慌てず急いで正確に

今日はこの話題です。
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1.第二回トランプ関税日米交渉


5月2日、アメリカを訪問中の赤澤亮正経済再生相は、トランプ関税に関する2度目の閣僚協議を行いました。

協議は約2時間10分に及び、赤沢担当相は、米国による関税措置は極めて遺憾との認識を改めて伝え、見直しを強く申し入れたようです。

赤澤担当相は、ベッセント財務長官らとの交渉後、現地の日本大使館で記者団に対し「非常に突っ込んだ話ができた。可能な限り早期に日米双方にとって利益となるような合意を実現できるよう率直かつ建設的な議論を行い前進することができた」とした上で、両国間の貿易の拡大、非関税措置、経済安保面での協力などについて具体的に議論をしたと述べたのですけれども、具体的な進捗状況などについては「交渉ごとはパッケージで成立するものだ。全部合意して初めて合意が成り立つので、どこまで進んだかということに意味はない」と明らかにしませんでした。

赤澤担当相は、選挙日程との関連について問われると「お互い政治家同士の話なので、政治日程は頭に入っていると思うが、そういうものと切り離して、国益はしっかり守りながらできるだけ早く、日米双方にとって『ウィンウィン』となるよい結論を出すため、全力で、最優先で取り組んでいる。日本の自動車メーカーは1時間ずつ損が出ている状況であり、そういう意味で『ゆっくり急ぐ』だ」と応じ、安保に関しても関税や貿易と一緒に議論するのは「無理があるように思う」と躱しています。

石破総理は総理官邸で記者団に対し、日米交渉の終了後、赤澤担当相から報告を受けたとしたうえで「中身の詳細は申し上げられないが、建設的な突っ込んだ議論が行われた。一致点が見いだせる状況には今のところなっていないが、非常に前向きな建設的な議論だったと報告を受けている……『ゆっくり急ぐ』ということで早ければいいというものではない。われわれの国益をきちんと主張する。それを譲って早く妥結すればいいというものではない。お互い国益をかけて交渉しているので、一致点を見いだすために最大の努力をしており、時期について言及すべきとは思わない。早いに越したことはないが、早いことを優先するあまり国益を損なうものであってはならない」と語っています。


2.日米合意枠組み案


5月2日、日経新聞は、今回の交渉でアメリカ側がこの日の協議に合わせて合意に向けた「枠組み案」を提示したと報じました。その内容は、相互関税を主な対象とし、自動車や鉄鋼・アルミニウムの関税引き下げに難色を示す内容だったとのことです。

それによると、アメリカ側は自動車関連の非関税障壁見直しや農産物輸入拡大など、対日貿易赤字解消策も提示。しかし、日本側は自動車・鉄鋼の関税見直しが協議の対象にならない限り、協力は困難と反発しました。

アメリカはすでに自動車と鉄鋼・アルミに関税を発動済みで、対象拡大も検討するなど、むしろ関税強化の動きも見せており、ベッセント財務長官は、「枠組み」を固めた後に「最終合意」を目指す二段階交渉を示唆。日米は相互関税の上乗せ税率の一時停止期限となる7月上旬までの合意を目指していると報じています。

この合意について、NHK記者は「政府関係者の何人かに聞いてみたが、「これからの交渉次第」と口をそろえていた……日本政府内では、最後はトランプ大統領の政治判断になるという見方も根強いのが実情。ただ、交渉が長引けば自動車をはじめとした国内産業への影響も大きくなるため、可能なかぎり早期に合意したいというのが本音だと思う」と解説。アメリカ側の見方についても「今後、交渉の加速を求めてくることも想定されます……トランプ大統領にとっては主要な貿易相手国である日本との間でできるだけ早く合意にこぎつけ、国民や各国に成果をアピールしたいという強い希望がうかがえます。……TPPの取材で交渉の舞台裏を見てきましたが、互いの国益がぶつかりあうだけに着地点を見いだすまでにはどうしても時間がかかります。早期の合意に向けて事務レベルの協議で論点を絞り込み、日米双方が一致できるポイントを見つけられるかが焦点となります」と述べています。

今回の交渉では、5月3日から事務レベルで集中的に協議を行い、次回の閣僚交渉を5月中旬以降に実施するため、日程の調整を進めることで一致したとのことですから、それなりに妥結に向けてスピードアップしたいということだと思われます。


3.対象範囲に対する日米両国の認識のずれ


今回の協議について、野村総研エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は2日付のコラム「日米関税協議ではその対象範囲で両国に認識のずれ」で、関税協議の対象についての日米両国の認識に大きなギャップがあり、両者がかみ合った本格的な協議はまだ始まっていないと指摘しています。

