
1.一方的に離脱
10月10日、公明党の自公連立解消表明を受け、自民党の高市総裁が会見を行いました。
記者から、公明党の斉藤代表から連立離脱を含む対応について、どのような説明があったのかという質問に対し、高市総裁は次のように答えました。
まずそもそも、本日の党首および幹事長による会談でございますが、前回火曜日にお目にかかりました折には、木曜日、昨日ですけれども、公明党の方で地方の声を聞くと、その結果について話をする、お伝えをするということで、そういう申し出に基づいて、開催したものでございました。なんと斎藤代表は高市総裁に無理難題を突き付けて、決裂したとのことです。この通りであれば、公明は会談前から連立離脱を決めていて、政治とカネの問題が云々と言うのはただの口実に過ぎなかったと思えてきます。
何かを決めるとかそういうことではなく、地方から聞いた声をお伝えするというのが今日の議題でございました。前回、火曜日の党首および幹事長における会談の中で、斉藤代表から示された懸念点の中で、確認調整が必要な点につきまして、これはもう真摯に対応すべく、しかも速やかに対応すべく党内でこの作業をですね、進めておりました。
しかしながら、本日公明党からは、政治資金規正法の改正に関する公明党案について、この場で賛否を示すように求められました。
私どもからは、私達の自由民主党は、ご承知の通り党内手続きが必要です。
これは総裁と幹事長だけで、この場で特に議員立法の法律案の細部の内容についてまでお答えできるものではないと。この場で私1人で判断するとか、2人だけで判断するということはできないので、党内に持ち帰って協議をして、手続きにのっとって速やかに対応したいということでお返事を申し上げました。つまり、来週にも、もう一度協議を開きたいという旨でございます。
しかしながら、先方からは、それは具体的な回答ではないということで、一方的に連立政権からの離脱を伝えられました。我が党としては丁寧に説明もすべく、一つ一つ真摯に対応をしてまいりました。
しかもこれまで26年間にわたって、野党の時代も含めて協力をし合ってきた関係でございますので、大変残念ではございましたけれども、そういった結論になりました。
本件につきましては、これはあの党の衆参の役員で、しっかりと経緯も含めて共有しなければなりませんので、この後、会を持ちまして報告をし、意見も伺いたいと思っております。
私から以上です。
2.切られる前に切る
もし、公明が自民に喧嘩を売る形で連立離脱をしたのだとすると、その狙いは何か。
これについて、政治ジャーナリストの鮫島浩氏は自身の動画で解説しています。
件の動画の主旨は次の通りです。
〇連立崩壊の背景鮫島氏によると、公明は近い将来に自民党からお払い箱にされた後に解散を打たれることになると予想し、先手を打って離脱したというのですね。
・公明党は、自民党が企業・団体献金に関する規制強化策に応じなかったことを理由に連立離脱を表明した
・公明党が恐れたのは、麻生太郎氏が君臨する高市政権が誕生すれば、じわじわと政権の隅に追いやられ、最終的には連立を解消され、解散総選挙を仕掛けられること
・そのため、「切られる前に切る」先手を打ったのが今回の連立離脱の真相である
・一方、麻生氏側も公明党を引き止めず、むしろ国民民主党との連携を深めることで、公明党抜きでも政権樹立は可能と判断し、公明党を「追い出した」側面がある
・公明党が13年間独占してきた国土交通大臣のポスト剥奪を計画していたことも、宣戦布告と捉えられている
・菅義偉氏や森山裕氏といった非麻生派の議員も、麻生独裁体制を阻止するため、公明党の連立離脱を止めなかった
〇公明党の今後のスタンスとジレンマ
・完全決別はせず: 斎藤代表は記者会見で、「何でも反対の敵型になるわけではない」「政策ごとに賛成すべきものには賛成する」と表明し、自民党との復縁の余地を残した
・公明党の本音は、麻生氏さえ退けば、菅氏や森山氏が復権し、再び自公連立を続けたいというものがある
・本気で高市政権阻止を目指すなら野党と組むべきだが、それをせず中途半端な対応を取ることは、結果的に高市政権の誕生を許し、近い将来に麻生氏から解散総選挙を仕掛けられるリスクを抱えることになる
〇首班指名選挙の行方
・衆議院での勝利に必要な過半数は233票
・自民党は自身の196票に加え、国民民主党を引き込むことを目指しているが、連合の反対などから、国民民主党がすぐに高市氏に投票するのは難しい状況
