

1.関税率を記載した手紙を送るつもりだ
7月3日、アメリカのトランプ大統領は、ワシントン近郊で記者団に、トランプ関税について4日から各国・地域に文書を送付し、適用する関税率を通知する考えを示しました。
トランプ大統領は「私は、彼らが支払うべき関税率を記載した手紙を送付するつもりだ……そのほうがはるかに簡単だからだ……どれだけの協定を結ぶことができるか?もっと多くの協定を結ぶことはできるが、それは非常に複雑になる……あまりにも多くの国がある……私は、米国でビジネスを行うにはこれだけの金額を支払うことになる、という内容の手紙を送ったほうがよいと思う……4日から、一日に10カ国ほどに文書を送るだろう……単純な取引で維持・管理できる方が良い」と述べました。
また、「8月1日に多くの国から資金が入ってくることになるだろう」と発動が8月1日になるとし、関税率については、10%から70%程度になると述べています。
交渉期間として設定した「相互関税」の上乗せ分の停止期限が9日に迫る中、停滞する交渉先に対して発動日を8月1日と事実上延期することで、打開を狙うという見方も一部でされています。
トランプ関税については、170を超える相手先との交渉が必要とされているのですけれども、トランプ大統領は対象国には言及せず、日本が文書の送付先国に当たるかどうかは不明です。
ただ、この日、ベッセント財務長官は、CNBCテレビで、「貿易相手国のうち約100カ国が最低値である10%の相互関税を適用されることになるだろう」と明らかにした上で猶予期間である8日までに合意に至らない場合、既に策定しておいた関税が課される可能性があると述べています。
そして、日本との関税交渉については「日本は20日に参院選を控えており、それが交渉を進める上で国内的な制約になっていると思う……日本との交渉がどうなるか様子を見る」と語り、停止期限までに、日本と関税交渉で合意に達するかどうかについては言及しませんでした。
2.ハンドルが左で、でかくて燃費が悪い
トランプ大統領はFOXニュースとのインタビューでは「日本は米国の車を受け取らない。だが彼らは何百万台もの車を米国に持ち込んでいる。これは不公平だ」と語り、上乗せ関税の猶予期限を延長する必要はないとの考えも示しています。
更に、7月1日には日本について「極めて大きな貿易赤字を抱えているため、30%や35%、あるいはわれわれが決める数字の関税を課すことになるだろう」とした上で、「合意に至るかどうか分からない。日本と合意できると思えない。彼らは非常に手ごわい」と述べています。
これらについて、7月2日、日本記者クラブでの党首討論会に出席した石破総理は、米国車の日本国内での販売不振の理由として「ハンドルが左で、でかくて燃費が悪い」ことを挙げ、関税交渉に臨む姿勢については、日本は世界最大の対米投資国であり、最も雇用を生み出しているとして米国の貿易赤字は減らすが、「基本にあるのは関税よりも投資だ」と強調しています。
石破総理は翌3日、NHK番組で、日米関税交渉を巡り日本は米国のコメや自動車を受け入れないとしたトランプ大統領の非難に対し「誤解に基づくもの、あるいは間違った情報が入っているのかもしれない」と述べました。そして、合意の何合目まで来ているかを問われると明言を避ける一方、交渉は「間違いなく着実に前進している」と主張し、日本は世界で一番の対米投資国で、多くの雇用を生み出しているとして「きちんと評価してほしい。関税より投資だ」と述べ、トランプ大統領のコメントについては「国民の安心安全、国益を考えながら適切に対応していく」と語っています。
トランプ大統領は関税交渉を持ちかけているのに、石破総理は「関税より投資だ」と主張する。これでは出だしから食い違っているように思えてなりません。何カ月にもおよぶ交渉は一体なんだったのか。
他の国々が次々と交渉を纏めて言っていることを考えると、これで日本上乗せ関税が課されるとなれなれば、その責任は問われてしかるべきでしょう。
3.自民党の隠れウルトラC
トランプ関税交渉が行き詰まっていることについて、ジャーナリストの須田慎一郎氏は自身の動画で次のように述べています。
・参院選を前に自民党には隠れウルトラCがあったんです。別に小泉米じゃないですよ。トランプ関税の交渉は、防衛費増額がセットで取引すればよかったところ、日本が拒否したため関税交渉は決裂寸前だというのですね。
・アメリカの相互関税問題で、特に自動車関税に関して、電撃的に決着を見るというところ、トランプ大統領が自動車を巡る関税に関して、引っ込めるという判断を下してくれるというのが、ウルトラCとして水面化で準備されていた
・結果的にこれ実現しません。トランプ大統領が7月1日、記者団の取材に応じ日本との関税交渉に関して合意できるかどうか疑わしいと強い不満を表明した
・日米のですね、関税交渉は完全に失敗に終わると終わるという、結論になりつつあります
・とは言ってもですね、ここで終わらせるわけにはいかないということで、まだ水面下から日本は色々とアプローチをしてるんですけれども、間に合わないでしょうね
