

1.渦中の東京都議選
6月22日投開票の東京都議会議員選挙に向け、各党の党首や幹部が街頭演説を行いました。
各党の主張の概要は次の通りです。
自民党 井上都連会長東京都議会選挙には、各党合計で295名の候補者を擁立。127の議席を争います。
都議会自民党でも政治資金パーティーの問題を起こしたが信頼をもう一度取り戻していく。いちばん困っていることは間違いなく物価が高いということだ。小泉農林水産大臣が備蓄米の放出をスピーディーに行い、お米の値段も少しずつ下がってきた。物価高騰対策をやりながら所得を増やしていく。両方をやっていく
都民ファーストの会 小池特別顧問
東京都の執行部と都議会とが呼応しあって今のチルドレンファーストの東京をつくっている。保育料の第2子の無償化をさらに一歩進めて第1子からの無償化を進めていく。婚姻率も増えてこれは明るい兆しだ。選択の幅を広げようと取り組んでいる。都議会でしっかりとそれを理解して、ともに動く仲間が必要だ
公明党 竹谷代表代行
国ではできないような思い切った政策もできるのが東京都の強みだ。都議会公明党が推進して、高校授業料の無償化での所得制限の撤廃や、学校給食の無償化を実現してきている。さらに、教材費や修学旅行費の無償化を東京で実現していきたい。
共産党 田村委員長
暮らし応援の東京都へと大きく変えていきたい。中小企業が賃上げをしたら1人あたり12万円の賃上げ助成を始めていこう。都営住宅も入りたい人がいるのに1つもつくっていない。空いている民間住宅を借り上げて都営住宅として提供し、住み続けられる東京への転換を果たしていきたい
立憲民主党 大串代表代行
生活重視の政治は、裏金にまみれた政治では絶対にできない。自民党や都議会自民党はいまだにその不信の払拭に全く力を割こうとしない。それで私たちの物価高に苦しむ生活に目線を向ける政治が本当にできるだろうか。できるわけはない
日本維新の会 吉村代表
政権与党が急に2万円を配るというが、だらしないし情けない。それなら最初から税金を取らなければいいのではないか。国政政党としては社会保険料を下げる改革、東京維新の会では都民税を下げる改革をセットでやらせてもらいたい
東京・生活者ネットワーク 岩永共同代表
生活に密着した暮らしに優しいまちづくりを進めていく。空き家や空き室を利活用し、公営住宅として提供することは、大きな物価高対策にもなり、同時に少子化対策にもなる
国民民主党 玉木代表
今回の都議会議員選挙の私たちのメインテーマも『都民の手取りを増やす』。家賃補助の拡充などで住むことにコストがかからないようにして都民と国民の手取りを増やす夏にしていきたい
れいわ新選組 櫛渕共同代表
小池都政で進めてきた大規模再開発は資本家や大企業にお金が落ちる政策ばかりだ。それを物価高で苦しむ人にまわして、使えるお金をまずは増やすことを積極財政でやりたい
参政党 神谷代表
中小企業を支援し、子どもたちがいる家庭に直接の給付をしっかり行う。外国人が増えオーバーツーリズムや治安が心配だという声もあり、そういったところにも対応していきたい
日本保守党 百田代表
世界に誇る大都市、東京は税金が高すぎる。都民税を下げる必要がある。もう1つは就労外国人だ。日本に来るかぎりは日本のマナーとルールをしっかりと守ってもらいたい
社民党 服部幹事長
大都会はコンクリートやアスファルトで埋め尽くされ、車優先の社会となっている。地球環境と調和する東京都を皆さんと一緒に実現していきたい
再生の道 石丸代表
党としては公約や政策を掲げていない。いいものはいい、でも悪いものは悪いときっぱり言える。新たな道をもって日本の再生を進めていく

2.再生の道は途切れている
マスコミ各社は議席予想を出していますけれども、共同通信社は14、15の両日、都内の有権者約千人に電話調査を行いました。投票先は選挙前勢力30の自民党が16%で最も多く、立民と共産が11%、都民ファが10%、国民民主党が6%、公明党が5%となっています。れいわ新選組と日本保守党は4%で、参政党と、石丸伸二・前広島県安芸高田市長が代表の地域政党「再生の道」は3%。無所属の候補や、社民党、日本維新の会、地域政党「東京・生活者ネットワーク」はそれぞれ1%です。また、現時点で17%が投票先を決めていないとのことです。