・立憲民主党(148票)は、国民民主党の玉木雄一郎代表を野党統一候補に擁立しようと呼びかけている
・鍵となるのは、日本維新の会(35票)と公明党(32票)がこの野党連携に加わるかどうか
・しかし、玉木・新馬両氏は麻生氏との繋がりから極めて慎重な構えであり、勝利が確実な見込みがない限り乗らないだろう
・公明党は、高市氏でも玉木氏でもなく、斉藤代表に投票すると表明している。
・この結果、野党が一致団結できなければ、高市政権の誕生となる可能性が高い
3.内閣総理大臣を務める覚悟はあります
そんな中、10月10日、国民民主の玉木代表は記者会見を行いました。玉木代表の冒頭発言は次の通りです。
はい、あの、先ほどですね、公明党の斎藤代表が記者会見をされて、連立から離脱をされると表明をされました。その後、玉木代表は、記者質問で、産経から今後の首班指名選挙での対応を問われ、「総理を務める覚悟はある」と宣言しています。
1番の理由としてあげられたのが、いわゆる政治と金について、十分な対応がですね、自民党から出てこないということが大きな理由だと思っています。
会見も聞いておりましたけれども、斎藤代表なりの、また公明党としてですね、この間、大きく政治に対する信頼を揺るがしてきた政治と金の問題に収支符を打ちたいという強い意思の現れだという風に受け止めました。
あの、私たち国民民主党も公明党さんと一緒に、政治資金を監視する第三者機関の設置法案をともに提出するなど、これまであのともに取り組んでまいりました。
その意味ではですね、そういった覚悟、決意にはですね、大変共感しますし、またこの政治資金の問題がなかなかこの集結感がなくてですね、国民の信頼回復につながっていないということについては、懸念を共有するものであります。
今後ともですね、公明党さんとはこの政治と金の問題については、現実的な解決策を提言し、実現するためにですね、ともに力を合わせていければと思っておりますし、特に会見でもこれは西田幹事長が言及していたと思いますが、いわゆる政治資金の「受け」の強化ということについては、確か今年3月、国民民主党と公明党で考え方をまとめた経緯もございますの、是非与野党を問わずですね、各党各会派にこの「受け」の強化ということについては、これともにあの同意できる内容だと思っていますの、是非政治と金の問題、この問題にですね、終止符を打てるようにですね、これからもともに取り組んでまいりたいと思っております。
該当部分を抜き出すと次の通りです。
産経記者:記者会見の様子を見る限り、玉木代表の表情は淡々としていて、どこまで本気になのかよく分かりませんでした。少なくとも浮かれている感じではないように見えるので、あるいは、それなりに可能性があるとみて、無理に感情を押し殺していたのかもしれません。
産経です。よろしくお願いします。
公明党の連立離脱、あの首班指名で高市自民党総裁が選ばれる可能性というのが、ますます不透明な状況になったと思います。あの、この点、どういう風に代表考えておられるのかというのとですね、あの首班指名での国民民主党の対応を改めてお伺いできますでしょうか。
玉木代表:
はい。あの、我々としてはですね、あの原則は「玉木雄一郎」と書くということはこれまでも申し上げてまいりました。基本的にはこの方針は変わりません。はい。
産経記者:
野党の統一候補に賛同するってことは、あの昨日と同様、その考えはないということは変わらないでしょうか。
玉木代表::
あの、この間、色々ご質問いただいておりますけれども、あの私自身ですね、公党の代表として内閣総理大臣を務める覚悟はあります。
あるからこそですね、内閣総理大臣というのは、この国に起こる全てのことに責任を負う主体だと思っています。ですから、あの、物価高騰対策はするけど、安全保障はお休みですよとか、そんなことが許されないわけですね。
ですから、あの、立憲民主さんの野田さんからもですね、そういった声が上がってることは、あの承知をしておりますし、ありがたいことだとは思いますけれども、であれば、やはり長年ですね、この考え方を整理しきれなかった、その安全保障についての考え方をですね、是非あの立憲民主党の中でもまとめていただいて、我々は常に結党以来、現実的で具体的な安全保障政策エネルギー政策を訴えてまいりました、このいわゆる平和安全法制が違憲だということをおっしゃっておられるんです、それではですね、じゃあトランプ大統領が来た時に、今の日米の関係のベースにある、この平和安全法制について「憲法違反してます」ということでトランプ大統領に向き合うことはできないと思います。