件の記事の概要は次の通りです。
米国時間5月1日(日本時間5月2日)に日米関税協議の2回目が開かれた。その後の記者会見で赤澤大臣は、協議の具体的な内容については語らなかったが、赤澤大臣から報告を受けた石破首相は、「(日米で)一致点を見いだせる状況には今のところなっていない」とし、合意までにはなお距離があることを示唆した。

その後、日本経済新聞が報じた協議の内容は、両国が関税協議の対象についての認識に大きなギャップがあることを裏付けており、両者がかみ合った本格的な協議はまだ始まっていないとも言えるだろう。

日本側は自動車、鉄鋼・アルミニウムの25%の分野別関税と、24%(90日間の停止期間中は10%)の相互関税の双方の関税率引き下げを米国側に求めている。これに対して米国側は、今回の関税協議の対象となるのは、相互関税の上乗せ部分に限定される、との認識だ。

トランプ政権が、4月に相互関税の上乗せ分についてその適用の一時停止を決めたのは、金融市場の混乱を受けた対応であったが、さらに、その90日間のうちに上乗せ分の関税について主要な国との協議を行い、合意を得る狙いがあった。この点を踏まえると、米国側が日本との関税協議で対象にしているのは、当初から相互関税の上乗せ部分に限られるということになる。

ただし日本としては、企業経営や雇用などに影響が大きい自動車分野の25%の関税の撤廃あるいは大幅引き下げを優先しているはずだ。今までの日米貿易交渉でも、自動車関税の回避を日本政府は最優先してきた。2019年の日米貿易協定でも、農産物の関税率引き下げと引き換えに、自動車関税を回避することに腐心した。

最終合意には距離があるが、米国側は限定的な合意、つまり暫定合意を模索している可能性がある。その場合、日本が米国産大豆、トウモロコシの輸入拡大や輸入自動車特別取扱制度の適用条件緩和を受け入れることと交換で、米国側が相互関税の上乗せ分の小幅引き下げを認める、などといった展開になるだろう。

日本政府もこの暫定合意を受け入れるのであれば、自動車関税の撤回要求などは一度引き下げる必要がある。米国側は、すべての国を対象にする自動車関税については、日本だけを特別扱いして関税率を下げるようなことはできない、と明確に説明している。

ただし、赤澤大臣が「交渉はパッケージで成立。すべて合意して初めて合意」と説明しているのは、自動車関税の引き下げを対象から外した相互関税の上乗せ分の小幅引き下げを得るための暫定合意を拒否しているようにも聞こえる。

そもそも、トランプ政権の自動車関税など分野別関税にしても、相互関税にしても不当なものであり、日本が自国の利益のためだけでなく、世界の自由貿易を守る観点からも、その撤回を求め続けるのは正しい。ただしそういう姿勢を続ければ、合意に近づくことはできないことは覚悟すべきだろう。

トランプ政権が最終的に求めているのは、対米貿易黒字の解消と考えられるが、それを実現させるような施策を日本が受け入れれば、それは日本のGDPを1.4%も押し下げ、日本経済に甚大な打撃を与える。それならば、現在の関税率を受け入れる方が、日本経済への打撃は小さい。

現状の25%の自動車・自動車部品(5月3日に発動)、鉄鋼・アルミの分野別関税、10%の相互関税は日本のGDPを0.46%押し下げる計算となる。他方、90日の一時停止期間が過ぎ、相互関税の24%が適用される場合には、分野別関税の影響と合わせて、日本のGDPは0.81%押し下げられる計算だ。

それらの影響は確かに大きいが、対米貿易黒字を一気に解消させるような施策を受け入れる場合と比べれば、小さいと言える。

こうした点も踏まえると、日本はトランプ政権が求めるような対米黒字解消策を受け入れるのではなく、トランプ政権が自国の経済、金融市場への打撃を緩和する観点から、すべての国に対する関税率を引き下げるまで、粘り強く日米関税協議を続け、いわば時間稼ぎをするのが得策ではないか。

木内氏によると、トランプ政権が求めている対米貿易黒字の解消を行う経済的打撃を考えれば、現在の関税率を受け入れる方がまだマシだというのですね。従って、トランプ政権が全ての国に対する関税率を引き下げるまで、時間稼ぎすべきだと述べています。


4.米国債もカードとしてあり得る


5月2日、加藤財務相は、テレビ東京の報道番組「Newsモーニングサテライト」に出演し、日米交渉についてインタビューを受けています。

そのやり取りの概要は次の通りです。
ーー加藤大臣がお話しされていたこちらベッセント財務長官について伺っていきたいと思うんですけれどベッセント長官はこう何度も来日した来日したことがある親日派としても知られているんですけれども実際お会いされてみてこう印象としてはどうでしたか?

