中国組織が日本からフェンタニルを密輸していた疑惑

今日はこの話題です。
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1.中国組織が日本ルートでフェンタニルを密輸


6月26日、合成麻薬「フェンタニル」をアメリカに不正輸出する中国組織が日本に拠点をつくっていた疑いが判明したと日経新聞が報じています。

不正輸出の中心人物が名古屋市に法人を登記し、少なくとも2024年7月まで日本から危険薬物の集配送や資金管理を指示していたというものです。

フェンタニルとは癌患者の苦痛緩和などに使う医療用麻薬。「オピオイド」と総称する麻薬性鎮痛剤で、1960年代から医療現場でがん患者の終末ケアなどに使われています。脳と脊髄に作用し、神経伝達物質の放出を抑えて痛みを和らげたり、多幸感を引き起こしたりする作用があります。

フェンタニルは本来、アメリカ食品医薬品局(FDA)も認可する医薬品なのですけれども、問題になっているのは、違法に製造されたフェンタニルによる若者の不法な乱用・中毒死です。年間数万人が死亡し、大きな社会問題となっています。

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2.OSINTで分析した日経新聞


日経は特集連載記事でこれを報じていますけれども、調査は、公的文書やSNS、地図、画像、データベースをつぶさに分析し、知られていない新情報を見つける。いわゆるOSINT(オープンソース・インテリジェンス)の手法を駆使したたようです。

調査の流れは次の通りです。

1)危険薬物を米国に違法流入させた疑いで、DEAは23年6月に中国籍の男「王慶周(Wang Qingzhou)」と女「陳依依(Chen Yiyi)」を逮捕。王らは中国・武漢の化学品メーカー「Hubei Amarvel Biotech(湖北精奥生物科技)」の幹部。フェンタニル密輸組織に対するDEAの逮捕状請求書に「弊社には2人のボスがいる。1人は日本にいて、もう1人がこの私(王)だとクライアントには理解してもらいました」という記載を確認

2)日本経済新聞は計100本を超す裁判資料を調べ、膨大な文書のなかから「日本のボス」は「Fengzhi Xia」という人物である可能性をつかんだ。

3)取材班は大量のSNS情報にあたり、「Fengzhi Xia」本人が使っているとみられるアカウントを見つける。この人物は実名制のフェイスブックで別の名前も登録していた。それは「夏」姓の3文字の漢字名。中国語の発音を示すピンイン「Xia=夏」と合っており、とくに下の名前「Fengzhi」にあたる漢字の組み合わせは中国でもそう一般的ではない。

4)さらにSNS「微信(ウィーチャット)」や通信アプリ「テレグラム」、決済サービス「ペイパル」でも同じ名前のアカウントを見つけた。それぞれ自身を紹介するプロフィル写真はフェイスブックのものと酷似している。

5)取材班は中国や日本の企業データベースを使い、夏の記録を追った。たどり着いたのが中国・武漢の富仕凱であり、名古屋のFIRSKYだった。

6)米国でAmarvelの裁判が進む24年7月、名古屋のFIRSKYはひっそりと清算していた。のちに有罪となった王慶周が武漢の富仕凱を辞めた時期に重なる。

7)夏はAmarvel裁判で明らかになった「Fengzhi Xia」と同一人物で、組織のリーダー格だった可能性が高い。名古屋市に法人をつくり、少なくとも24年7月まで日本から危険薬物の集配送や資金管理を指示していた姿が浮かび上がってきた。

8)掘り起こした内容は欧州調査機関ベリングキャットの検証を受け「AmarvelとFIRSKYは同一組織といえる」との解析結果を得た。

9)取材班は危険薬物の国際ネットワークを追ううちに、麻薬組織に詳しい複数のメキシコ人専門家らの協力を得た。彼らは決まって「日本はフェンタニルも含めた麻薬の密輸拠点になっている」と指摘する。しかも経路はいくつも存在しているという。
日経によると、その日本ルートの結節点として、愛知県名古屋市西区があるというのですね。


3.犯罪グループは日本を利用する


この日経の調査について、イタリアの情報サービス「NOVA.news」は、6月25日「中国組織が日本を拠点に米国へフェンタニルを密輸」という記事を掲載しています。

件の記事のポイントは次の通りです。
・中国系組織が日本に拠点を置き、フェンタニルの製造に必要な化学物質を米国に密輸していたとされる。これは日本の新聞「日経」が行った調査によって明らかになり、その内容は欧州の調査報道機関「ベリングキャット」によっても独自に確認された。

