今だけ、金だけ、自分だけの我利我利亡者

今日はこの話題です。
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1.並び始めた銘柄米


備蓄米の販売が大手コンビニで始まり、各地に出回っているなか、ネットでは「ガラガラだったスーパーの棚に銘柄米が山積みになっている」、「備蓄米が安く放出されると決まったら店頭に銘柄米が並びだした」という投稿が挙がりはじめました。

6月2日の投稿では、宮城県産ひとめぼれや新潟県産こしひかりなど銘柄米がビッシリと棚に並んでいる写真が投稿されたりしています。

スーパーアキダイの秋葉弘道社長は、「今までは例えば100頼んでも80みたいな感じで、注文に対して実際に来た数が少なかった。最近はそういうこともなく注文した数がしっかり来る」と述べていますけれども、値段自体はというと、相変わらず4000円台半ばです。

また、関東圏や首都圏を中心に店舗を展開しているスーパーでも「備蓄米の購入希望が多く、銘柄米は買い控えの傾向がある。一時期より銘柄米の在庫が増えている」とか「以前は品不足だったが2、3週間前から安定してコメが並ぶようになった」とコメントしています。

なんでも、進次郎農水相が随意契約で備蓄米を放出することを表明したころから、銘柄米が安定して入ってくるようになったのだそうです。

これについて、コメ問題に詳しい宇都宮大学農学部の松平尚也助教は、「新米がとれるまで在庫が続かない可能性があったので、販売を抑制していた。取引関係の中で、取扱量が多い中規模の順番に銘柄米が並ぶようになった」と解説しています。


2.供給が激減していた


進次郎農水相が随意契約で放出した備蓄米が出回るのは分かりますけれども、頓と出ていなかった銘柄米が急に出てきたのが何故なのか。

東京・品川の内田米店の内田幸男代表取締役は、「1俵(60キロ)あたりの値段は茨城・千葉産のコシヒカリが4万9500円の売り物が多かった。きょうは3万9000円くらい。全然期待してなかったので、下落はびっくり」

内田米店が購入しているのは、JAを通さずに売り手と買い手の業者が直接取引するスポット取引だそうですけれども、「備蓄米も徐々に流れ始めているので、安くなると利益が圧迫されるので、売り抜けようと考えている方が多いのではないか……8月には新米がどんどん出てくるので、その辺り(千葉産・茨城県産のコメを)持ってる業者は売り急ぐ可能性がある」と指摘しています。

嘉悦大の高橋洋一教授は、自身のYoutubeチャンネルで、米の需給推移グラフを示し、米の値段は需要と供給で決まっていると指摘しています。

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確かに高橋教授のグラフをみると、2020年までは需要と供給が同じくらいでバランスしていて大体安定していたのが、2023年からは供給が需要の半分以下しかなく、値段もそれに反比例してぐっと上がっています。

なるほど、これでは米の値段が高騰する訳です。

高橋教授はこの需給ギャップからみて、備蓄米を20万トン放出したところで米の値段は10%くらいしか下がらず、値段を元に戻そうとすると70万トンレベルで出さないと戻らないと指摘しています。

昨年、2024年産の全国作況指数は、平年並みの101であることを考えると、今年の米の供給力が半減したとは考えられません。仮に現場でいわれている例年の7~8割の取れ高だったとしても、高橋教授が示した需給ギャップのグラフのように、供給量が前年の半分になるとは考えられません。

前述の松平助教も述べているとおり、どうやらどこかが銘柄米を抱えて売らなかったことは確かなようです。




3.この癒着がコメ不足を招いている


高橋教授は、農水省はコメはJAに買わせるのではなく、個人直販にすればよいとしつつも、JAは農水省の天下りだらけだから無理ではないかと指摘しています。

この農水省の天下りについて、週刊文春が3月13日号付の記事「「この癒着がコメ不足を招いている」米価1.9倍の裏で 農水官僚28人がJA関連団体に“天下り”していた」で報じています。

件の記事の概要は次の通りです。
コメの価格高騰に歯止めが掛からない中、2009年以降、農水省からJA関連団体への再就職、いわゆる天下りをしたケースが28人に上ることが、「週刊文春」の取材でわかった。

