
1.ガソリン値下げ
10月24日、自民、維新、公明の3党は、ガソリンの旧暫定税率の廃止をめぐり、ガソリンへの補助金を11月13日から段階的に増やし、12月11日には1リットルあたり15円安くなるようにする方針を固めました。暫定税率は金額に直すと、1リットルあたり約25円ですから、現在の補助金であるリットルあたり10円とあわせると、税率廃止と同じ額だけ安くなります。
補助金は旧暫定税率が廃止されるまでの「つなぎ」の措置で、2週間ごとに補助金を5円ずつ増やし、4週間かけて計15円にするとのこと。12月11日に下がり切り、そのうえで、旧暫定税率がかかっている在庫が掃けるとみられる4週間後をメドに、実際に税率を廃止する方針としています。
軽油も同じタイミングで補助金を増やし始める方針で、2週間後の11月27日には約7円安くなり、旧暫定税率換算で1リットルあたり約17円を廃止するのと同じ価格になります。
3党は来週に再び協議し、税率を廃止した場合の税収減を穴埋めするための財源を検討。合意できれば、ほかの野党にも賛同を呼びかけた上で、価格を引き下げ始めることになります。
元々はこの3党協議は、自公と国民民主だった筈なのですけれども、国民民主は内心忸怩たる思いを抱いているのかもしれません。
ただ、肝心の暫定税率廃止の日程については、暗雲が漂い始めています。
10月23日、自民は立憲に対し、ガソリン税の暫定税率を来年2月1日に完全に廃止し、年内は上述した補助金を活用することで事実上の廃止とする提案を行いました。
これを受け、野党6党の税制の責任者はけさ、対応を協議した結果、この提案を拒否しました。なぜなら、もともと暫定税率の廃止は年内実施で与野党合意されていたからです。
立憲の笠国対委員長は、「私達は何としても年内速やかに、しっかりと廃止を実施するということで合意しているわけですから」と説明。同じく立憲の重徳和彦・税調会長は「公党間の合意を平気で破るような、そんなやり方っていうのは我々は断じて容認ができません」と批判しています。
翌24日、片山さつき財務相は閣議後記者会見で、「経済対策の中で、物価が一丁目一番地だ」と述べ、ガソリン暫定税率の廃止を最優先の課題として取り組む考えを示しました。片山財務相は、その上で、廃止時期について「実務の現場が付いていける形であれば早い方がいい」との考えを示しています。
2.ラスボスゾンビ
もともと年内で合意していた暫定税率廃止時期が何故来年2月になるのか。
これについてジャーナリストの須田慎一郎氏は、24日、自身のネットチャンネルでその理由について解説しています。
件の番組の概要は次の通りです。
皆さんこんにちは。ジャーナリストの須田慎一郎です。緊急配信です。今回お伝えしたいのは、自民党内で高市総理の足かせを引っ張る動きが顕在化してきたということです。このタイミングでそういった動きが起こってきたことに対し、動画をご覧の皆さんと意識を共有し、声を上げていただきたいと思い、情報提供させていただきます。なんと「ラスボス」宮沢洋一議員が裏から手を回して、国体から税調案件に戻したというのですね。野党が反発するのも理の当然です。
結論から言うと、「ゾンビ議員」、すなわちゾンビ政治家が復活しました。一体誰かというと、元自民党税制調査会長の宮沢洋一氏です。宮沢氏がここへ来て、高市新総理の足を引っ張るべく、水面下で動きを活発化させているという情報です。
事の発端は、与野党間で、与党6党の間で進められていた、ガソリンの暫定税率の廃止を巡る交渉です。与野党の国会対策委員長同士は、年内のガソリン税の暫定税率廃止で既に合意を見ていました。しかし、これに横槍を刺してきたのが自民党税制調査会です。小寺税調会長率いる税調は、「これは税制の問題であり、国会対策委員長同士で合意するものではない。国対マターから税調マターに戻すべきだ」と主張し、強引に自民党内で議論を税調マターに戻してしまったのです。
