
1.公明党の連立離脱会見
10月10日、連立を離脱した公明党の斎藤代表が記者会見を行いました。
斎藤代表の冒頭発言は次の通りです。
斉藤代表:政治と金の問題への改革要請については、既に、自民党の高市総裁が会見で明らかにしているとおり、その場で決められるものではなく、党内手続きに沿って対応するとしたのに対し、斎藤代表は、「基本的にはこれから検討する」という誠に不十分なものと断じています。
はい。先ほど第2回目の高市総裁、鈴木幹事長、そして公明党側と西田幹事長、4名での政策協議を終えました。1時間半、協議を行いました。
今回、自民党との政策協議に臨むにあたりまして、3つの懸念事項を申し上げたところでございますが、そのうち2つにつきましては、高市総裁の丁寧なご説明もあり、共有をできたところでございます。
しかしながら、私たちが最も重視をいたしました「政治と金に関する基本」につきまして、意見の相違がございました。近年、第1党である自民党の政治資金を巡る問題によりまして、国民の政治全体への信頼が大きく損なわれております。この間に行われた衆参の国政選挙において、国民の根強い不信が払拭されず、信頼回復には程遠い状況と言わざるを得ない状況です。
我が党としても、私も参院選後、全国を回り総括をする中で、多くの方からご意見を聞き、「これまでの延長線上では(党の)再生はない」という強いご意見を伺ってまいりました。多くの党員・支持者から政治改革への取り組みが強く求められました。ゆえに、自民党と改めて連立を組むならば、これまでにはなし得なかった「企業・団体献金の規制強化」や「不記載事案の全容解明やけじめのための具体的な行動」がなければならない。このような決意のもとで、政策協議に臨んだところでございます。
そこで、政策協議にあたり、新総裁に対しても政治改革の取り組みを期待し、公明党が国民民主党とともに主張している「企業・団体献金の受け皿を党本部と都道府県連に絞る」という規制強化の実現を自民党に求めたところです。
しかしながら、今度の自民党の回答は「基本的にはこれから検討する」という誠に不十分なものでありまして、極めて残念でございます。
さらに、国政選挙後に新たに不記載問題に関係した秘書が略式起訴されるなど新たな事柄も起こっており、より一層の全容解明やけじめが望まれているにも関わらず、「すでに決着済み」と国政運営に取り組む姿勢は、国民の感情と掛け離れており、これでは政治への信頼回復はつかないと考えております。
一方、この一連の問題を巡り「政治の安定のための連立」との大義のもと、これまで国民や党員・支持者に(自民党の不祥事への)対応を説明してまいりましたが、国政の重要事項ではなく、自民党の不祥事を国民に説明し応援することに、地方議員を含め限界が来ているのが現状でございます。これら率直な意見を、私も参院選挙後、全国を歩くなかで、党員・支持者、地方議員の方から聞いてまいりました。
こうした政治と金に対する取り組みは、公明党の1丁目1番地でございます。本来、不倫な政治を当然とする我が党として、何としても断行すべきものと考えております。
新総裁は一定の改革姿勢は見られました。ご決意も伺いました。しかしながら、首班指名が迫る中、時間もございません。我々の要望に対して、自民党からの明確かつ具体的な協力が得られず、これらの改革が実現不可能なのであれば、とても首班指名で「高市」と書くことはできない、と申し上げたところでございます。
つきましては、自公連立政権については一旦、白紙とし、これまでの関係に区切りをつけることとしたいと思いいます。したがって、首班指名では公明党代表である斉藤鉄夫に票を投じます。
もちろん、これまでの継続性の観点から、何でも反対の「敵」型になるわけではありませ ん。我が党にも責任がある。これまで準備してきた色々な予算案、また政策ごとに賛成すべきものは賛成してまいります。
国政選挙における同士の選挙協力は一旦、白紙といたします。それでも人物本位、政策本位で応援できる地域も少なくないと思います。我が党が擁立する衆議院選挙候補への自民党からの推薦は求めません。自民党候補への推薦も行いません。