また、朝日はインターネットによるトレンド調査を告示1週間前の6月6~7日と告示直後の13~14日に実施しています。
13~14日の調査では、都議会第1党の自民は28%(前回31%)とわずかに減少。立憲民主は14%(同15%)、国民民主は11%(同12%)とほぼ変わらず。小池百合子都知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」は12%(同10%)。公明6%(同5%)、共産5%(同6%)、「再生の道」は2%(同2%)です。こちらでは、投票態度を明らかにしていない人が半数もいるとのことですけれども、朝日だから答えなかったのか、ちょっと興味深い現象です。
また、元産経新聞記者の三枝玄太郎氏は、6月16日配信の自身の動画チャンネルで、都議選を次のように予測しています。
東京都議選(6月13日告示、22日投開票)について、最初の週末が終わりました。これまでのところ、国民民主党の風は、山尾志桜里氏のドタバタ騒動でやみ、自民党も立憲民主党もそれほど増減はない、と予想します。また都民ファーストが漁夫の利を得て、まあまあ勝つと思われ、日本維新の会が1~2議席、参政党が1議席を窺う状況と、僕は勝手に予測しています。三枝氏は、自民・立憲は現状維持、石丸伸二氏の「再生の道」が議席を取れないと予測しています。
注目選挙区を見てみます。千代田区は保守が分裂しました。区議会はほぼ林則行候補で一本化していますが、「都政のドン」と言われた内田茂・元幹事長の娘婿、内田直之氏が出馬しています。一方、都民ファーストは千代田区長も抑えており、現職の平慶翔氏が有利とみられています。
杉並区は自民党の早坂義弘氏が公認を得ましたが、幹事長経験者の小宮安里氏は不記載問題が影響して、今回は無所属での出馬です。「再生の道」は杉並区に3人立候補させていて、共倒れが懸念されます。また自民党区議団の一員だった国崎隆志氏は国民民主党から出馬しましたが、国民民主の風がやんでしまった現状で、どこまで闘えるか? ここは都民ファースト現職の茜ケ久保嘉代子さんが頭ひとつ抜けているほかは、自民の早坂さん、無所属の小宮さん、公明党から出馬の松葉多美子さん、国崎さん、ここに生活者ネットワークの小松久子さんが並んで横一線という印象です。定数6に17人が挑む激戦区です。
中野区は都民ファーストで、小池百合子知事側近の荒木千陽氏は盤石といった感じです。
練馬区は都民ファーストの現職が強いところです。ここは自民党候補の柴崎幹男氏、山加朱美氏のほか、無所属で小川佳子氏が出ています。小川氏は無所属ながら練馬区議団の多くが支持しており、結果が気になるところです。
世田谷区は定数8に18人が挑む激戦区です。福島理恵子氏(都民ファ)と高久則男氏(公明)が強いところですが、ここは参政党が1議席狙えるところと言われており、関係者も力を入れています。
江東区はベテランの山崎一輝氏(自民)の返り咲きなるか、また木村勉・元衆院議員の孫、高橋巧氏が国民民主党から出馬しており、ここでも「山崎家対木村家」の構造となっています。ここは選挙に強い無所属の三戸安弥氏や公明党の細田勇氏、都民ファの白戸太朗氏、立憲民主党の千葉早希恵氏、共産党の大嵩崎かおり氏が、山崎氏、高橋氏含めて横一線という感じです。
武蔵野市は自民現職の東真理子氏が当初、劣勢と言われた情勢を挽回し、良い勝負をしているといわれています。東氏、武蔵野市長選で惜敗した無所属の笹岡裕子氏、国民民主党の松井隆雄氏が横一線という感じです。
というわけで、自民党は25~35議席前後、立憲民主党も10~13議席前後で概ね現状維持。国民民主党は8議席くらい。公明党は20議席前後、共産党は10議席台前半と予想しています。維新は1議席、とって2議席。参政党は1議席を窺い、再生の道は0と予想しています。世田谷区も再生の道が3人出馬しています。
3.地殻変動が起こる地方