政府は2月14日に備蓄米21万トンを放出することを公表したものの、コメの価格は5キロ当たり4000円に迫る勢いで高騰している。前年比で約1.9倍の値上がりだ。

「JAの要望に基づき、米の生産量をコントロールする減反政策を実質的に継続してきた結果、高水準の米価が維持されることになりました」(農水省関係者)

なぜ、農水省はJAの要望を受け入れてきたのか。

「JAの関連団体が事実上、農水官僚の天下り先になっているからです。この癒着の構図が結果的にコメ不足を招いていると言っていいでしょう」(同前)

そもそも2005年には、時の小泉純一郎政権が全農改革に着手。農水省は「全農改革チーム」を発足させ、ワーキンググループの資料では〈農林水産省の幹部職員が全農の役員に就職するという、いわゆる「天下り」は今後とも行わないということをこの際明言する〉などと宣言していた。

ところが、内閣官房の公表資料を精査すると、確認できる2009年以降だけで、28人の農水省職員がJAの関連団体に再就職していることが判明したのだ。

その象徴が、本川一善元農水次官(69)だ。本川氏は水産庁長官などを歴任後、2015年8月に農水次官に就任(2016年6月退官)。2017年に全農の経営管理委員に就任した。さらに、2020年には荒川隆元官房長(65)が本川氏の後任として、全農の経営管理委員に就任している。

全農は以下のように回答した。

――なぜ、根絶宣言をしたにもかかわらず、本川氏や荒川氏の天下りを受け入れるようになったのか。

「本川元委員、荒川委員は員外委員として、農業政策に知見を有する方として選任されています。『経営管理委員会』は定款により20名、そのうち5名は員外(会員の役員・使用人以外)と定めています。員外の経営管理委員は、司法関係、会計関係、消費者団体、農業政策、会社経営等に熟知されている方から選考しています。なお、これまでの農水省出身の経営管理委員就任者は2名のみです」

――減反政策を推進する農水省とJAの癒着がコメ不足を加速させているのでは?

「経営管理委員の員外委員は農業政策や司法関係などを熟知されている方を選考しており、ご指摘の内容は該当しないと認識しております」

農水省に見解を尋ねたところ、以下のように回答した。

――なぜ、根絶宣言をしたにもかかわらず、JA関連団体への天下りを再開したのか。

「農林水産省は、経済事業のあり方の検討方向に関する検討の中で、『農林水産省の幹部職員が全農の役員に就職するという、いわゆる「天下り」は今後とも行わないということをこの際明言する』としており、その後、平成19年(2007年)の国家公務員法改正によって現職職員による再就職あっせんが全面禁止されたことから、現職職員によるあっせんは行っておりません。このため、農林水産省は、個々の退職者の再就職の経緯について、国家公務員法に基づく再就職に係る届出制度の対象である離職後2年以内のOBについては届出の範囲内で承知していますが、それ以外のOBについては承知していません」

――減反政策を推進する農水省とJAの癒着がコメ不足を加速させているのでは?

「いわゆる減反政策については、平成30年(2018年)産より終了し、現在は、農業者や産地の自らの経営判断による『需要に応じた生産』を基本としているため、ご指摘には当たりません」

【以下略】
記事では、JA本体ではなく、JA「関連団体」となっています。それはどこなのかについて、今、一部で話題沸騰のITビジネスアナリストの深田萌絵氏は「コメを支配してるのは農協ではない。農民の農協は米を転売して決まった%もらうだけ。問題は子会社のパールライス。農水省の天下りの巣窟で、小泉総理を生み出すために市場にコメを出さなかった。いま、小泉総理期待論演出の為に、急にコメを市場に放出した」と指摘しています。

今や、地上波を中心にマスコミは進次郎農水相を持ち上げ、農協が悪いかのように報じていますけれども、農協本体と農水省の天下り先であるJA関連団体とを分けて捉えないと、あっという間に農協民営化の宣伝に流されてしまう危険があります。




4.郵政民営化と同じ


6月8日放送のテレビ朝日系「ビートたけしのTVタックル」では、進次郎農水相が進める備蓄米放出や、今後の農政改革の可能性をテーマに報じられました。

番組では、進次郎農水相の備蓄米放出とともに、かつて自民党の農林部会会長を務めたが、農政改革が思うように進められなかったことも紹介。番組に出演した元財務官僚の森信茂樹氏は「役所のOBとして感じるのは、今、農水省の役人の人は、これでホッとしていると思う。減反の問題のところはいろんなところから批判があって、農水省の役人にもおかしいじゃないか、変えようじゃないか、という意見はいっぱいあった。大臣が代わって、突破しましょうという感じになってきたので、これまでOBに忖度したり、農水議員に忖度しなくてはいけなかったのがなくなって、ゼロから考えられるようになった」と指摘しました。

