減税ある経済成長

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2025-08-12-221801.jpg


1.トランプ関税はドル切り下げ政策


昨日のエントリーで、アメリカのベッセント財務長官に単独インタビューで、貿易不均衡の是正が進めば縮小する可能性を示したと報じたことを取り上げましたけれども、自民党の西田昌司参院議員は、4月28日、トランプ関税について、自身の機関紙で、事実上のドル切り下げ政策だと指摘しています。

件の記事の一部を引用すると次の通りです。
トランプ関税が世界経済に打撃を与えています。私はこれを1985年のプラザ合意と同じく事実上のドル切り下げを意味するものと考えています。トランプ大統領の保護主義的関税政策は、ドル高によって生じる貿易赤字を是正する間接的ドル安政策とも解釈できます。1985年のプラザ合意は、多国間協調によるドル安誘導政策でした。一方、トランプ関税は、国ごとに輸入制限を強化し、ドル高の弊害(=貿易赤字)を強引に是正する手法です。どちらも「ドルの価値の実質的な調整」を目的としているという点で、非常に類似しています。

プラザ合意後、日本は急激な円高(1ドル=240円→120円)に直面し、円高不況に苦しみました。プラザ合意の時にはその対策として輸出を増やすことより、内需を増やす政策を推進し、それが結果的に日本を空前の好景気をもたらしました。
西田参院議員は、トランプ関税を「国ごとに輸入制限を強化し、貿易赤字を強引に是正する手法であり、ドルの価値の実質的な調整を目的とする意味でプラザ合意と同じだと述べています。

西田氏はこの記事の中で、「バブルなき内需主導景気」を作るための政策として「財政出動」「大胆な金融緩和の維持と再強化」「所得主導の内需政策」「バブルを避けるための制度的安全装置」の4本柱を提示。その具体的な政策の一つとして、消費税の廃止
を挙げています。

件の記事から、消費税の廃止について述べた部分を抜粋すると次の通りです。
・特に、輸出補助金とアメリカに指摘されている消費税を廃止すれば、トランプ大統領も大いに賛同するはずです。一時的に税収は減りますが、物価高対策にもなる上に、消費が必ず増えますから、結果的には景気は必ず良くなるはずです。更に、下げすぎた法人税率を元の40%に戻し、今後経済成長が期待されるデジタル分野やAIなどへの投資の即時損金参入を認める措置をすれば、税収も経済成長により大幅に増えることが期待できます。
・現在の消費税は輸出企業には還付されるため、実質的な輸出補助金とアメリカから非難されていました。実際、年間7兆円を超える消費税が還付されていますが、その殆どが大企業の輸出にかかるものです。これを廃止することにより、輸出補助金という誤解を払拭 することができ、トランプ政権の貿易政策とも整合的です。また、消費者物価を直接引き下げることになり、事実上、家計の可処分所得が増えることになります。その結果、消費が拡大し、GDPを押し上がることになります。
・我が国の国税収入の内訳は概ね、消費税が3割強、所得税が3割弱、法人税が2割弱で、この三つの基幹税で8割を占めています。一番大きいのは消費税ですが、これは納付をしているのは多くは法人ですが、実際に負担をしているのは個人なのです。実は、日本の消費税は事実上、外税方式(レジの様に支払の際加算される方式)が主流となっているため、完全に消費者に転嫁されているケースが一般的です。従って大企業などは100%消費税を消費者に転嫁していますから、消費税の納付はしていても負担はしていないのが現実です。
消費税が輸出企業への事実上の補助金だとアメリカから指摘・批判されていることは、広く知られてきましたけれども、西田氏は、消費税の廃止することで、トランプ政権との貿易政策とも整合性が取れると述べています。

昨日のエントリーで筆者は、「ベッセント財務長官が、自動車関税の引き下げ時期は合意から50日前後と述べた意味は、製造業をアメリカに呼び戻すための時間ではなく、貿易不均衡の改善がなされるための時期とみるべきだ」と述べましたけれども、50日間で貿易不均衡の改善を行う手段として消費税廃止は有力な手段になると思われます。


2.消費減税は無意味だ!