あのご本人もおっしゃってましたけれども多い時は年に10回くら来られたことがあるということで、よく大変日本のことよくご存じだなということを感じさせていただきましたし、就任されて最初のオンラインでの協議相手が日本が私だったんですね。

そのことを非常におっしゃっておられて、そういった意味で日本というものもしっかり重視していただいてるという風に思いましたし、実際協議させていただいて非常に落ち着いた感じで、非常に建設的な意見・構築ができたなという風に思ってますんで。まさに信頼し得る交渉相手なっているということを強く実感しましたね。

ーー会談は緊張感が漂っていたかというよりかは、どちらかというと名やかな雰囲気で進められていたということに?

いやもちろん緊張感の中ではありますけれども、今まさに落ち着いたと言い方がいいんだろうと思いますけれども、いろんな話ができたなっていう実感がありました。

ーー実際の階談は時間的にはどのくらいあったんですか

実際50分、当初30分だったんで、結果においてはですね非常にいいやり取りができたなという風に思ってます

ーー我々どうしても為替でどんな話があったんだってニュースでもお伝えしてたんですが、それ以外の議論っていうのも実際あったんですか?

2国間についての話色々ありましたけれども、私の方からは物価動向とか賃金動向とか、こういった話についても少し話をさせていただきました

ーー日本の現状について先方からどうでしたか

先方から話があったのは大体こういう協議の場合には申し上げませんけども、そういった関心があるという中で私の方からそういうことを申し上げたっていうことですね

ーー今、会談の最中だろうと思うんですけれども赤澤大臣のテリトリーの話ってのも出てきたんですか

いやそれは基本的にその場ではありませんでした。ただ冒頭私の方からやっぱりこの関税措置特に日米防衛協定にあの反する懸念のあるものに対してはの見直しをすべきだということを申し上げたとこでありますけども。

ーーあの29日にですね、ベッセント長官からも日本とは実りある協議をしてきたですとか、日本はあの参議院前の合意を望んでいるという風なお話もありましたが、これは日本としても同じような認識なんでしょうか?

まさに今の状況どう把握するかってなかなか難しいんだろう、実際今日多分このタイミングで協議してますから、あのなんとも申し上げられませんけれども、一方で参議院前ということもありますから、ちょうど90日間っていうのは7月の上旬ってことになりますんで、当然そういったものもつのとターゲットにしながら協議はしていくと思いますけれども、ただ早ければいいのかどうなのかっていうところは非常に微妙なところはあるんだろうと思います

ーー実際いかがですか?参議院選挙の前までは何とか打結するべきだって考え方もあれば、いいやむしろ日本っていうのはそんな焦る必要がなくて弾は取っておいてじっくりじっくり長くやればいいんだって話……

参議院選挙っていうことに入るとですね、当然なかなか動きにくいなってことはあると思いますが、だから早くかっていうよりもやっぱり日本にとってあるいはこれからの日米間にとってより良い実りのあるそうしたもの中身が作れないかっていうことと、日米だけでやってる交渉ではもちろん日米間で話やってますけど同時に色んな国とやってるわけですね、そういったところの進捗も見極めながらやってくことがさっき申し上げたより日本の国益に適するですね答えを出していくと。そうするとなかなか早い方がいいよっていう人もいるし、あんまり早すぎていうのはどうだろうかっていうなかなか難しさがあるのと……

ーーアメリカ側は急いでるなっていう感触っていかがですか?

うーんそうですね。ただアメリカとしてもやっぱりこれだけの手を、あのこういた思い切った関税措置向こうから見ればですね対応してますから、やっぱりそれに対する成果ってものを早く出していきたいっていうのは持っておられると思いますし、我々としてももうすでに関税の一部はかかってきてるわけですから、いろんな形でこれから影響も出てきますんで、そういったもにおいてそういったことを考えると国内で対策をするのと同時に一刻も早くこうした関税措置の見直しを求めていくということが必要だと思いますね

ーーそしてマーケット、やはり気になっているのが先ほどお話にもありましたが会談後日本側の発表なんですよね。為替水準の目標などは議論していないとしていることですとか日本側ですね。ただアメリカ側の発表は為替に関する問題について現在行われている緊密な協議を継続する意向を確認したという風に言及していまして、これは単にニュアンスの違いなのでしょうか?それとも水準については全く話には出ていないという認識なのでしょうか?