東京都議会選の予測をみる限り、自民は負けず、立憲は勝てず、であまり変わらないとの予測なのですけれども、地方では、自民は想定外の敗北をしています。
6月15日投開票の神奈川県の三浦市長選では、無所属新人で元化学メーカー社員の出口嘉一氏が、自民推薦で現職の吉田英男氏を破り、初当選しました。
選挙戦では、人口の減少、多選の是非などが争点となったのですけれども、出口氏は現市政を「三浦市は20年の間に衰退が続いている。行政が市民の方を向いていない」と批判。会社員時代の経験で得た発想を基に、教育と子育て、就農支援、高齢者対策、情報公開を公約の4本柱に掲げて市政改革を訴え、吉田氏の6選を阻みました。
三浦市は、小泉進次郎農水相の地盤ですからね。そこでの自民推薦候補の敗北に地殻変動が起こっているのではないかと見る向きもあります。
また、5月25日投開票の静岡県・伊東市長選では、元市議で無所属新人の田久保真紀氏が、無所属現職で自公推薦の小野達也氏を破り初当選しています。田久保氏は、2023年の市議選で最下位当選し、今回の市長選の出馬表明も間際だったのですけれども、最大の争点になった新しい市立図書館の整備計画に反対を訴え、SNSを中止に支持を集め勝利に漕ぎつけました。
一方敗北した小野氏は、新図書館整備について、物価高を背景に「支援者の中にも支援を広げにくい、との声はあった。今の生活苦の中では違うものを、という結果の表れだと思う。説明を尽くしたが、有権者には届かなかった」と振り返り、自公の推薦を受けたことついては「結果的に少し影響はあったと思う」とコメントしています。
また、新市長となった田久保氏がSNSを通じて支持を広げたとされることには「私たちは今までの戦いを続けてきたが、少し考えが甘かった」と述べています。
更には、4月6日投開票の秋田市長選でも、4期16年の長期政権を築き、自民、公明、社民の3政党から推薦・支持を得て、約140もの企業・団体から推薦状を獲得。そして、市内35地区に広がる個人後援会が動くという盤石の態勢を整えた現職の穂積志氏が、前回2021年の市長選で退けた無所属の沼谷純氏にダブルスコアに近い大差で敗れています。
4.勢いづく参政党
そして、細かく見ていけば、地方選では少数政党が台頭し始めています。
6月15日投開票の兵庫県尼崎市議選では、参政党の高野由里子氏がトップ当選を果たし、NHK党の福井完樹氏や、れいわ新選組のやはたオカン氏、日本保守党の尾ノ上直子氏も当選するなどしています。
党派別では自民6人、立民2人、公明12人、共産3人、維新7人、国民1人、れいわ1人、参政1人、保守1人、諸派2人、無所属6人となっていますけれども、ここにきて参政党の勢いが注目を集めています。
6月14~15日に産経新聞とFNNが実施した合同世論調査で、前回5月17~18日の前回調査に比べ参政党が著しく伸びています。政党支持率は3.9%で前回の1.3%の3倍。参院選の比例代表でどの党に投票するかという質問の回答は3.6%で前回の1.7%の2倍超となっています。
政党支持率では、参政は日本維新の会(2.7%)、公明党(3.3%)、共産党(2.6%)、れいわ新選組(3.5%)を逆転し、自民党(24.7%)、国民民主党(7.9%)、立憲民主党(6.8%)に次ぐ4位に浮上。参院選比例投票先としては、自民(24.5%)、立民(9.6%)、国民(8.8%)、公明(4.1%)、れいわ(4.1%)、維新(3.8%)に迫り、共産(3.0%)を抜いています。年代別にみると、20代以下の男性で参政は国民、れいわに次ぐ3位となり、自民や立民を上回っています。
政党支持率、参院選比例投票先のいずれの回答でも国民民主の数字が落ちていることから、参政党に流れた可能性があるとも指摘されていますけれども、そうだとすると、国民から剥がれた保守票が流れてきているのではないかと思われます。
今度の都議会選、来月の参院選と、地方選で勢いを見せている少数政党が何処まで健闘するのか、注目してみたいと思います。
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