

1.彼らは非常に甘やかされてきた
7月1日、アメリカのトランプ大統領は、大統領専用機エアフォースワン機内で記者団に貿易関税協定交渉期限である7月9日の延長は考えていないと述べた上で、日本との合意には引き続き疑念を表明しました。
トランプ大統領の発言は次の通りです。
記者:こちらの求めに応えなければ関税を課すときっぱりと宣言しています。
関税猶予の延長は考えているのか?
トランプ大統領:
いや、考えていない。猶予のことは考えていない。多くの国に書簡を送るつもりだ。皆もやっとこのプロセスを理解し始めたようだ。我々は日本と交渉してきたが、合意に至るかどうかは分からない。正直、無理だと思う。日本は非常に手強い。
理解してほしいのは、彼らが非常に甘やかされてきたということだ。私は日本が好きだ。新しい首相のことも本当に気に入っている。安倍(元首相)は私の最も親しい友人の1人だった。新しい首相(石破首相)は素晴らしい人物で、とても強いリーダーだ。しかし彼らも他国同様、30年、40年と米国から搾取してきたことで甘やかされており、今さら公平な合意を結ぶのは極めて難しい。
日本の例で言えば、彼らはコメを受け入れない。彼らはコメを切実に必要としているのだ。それなのに受け入れない。他の製品も同様だ。必要としているのに受け入れない。これは簡単なことだったと思う。
自動車についても同じことだ。彼らは何百万台と米国に車を送っているのに、我々はこの10年間で1台も送っていない。彼らは受け入れないのだ。だが彼らは売りまくる。だから我々は言った、そんなことは許されないと。
我々は良好な関係にあり、信頼もあり、ある意味で素晴らしいパートナーシップを築いているが、貿易においては非常に不公平だった。そして、そうした時代はもう終わった。
だから私は日本に書簡を送り、『ご協力に感謝するが、我々が求めるようなことができないのならば、30%、35%、もしくは我々が決定する関税を課すことになる』と伝えるつもりだ。我々は日本との間に非常に大きな貿易赤字を抱えており、それは米国民にとって不公平なのだ。
結果として、日米関税交渉はなんの成果も出せていません。
アメリカのベッセント財務長官は、7月1日のテレビ番組で、対日関税交渉について「不公平であれば受け入れないようトランプ大統領に指示されている」と明らかにしています。
石破政権は、赤沢亮正経済再生担当相が7回目の交渉を行いましたが、アポなし突撃だったようで、案の定、会ってさえももらえませんでした。
2.早期にトップ会談を
流石にこの事態に経済界も焦りを見せはじめました。
7月1日、経済同友会の新浪剛史代表幹事は記者会見で、日米関税交渉について「結果については遺憾で日本経済の先行きに不安をもたらす現状だ。アメリカと折り合う方法を考えるに、トランプ大統領との直接対話以外にないのかなと思う。早期にトップ会談ができる仕組みを作っていかないといけない」と述べた上で、自動車の関税率の扱いで隔たりが大きいことを踏まえ「自動車への25%の追加関税は相当な痛手になるので、早急に事態の収拾を図ってもらいたい。政府は大変な努力をしていると思うが踏み込まないといけない」と日米首脳会談によって早期の解決を図ってほしいという考えを示しました。
新浪氏は、上乗せ分が再び発動すれば、国内企業はコスト削減を余儀なくされ、定着しつつある賃上げの流れも「逆転する可能性がある」と指摘。日本経済への悪影響の広がりを懸念しています。
けれども、交渉期限まで一週間を切った段階でトップ会談ができる仕組みを云々なんて、一昨日来やがれもいいところです。悠長に過ぎます。
3.FBIの要請を無視していた岸波政権
それより気になるのは、日本への相互関税は確か24%の上乗せだったのが、今回、トランプ大統領は30%、35%、もしくは我々が決定する関税と述べたことです・
この関税率が上がっているのは、新しく上乗せされる要素が入ったからだと考えることもできます。それは何かというと、フェンタニル問題です。
6月29日、ジャーナリストの山口敬之氏は自身の動画チャンネルでこの問題について次のように述べています。
2022年10月にFBIが中国秘密警察に家宅捜索に入りました。それを ニューヨークタイムズがスクープした6月27日のエントリー「中国組織が日本からフェンタニルを密輸していた疑惑」で筆者は、今回の発端となった日経のスクープ記事は、アメリカ政府がわざとリークしたのではないかと述べましたけれども、山口氏によると、どうもその通りだったようです。
2023年4月にニューヨークの秘密警察運営者2人が逮捕されて、
2023年6月、日本経由でフェンタニルの原材料をアメリカ に密輸しようとしたということで中国人2人が逮捕された。
2023年にはアメリカ捜査当局は日本側に捜査情報を伝えた上で捜査協力を依頼しています
アメリカの捜査で得た情報で、オタクとこ拠点になっとるやんけと。だからちゃんと捜査してねということがアメリカのFBIから日本の警察庁に国際刑事機構というところに通報してます。もう2023年にインターポールでも大きく世界中の捜査当局にて伝えられていたわけです。