また、その一方で、備蓄米がなくなることへの不安の声があがっていることや、海外のコメの輸入の是非なども議論されたのですけれども、同じく番組に出演したビートたけしは、これらの意見を受ける形で「もう完全に郵政民営化と同じだもん。日本の農業をアメリカに売り渡す、という。お父さんは郵政民営化、こっちは農業民営化」と述べています。

やはり、農協を売り渡すのではないかという危険性を感じている人は感じているということです。

6月4日、経済評論家の三橋貴明氏のネットチャンネル「三橋TV」に出演した、元全農常務理事で一般財団法人食料安全保障推進財団専務理事を務める久保田治己氏は、番組で、農協は今回手数料を圧縮して卸業者に卸し、卸業者が通常より高い手数料を上乗せしたという図を農水省が出したことを説明した上で、これが出ると農協を悪者にするというシナリオが崩れるから、江藤前農水相は更迭されたのだと、下衆の勘繰りと断った上で見解を示しました。

江藤前農水相の「米は買ったことない」発言とて地方公演での発言です。隠蔽しようと思ったらできた筈ですけれども、全国ネットで報じられました。確かに国民感情を逆なでする発言であったのは間違いないのですけれども、あの決断できない石破総理にして、さっと更迭したのが筆者には不思議だったのですけれども、もし、久保田氏の勘繰りした「裏」があったとしたら、それはそれで説得力があります。




5.今だけ、金だけ、自分だけの我利我利亡者


では、万が一、農協が民営化されたとしたらどうなるのか。前述の久保田氏は、6月配信の「JA教育文化Web」で「「今だけ、金だけ、自分だけ」VS「長期的、多面的、利他的」」という提言記事を寄稿しています。

件の記事の概要は次の通りです。
農協法を読んだことがあるだろうか。第 1章第 1条に「目的」が書いてある。

第一章 総則
第一条 この法律は、農業者の協同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もつて国民経済の発展に寄与することを目的とする。

農業生産力の増進と農業者の経済的社会的地位の向上は当然であるが、国民経済の発展にまで寄与することが目的になっている。これと比べ、日本に 1 7 0万社ほどもあるという株式会社の目的は何なのだろうか、と疑問が湧いてくる。そこで、会社法を紐解くと第1章第1条に目的は書いていない。しかし、第2編第1章の第 2 7条に、

 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。一 目的

と定められている。つまり、法的な目的はなく、会社が自ら定款で定めればよい。株式会社は、国民経済の発展に寄与する義務はないのだ。ということは、国民経済の発展を阻害してもいいし、国民経済から収奪してもいいと解釈することもできる。

では、目的以外の農協と株式会社の違いは何であろうか。教科書的には農協は、①一人1票制、②所有者と経営者と利用者が同じ、などいくつかの違いは載っている。しかし、株主が社長一人であれば経営者も同じで社長の資産管理会社であれば利用者も同じということも有りうる。しかも、定款で定めれば農協も株式会社も同じ事業を行うことができる。

筆者の長年の経験から農協と株式会社の業務遂行上の考え方の特徴を分かり易く比較してみると、以下の表になる。
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「今だけ、金だけ、自分だけ」という言葉がある。必ずしも、全ての株式会社に当てはまるわけではないが、新自由主義的な多国籍企業などには当てはまるだろう。しかし、この言葉は農協には当てはまらない。農協に限らず漁協や森林組合、生協などの協同組合は、逆に考え、行動する。つまり、今だけの逆は「長期的」、金だけの逆は「多面的」、自分だけの逆は「利他的」である。また、「今だけ、金だけ、自分だけ」の株式会社は、他者(社)を蹴落としてでも勝ち組を目指す。逆に農協(協同組合)は、苦労している仲間を助けて負け組を作らないように努力する。

しかし、「長期的」「多面的」に考える人や企業は多いが、「利他的」に考え、行動していてはその企業は競争に負けてしまう。だから、協同組合は、世界の常識として法人税率の軽減と独占禁止法の適用除外や、様々な品目ごとの公的規制で法的に保護されている。