そんな中、「消費減税は無意味だ!」と減税を否定する識者もいます。竹中平蔵氏です。

竹中氏は、「みんかぶマガジン」の7月25日付の記事「“減税は無意味”竹中平蔵氏があっさり断言するワケ「低所得者はそもそも税金を払っていない」」で、石破政権の経済政策を斬って捨てています。

そしてまた、8月11日、同じく「みんかぶマガジン」に「消費減税は無意味だ!竹中平蔵「これでは『失われた30年』が再び日本を襲う」…外国人を受け入れ、無駄な年金を減らしなさい」という記事を書いています。

件の記事のポイントは次の通りです。
〇減税についての考え
・「みんなを助ける」必要はない:物価高で困っていない人まで含めた「みんな」を助ける政策は不要。本当に困っている人に焦点を当てるべき。
・真の要因は社会保険料:生活が苦しい最大の要因は社会保険料の負担であり、これを軽減する政策が理にかなっている。
・消費税減税は非効率:生活困窮者は元々税金をあまり払っておらず、消費税を減税しても高所得者が有利になるため、効果が薄い。
・円安は生活水準を下げる:円安で国民の生活水準が下がるのは仕方ない側面があり、根本的な解決には日本の経済力向上と成長戦略が必要。

〇「失われた30年」を繰り返さないための教訓
・供給と需要の混同:日本の政策は需要サイド(消費者側)に偏り、供給サイド(生産者側)が弱い。これでは潜在成長率は高まらない。
・1990年代の過ち:給付金や減税といった需要サイドの政策は、過去の公共事業拡大と同様の過ちを繰り返すことになる。一時的な景気回復で終わって財政赤字が膨らむだけ。
・減税の議論は法人減税で:経済成長につなげるためには、消費減税や所得減税ではなく、法人減税を議論すべきである。

〇必要な具体的な成長戦略
・供給サイドへの減税:企業が成長できるような減税を行う。
・規制緩和:労働市場の流動性向上、雇用改革、ライドシェアの解禁など、構造改革を進める。
・移民の受け入れ:日本の労働力として外国人は必要だが、現状は場当たり的な対応に留まっている。移民法を制定し、短期・長期を明確に区分して受け入れるべきである。

〇財政と政治の問題点
・将来的な増税は必要:デフレ脱却前の増税は避けるべきだが、国の財政負担を賄うためには、将来的には消費増税が必要になる。
・歳出削減の不在:参院選での政策議論が不十分だったのは、政治家や財務省が自身の権力低下を恐れ、歳出削減に真剣に取り組もうとしないため。
・年金制度の無駄:この国には、家計的に年金が必要ない人にも支給されている年金という「分かりやすい無駄」がある。これをやめれば国の財政は大きく改善する。
・ポピュリズムの支配:現在の政策議論はポピュリズムに支配されており、国民も「自分に寄り添ってくれるか」だけで投票行動を決めるようになった。このままでは日本は再び「失われた30年」を経験することになる。
竹中氏は、経済成長につなげるために、企業が成長できるような法人減税をすべきだとか、規制緩和や移民の受け入れをせよだとか、端的にいって「グローバリズム」政策を主張しています。これは、アメリカのトランプ政権と真っ向対立する政策であることを考えると、今ではもうオワコンな政策に見えなくもありません。


3.ここから増税地獄が日本を襲う!


当然、こうした、竹中氏の論に異を唱える意見もあります。

7月30日、国際政治アナリストで早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏は同じく 「みんかぶマガジン」に「竹中平蔵氏は「減税は無意味」と言うけども…ここから3年、増税地獄が日本を襲う!「中長期的な増税案が無数に仕込まれる」という記事を寄稿しています。