公明党は26年にわたり、自民党とともに様々な難題を乗り越え、国民福祉の向上のため、国益のために政権運営に尽くしてまいりました。これまでの協力関係に対しまして、自民党の皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。
現在、日本の抱える課題は非常に大きなものがございます。これらはいずれも、政治に対しての国民の信頼がなければ、何一つ政治を前に進め、課題を解決することができません。国民の政治への信頼を回復すべく、公明党はこれからも先頭に立って頑張っていきたい。そしてその上に、日本が抱えている処課題について果敢に挑戦をしていきたいと、このように決意をしております。
最後に、高市総裁、また鈴木幹事長には、これまでの自公関係に対して心からの感謝を申し上げ、握手をして、そして「お互いに頑張りましょう」ということで別れてまいりました。以上でございます。
その場で答えられないもの、しかも高市氏によると、会談自体「公明党の方で地方の声を聞くと、その結果について話をする」という趣旨でのものでした。それが、いきなり今この場で答えをだせ、ですからね。もしそれで答えをだそうものなら、高市独裁、執行部独裁になってしまいます。
2.なぜこのタイミングなのか
斎藤代表の冒頭発言後の記者質問では、当然のごとく、なぜ今なんだという質問が飛びました。
該当部分を抜き出すと次の通りです。
記者A:公明側は政治と金の問題をずっといってきた。石破政権のときからいってきた。それでも自民が何もしないから、連立解消した、とそういうロジックを立ててきました。
今回、このような連立離脱という大きな決断に至った理由と、これまでの自公関係の歴史をどのように考えておられるか、改めてお伺いします。
斉藤代表:
はい。まず26年間、色々な大きな課題を一緒に乗り越えてまいりました。今回、政治と金の問題が起こり、衆議院選挙、そして都議選、参議院選挙と、与党に対して大変厳しい国民の皆様の審判が下されました。それを真摯に受け止め、我々は参議院選挙の総括におきましても、「これまでの延長線上に我々の未来・将来、再生はない」と位置づけたものでございます。
今回の課題、国民から突きつけられた「政治への信頼回復」という課題を、どう自公で乗り越えていくかということをもって、今回我々は2つの案件について自民党さんに提案をさせていただいたところでございますが、明確なお答えがなかったということで大変残念でございます。
記者B:
なぜこのタイミングなのか。石破総裁の時はなぜこのような交渉をせず、高市新総裁になった時にこのような形になってしまったのか、もう少しご説明いただけますか。
西田幹事長:
この政治と金の問題、特に不記載の問題、あるいは企業・団体献金等の問題につきましても、これはずっとやってきたんです。石破政権時代、私自身がやってきました。何度も何度もこういう案でまとめよう、岩盤を越えてやろうとずっとやってきたんです。しかし、結局は結果が出ない、結果を出せなかったというのがこの1年あまりの結末なんです。
それで、あの選挙で厳しい審判を受けた。新しく連立政権を組むのであれば、これまで結果が出せずにこういう厳しい審判を受けた、その根底にある国民の皆様の期待に応える基盤となる信頼が得られないということでは期待に応えていけないわけでありますので、新しい政権を作るときには、これまで決着をつけなかったことについては、これまでにない対応で決着をつけようじゃないかということを我々もそれまでとはある意味厳しい提案をしました。それはなぜかというと、それだけ信頼を回復するにはそれを越えなきゃいけないからであります。
それが今の新しい連立政権の協議というときに当たっているということでありまして、おっしゃるように、今の高市総裁に急に起きてきた問題を取り上げているわけではありません。これまでの、ずっと自民党という政党に対して我が党として求めてきたこと、それが結論としてはできなかったことについて、今ここで決意をして決着をつけようと具体的な申し上げをしてきたことに対して、残念ながら十分な回答がなかったということで、連立政権は一旦白紙にするという決断をしたいわけであります。