要するに日本政府が全然動かないから、アメリカ側はしびれを切らして日経新聞にリークしたんですはっきり言って。
1年半もしくは2年も前に、アメリカからフェンタニル捜査について協力を求められていた。それをシカトし続けたからとうとうリークされたという推測には説得力があります。
トランプ大統領は、このフェンタニル報復関税を含めて30%、35%と言ったのではないかとさえ。
4.フェンタニルからは逃げられない
7月2日、石破総理は日本製鉄の橋本会長と面会し、日米交渉について「私どもとして、関税よりも投資だということで、一連の日米交渉を続けているところ」と強調しました。
これについて、交渉関係者は「一連の協議でトランプ大統領は一貫して対米貿易赤字ゼロを主張している。日本が強調する投資は響いていない」と認識のズレを明かしています。
また、トランプ大統領から、関税について、もともとの24%から突然、30から35%に引き上げる数字が出てきたことに、政府内では動揺が走っていて、石破総理周辺は「本当に30%以上の『相互関税』をかけられたら、政権として立っていられない」と話しているそうです。
一方、外務省幹部は「実際の交渉の場で、そうした数字は出ていない。大統領の発言に、いちいち反応しない方がいい」とコメントしていますけれども、もう石破政権では無理ではないかと思えてなりません。
では、フェンタニル問題で渦中の名古屋はどうなっているか。
6月30日、名古屋市の広沢一郎市長は記者会見で「由々しき問題で、市としても情報収集したい……報道によると、その会社は既に撤退しているという状況だが、本当に完全になくなったのかは定かではない。愛知県警に話を聞きたい」との意向を示し、薬物乱用防止の啓発にも取り組むと答えています。
広沢市長はこの日の会見でフェンタニルに関して話した直後、別の質問に事務方が答えている途中に倒れ、救急車で病院に搬送され、入院しました。一部ネットでは、盛られたのか、と騒ぎになりましたけれども、あるいは心労がたたったのかもしれません。
中国は大量のフェンタニルをアメリカやメキシコへ輸出しているだけでなく、覚醒剤やヘロイン、合成麻薬などの世界的な主要供給国にもなっているとされています。
アメリカの政策シンクタンクであるブルッキングス研究所によれば、中国は1990年代以降、覚醒剤をオーストラリアや東アジア全域に輸出する目的で大量に生産してきたようです。特にオーストラリアへの輸出が多く、オーストラリア国内に出回っている覚醒剤の約70%を中国製が占めるようになったこともあり、オーストラリア政府は中国に厳しい密輸防止対策をとるよう求めました。中国政府は当時、国連薬物犯罪事務所(UNODC)からも同様の要請を受けていたこともあり、オーストラリアの求めに応じました。
2015年11月に両国間の共同麻薬対策タスクフォースが設置され、オーストラリアへ覚醒剤の密輸を行っていた中国人密売業者が逮捕されました。ところが中国側の協力はあくまで口だけで、しばらくすると取り締まりは弱まり、再び中国から大量の覚醒剤が入ってくるようになってしまったそうです。
中国の覚醒剤は2010年代半ばごろまでは、主に中国南部で生産されていましたけれども、その後はミャンマー、タイ、ラオスの3カ国が国境を接する「ゴールデントライアングル」と呼ばれる地域で生産されるようになっていきます。
このような違法薬物ビジネスを牛耳っているのは、「サム・ゴー・シンジケート(SGS=三合会)」と呼ばれる中国系の麻薬マフィアです。この犯罪組織が、中国が違法薬物を世界中に供給する上で大きな役割を果たしてきました。
三合会は世界中に数十万人から数百万人の構成員と準構成員を抱え、東アジアから北米、ヨーロッパ、アフリカ、オセアニアなどで活動し、日本や韓国、台湾、タイ、ラオス、ミャンマー、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドなど各国の犯罪組織と協力関係にあると考えられています。
フェンタニルに三合会が噛んでいるかは分かりませんけれども、こうした麻薬マフィアの撲滅には世界各国の協力が不可欠です。
今月にはアメリカのルビオ国務長官が乗り込んできます。1年も2年も放置していたフェンタニル問題で詰められることは容易に想像できます。
これでフェンタニル報復関税を加えて30%、35%あるいはそれ以上の関税がかけられようものなら、日本経済に多大な影響を与えることは明らかです。何もしない石破政権によって国民が被害に遭う。
これまでよく言われていた「誰が総理になっても何も変わらない」なんて大嘘だったと国民が身に沁みて知るときが迫っている反面、それを打開する糸口となる参院選もまた目の前にあることの意味を深く考えるときではないかと思いますね。
この記事へのコメント
みどりこ
日本に拠点を置いたのは責任(と罪、それに続く賠償)を肩代わりさせるためも?
この動向を日本のトップが誰も知らなかったとは思えません。
誰が知っていたか、通したか、若しくは進んで受け入れたか、そして見返りは?