どっちもそうだと思います。ですからあの前者の方は私も申し上げたようにそういった話は全くありませんでした。ただ同時に引き続き緊密かつ建設的に協議を継続していこうということ、特にそのトータル、全体はまさに今日赤澤大臣が日本政府を代表してやっていただいてる。一方で為替に関してはこれ従前からもそうなんですけれども、ある意味専門性を有する財務長官と財務大臣の間で議論しましょうというこういう整理になってますんで、そういった整理のもとで今後とも為替に関してはお互い協議をしていきましょうということを確認したということであります。

ーー協議をしていきましょうって話をしたってことなんですか?為替について何か話をしたってことではないんですか?

為替についてって非常に難しいんですが、為替については市場によって決まるもんだと。それから過度な動きというものはですね経済や金融に良い影響を与えませんという、これG7でも確認されてますが、この中身については話をしてで確認をした。

これが議論の大前提になりますから、私としてもこれは確認させていただきますよということで、もちろん議論はさせていただきましたがあの言ってるような為替がどういう数準があるべき姿だとかですね、あるいはそのための枠組みたいな話は全くなかったということであります。

ーーさて番組ではですね今回大臣の出演にあたりまして、40人以上のマーケットの専門家に今の経済状況や政策への評価を聞くモーサテサーベイを実施しました。まずは日本経済の持続的な成長に適した為替水準について尋ねました。結果はですね120円台から130円台と答える方が多かったということなんですが、この辺り踏まえて為替についてお聞きしたいところ何かありますか?

ーー大臣に是非お聞きしたいんですけれども、実行為替レートなどで見てもですねやっぱここ数年あの主要通貨の中で円が突出して安くなっていると。日本政府としては別にあの円安誘導してるわけじゃないという見解だと思いますが。ベッセント財務長官は市場重視派でも
あるから、あのあまり為替に人為的な操作は良くないというスタンスなんだろうと思いますが、トランプ政権内の強行派が特に安くなってる円を問題視することが、そういう懸念が先行きあるんじゃないかなとま心配はしてるんですけれどもまその辺はどう感じていますか?

あの相場そのものについて。コメントしないっていうのは重々承知のことだと思いますけれども、私どもとして為替を操作するようなことはしていませんし、実際これ為替の介入という意味においてはですねある意味は逆の介入を先般もさせていただいたわけでありますから、そういったとこ含めてこれしっかり説明していかなきゃいけないと思ってますけども。

ーー為替の話もさることながら日米交渉の方では何か気になるところありますか?
ーーやはり1つ関心事として、最近のアメリカの金融市場では、いわゆるその株もドルも米国債も全て売られるわゆるトリプル安みたいなことも言われてたわけですけど、今回のこのベッセント財務長官との間の会話の中で米国債を巡るやり取りみたいなものは何かあったんでしょうか?

ちょっとなかなかそうなってくると、話難しいんですけれども、ただ一方でマーケットとの方からは、相互関税の90日延期、その背景にはいわゆるトリプル安があったんではないかという見方があると思ってますんで、そういったことも背景にいろんなことが動いてんじゃないかなという風に思いますけれども。

ーーどうなんでしょう?その米国債の安定っていうところは日本にとってもプラスいいところではあるという風に見ていらっしゃいますか?

米国債の安定って言っても、じゃどの金利水準だって話になるんで、これなかなかあの特に米国の話ですから言及しづらいところはあると思いますけれども、ただ、いずれにしてもマーケットにとってあまりこう不安定にこう動いていただくってことは、経済あるいは金融全体にとってプラスにはならないという風には思います

ーーこれから先のその交渉の過程の中で日本側のその武器の一つとしてアメリカ国債安易に売らないよみたいなことをあえてコメントするとかそういった手段っていうのはどうなんでしょう?考えられるもんなんですかね?

うーん、そういうことをあの示唆させていただく方はいらっしゃいますけれども、しかしそうした日本も一定程度米国債を外為積立金の運用の中で、持ってるのは事実ではありますけれども、それを含めてただ一方でこれはそのために持ってるわけじゃなくて、米国を支援するために持ってるわけじゃなくて、我が国がいざとなれば介入する、そしてそのための流動性を考えながら運用してますから、まさにそういった考え方をベースにしなから、あとはなんていうかToolというんですか、交渉のカードになるものこれは全てこう盤上に起きながらですね、これは議論してくことは当然だと思いますけど

ーーツールになる可能性はあるってことですね

カードとしてですね、こういうカードありますねっていうことはそれ色々指摘もいただいてますが、カードとしてはあると思います。それをどう切るのか切らないのかっていうのはまた別の判断だと思います。

ーーその交渉についてなんですけれど28日にベッセント長官はですね早ければ今週か来週に最初の合意をするという風に発言したんですけれども大臣は日本が最初のその合意国になるという風にお考えですか?

それはちょっと分かりません。まさに今日今タイミングでやってる交渉次第なんだろうという風に思います。
加藤財務相は言葉を選びながらも、日本政府が保有する米国債もカードとしてあり得ると示唆しました。




5.可能性を認めたこと自体が驚くべき展開だ


加藤財務相の発言にアメリカ側は鋭く反応しました。

5月2日、アメリカのアクシオス紙は「日本の財務大臣、米国債売却は「テーブルに置いたカード」と発言」という記事を掲載し警戒感を露わにしています。

件の記事の概要は次のとおりです。
債券市場がトランプ大統領の政策決定に独特の影響力を持っていることは今や誰もが知っている。そして、日本政府からの微妙だが重要な脅威が、重要な同盟国との貿易に関する彼の立場を変える可能性がある。

日本は米国債の最大の保有国であり、保有国債を売却する可能性を少しでも示唆すれば、政権に対する強力な影響力となる。この脅しを実行に移せば、金利が急騰する可能性がある。

日本の加藤勝信財務大臣は金曜日、日本が保有する1兆1,300億ドルの国債は貿易交渉における「切り札」であると述べたとAP通信が報じた。

・AP通信によると、加藤氏は日本のテレビ番組で「カードとしては存在するが、それを使うかどうかは別の決定になると思う」と述べた。

・これまで日本の指導者たちは、そのような脅威が存在する可能性について言及することさえ躊躇してきたことを考えると、これは政府のメッセージングにおける注目に値する変化だ。

・フィナンシャル・タイムズ紙はこれを「まれな歯をむき出した行為」と評した。

現状:日本や他の大国債保有者が国債を売り始めたら、米国の金利が上昇する可能性が高い。

・その結果、米国の巨額の財政赤字の補填がさらに困難になり、住宅購入者や企業の借り手に負担がかかることになる。

・日本政府はそこまで脅迫していたわけではないが、その可能性を認めたこと自体が驚くべき展開だ。

・とはいえ、この戦略は売り手にとってもコストとリスクを伴う可能性があり、売り手自身の保有債券の価値が暴落し、通貨市場に大きな混乱を引き起こす可能性がある。

全体像を見てみると、日本は米国の5大貿易相手国の一つであり、この地域における堅固な同盟国でもあるため、4月初旬に米国が日本に24%の相互関税を課したときは驚きがあった。

・トランプ大統領が世界的な関税措置の大半を停止した後、日本との合意成立は貿易交渉の最優先事項の一つとなった。数日後、日本の通商担当大臣はホワイトハウスを訪れ、スコット・ベセント財務長官とハワード・ラトニック商務長官と交渉を行った。

はい、しかし、日本にとって極めて重要な自動車産業への関税をめぐる対立が報じられる中、進展は遅いです。

行間を読むと、先月米国債が売られ、利回りが急上昇したため、外国政府が国債を売り払っているのではないかという憶測が広がった。

・JPモルガン・プライベートバンクは先週の調査ノートで、海外からの売り圧力の兆候があるものの、それは政府が保有株を「武器化」しているのではなく、個人保有者によるものだと述べた。

興味深いのは、加藤氏の言葉の選択、つまり財務省の保有資産を「切るカード」と表現したことが、的を射ているように見えることだ。

・今年初め、大統領執務室でウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と激怒したトランプ氏は、大統領に対し「あなたは今、カードを持っていない」と警告した。

結論:日本はそうであり、彼らと対戦すれば壊滅的な結果になる可能性がある。
加藤財務相は、カードを切るとは一言もいっていないのですけれども、どうやら彼らには日本が米国債について「カード」という単語を使っただけで、驚くべき変化であり、「まれな歯をむき出した行為」と映っているようです。

そこまで警戒してくれるのであれば、前述した野村総研の木内氏が指摘するように、時間稼ぎの交渉もできるかもしれません。ただ、それでもトランプ政権ですからね。90日で妥結できなければ、そのままトランプ関税を掛けてくる可能性は否定できません。

ゆっくり急ぐとは、なにに時間をかけて、何を急ぐのか。参院選前に何等かの結果が出るのかでないのか。ウォッチしていきたいと思います。



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