斎藤代表は冒頭発言で「国政選挙後に新たに不記載問題に関係した秘書が略式起訴されるなど新たな事柄も起こっており、より一層の全容解明やけじめが望まれているにも関わらず、「すでに決着済み」と国政運営に取り組む姿勢は、国民の感情と掛け離れており、これでは政治への信頼回復はつかないと考えております」と厳しく批判していますけれども、そこはそれ、今のネット時代。たちまち、斎藤代表の過去の悪行が掘り起こされ晒されています。
たとえば、2021年11月、斎藤代表は、過去に提出した資産報告書で、有価証券の金銭信託1億379万円や株式5銘柄3200株などの記載漏れがあったとして訂正しています。
また、翌2022年の11月には、斎藤代表が代表を務める政治団体「斉藤鉄夫後援会」が、同じく斎藤氏が代表の「公明党衆議院小選挙区広島3区総支部」から事務所賃料計約90万円を受け取ったが、2021年の報告書に記載しておらず、訂正しています。
当然ながら、ネットでは、自分も裏金議員のくせに自民党を責める資格はない、と大炎上しています。
3.公明党の二枚舌
こうした公明党の態度について、ジャーナリストの三枝玄太郎氏の動画チャンネルにゲスト出演した埼玉県議の諸井真英氏が、「二枚舌だ」と厳しく批判しています。
動画から該当部分を引用すると次の通りです。
三枝玄太郎:公明党も先の衆院選で、3000万という高額の不記載議員に推薦をだしていたというのですね。自民党には不記載云々といっておいて、自分達に対してこれでは、ダブスタもいいところ。筋が通っていません。
いずれにせよですね、これネットでは「よくやった」みたいな書き込みばっかりだったんですが、多分オールドメディアはこれからですね。やっぱりね、政治と金が自民党には巣食っているから、そういう問題が裏問題があったから、こういうことになりましたっていうような、おそらくネガティブキャンペーンを貼ってくると思うんですよね。
で、石破政権で言うんだったら、じゃあ石破内閣の時に言えよっていう話なんですけれども。そうですね。どう思います?
諸井真英:
そうですね。石破さんにもなんか3000万ぐらい不記載があったとか、公明の代表にもなんか不記載(ミスだっておっしゃってましたけど)があったっていうことで。で、これはやっぱりミスっていうのはどこにでもある話なんですよね。だから意図的なその隠したっていうことと、ミスと一緒にするっていうことがまず良くないのが1つと。政治と金、もちろんクリーンにすべきだと私も思いますけれども、その中で萩生田さんが今回幹事長代行になったということで、それがけしからんと。「裏金議員」じゃないかと公明党がされてるみたいなんですけれども。
はい。ちょっと待ってくださいというふうに私は思うんですよ。はい。で、それはなぜかと言いますと、私の選挙区、埼玉県なんですけども、私の選挙区の隣の埼玉13区に、三ツ林裕巳前代議士・・・落選されたんですけども・・・という方がですね。この方も不記載で、3000万弱、本当に2950万とかそのぐらいで、本当に3000万で線引くところで高額だったんですよね。それがあって、昨年の10月の衆議院選挙は、萩生田さんと同じく無所属、そして比例はもちろんないと。
非公認議員ですねっていうことだったんですが、なぜかですね、公明党はその三ツ林さんに、自民党は何も出してない、推薦も出してない、公認も出してない。だけど、公明党だけが推薦を出してるんですね。で、これはなぜかと言うと、理由は分かるんですけども、石井啓一さんという公明党の前代表ですね。これが埼玉14区という新しい選挙区で、ここは自民党立てないで、自民党が公明党を応援するという形で石井さんが戦われた。
だけれども、国民民主党の鈴木さんに破れて、代表だから比例をつけてなかったんですね。ということで復活をせずに落選と。
ということなんですけども、その石井さんの選挙が厳しいっていう情報が最初からありましたので。で、そこの選挙区は新しい選挙区で、実は三ツ林さんの選挙区だったんですよね。ですから、石井さんの選挙に三ツ林さんの支持者、元の支持者に応援してほしいから。「その代わり、三ツ林さんも応援するよ」と、そういうことでバーターで推薦を出したわけですね。自民党は公認してないですよ。