ここ数十年の世界は、極端なグローバル化が持てはやされ、規制は悪であるかのような風潮を作り出し、次々と規制の緩和、撤廃が進められてきた。その結果、「今だけ、金だけ、自分だけ」の外資系のグローバル企業等は、莫大な利益を出し、それを海外の株主に送金してしまうことから、「国民経済の発展を阻害」してきた。

しかし、株式会社の中にも優れた会社が多数存在していることも事実である。つまり、考え方の違いは相対的な違いに過ぎない。

では、農協(協同組合)と株式会社の「絶対的な違い」は何であろうか。株式会社は、出資・買収を繰り返して巨大な多国籍企業に成長できる。また、競争相手に対しては「敵対的買収」を仕掛けて支配下に置いてしまうことも日常的に行われている。ところが、農協(協同組合)は組合員が出資して作った組織であることから、1 0 0兆円の金を積んでも買収することができない。しかも、農家も漁師も林業経営者も数世代にわたって長年その土地に住み地域の人達と苦楽を共にしてきた日本人である。日本の農協も漁協も森林組合も、「日本人の、日本人による、日本人のための」組織なのだ。

農協も、その連合会の全農も全共連も農林中金も、株式会社化しない方が絶対に日本人と日本国のためである。
「今だけ、金だけ、自分だけ」とは最近流行りの言葉ですけれども、ネガティブな意味で使われているように見えます。古い言葉でいえば「我利我利亡者」です。

我利我利とは、自分さえよければ他人なんてどうなってもよく、相手を踏みつけにしても、自分だけが儲かりたい、認められたいという意味です。利己主義の最たるものです。

これに対し、久保田氏は、農協は、相互扶助の精神のもとに組合員の営農とくらしを守り、国民経済の発展に寄与することを目的につくられた組織だという発足時の理念を取りあげ、その行動様式は「長期的、多面的、利他的」として、「今だけ、金だけ、自分だけ」の対極にあると述べています。

そして今の株式会社組織、とりわけ外資系のグローバル企業等は、この「今だけ、金だけ、自分だけ」の代表格であり、農協を株式会社化することは、日本の為にならないと力説しています。

我々も、マスコミの煽りに乗って農協を悪者にする前に、農協を民営化することが「ジャパン・ファースト」になるのかどうか、ちゃんと考えるべきだと思いますね。



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この記事へのコメント

  • かも

    農協法にどう書いているかにかかわらず,我利我利亡者は農協です。
    農民に美談を押しつけ,安く買いたたいて,流通をコントロールして買い取り価格を抑え込んで高く売る工作を常に最優先にしているのです。
    その上に高い肥料や農薬を独占販売し,高額の農機具を農民に売りつけて借金を作らせて搾取する構造を作っているのです。
    加えて,共催だの施設利用料だの手数料だのと至る所で金が支配する拝金構造も作ってJA銀行で大もうけしているのです。
    とてもじゃないがJAの理念などに信頼できるなにものもないのです。
    イオンや楽天やアマゾンが集荷して精米して袋詰めして小売りするルートを作ればあっという間にJAの利益構造など吹っ飛ばしてしまいます。
    農水省がまたぞろそれを禁止して独占を維持しようとするでしょう。
    それでは何も解決できないだろうとことは火を見るより明らかです。
    JAを完全にバイパスする構造を作ることです。自由化です。
    2025年06月10日 10:04
  • みどりこ

    農協解体・民営化はカーギルに売るため。
    父親が郵政をアメリカのATMにしたのと同じ。
    「今だけ金だけ自分だけ」なのは政治家の殆どが帰化系だからでは。
    日本人は同族ではないから人間と見なしていないと思う。
    2025年06月10日 13:56
  • 黒字部門が赤字部門を支えるという構造は旧国鉄や郵政と同様ですね。
    旧国鉄でいえば日本はよりにもよって「分割民営化」という最悪のスタイルを選んでしまいました。おかげで、儲からない地域の線路がひっぺがされつつあります。
    当たり前です。JR東海など、誰が社長をやっても黒字になる。それに対し、JR北海道やJR四国は、誰が社長をやっても赤字になるんですよ。
    だからこそ、儲かる地域の黒字で、赤字の鉄道を支える構造だったのを、分割民営化でぶち壊した。JR北海道やJR四国は、もはや国営に戻すしか存続不可能でしょう。
    2025年06月10日 17:18