・イギリスのフィナンシャルタイミンスが日米間で2+2が開かれる予定だったんですが、その中止を日本側が決めたと、その2+2に人を送らないということを決めたというニュースがですね、数日前にフィナンシャルタイムが書きました。
・関税の話をしていたのになぜ急に安全保障の話に切り替わったのかと、ちょっと説明をしておきたいと思うんですが、実は今回のトランプ関税、相互関税の問題というのはその安全保障問題とコインの裏表の関係にある
・関税問題っていうのは純粋に経済問題ではないんだということをよくご理解いただきたい。ワンパッケージなんです。
・なんでそんなこと言えるのかというとトランプ関税は大統領令に基づいて行われてるわけなんですけれども、その大統領令にどういった形ならばこれが修正できるのかという項目が設けられている。
・それは、貿易相手国が相互的ではない貿易協定を是正する重要な措置を講じて、経済及び国家安全保障問題でアメリカと十分に連携する場合、トランプ大統領はアメリカの関税表を修正して、関税を下げ、または範囲を制限できる、と記載されている
・この問題は日本側がアメリカの満足するような形で安全保障問題でアメリカと連携するということを示さない限り、この関税は引き下げられることはない、ということ。
・そもそも論で言うとアメリカサイドは特にそういうメッセージを日本に送っていました。
・おそらく日本もそういう認識を持っていたんでしょう。だからこそ、トランプ大統領の閣僚たちはですね、日本に対して助け物を出すために2+2保障閣僚級会議
を開くように要求してたわけなんですね。
・それを日本が拒否したっていうことが流れたということでフィナンシャルタイムスの記事が私は非常に注目していたんです。断ったのか大丈夫かこれはというところだったんです。
・現在岩屋外務大臣は今アメリカに飛んでおりまして、日米交渉しております。
・アメリカのルビオ国務長官と会談を持っております。この中で近い将来、2+2を開くことを合意しそこに向けて、日程調整に入ろうじゃないかというところ
に今動いております。
・じゃあその具体的な中身って何なのかと言うと、防衛費の増額ですよ。
・ですからこれ2+2なんか開いてしまうと、簡単に開いてしまうとそういった要求が突きつけられることになるから、その要求が突きつけられるそのタイミングが選挙戦直前ということもあって、余計なハレーションを呼んでしまうんではないかという政治的な思惑が働いて結果的にこの先送りという形になったんだろうと私は見てるわけなんです
実際、7月1日に渡米した岩屋外相はルビオ国務長官と会談しています。会談後、岩屋外相は、記者団に対し、トランプ政権が同盟国の防衛費増額を求めていることに関し「日本自身の判断で防衛力の抜本的強化を進めていく」と伝えたと明かしています。
ここでも防衛費増額をつっぱねた訳です。
嘉悦大の高橋洋一教授は「だから、交渉初期段階で第七艦隊を買うとでも言うべきだった。もう手遅れ。関税交渉と安全保障は絡めないとか、石破政権は初手から間違いだらけ。第七艦隊は安倍さんならたぶん何らかの形で生かしたはず」とツイートしていますけれども、石破総理の外交センスの無さがここまでのハレーションを起こしてしまったと言ってよいのではないかと思います。
4.貧乏神石破
当然その報いはやってきます。
1日の日米外相会談では、トランプ関税を巡り、「日米同盟全体にとって重要な協議だ」として合意の実現に向けて協議を後押しすることで一致したことになっていて、日本政府は今回の来日に大きな期待を寄せていたようですけれども、7日で調整されていたルビオ国務長官の初来日は見送られることになったと報じられています。
政府関係者によると、日程の都合がつかず、今回の訪問は見送るとの連絡がアメリカ側からあったということですけれども、要は今の石破政権の態度では交渉するに値しないと突き放されたということでしょう。
今回の来日見送りを受け、関税問題をめぐる日米交渉は政務レベルではなく実務者間で継続される見通しとのことですけれども、関税交渉はいよいよ後がなくなりました。
では、どうすれば、日米関税交渉が前に進むのか。
これについて、アメリカ側は既にサインを出しています。
7月3日、ベッセント財務長官はCNBCテレビで、日本との関税交渉について「日本は20日に参院選を控えており、それが交渉を進める上で国内的な制約になっていると思う」と語っています。要は、参院選が終わるまで交渉しないということです。
となると、石破自民は、隠れウルトラCを出すことすらできず、9日には上乗せ関税が課され、そのまま参院選に突入ということになります。
仮に参院選でどういう結果になるにせよ、石破政権である限り、財務省を抑え込んで防衛費増額というリーダーシップを発揮できるとは思えません。石破総理がその座にいる限り、日本の経済は停滞を続ける、そんな気がしてなりません。
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