だけども両方落ちてしまったということなんですけども。そう考えると、その不記載額が特に多くて、自民党さえ公認してない、推薦もしてない候補者に私、三ツ林さんよく知ってるから悪く言いたくはないんですけども、公明党はそこに推薦を出してるわけです。ということは、クリーンかどうかとか、不記載かどうかとか関係なく、じゃあ三ツ林さんがもし当選していて、なんか党役員とか、広報本部長とかになったら、今回不満を示せたのかというと、示せないはずなんですよ。推薦してるんで。
三枝玄太郎:
そうですよね。つまりもう、要はこの場合は三ツ林さんの支持者の応援をもらわなかったら、石井さんもう余裕で落っこっちゃうから。もう、これなんとかしてもらいたいと。そういう場合は推薦出してたよ。そうです、そうです。そういう話なんです。埼玉固有の事情だとはいえ。それを言うかっていうね、話を。
諸井真英:
ええ、そうです。それが分かっているので、もちろんその企業団体献金がどうっていうのはまたちょっと別な話ではあるんですけども、その萩生田さんがいるから気に入らないっていう理由に関しては、全然そのクリーンかどうかよりも、選挙でプラスになればそんなのクリーンじゃなくても構わないわけなので。ちょっと私はそれは理屈としては通ってないなと。おっしゃってることとやってることが全然違うと。違いすぎますよね。それは指摘はしたいと思います。
4.中国の影
つまるところ、このタイミングでの公明党の連立離脱は、高市政権の誕生だけは阻止したいという思惑が先にあって、理由なんかあとでこじつけたようにしか筆者にみえません。
実際、少なくない識者が中国の工作だと述べています。
ジャーナリストの門田隆将氏は、自身の動画チャンネルで公明党の連立離脱の真の理由は「政治と金」ではなく、中国の意向が背景にあると分析しています。
件の動画の要点は次のとおりです。
・ 「政治と金」は後付けの理由に過ぎず、本質は高市政権の誕生を阻止したい中国の思惑にある。門田氏は中国は高市政権を作らせないために、公明党を離脱させたと指摘しています。
・公明党と国民民主党は既に今年3月に「政治と金」の問題で合意しており、なぜ総裁選後に急に高市氏に突きつけたのか疑問。
・高市氏が「持ち帰って検討する」としたのに対し、「この場で答えろ」と迫り、離脱に至ったのは不自然。
・高市氏が総裁選で勝つ前から、公明党議員が自民党議員に対し、「高市氏を支持すれば創価学会の票は回さない」と示唆する動きが昨年4月から見られた。
・総裁選前の公明党代表による「連立は保守中道の方と」という異例の発言は、高市氏(非親中・毅然とした姿勢)とは組めないという中国への忖度を示唆していた。
・連立離脱の直前に、公明党代表が呉江中日中国大使と会談するという異例の行動があった。
・公明党は中国に都合の悪い法案(中国非難決議など)の骨抜きを、過去の与党内の協議(二幹二国)で繰り返してきた。
・中国にとって、毅然とした態度で臨む高市氏は都合が悪い。
・連立離脱は、高市政権の基盤が固まる前に揺さぶりをかけるため。
・公明党代表が「連立政権は一旦白紙に戻す」と述べたのは、「(中国が望んでいた)小泉政権であれば戻る」という意味合いがある。
・連立離脱後、国民民主党などとの連携を通じて、高市政権を阻止できるような「非高市政権」(玉木政権など)を模索する可能性がある。
・結論として、公明党の連立離脱は高市政権の打倒を目指す中国の激しい工作の一環である、と主張しています。
いかにも中国がやりそうなことです。
既に、水面下では首班指名を控え、熾烈な票の奪い合いが始まっている筈です。高市氏がこの苦難を乗り越え、総理になることができたなら、下駄の雪が無い状態で政権をスタートさせることができます。
その意味では、これから首班指名までの間は日本にとっても重要な時期になることは間違いないと思いますね。
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ルシファード