

1.東京都議会議員選挙
6月22日、東京都議会議員選挙が投開票され、42の選挙区の127の議席が確定しました。
確定投票率は、47.59%で4年前の選挙より5.2ポイント高くなりましたけれども、とくに期日前投票が25%以上伸びています。
結果は次表の通りです。

・自民党は12議席減の18議席で、無所属当選3名の追加公認を入れて21議席。
・公明党は4議席減の19議席
・立憲民主党は5議席増の17議席。
・維新は1議席失って0議席。
・共産党は5議席減らして14議席。
・国民民主党は議席なしから9議席。
・参政党も初の3議席を獲得。
・れいわは議席獲得ならず
・日本保守党も議席獲得できず
・東京・生活者ネットワークは前回と同じ1議席
・社民、再生の道も議席獲得できず
2.歴史的大敗の自民党
一言でいって、第一党を失い、4割近く議席を減らした自民の大敗といってよいかと思います。追加公認した自民系無所属を入れても過去最低だった2017年の23議席を下回る散々な結果です。
自民は会派政治資金パーティーでの裏金作りが立件された事件を受け、会派幹事長経験者6人を非公認にしたのですけれども、22日の出口調査によると、62%の有権者が裏金問題を「考慮した」と回答したところを見ると、やはり裏金事件が足を引っ張ったことは間違いありません。
この結果に、自民の木原誠二選対委員長は党本部で記者団の取材に「第1党はなかなか維持は難しい。他方で、引き続き大きな勢力をいただいたことも確かだ」と述べ、参院選について「今回の都議選の結果が参議院選挙に直結するものではない……参議院選挙は参議院選挙としてしっかり戦っていきたい」と語っていますけれども、これまで都議選は「国政の先行指標」と言われてきたことを考えると、木原選対委員長の発言は半分以上強がりに聞こえてしまいます。
この敗北について、法政大学大学院教授の白鳥浩氏は、次のように解説しています。
この都議選の結果は、自民党にとってはショッキングなものである。過去最低の議席ということとなり、参院選への対応を改めて考える必要があるということだ。6月3日のエントリー「進次郎効果と消えた21万トン」で取り上げましたけれども、このときの世論調査で石破内閣の支持率が34.6%と下げ止まったことから、白鳥教授は「この「進次郎効果」は、備蓄米の早期の流通、そして2千円台の販売によってさらにその支持率を押し上げていく可能性がある……都議選まで一月ない中でのこのトレンドは、今後の選挙に影響を与えるとも考えられる」と分析していましたけれども、蓋を開けてみれば、歴史的大敗。
石破内閣の支持率は下げ止まったとはいえ、都議選では厳しい結果となっていることから見ても、参院選はそう簡単ではないことが改めて浮き彫りとなった。
都議選では、国政のみならず、都議会でも発覚した自民党の「政治とカネ」の問題が尾を引き、さらに「知事与党」として都民ファーストの影に隠れてしまったところもある。
対する野党でも、SNSや動画サイトを効果的に使用した、国民民主党や参政党が新たに議席を獲得、躍進するなどの最近のトレンドは健在であった。
自民党にショッキングなのはさることながらながら、白鳥教授にとってもショッキングだったかもしれません。
3.躍進する参政党
今回注目を集めたのは何といっても参政党でしょう。初の議席獲得。しかも4人擁立して3人の当選です。
NHKの世論調査だと、参政党の政党支持率は今年1月はわずか0.3%でした。ところが6月の調査では1.9%と急伸しています。
参政党の神谷宗幣代表は港区の党本部で開いた記者会見で、初議席について「議席を取れるなら世田谷と思って臨んでいた。候補者の活動量が勝因になった」と分析。他の要因として、党の知名度向上に言及し「代表選や党決起大会、憲法草案の発表を本部で企画し、活動を重ねてきた。批判もあったが、ネット上で認知を高めることができ、交流サイトで圧倒的に検索数が多いというデータもある。それがうまくいった」と語っています。
今回の参政党の躍進について、JX通信社代表取締役の米重克洋氏は次の分析をツイートしています。
直近の参政党支持層の傾向を見ると、かつては安倍政権を支持していた若い世代が流入している様子が見てとれる。かつて安倍政権を支持していた若い世代が参政党支持に流れたというのですね。
選挙ドットコムとJX通信社の定例調査(6月)の中で、密かに政治意識についても色々と聞いているのだが、それを見ると参政党支持層はかつての安倍政権に肯定的な評価をする人が6割に上っている。野党の中でも最多クラスで、自民党と同等だ。一方、旧民主党政権を肯定的に評価する人は1割しかおらず、野党各党の支持層で最も少ない。その他、既成の政党に不信があり、直近で国民民主党を支持していた若い世代も一定程度含まれる。
要はかつて安倍政権下で自民党が支持層に包摂してきたような層を、今の自民党が抱えきれなくなった結果、国民民主にながれ、更にその先で参政党にたどり着く・・・といったことが起きているのではないか。
自民党は岸田政権後期から石破政権にかけて、50代以下の若い世代の支持層が大量に流出し、すっかり高齢層偏重の下ぶくれ的な支持構造になった。結果、参院選で「右派の新しい受け皿」として参政党が伸びる可能性が出てきている。そんな予感を更に強めるのが、都議選での同党の初の議席獲得だ。
この米重氏のツイートに、参政党の政策ポジション資料をリツイートした人もいるのですけれども、この表の各政党に今回の都議会選での議席増減を乗せてみると立憲民主以外のリベラル政党(表の左側)は軒並み議席を減らしていることが分かります。
もし、米重氏が指摘するように、安倍政権を支持していた若い世代が、「国民民主にながれ、更にその先で参政党にたどり着く」現象が起きているとするならば、この層は「積極財政」に「国益重視」の政策を求めていて、その受け皿が事実上「参政党」しかないことになります。
もっとも、保守を謳う政党としては日本保守党もありますけれども、この表でどのあたりにプロットされるかは興味深いところです。
直近の参政党支持層の傾向を見ると、かつては安倍政権を支持していた若い世代が流入している様子が見てとれる。…
— 米重 克洋 (@kyoneshige) June 22, 2025

