

1.イランの核施設を空爆した
6月22日、アメリカのトランプ大統領は、アメリカ軍がイラン国内3カ所の核施設を空爆したと発表しました。
トランプ大統領は、この攻撃について、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に、次のような投稿を行いました。
フォルドゥ、ナタンズ、エスファハーンを含むイランの3つの核施設への攻撃は、大成功を収めた。すべての航空機は現在、イランの領空外にある。主要施設であるフォルドゥに爆弾を投下した。すべての航空機は無事に帰還中だ。偉大なアメリカの戦士たちに祝意を表する。これほどの偉業を成し遂げた軍隊は、世界中どこにも存在しない。今こそ平和の時だ! この件にご関心をお寄せてくれて、ありがとう。更にトランプ大統領はホワイトハウスでテレビ演説を行いました。
その内容は次の通りです。
・ドナルド・トランプ大統領による土曜日のイランへの米軍空爆に関する演説FOXニュースは、アメリカ軍はフォルドゥ核施設の攻撃に6発のバンカーバスターを投下。ナタンズとイスファハンにある核施設の攻撃にはアメリカ海軍の潜水艦からトマホーク巡航ミサイル30発を発射したと報じていますけれども、米国防総省幹部は、攻撃に使われたのはバンカーバスター「GBU-57」で、一つの核施設に対してこのバンカーバスター2発ずつを使ったとBBCに語っています。
どうもありがとう。
つい最近、米軍はイラン政権の主要核施設3カ所、フォルド、ナタンズ、エスファハーンに対し、大規模かつ精密な攻撃を実施した。この恐るべき破壊力を持つ施設を建設していた彼らは、長年にわたりこれらの施設の名前を耳にしてきた。
我々の目的は、イランの核濃縮能力を破壊し、世界一のテロ支援国家による核の脅威を阻止することだった。
今夜、私は世界に向けて、今回の攻撃が目覚ましい軍事的成功を収めたことを報告できる。イランの主要な核濃縮施設は完全に壊滅した。中東の暴君であるイランは、今こそ和平を果たさなければならない。そうでなければ、今後の攻撃ははるかに大規模になり、はるかに容易になるだろう。
イランは40年間、「アメリカに死を、イスラエルに死を」と言い続けてきた。彼らは道路脇の爆弾で私たちの国民を殺し、腕や足を吹き飛ばしてきた。それが彼らの得意技だった。私たちは1000人以上を失い、中東全域、そして世界中で数十万人が、特に彼らの憎悪の直接的な結果として亡くなった。彼らの将軍、カシム・ソレイマニによって殺された人は非常に多くいる。私はずっと前に、こんなことはさせないと決意した。こんなことは二度と起こさせない。
ビビ・ネタニヤフ首相に感謝と祝意を申し上げる。私たちは、おそらくかつてないほどのチームワークで協力し、イスラエルに対するこの恐ろしい脅威を根絶するために長い道のりを歩んできた。イスラエル軍の素晴らしい働きにも感謝する。そして何よりも、今夜あの素晴らしい航空機を操縦した偉大なアメリカの愛国者たち、そして世界が何十年も経験したことのないような作戦を遂行したアメリカ軍の皆さんに祝意を申し上げる。
願わくば、今後はこのような立場で彼らの力を必要としなくなるだろう。そう願っている。また、統合参謀本部議長、ダン・「ラジン」・ケイン将軍、素晴らしい将軍、そして今回の攻撃に関わったすべての優秀な軍人の方々に祝意を表したいと思う。
とはいえ、このままではいけない。平和が訪れるか、イランにとって過去8日間で私たちが目撃したよりもはるかに大きな悲劇が訪れるかのどちらかだ。忘れてはならない、まだ多くの標的が残っている。今夜の攻撃は、これまでで最も困難で、おそらく最も致命的だった。しかし、平和がすぐに訪れなければ、我々は他の標的を正確かつ迅速かつ巧みに攻撃する。そのほとんどは数分で排除できる。今夜我々が行ったようなことを、世界中の軍隊で成し遂げられるはずはない。全く及ばない。ほんの少し前に起こったようなことを、成し遂げられる軍隊はかつて存在しなかった。
明日、ケイン将軍、ピート・ヘグゼス国防長官は午前8時にペンタゴンで記者会見を行う。皆様に感謝申し上げる。特に神に。私たちは神を愛している。そして、偉大な軍隊を愛している。彼らをお守りください。中東に神の祝福がありますように。イスラエルに神の祝福がありますように。そしてアメリカに神の祝福がありますように。本当にありがとう。
今回の核施設への攻撃については、トランプ大統領は19日に今後2週間以内に判断を下す可能性があるとの見通しを示していただけに、意外感をもって受け止められているようです。
筆者は、20日のエントリー「トランプとハメネイそしてプーチン」で、ここ数日が山場になるのではないかと述べていたのですけれども、図らずも、そのようになった感じです。
2.この場所はすでに避難されている
この爆撃に対し、22日、イラクのアラグチ外相はX(旧ツイッター)で「国連安全保障理事会の常任理事国である米国は、イランの平和的核施設を攻撃することで、国連憲章、国際法、NPTの重大な違反を犯した。今朝の出来事は言語道断であり、永続的な影響を及ぼすだろう。国連加盟国は皆、この極めて危険で無法かつ犯罪的な行為に警鐘を鳴らさなければならない。国連憲章および自衛のための正当な対応を認めるその規定に従い、イランはその主権、利益、国民を守るためにあらゆる選択肢を留保する」とツイートしました、