この裏で暗躍していたのが宮沢洋一氏です。税調マターに戻した後、彼らが出してきた代替案は、「年内は無理なので、暫定税率の廃止は来年2月に先送りし、その間は補助金で価格を下げる」というものです。かつて権勢を欲しいままにした税調内の「インナー族」と呼ばれる連中が動き、強引に方針を切り替え、年内廃止で合意していた与党内の方針を、来年2月以降へと変更させてしまいました。
なぜ来年2月なのかという理由として、「ガソリンスタンドの対応が間に合わない」ということが挙げられていますが、これは理由にもならない理由を述べ、自分たちのメンツを保ち、力を誇示するために、強引に税調マターに戻し、与党6党合意を台無しにする、あるいはぶち壊すような動きが自民党内から出てきているのです。
野党側は、年内合意が難しいのであれば、せめて来年1月中旬には実施するよう求めています。
この問題の根幹は、高市政権が発足して日が浅く、自民党内の組織を掌握しきれていないところにあります。しかし、税制に関する事項は高市政権にとって非常に重要な課題です。意思決定プロセスや決定権限者を透明化するべきであり、税調を統括する小林高幸成長会長もその方向で進めると言っていました。にもかかわらず、一体誰の意向で、誰の権限で、年内廃止が来年2月に先送りされたのか、国民生活に直結する話である以上、これを明らかにしてほしい。
この問題は、高市総理サイドと、元税調会長の宮沢洋一氏、そしてそのバックにいる財務省との戦いです。財務省は税制の主導権を握らせたくないがために、宮沢氏と連携し、強引に議論をぶち壊そうと動いています。この財務省・宮沢ラインの跳梁跋扈を許してはなりません。
高市新総理と小林高幸成長会長には、絶大なるリーダーシップを発揮していただき、何としても年内、難しければ1月中旬に、ガソリン税の暫定税率の廃止を実行していただきたい。補助金ではなく、減税による税率の引き下げこそが、国民やユーザーの気持ちに直接大きなインパクトを与え、心理的な変化を生じさせるからです。妥協するにしても1月中旬までには実現を強く求めます。
3.財務省の逆襲
須田慎一郎氏は、「ラスボス宮澤」の背後には財務省がいると述べていますけれども、早くも財務省は逆襲を始めたという指摘があります。
10月24日、憲政史家の倉山満氏は自身のネット番組「チャンネルくらら」で、弁護士の横山賢司をゲストに迎え、人事の切り口からこれについて解説しています。
件の動画の要点は次の通りです。
〇政治家の動向と減税問題財務省はエースを官邸に送り込んで、都合のよいように「洗脳」しようと企んでいるのかと思ってしまいます。
・片山さつき氏について、「恐竜番付」で最高位の関脇、また「総裁の女神様」(第一次安倍、福田、麻生で勝ち組陣営に乗る)と呼ばれ、財務省の先輩転がしが勝つか、片山財務相の何ともいえない迫力が勝つか、の勝負。
・高市総理の「Pay-As-You-Go(減税には財源確保または増税が必要)」という原則により、実質的に意味のある減税が永久にできなくなる懸念がある
・自民の小野寺税調会長と立憲の枝野税調会長が「1.5大政党税調会長会談」を行い、事実上、高市原則に同調。これは、維新が連立条件とする社会保障改革や減税への圧力を強める結果となった。
・日本維新の会の藤田氏は、閣外協力であるにもかかわらず「連立」と言い張ることで、「仲間なんだから約束を守れよ」と自民党に減税の公約遵守を迫る戦略的な意味がある。
〇財務省の異例な人事と次官レース
・吉野維一郎氏(H5入省)が財務省主計局次長の次席(ナンバー2)という高位のポストから首相秘書官に派遣された。これは、過去の秘書官派遣が三席や課長クラスが主だった中で「前代未聞」のことであり、財務省が首相官邸のグリップを強める意図の表れだ。
・中島朗洋氏(H5入省)は、首相秘書官から主計局次長に復帰せず、主税局審議官に就任。次官レースの有力候補だったが、「主税局の匂い」が評価を分けた可能性があり、「一回休み」という半々の評価が下された。
・一松旬氏(H7入省)が主計局次長の三席に昇進。維新が条件とする社会保障改革と関係が深い厚労課からの流れであり、最短6年で事務次官を目指す出世コースに乗ったと注目。