4.大手メディアとSNS
今回の参政党の躍進を見てつくづく筆者が思うのは、大手メディアとSNSとの情報格差というか分断というか、その報道内容の差がひどくなっていることです。
選挙報道でも、参政党が国政政党であるにも関わらず「諸派」として隠し、各政党の公式Youtubeチャンネルの登録者数で一位のれいわ新選組と二位の参政党を外して報じてみたり、中立性の欠片もない報じ方をしていました。
にも拘らず、参政党は議席を獲得した。これはオールドメディアの影響力が低下していることのなによりの証左だと思います。
相対的にSNSの力が強くなり、自分で情報を取りに行く層が着実に増えていることも窺わせます。
その意味では、千代田区で無所属の佐藤沙織里氏が当選したことは象徴的に見えます。
佐藤沙織里氏については、1月31日のエントリー「千代田区長選の減税公約」で取り上げたことがありますけれども、佐藤沙織里氏は千代田区を地盤としてずっと選挙を戦ってきた人です。
選挙カーもなく事務所もなく、あるのは自身のYoutubeチャンネルの登録者37万人。これまでの選挙戦でも交流サイト)を駆使し、今回の選挙でも自身のチャンネルの動画の再生回数は1万〜2万回に上ったとのことです。
一人区の千代田区での当選は無理だと散々言われた中でもやり遂げました。
かつて佐藤沙織里氏はNHK党の立花氏が立ち上げた政治家女子48党に所属していたことがあるのですけれども、立花氏に認められ、一時は党首の座を禅譲されようとしたそうです。それは結果として断ったのですけれども、佐藤氏は政治家を志したとき、その立花氏から5~6時間に渡って「政治家なんてやらないほうがいい」と諭されたにも関わらず、頑として譲らなかったのだそうです。
それを知るにつけ、この強い意志があってこその当選だったのだと納得しました。
ゆっくりではありますけれども、確実に世の中は変わっています。自分の頭で考え行動すること。今もっとも大事なことではないかと思いますね。
この記事へのコメント
それでも参政党の支持率が急伸しているのだから、参院選に向けてかなりの追い風が吹いているのは確かでしょう。
世論調査は主に電話(携帯・固定)で行われるが、現代では知らない番号からの着信に応答する人は限られる。
特に昼間の電話に出るのは以下のような傾向の人:
1. プライバシーリテラシーの低い高齢者:知らない番号でも気軽に出る。
2. 昼間仕事がなく、暇な高齢者:どんな電話にも対応する時間がある。
3. 世論調査に応じる暇な高齢者:電話に出た後、忙しいと断らずに回答する。
その結果、世論調査の回答者は高齢者に偏る可能性が高い。