また、イランの原子力庁はアメリカによる核関連施設3カ所への攻撃を「野蛮な攻撃」と非難。「この無法な行為によって、国家的産業としての原子力開発が阻止されることはない」との声明を出しています。
そして、イラン革命防衛隊はソーシャルメディアに「今、我々にとって戦争が始まった」と投稿。さらに、イラン国営テレビの解説者は、この地域にいるすべてのアメリカの民間人や軍人が正当な標的になったと述べています。
当初、革命防衛隊は当初、攻撃があったことを否定し、「今のところトランプ大統領の主張を裏付ける証拠は何も発表されていない……トランプ大統領の発言は単なるメディアショーである可能性もある」としていたのですけれども、その後、イラン国営テレビが3つの核施設から避難したことを確認。イランのタスニム通信は、コム市で防空システムが作動した後、22日未明にフォルドゥ核施設周辺の一部地域が敵の空爆を受けたと、コム市の危機管理本部報道官の話として報じました。
更に、最高指導者ハメネイ師の「代理人」を自称する保守派の強硬派紙カイハンの編集長、ホセイン・シャリアトマダリ氏は「アメリカによるフォルドゥ核施設への攻撃に続き、今度は我々の番だ……ためらうことなく、遅滞なく、第一歩としてバーレーンに拠点を置くアメリカ海軍艦隊へのミサイル攻撃を開始し、同時にホルムズ海峡をアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの船舶に対して閉鎖する必要がある」と述べたとされ、また、イラン国会議長モハンマド・バゲル・ガリバフ氏の顧問マフディ・モハンマディ氏は、「この場所はすでに避難されており、攻撃による回復不能な被害は受けていない……確かなことが二つある。第一に、知識は爆破できないということ、第二に、今回はギャンブラーが負けるということだ」と、イランはフォルドウへの攻撃を予期していたと語っています。
3.人的被害ゼロ
このように、核関連施設が爆撃されたのは本当のようですけれども、どこまで成果があったのかについては、少し時間が必要になるかもしれません。
アメリカ国防総省や国務省の幹部を歴任したマーク・キミット元陸軍准将は、アメリカがイランの核施設に「大規模な攻撃」を行ったのは明白だとしつつも、被害の程度を確認するには正式な評価が必要だと述べ、フォルドの核施設に対して複数の「バンカーバスター」が使用されたなら、「施設が機能停止に陥っている可能性の方が高い」との見方を示しました。
また、アメリカのシンクタンク「民主主義防衛財団」の上級研究員ベナム・ベン・タレブル氏はアメリカ軍の攻撃が成功したなら、イランの核開発計画は「深い痛手」を負ったはずだと評価した上で、アメリカによる攻撃の目的がイラン政権の「斬首」だとイラン政権が受け止めれば、最高指導者ハメネイ師は反撃する可能性があると指摘。「誇りと慢心と、ステータスを求める政権」の野心が、対立の激化につながるかもしれないとし、トランプ大統領の相次ぐ発言にハメネイ師は緊張緩和の方策を見出すかもしれないと述べています。
けれども、今回の爆撃について、今のところ、イラン政府は、正式にアメリカに対して宣戦布告するなどの反応を見せていません。
CBSニュースによると、アメリカは21日の時点で「外交的」にイラン政府に接触し、米軍による攻撃は核施設の破壊のみが目的で、「体制転換の取り組みは計画していない」と伝えていたとのことです。
前述したイラン国会議長顧問のモハンマディ氏がこの場所はすでに避難されていたと述べているように、今のところ、人的被害は報告されていません。
これについてネットの一部では、事前にイランと裏で“話をつけた”とも噂されているとするなど、「芝居だ」という意見もあるようです。あとは報復合戦の芝居をちょっとやって終わりだ、というのですね。
もしそれが本当ならまだ救いがあるのですけれども、その「台本」どおり事が運ぶかどうかは別問題です。イランの最高指導者ハメネイ師が国内のハネッかえりを抑えておけるのか、トランプ大統領がネタニヤフ首相を大人しくさせておけるのか、細かい火種は残ったままですから。
その意味では、まずは、バンカーバスターが本当にイランの地下核施設を破壊したのかどうかがポイントになる筈です。それによってアメリカもイランも各々の判断が変わってくることは間違いないと思われるからです。
ともあれ、今後の成り行きに注目したいと思います。
トランプ大統領が、フォックスニュースに語りました〜📺✨どでかいミサイルをぶっ放したけど死傷者ゼロ。神業アメリカ軍❣️流石トランプ大統領♥️
— トッポ (@w2skwn3) June 22, 2025
事前にイランと裏で“話をつけた”ともウワサされてて、
実は何もない場所に派手にぶっ放した説が急浮上です🤫🕵️♂️💥
具体的には…… pic.twitter.com/MFlh7UypHT
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