・寺岡光博氏(H3入省)は、菅内閣秘書官から税局長へ異動。政局の影響で出世レースから退いた形となったが、次期以降の国税庁長官のポストは残る可能性がある。
・岩佐理氏(H6入省)が文書課長から国税局に飛ばされた後、首相補佐官付きの内閣審議官として官邸の中枢である内閣総務官室に再派遣。吉野秘書官と同様に財務省の官邸への影響力行使を担う。
〇財務省の最終目的
・一連の人事異動は、国民の減税要求や高市政権による減税を阻止し、「誰が増税してくるか」で出世を決める体制を維持しつつ、首相官邸の強力なグリップを効かせようとする財務省の強い意志の表れである。
4.最初から劇薬
何やら、高市内閣と財務省の全面戦争が起こりそうな気配が漂ってきましたけれども、最初から分かった上で、片山さつき氏を財務相にしたのだという指摘もあります。
10月24日、経済評論家の渡邉哲也氏はネット番組「渡邉哲也Show」で、次のように解説しています。
渡邉哲也:筆者は、加藤前財務相が小泉陣営に付いたのは、ガチ保守の加藤氏がリベラル塗れの小泉陣営に入ることで、一種のブレーキ役になる積もりでわざと入ったのかと思っていたのですけれども、この渡邉氏の解説をみると、どうも財務省の差し金で送り込まれた線が濃厚だったように見えてきます。
いや、だから結局電話調査しても、答えてくるのは電話に回答する人だけなんです。お茶の間層しかいないの。
白川司:
なるほど。なるほど。オールドメディアは(オールドメディアしか)見てない人たちですね。
渡邉哲也:
うん。はい。だから支持率調査でしかないの、自分たちの。だから結果的に自分たちが困っちゃって、加藤さんを財務省も入れて、それで加藤さん以外にも財務官僚のトップクラスをずらっと入れて。で、小泉さんと、野党も与党も含め、今予算折衝中ですから、各予算省庁の予算の案分してますから、これで約束しちゃってんの、握っちゃってんの。で、勝つつもりだった。うんうん。で、勝つつもりだったけど負けちゃったもんだから、み、みんな真っ青になってんの。財務省でどうするのってなったのが、この閣僚人事に反映されて、加藤さんを残して加藤さんにその責任を取らせるのか、もう全く違う人材を入れるのかという二択になったんです。で、昨日、阿比留さんに聞きました。
「最初加藤さんって話もありました?」
「それは周りは言ってたけど、高市さんに直接僕聞いたんだけど、加藤はないと最初から言ってた」
ということで、最初から劇薬ぶっ込む予定だったわけですよ。
小野寺まさる:
なるほどね。そういう。
渡邉哲也:
片山さつきさんという、財務省の中を知ってますからね。だって片山さんはだって大蔵官僚時代のトップエリート、主計局ですから。中みんな知ってますから。今のトップクラスもみんな知ってますから。で、やり方も知ってますから。うん。それを中にぶち込んじゃった。毒薬で。これは強烈ですよ。それで責任ある財政。だから高市さんの支持を得た財務大臣として、元大蔵官僚の主計局の人間が中に入ってバッサバッサやるんだから、これやられた方たまったもんじゃないと思いますよ。
西村幸祐:
だからインチキや誤魔化しが効かないもんね。うん。片山さんだったらそれすぐ見つけるだろうしね。
渡邉哲也:
うん。片山さん全部喋るしね。
小泉陣営はおろか、与野党含め、小泉政権になると踏んで予算も準備していたのが、高市政権誕生で真っ青。それどころか「劇薬」片山さつきが財務相として乗り込んできた、となれば、確かにパニックでしょう。
それでも財務省は、ガソリン暫定税率廃止で高市総理の足を引っ張るのみならず、官邸への洗脳工作を始めた、となると完全に全面戦争です。けれども、政治は政治家が行うものであって、財務省が行うものではありません。国民は、財務省が専横しないように、しっかりと監視する必要があるのではないかと思いますね。
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