件の記事の概要は次の通りです。
〇なぜ減税が実現しないのか?
・選挙での減税公約は「夢物語」
・参院選で減税を主張した野党が勝利したが、減税政策が次々と実現する可能性は低い。
・仮に減税が行われても、それに合わせて増税政策が仕込まれるのが日本の政治の常だ。
〇政治家が減税を主張する本当の理由
・選挙がある時期は、自身の政治生命を守るために減税を声高に叫ぶ。
・選挙がない時期は、役人や業界団体との付き合いが中心となり、増税へと自然に傾倒していく。
・政治家は有権者との接点が薄れると、国民が知らない間に増税推進派に転向してしまう。
〇与党の姿勢と政治家の劣化
・自民党は「消費税を守り抜く」と主張して大敗した。
・昔の自民党なら野党よりも大胆な減税策を打ち出していただろうが、現在は給付金のような安易な政策を語る政治家ばかりで、政治家としての資質が劣化している。
〇今後の増税地獄と有権者の役割
・参院選後、政治家が有権者と触れ合わない「長期シーズン」が始まる。この3年間に無数の増税案が仕込まれる可能性がある。
・減税を求める有権者は、政治家に公約の履行を強く求める必要がある。
・政治家は公約の文言を曖昧にしており、いつでも約束を反故にする準備をしている。その言い訳を鵜呑みにしてはならない。
〇国民の戦いはこれから
・日本国民は、政治家の「選挙が遠のけば増税、近ければ減税」という習性を利用すべきだ。
・常に解散総選挙の可能性を失わせないよう、与党と連立を組む野党の言動を厳しく監視し、批判し続ける必要がある。
・具体的な目標として、まずはガソリン税の暫定税率を廃止し、走行距離課税の導入に反対すること。さらに、2028年から始まるGX賦課金の廃止を目指すべきだ。
・減税を求める国民は、政治家が置かれた状況を理解し、常に気を緩めずに監視を続けなければならない。
渡瀬氏は、日本の政治について、「仮に減税が行われても、それに合わせて増税政策が仕込まれる」ものだ、と指摘した上で、日本国民は、政治家の「選挙が遠のけば増税、近ければ減税」という習性を利用して、政治家が置かれた状況を理解し、常に気を緩めずに監視を続けなければならないと提案しています。

要するに、日本の政治家は、税金について、国民の声を聞く気がない、ポピュリズムなんて最初からやる気がないのだと指摘している訳です。

以前、どこかの与党幹事長が「減税はポピュリズムだ」と批判して、参院選で大敗していましたけれども、民主主義とは、民の選択の結果は民自身が負う制度です。民意を無視し逆らった政治家は次の選挙で報いを受ける。それを常に感じさせておくように国民(くにたみ)はプレッシャーをかけ続けなければならないと、渡瀬氏は言っているのですね。


4.減税ある経済成長


1970年代後半に、消費税導入が断念された後、「増税なき財政再建」という言葉が叫ばれた時期があります。

これは、赤字国債が82兆円にまで膨れあがっていた昭和50年代、当時の鈴木善幸内閣は、悪化する財政を立て直すため、「増税なき財政再建」を掲げました。これは、赤字国債への依存から脱却することを目標とする政策でした。

具体的な取り組みとしては、財政非常事態宣言を発し、公務員の給与抑制や、様々な特例措置による歳出削減を試みました。けれども、鈴木内閣は財政悪化を食い止めることができず、税収の落ち込みも重なり、財政再建は行き詰まりました。結果、鈴木首相は突如として退陣を表明。当時の「増税なき財政再建」は必ずしも成功したとはいえないというのが、今日の評価となっています。

今の与党は、減税を求める声が上がるたびに「ザイゲンガー」を叫んで拒絶していますけれども、前述の渡瀬氏が指摘する、政治家に常にプレッシャーをかけて、増税させないというのは、この「増税なき財政再建」を再び目指すことと非常に近いように思われます。

では、鈴木善幸内閣が失敗したと評価されている「増税なき財政再建」は今度こそ実現できるのか。

1997年11月、経団連は活動レポート「経団連くりっぷ」No.66で、「増税なき財政再建に成功したカナダ アルバータ州」という記事を掲載しています。

件の記事の概要は次の通りです。
〇緊密化する日本との関係
アルバータ州は他州に先駆け27年前に日本事務所を設置し、日本との関係強化に努めてきた。今や日本は国外における最大のビジネス・パートナーである。過去3年の日本への輸出は1,000億円(93年)から1,340億円(96年)へと増加している。日本からの直接投資も増加しており、96年は1,340億円となった。投資分野もエネルギー、農業、林業、加工食品、紙・パルプなど多様化している。
日本からの来訪者の数は、過去5年間で2倍に増え、96年は15万9,000人を超えた。
投資先としての利点は、豊富で安価な天然資源、優れた科学技術、整備されたインフラ、優秀な労働力等がある。さらに、州政府では
・カナダで最も低い法人税率の設定、
・製造設備に対する州税の段階的引き下げ、
・空港税の引き下げ、
等、投資環境の整備に努めている。

