国際標準だからといって公平な取引とは限らない

今日はこの話題です。
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1.消費税をがーんと下げることによって、国の財政どうなりますか


5月11日、石破総理は、フジテレビ「日曜報道 THE PRIME」に出演し、経済対策としての消費税減税について言及しました。

12日に開催される衆院予算委員会集中審議では、アメリカのトランプ関税や物価高を受けた経済対策が主要なテーマになる見通しで、減税を巡る石破総理の説明が焦点となっています。

報道では、政府与党が消費税減税を見送る意向であるのに対し、野党各党は夏の参院選公約に減税を盛り込むと見られています。

件の番組には、橋下徹・元大阪市長も出演していたのですけれども、消費減税について、橋下氏から石破総理への質問が投げ掛けられました。

そのやりとりは次の通りです。
橋下:国内で、、石破さん、消費税もう減税しないっていうことはもう明言されたんですか。これから経済対策で。

石破:いや、党内できちんといろんな議論しないといかんし、与党である公明党さんとも調整しなきゃいかんし、だけど消費税をがーんと下げることによって、国の財政どうなりますかってこと。それだったらば、国債だ、じゃあそれ誰が返すのよって話にもなりますよね。本当に今困っている人も困ってない人も一緒だということでいいのか。本当に困っている人に対する厚い支援って、他のやり方はありませんかってことであって、限られた財源の中で本当に大切にしていかなきゃいけない人、守っていかなきゃいけない人に対して厚い支援をするやり方ってのは、本当に消費税を下げることだけなんでしょうか、ということ議論しなきゃ。

橋下:ただこれ減税の話になると、消費税を下げる消費税の財源ってありますけど、これ岸田政権の時か所得税減税やった時もですね、これで財源がなくなるなくなると言っても蓋けてみると国全体の税収は増えてるわけですよね。だから消費税のところだけ見ずに国全体の税収を見るということと、それから消費税の減税と言っても今物価高も食料品の高いところが困ってるわけですから、食料品だけ下げるとかそういう考え方もまだ今は放棄はされてないんですよね

石破:いろんなやり方があるから。明日も予算委員会はあるわけです。いろんなとこでいろんな議論をして単に税金下げればよろしいのですということで本当に1 番困ってる人たちに支援は十分なりますか、ということと消費税、別に公務員の給料消えてるわけじゃなくて、どうやってこれから先どんどん社会保障のお金が増えていくわけで、じゃあ将来の社会保障不安だよね医療どうなるの年金どうなるのって思ってるからお金使うのやめとこうって人もいっぱいいるわけであってね、そういう将来に対する不安があるので消費が伸びないってことも私はあると思って。
消費減税の財源に国債を使うとして誰が返すのか、と述べていますけれども、このロジックでいうなら、補助金の財源に国債を使ったら、誰が返すのかというロジックも成立します。

補助金はよくて減税は駄目、こんな理論で誤魔化すのも、あまりに使い過ぎて擦り切れてきた感があります。




2.税収弾性値


特に、財源がないといいつつ、税収が増えている点を取り上げ、国全体の税収を見ないといけないという問い対して、その問いそのものを忘れてしまったのか分かりませんけれども、完全スルーしています。

税収に関して、ここ最近、ネットでもちらほら見かけるようになった言葉に「税収弾性値」というのがあります。

税収弾性値とは、「名目GDPが1%上がったときに税収が何%増えるか」という数値のことを指します。この数値について、政府はつい最近までずっと「1.1」という数値を使ってきました。

4月7日、参院決算委員会で、維新の会の柳ケ瀬議員がこの税収弾性値の妥当性を問い質しています。

柳ケ瀬議員は自身のXでその税収弾性値について次のように述べています。
【税収弾性値の検証】

1.毎年の税収見積もりの大幅な誤差
◯過去3年間の後年度影響試算と決算税収には毎年約10兆円の乖離がある。
◯この試算は、財政政策やプライマリーバランスの議論の前提となる極めて重要な数値。
◯実態より税収を少なく見積もることで、誤った増税議論や不適切な補正予算編成が誘発される。

2.根本原因:税収弾性値の過小評価
◯税収弾性値(GDP成長に対する税収の伸び率)を財務省は1.1に設定していた(2022年度時点)。
◯しかし、実際には直近10年で計算すると3.23(2010~2019年)、最新10年でも2.19(2014~2023年)となる。
◯財務省は1.1という値を維持するために、過去44年平均に計算期間を変更していた(従来は過去10年平均を使用)。

3.税収弾性値の多様性と恣意的選定の問題
◯昭和51年から令和5年までの1,176通りの計算では、弾性値の平均は3.00。
◯最大値:1,160(2001~2016年)、最小値:マイナス120(1996~2003年)。
◯それにもかかわらず、政府は長年1.1〜1.2に固執。これは税収を意図的に過少に見積もっている疑いがある。

4.制度改革の提案
◯アメリカやイギリスのように、複数の経済指標を使ったシミュレーションモデルの導入を提案。
◯税収弾性値のような単一パラメータに依存する手法からの脱却を求める。

5.税収弾性値に込められたメッセージと失われた30年
◯弾性値1.1は「経済成長しても税収はあまり伸びない」との前提で、経済成長の価値を低く見積もっている。
◯実際には、税収弾性値は3を超え、成長による税収増は非常に大きい。
◯財政優先の姿勢が、経済成長の足かせとなり失われた30年を生み出した。

6.法改正の提案
◯財務省設置法に「経済成長の実現」を明記すべき。
◯財政法第4条を改正し、経済成長のための赤字国債を正当化する規定を加えるべき。
なんと実績ベースでみれば、税収弾性値は3を超えていて、政府が採用している1.1は過小評価に過ぎるというのですね。これでは確かに税収が余る訳です。




3.日本のやってることの方が国際標準


番組では、この消費減税論議の前段にトランプ関税を巡る交渉でアメリカ側が非関税障壁と見做しているものに消費税分の輸出戻し税があるが、これについてどう思うかとの質問が出ています。

件の質疑のやりとりは次の通りです。
ーーアメリカが非関税消費のターゲットにしてるものがあります。170 以上の国と地域で導入されています付加価値税いわゆる消費税です。トランプ氏は関税よりも懲罰的、ひどいと批判しているんです。これについてどう対抗していくんですか

石破:それはなんかの誤解だと思いますね、アメリカが言ってるのは要はどこの場所で消費しますかってだけの話なのであって、日本のやってることがアンフェアだとかそういうことじゃなくて、むしろ日本のやってることの方が国際標準なわけですよね。

橋下:アメリカがちょっと勘違いしてるのが連邦政府が消費税かけてないだけで、州単位ではかけてるわけでしょ。州では別に日本車だって消費税かかるわけですからね、交渉してるのが連邦政府だからてことです。これはちょっとおかしな話ですよね

石破:だからこれもね、あんたの言うことは間違ってるって言うと、間違ってることを間違ってるって言われると、カッとくるんで、そこは何かひょっとしてみたいな言い方をしなきゃいかんですけどね
石破総理は、日本の消費税は国際標準だ。だから正しいのだとコメントしています。いわば、赤信号皆で渡れば理論です。

けれども、トランプ大統領が主張しているのは「公平」な取引であって、どちらが正しいのかではありません。消費税は国際標準だというのは、説明になっておらず、アメリカとの貿易における輸出戻し税は、補助金ではなく、公平な取引であるのだということを説明できなければいけません。


4.消費税と小売売上税の違い


また、橋下氏がアメリカは州では消費税を掛けてるから、トランプ大統領の言うことはおかしい云々言っていますけれども、これも話をズラした感があります。

なぜなら、日本が貿易しているのはアメリカという国であって、アメリカの州と貿易している訳ではないからです。

まだ、議論で、アメリカの州の消費税と言っているのは、「小売売上税」のことを指していると思われます。この小売売上税は、消費税と同じく間接税ではありますけれども、その中身は消費税と大きく異なります。

たとえば、ある生産品が消費者に渡るまでには、生産者から卸業者、そして小売業者などさまざまなプロセスを経て、消費者の手に渡ります。消費税はこのすべて、「生産者」「卸業者」「小売業者」「消費者」にそれぞれ課税されます。

一方の小売売上税は、「小売業者」が「消費者」に販売するときのみ課税されます。つまり、小売売上税を支払うのは消費者のみであり、ここが消費税との大きな違いとなります。

生産者から消費者までの全ての工程に税を課す消費税方式をアメリカが取っていないのは、そうすることが良くないと考えられているからです。

アメリカは自由と独立を掲げる風土があり、ベンチャー企業が次々と誕生するのですけれども、そういった新しい企業や、現時点で経営が上手くいっていない企業、設備投資などをして資金繰りが苦しい企業にも消費税を課すと、財務状況が悪化し、倒産するところも出てきます。

そういった事態を起こさせないという考えから、消費税を導入せず、消費者だけに課税する「小売売上税」という形を取っています。

この小売売上税の税率をいくらにするかは州政府に権限が与えられえていて、州ごとにバラバラの税率になっています。

このように中身も仕組みも異なるアメリカの州レベルの小売売上税を日本の消費税と一緒くたにして、だからトランプの言っていることはおかしいというのは、ちょっと乱暴な議論であって、視聴者をミスリードさせる危険があると思います。

トランプ大統領が求めているのは、あくまでも公平な取引です。日本政府が公平な取引だと見做すに足るカードを出せない限り、トランプ関税交渉はいつまで経っても纏まらないのではないかと思いますね。







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この記事へのコメント

  • くろねこ

    消費者からのみ取るのと広く集めて戻し税で輸入業者に返すのは、非関税障壁の効果としては同じようなものでは
    2025年05月13日 10:54