・捜査によると、組織の主要人物の一人が名古屋市に会社を登記しており、少なくとも2024年7月までは、そこからオピオイドの流通と資金管理に関する指示を出していたとみられる。沖縄県那覇市在住の中国人であるこの人物は、中国、日本、米国で登記されている少なくとも18社の企業の所有者または法的代表者となっている。その中には、日経新聞とベリングキャット紙によると、この犯罪組織の物流拠点として機能していたとみられるファースキー株式会社も含まれている。

・日経新聞によると、米国当局は現在、この組織のリーダーとされる人物の行方を追っている。リーダーの現在の所在は不明である。捜査筋によると、この密輸ネットワークはメキシコを含む複数の国で活動しており、メキシコの麻薬カルテルはアマーベルと関係のある組織と繋がりがあった。これは、日本が世界的なフェンタニル密輸経路の拠点として位置付けられている可能性を示唆しており、ワシントンと北京の間で進行中の貿易戦争との関連もあって、新たな地政学的緊張を引き起こす可能性がある。

・トランプ政権は2月と3月、中国からの輸入品に20%、メキシコとカナダからの製品に25%の関税を課し、フェンタニル危機の原因はこれら3カ国にあると非難した。これまで、日本はこの強力なオピオイドの密売に公式に関与したとはされていなかった。日本当局は「国内でフェンタニルの事例は確認されていない」と繰り返し主張している。しかし、元米国麻薬取締局職員のディア・レイ・ドノバン氏を含む一部の専門家は、日本の法執行の不備と犯罪率の低さが、フェンタニル原料の密売人にとって日本を特に魅力的なものにしていると指摘している。

・メキシコの麻薬密売専門家リカルド・ラベロ氏によると、シナロア・カルテルを含む一部のカルテルは、日本の横浜港を経由して物流網を拡大している。アナリストらは、他国で密売対策が強化されると、犯罪グループがフェンタニルの供給と流通の二次的な経路として日本を利用するようになるリスクがあると指摘する。
この記事では、日本の法執行の不備と犯罪率の低さを挙げ、犯罪グループがフェンタニルの供給と流通の二次的な経路として利用するリスクがあると指摘しています。


4.トランプは許さない


筆者が気になるのは、なぜこのタイミングでこんな記事が出てきたのか、です。

今回の日経の記事について、ジャーナリストの門田隆将氏は「日本で何でもやり放題の中国。日本そのものが隠れ蓑になっていた事にトランプ政権の激怒は必至。“敵認定”間近。媚中派に滅ぼされる日本」とツイートし、警鐘を鳴らしていますけれども、筆者はもともとトランプ政権が裏から手を回していた可能性を疑っています。

日経は今回の記事について「未公表分」も含めて合計100本を超す米裁判資料を調べ、大量の文書のなかからAmarvelに出資する「日本のボス」と呼ばれる存在がいることをつかんだ、としていますけれども、アメリカの裁判資料の「未公表分」まで、簡単に手に入れられるものなのか。

つまり、アメリカ政府、裁判所が日経に記事にさせるためにわざとリークしたのではないかという疑念です。

通常、裁判資料が未公開とされる理由は、プライバシー保護や捜査・審判への影響、公序良俗への配慮など、複数の要因があるとされていますけれども、「日本のボスと呼ばれる存在がいる」なんてことを報じられようものなら、たちまち証拠の隠滅や、証人の証言に影響することは容易に想像できます。

裏を返せば、日本が中継地になっていることは明かされても構わないと判断しているということであり、その判断をトランプ政権が下したとするならば、門田隆将氏が指摘するように、石破政権、あるいは日本を「敵認定」してくる可能性は否定できません。その意味ではこの報道自体が「警告」になっているということです。

6月25日、アメリカ財務省は合成麻薬「フェンタニル」の米国流入に絡んだマネーロンダリング(資金洗浄)に関わった疑いで、フェンタニル制裁法などの法令に基づき、メキシコを拠点とする金融機関3社との一部取引を禁じる制裁措置を発表しました。

制裁対象は、銀行のCIバンコとインテルカム・バンコ、そして証券会社のベクター・カサ・デル・ボルサ。当局者は制裁は財務省の他の制裁のように資産を凍結したり、ドル建ての国際取引を全て禁じたりするものではないが、3社のメキシコの拠点と米国との取引は禁止されると語っています。

専門家は、この制裁は比較的小さな金融機関を対象としているものの、銀行間の相互関連性と米国との密接な関係を踏まえれば、メキシコの金融システムに大きな影響を与える可能性があると指摘しています。

これらを考えると、日本でも「フェンタニル」の不正輸出に関わった企業や金融機関は制裁を課される可能性も否定できません。

果たして、このような中国の介入を排除できるのか。”媚中派”を抱える石破政権の命運もこれに掛かっているのかもしれませんね。




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