〇順調に進む赤字削減
1992年の首相就任以降、州政府の赤字削減に取り組んできた。まず、州の財政状況を州民に公開して問題意識を喚起した。次に民間の財政レビュー委員会を設置した。同委員会の報告は、「州財政は4、5年で破綻する危険性がある。歳入に問題は無いが、歳出の抜本的見直しを行なう必要がある」というものだった。そこで、省庁統廃合、経費削減、公務員の給料カット、公共サービス削減等の大幅な歳出削減を実施した。さらに、予算の収支均衡を法律で定めるとともに、消費税や法人税の引き上げによる財政赤字削減を違法とした。

債務返済が完了するまで新たな施策には着手しないが、返済が完成した暁には、教育改革および医療改革を行ないたい。

〇好調な州経済
1992年から1996年までの州経済は、カナダ全体の成長率の倍近い平均4%の成長率を記録した。この成長を支えているのは製造業である。1995年には製造業部門の税収が初めてエネルギー部門からの税収を超えた。アルバータ州の1人当たりの就業率、小売消費、投資額はカナダで最高額を記録している。人口はカナダの10%だが、新規雇用創出では全体の23%を占めている。近年は、本社をカナダ東部からカルガリーに移す企業も増えている。

このように、アルバータ州は好調な経済に支えられ、財政再建も順調に進んでいる。日本企業には大いに投資していただきたい。
今は増税すべきだと主張する経団連は当時、こんなことを言っていたのですね。もちろん、国も経済規模も違うカナダの州と日本を単純比較することはできませんけれども、注目すべきは、当時のアルバータ州は、大幅な歳出削減を実施するだけでなく、消費税や法人税の引き上げによる財政赤字削減を違法としたのですね。

なぜ、日本政府は増税一本やりしかないのか。

独立行政法人産業経済研究所の2015年ノンテクニカルサマリー「経団連と消費税、そして1990年代の失われた10年」では、次のように分析されています。
1970年代にはじめて大型の間接税が提案されたときには、財政拡張による経済成長が税収の増大によって財政再建につながるという考え方に、経団連は立っていた。1980年代前半には、増税による歳入増加を図る以外には再建は難しいと考えるようになった。

本論文が主張するのは、増税による財政再建というシナリオが、その問題に限定して考えれば最適な選択肢であったとしても、消費増税が景気後退につながり、不況が長期化することによって将来の税収を損なう危険性について十分な考慮がない、短期的なものであったことである。

しかも、経済界のこのような主張は、不良債権処理に対して公的資金投入を求めることによって財政状態を悪化させることもいとわないものであったし、増収の必要性を説きながら、同時に法人税については減税を求めるという首尾一貫性のない矛盾をはらんだものであった。したがって、経済界の主張は、長期的なゴールに向かって体系的な政策を主張していたわけではなかったと評価すべきものであった。
このサマリーでは、1970年代は、財政拡張による経済成長で税収が増大するから、それで財政再建につなげようと考えていた経団連は、1980年代前半には、増税以外には再建は難しいと考えるようになったと指摘しています。

ただ、その一方で、財界は収の必要性を増収の必要性を説きながら、同時に法人税については減税を求めるという矛盾を孕んだ主張を行ってきたと、長期的なゴールに向かって体系的な政策を主張していたわけではないと厳しく指摘しています。

増税なき財政再建が失敗したから、増税ある財政再建を進めているのが、今の政府であり、財務省ですけれども、それで国民が疲弊し潰れてしまったら元も子もありません。

増税なき財政再建が失敗したから、増税ある財政再建だではなく、減税ある経済成長という考え方と議論をもっと深め進めるべきではないかと思いますね。



  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント