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1.SNS発信の時代
自民党の高市早苗総裁への「囲み取材」を待っていた報道陣の一部が「支持率下げてやる」などと発言したとされる動画がネットで拡散し、大問題となった件で、10月9日、時事通信社はこの発言が自社の男性写真記者であることを認め、「報道の公正性、中立性に疑念を抱かせる結果を招いた」として厳重注意したと発表しました。
これについての時事通信の声明は次の通りです。
◎本社カメラマンを厳重注意 =「支持率下げてやる」発言=Xに投稿された、この「支持率下げてやる」動画は8日夜の時点で約3700万回も回って拡散。YouTubeやTikTok、Instagramといった他のSNSでも同様の動画が拡散され、「冗談であれ、許されない発言」などといったメディアへの批判的なコメントが並びました。
自民党本部で7日午後、高市早苗総裁の取材待機中、報道陣の一部が「支持率下げてやる」などと発言した音声が収録され、インターネット上で拡散されたことについて、当社は映像センター写真部所属の男性カメラマンの発言であることを確認し、本人を厳重注意しました。
男性カメラマンは自民党本部で他社のカメラマンらと、写真撮影のため高市総裁の取材対応を待っていた際、雑談で「支持率下げてやる」「支持率が下がるような写真しか出さねえぞ」と発言し、ネットの生中継で収録された音声が SNS で拡散しました。SNS ではこれ以外の発言もありますが、このカメラマンの発言ではないことを確認しました。
藤野清光(ふじの・きよみつ)取締役編集局長は、雑談での発言とはいえ、報道の公正性、中立性に疑念を抱かせる結果を招いたとして、男性カメラマンを厳重注意しました。
時事通信社の斎藤大(さいとう・まさる)社長室長の話 自民党をはじめ、関係者の方に不快感を抱かせ、ご迷惑をおかけしたことをおわびします。報道機関としての中立性、公正性が疑われることのないよう社員の指導を徹底します。
以上
この問題について、慶応大メディア・コミュニケーション研究所の津田正太郎教授は、「ただでさえ既存メディアに対して「偏向報道」などと厳しい目を向けられている昨今、雑談だったのかもしれないが不適切な発言であるのは間違いない。最近はさまざまなところにカメラがあり、記者の言動も世の中にさらされ続ける時代。「いつでも見られている」という感覚を持ち、報道に臨むべきだ」とコメントしています。
2.ネット民がオールドメディアを監視する
そして、時事通信社は、「高市総裁をはじめ、自民党関係者の皆さまに強い不快感を抱かせた」などとして、自民党にお詫びをする意向を示したのですけれども、時事通信には、抗議電話が相次いで寄せられました。
Xでは、この発表後も批判の声が相次ぎ、時事通信に抗議の電話をしたとの投稿も見られる。元迷惑系YouTuberのへずまりゅう奈良市議も電話をしたといい、「厳重注意では弱いこと第三者機関が調査しないとこれから先も信用できないと伝えておきました」と投稿しています。
10月10日、時事通信社はJ-CASTニュースの取材に、まだ集計はしていないため件数は不明だが、9日午後からは電話が相次ぎ、対応にあたっている社長室の社員が「総掛かりで対応している」と状況を明かしています。
電話だけでなくメールも多く寄せられていて、その内容については、「控えさせていただければと思います」と回答を避けています。
再発防止策について時事通信社は、社員に対する注意喚起はすでに行っており、今後は研修などでの指導を検討していると説明していますけれども、Xには、「詳細な説明をするべき」といった声も上がっています。それでも、時事通信は、改めて説明の場を設ける予定はないとしていて、これで幕引きをしようとしていることが見え見えです。
3.崩れた財務省の小泉シナリオ
この件について、マスコミに説明責任を果たすよう求めることはごく普通のことだと思いますけれども、19日、産経は「なぜ軽視?メディアの信用落とす「発言」」という保守系ブロガーの寄稿記事を掲載しています。
件の記事の要点は次の通りです。
〇新聞読者の高い政治参加意識と新聞の使命マスコミが「マスゴミ」と呼ばれるようになって久しいですけれども、小泉候補の優位を予測し、投票行動にまで影響を与えるのであれば、それはもはや報道ではなく宣伝機関です。
・新聞読者の政治参加意識は高く、今年の参院選では91.1%が投票(全体の投票率は58.5%)。
・新聞には、このような読者に対し、政治参加に資する有益な情報を提供する使命がある。
〇自民党総裁選報道の問題点
・政策の違いを検証する「争点型フレーム」の報道よりも、勝敗を予想する「戦略型フレーム」の報道が多かった。
・社会保障など重要な政策議論をほとんど引き出せなかったことに落胆。
・小泉候補の優位を予測した議員票の票読みが、高市候補当選という実際の結果と大きく異なっていた。
・誤った票読みは、議員にバンドワゴン効果を生み、選挙結果を変える可能性があり、そもそも予測に報道価値があるか疑問。
〇時事通信社カメラマンの発言とその問題
・高市新総裁会見前、テレビのライブ配信に時事通信社のカメラマンによる「支持率下げてやる」「支持率下げるような写真しか出さねえぞ」という声が拾われた。
・この発言は、報道関係者の胸三寸で政権与党の権力者を叩くことが可能であることを示唆し、報道の私物化にあたる。
・マスメディアによる大衆操作は、総裁選でのステマ問題よりも次元が違う深刻な問題。
〇発言報道におけるマスメディアの対応
・問題の音声はSNSの検証により国民に広く知られた。
・産経・読売・共同・東京は迅速に報じたが、時事通信、朝日・毎日・日経は、時事通信が謝罪するまで(10月9日)事実を報じなかった。
・マスメディアの信用リスクに関わる深刻な問題を速やかに報じなかったことは、国民の強い不信感につながる。
〇結論
・国民の代理人であるマスメディアが、情報の非対称性を悪用して国民を操作しているとすれば、それは許容できないモラルハザードであり、詳しい説明が必要である。
4.オールドメディアを信じすぎた玉木
こうした問題は相当に深刻だと筆者は思っていますけれども、10月15日、プレジデントオンライン誌は「なぜ「マスコミの人」はこんなに偉そうなのか…時事通信「支持率下げてやる」の背景事情を元テレビ局員が告白」という鈴木洋仁・神戸学院大学現代社会学部准教授の寄稿記事を掲載しています。
件の記事の要点は次の通りです。
〇時事通信カメラマンの不適切発言が炎上鈴木准教授は、この記事で「ネットの登場以来、そして、ソーシャルメディアの普及に伴って、「誰もがメディアになれる時代」になって久しいにもかかわらず、マスコミの人たちが「自分たちが記録・報道しないと世の中の人たちは何も知らない」と思い込んでいる傲慢さ」を指摘し、「今回の「支持率下げちゃうぞ」発言は、単に、「中立性、公平性が疑われ」たから、多くの人たちの怒りを買っただけではない。それ以上に、この発言をもたらした背景への自覚のなさであり、それに伴う尊大さに、うんざりしているのである。そしておそらく、この記事を、マスコミの人たちが理解できないのだとしたら、まさにそこにこそ今回の発言の最大の問題が潜んでいる」と厳しく糾弾しています。
・自民党・高市早苗総裁の取材をめぐる日本テレビのライブ配信中に、時事通信社のカメラマンが**「支持率下げてやる」「支持率下げる写真しか出さねえぞ」**と発言し、ネット上で批判が殺到しました。
・この発言は、かねてから言われる「マスゴミは偏向報道」という世間の風潮を裏付ける形となりました。
〇時事通信社の対応と問題点
・時事通信社はカメラマンを「厳重注意」とし、「雑談での発言とはいえ、報道の公正性、中立性に疑念を抱かせる結果を招いた」とコメントしました。
・筆者(元テレビ局員)は、この「雑談での発言」という認識に、同社およびメディア全体の事態の深刻さに対する認識の甘さがあらわれている。
〇「マスコミの人が偉そう」な背景要因
・マスコミ関係者は、「自分たちが記録・報道しないと世の中の人たちは何も知らない」という無自覚な思い込みを持っていることが問題の根底にある。
・特にスチール(新聞社・通信社・雑誌社)のカメラマンに同様の振る舞いが見られるとし、筆者自身も現場で同様の光景にしばしば遭遇した。
〇記者クラブの馴れ合いと中立性の問題
・記者クラブ内の馴れ合いや、メディアに所属する人々の「芸術家としてのプライド」が空回りし、結果として権力監視という報道本来の役割を果たせず、偉そうな態度につながっている可能性があります。
・発言は「報道機関としての中立性、公正性」に対する疑念を抱かせるものであり、その深刻さをメディア自身が理解できていないことが最大の論点です。
マスコミの人々が、情報を独占できなくなった今という時代を認識できないでいるのなら、時代の波に流され消えゆく運命しか残されていないのではないかと思いますね。
この記事へのコメント
むしろ認識できているから、自分達の利点である高価な機材・設備による「編集」に力を注ぐのかも知れません
ルシファード