ですから、あの、そう言うお声かけをいただけるのはありがたいんです、であればあの当内でですね、安全保障についての考え方を整理して、国民民主党の考え方として同じくですね、歩んでいただけるかどうか、それを是非当内で確認をいただきたいという風に思いますし、あの機関決定をしていただきたいなと思いますね。
玉木代表はその他の記者質問に対しても答えていますけれども、その概略は次の通りです。
〇立憲民主党への具体的な要求
・立憲民主党からの協力要請はありがたいが、連携の前提として以下の基本政策について党内で意見をまとめ、機関決定することを強く求める。
・平和安全法制について「違憲」との見解を整理し、国民民主党と同じ方向性で歩めるか確認すること。
・原子力発電所の再稼働や新増設を含む、安価で安定的な電力供給に関する意見をまとめること。
・短期間の「ミッション型内閣」や「期間限定」では、安全保障を担う責任を果たせない。物価高騰対策など一致できる点だけを書き、原発など一致できない点を避けるのでは不十分である、それが要求する理由だ。
〇公明党との連携・関係
・公明党とは「生活者のための中道政党」として共通する部分が多く、政策本位での協力は進める。
・協力分野としては次のとおり
+物価高騰対策(ガソリンの暫定税率廃止、年収の壁引き上げなど)
+政治と金の問題(政治資金の「受け」の規制強化)
・昨年末の自公国三党合意(ガソリン暫定税率廃止、年収の壁引き上げ)は、自公の関係が変わっても有効であり、引き続き履行されるべきとの認識。
〇臨時国会と重要政策
・政局の不透明さが増した今こそ、臨時国会を速やかに開会すべき。
・首班指名での調整が整わないとしても、まずは合意できる物価高騰対策を速やかに処理すべき。開会が遅れ、年内何もできずに年を越す事態は国民生活を救えず、避けるべき。
・首班指名を後にしても、国会を開いてやるべき政策を実行し、その間に連立や首班を巡る調整を同時並行で行うという、新しい政治のルールと作法が求められている。
〇その他
・自民党との関係については、連立から公明党が離脱したことで、国民民主党が仮に加わっても過半数に届かず、連立の議論は意味が薄れた。政策本位で協力する姿勢は変わらず、三党合意の履行が信頼関係醸成の試金石となる。
・維新の会とは、憲法・安全保障・エネルギー政策などで「ほぼ一緒」であり、政策的に一致できるところは多い。
・戦後80年に関する石破総理の見解については、過去の談話との整合性を保ちつつ、戦争に至った国内の体制や、政治家、メディア、国民それぞれの役割について分析されており、一定の意義があると評価する。
4.影のラスボス
それにしても、ここにきて何故急に玉木総理案が出てきたのか。
これについて、SAKISIRUの新田氏は、その裏に「闇将軍」が動いていると自身の動画で述べています。
件の動画の要点は次の通りです。
・国民民主党の玉木雄一郎氏が「私には内閣総理大臣を務める覚悟があります」と表明したことが、最大の話題。なんと小沢一郎氏が、政界再編を仕掛けているというのですね。
・これにより、首相指名選挙では高市早苗氏 vs 玉木雄一郎氏の構図が固まりつつあり、玉木氏にとって「千載一遇のチャンス」である。
・玉木氏は、立憲民主党など政権を共にする政党に対し、安全保障法制(安保法制)の扱いや原発政策といった国家運営の基本政策について一致団結した行動を求めた。これは、過去の民主党政権の反省を踏まえたものと見られている。
・一連の野党側の動きの背後には、依然として大きな影響力を持つ小沢一郎氏がいる可能性が高い。
・小沢氏がこの政界再編の「絵」を描いている可能性があり、その影響力は侮れない。
・今後は、衆議院での「数合わせ」、特に公明党をどちらの陣営が引き付けるかが焦点となり、首相指名選挙は決選投票にもつれ込む可能性が高い
・これは「30年に一度の大戦」であり、岸田政権の終焉を示すものである
冒頭で鮫島氏の見解を取り上げましたけれども、もし、自民の麻生氏が公明を切って、自民単独政権を目指しているのに対し、立憲の小沢氏が玉木代表を立てての政権奪取を目論んでいるのだとすると、麻生対小沢の天下を掛けた決戦が起ろうとしていることになります。
どちらが徳川でどちらが石田か分かりませんけれども、首班指名選挙は天下分け目の合戦になるのかもしれませんね。
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ルシファード