日間の興行収入が約1億6000万ドル(約230億円)を記録。中国は米国に次いで世界2位の興収を稼いでいる。

同作の日本公開は4月25日なので比較はできないが、2月に公開された米大作映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は、北米の興収が約1億9991万ドル(約285億円)、日本が約755万5000ドル(約10億8000万円)なのに対して、中国は約1436万8000ドル(約20億5000万円)で日本の倍の興行収入をあげている。

ハリウッド映画といえば全世界に市場を持つアメリカのシンボル的“輸出品”であり、中国国内での公開本数を減らせば米国への報復の格好の宣伝材料になる。

また、ハリウッドには民主党支持者が多いことから、米国の映画産業にまで打撃を与える関税戦争を続けるトランプ大統領への批判を加速させる可能性があるという、習近平国家主席(71)の思惑も見え隠れする。中国にとっては金額以上にアメリカに“痛手”を負わせる一手だろう。

いずれにしても、中国では映画ファンらが今までのようにアメリカ映画を楽しめなくなることは大きな損失だろうし、米国は中国での巨額の興行収入を失い、さらには今まで築いてきた米中の映画文化の交流は断絶され、米中双方にとって何の得にもならないはず。米中関税戦争の早期の打開策が望まれる。
記事では、ハリウッドには民主党支持者が多いことから、米国の映画産業にまで打撃を与える関税戦争を続けるトランプ大統領への批判を加速させる可能性があるという思惑がある、と指摘しています。なるほど、民主党の力を借りてトランプ大統領の足を引っ張ろうという訳です。いわゆる「敵の敵は味方」理論です。


4.日米交渉は世界のモデルになり得る


そんな中、日本はどうするのか。

4月21日、石破総理は参院予算委員会でトランプ関税について答弁し、日本との交渉が最優先と位置付けられている背景について、「共に相互補完、ウィンウィンの関係を築きやすい、そういうような状況がある」と交渉が今後「世界のモデルになり得る」からだとの認識を示しました。

また、「日本が何でも譲るんだでは国益を体現することにならない」として一方的に譲歩する考えはないとしつつも、トランプ大統領が従来から不満を示している駐留経費に関しては「唯々諾々と言われる通り負担を増やすつもりはない」と明言。アメリカ側には安全保障面の協力の在り方も含めて提案しなくてはならないとする一方で、関税とは分けて議論しないと「おかしくなる」と在日米軍駐留経費負担など安全保障は別問題と位置付ける方針も明らかにしています。

石破総理は。農業分野への対応についての答弁でも、関税やミニマムアクセスなどの手法を用いて日本の農業を守ってきたとして、「これから先も守っていかなければならないし、当然、消費者の安全も守っていかなければならない……「自動車を守るために農業を犠牲にする考え方は持っていない」と発言しています。

安全保障と関税は分けて議論する、自動車を守るために農業を犠牲にする考え方は持っていない、スペードにはスペードで、ハートにはハートのカードで勝負するということです。

トランプ関税措置を巡る日米の二国間協議が他国に先駆けて進められているのは交渉が今後、「世界のモデルになり得る」からだとの認識を示した。

至極真っ当で正攻法な交渉のやり方だとは思いますけれども、これだと、仮に合意に辿り着けたとしても、あまりに「行儀」が良すぎて、逆に「世界のモデル」にはならないかもしれません。

まぁ、米中のようにカードを叩きつけ合うような交渉をする必要はありませんけれども、手札に縛りを掛けるのは交渉の幅を狭め、そのハードルを高くしてしまいます。手持ちのカードが少ない国にとっては厳しいだろうと思います。

朝日新聞が19、20両日に実施した世論調査では、アメリカの関税政策に対する、石破政権の対応について「評価する」は24%であるのに対し、「評価しない」は58%にも上っています。

果たして、どのような交渉と合意がなされるのか。見守っていきたいと思いますね。



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