
1.覚醒する進次郎
小泉防衛相の「覚醒」が話題になっています。
10月26日、小泉進次郎防衛相がNHK「日曜討論」にスタジオ出演しました。
小泉防衛相の今後の方針についての発言の一部を抜粋すると次の通りです。
インタビュアー :無茶苦茶まともな答えをしています。
え、防衛大臣の小泉進次郎さんです。小泉さん、はい、何に優先的に取り組みますか?
小泉防衛相:
はい。まあ、高市総理はもう総理就任以前から長年防衛政策の強化、これに思いを持たれてまいりました。私の防衛大臣としての役割は、今、これだけ厳しい、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、日本ができる防衛力の整備を、自主的な、そして主体的な判断のもとで進めていくことです。 具体的に、対GDP比2%の目標前倒し、そして戦略文書の改定の前倒し、また防衛装備品の海外移転、これについても五原則の撤廃、こういった大変重いテーマもありますので、国民の皆さんのご理解を得つつ、スピード感を持って決断をして前進をさせていきたいと思います。
インタビュアー:
では小泉さんに聞きます。え、この防衛力の強化をトランプ氏の来日直前というタイミングで打ち出した、これにはどういった狙いがあるんでしょうか?
小泉防衛相:
これは全くトランプ大統領の来日やヘグセス長官との面会のタイミングではなく、日本が主体的な判断で自前の防衛力を強化するということです。高市総理は総理になってからではなく、総理になるはるか前から、日本の防衛を自前で強化しなければいけないということは常に言っています、言っていました。 アメリカに言われるからとかではなくて、日本が今置かれている安全保障環境を考えれば、これから急速に防衛力の整備、そしてまた安全保障政策の強化を進めてまいりますが、これに対して「早すぎる」とか、もしくは「強化しすぎだ」とか、こういった批判が一定出るかもしれませんが、全くその批判は当たらないほど、日本を取り巻く安全保障環境は厳しいです。そういった状況も含めて、安全保障の環境の認識を一致させること、そして個人的な信頼関係をヘグセス長官とも築いた上で、決して日本への挑戦を許さないような環境を作ることが重要だと思っています。
インタビュアー :
小泉さんに聞きます。改めてこの日本を取り巻く安全保障環境の変化をどう捉えているか、そしてどういった備えが必要だと考えますか?
小泉防衛相:
これは何度も申し上げている通り、戦後最も難しく複雑な安全保障環境に日本は置かれています。高市政権として、そして防衛大臣として、この厳しい環境の中でも日本の平和と、そして国民の命と平和な暮らしを必ず守りますし、日本の領土・領海・領空を断固たる意思で守り抜きます。そしてそこで働いていただいている任務にあたっている隊員一人一人とそのご家族を守り抜きます。 北朝鮮のミサイルについて今触れられましたが、あれは高市政権が補足した日でした。その日に高市総理から、情報収集に対して私と、そして茂木外務大臣に情報収集の指示が出ました。実はこの日本に向かっていない北朝鮮のミサイルに対して、情報収集の指示が総理から出るというのは今まではなかったことです。これを安全保障環境の厳しさと、そしてそれに対して政権挙げて危機感レベルを高めていく、こういったことだと捉えていただきたいと思います。 先ほど私がロシアの核を詰める戦略爆撃機が日本に近づいたことを私自身のXのアカウントでも発信したのも、これは今の安全保障環境を踏まえた上での政権挙げての情報発信の強化でもあります。これも防衛政策の強化と合わせて取り組んでいきたいと思います。
インタビュアー:
小泉さん、防衛装備品の五原則の話ありましたけれども、平和国家の理念とのこの両立というのはどう考えてますか?
小泉防衛相:
これは可能だと思います。私は昨日、オーストラリアが採用した最新の多機能護衛艦(もがみ型)の「くまの」を視察しました。なぜオーストラリアが今回日本の船を採用するに至ったか。その中の一つは、もちろんステルス性が高い。そして各国が人材採用に困ってますから、この省人化が日本の護衛艦ではできる。 それに加えてですね、これは非常に印象深い声でしたが、オーストラリアの軍人から、もしも自分の子供を軍人として船に乗せるということを考えた時に、最も命を守るのは日本の船である。そういったことがライバル国との競争の中でも日本の船が採用された理由の一つです。 こういったことも含めて、防衛装備品を今までの制約ではない、新たな段階の中で世界の秩序を回復させる重要なツールとして、日本ができることを全力でやるということは、私は平和国家の戦後の歩みと全く整合するスタンスだと思います。
インタビュアー:
小泉さん、高市政権は国家情報局の創設を検討しています。インテリジェンス機能の強化についてはどう考えますか?
小泉防衛相:
これは今回国家情報局自体は防衛省の直接の担当ではないかもしれませんが、情報が防衛政策にとっても極めて重要なことは言うまでもありません。 その中では日本だけではなくて、アメリカ、そして韓国など、同盟国・同志国との情報共有、こういったものも、ミサイル防衛についても、そして中国の不透明な軍事予算の拡大や尖閣諸島付近における様々な活動、こういったものの中でも、日本が揺るがず、平和をこれからも守っていくためには、情報を日本がしっかり掴むこの重要性が、今まで以上に高まるのは言うまでもありません。
インタビュアー:
小泉さん、防衛力の強化について、どう国会審議で理解を求めていきますか?
小泉防衛相:
これは今、新しい戦い方がウクライナとロシアの間の戦争の中でもドローンの活用などを含めて進んでいる中で、高市総理からは戦略文書の改定の前倒しも指示が出ています。 このもとで防衛省としては防衛力変革推進本部を立ち上げて、まさに防衛力を新たな戦い方に適用できる変革を成し遂げなければならないと感じています。 私から事務方、そして自衛隊幹部に申し上げていることは、「タブーなく議論してほしい」と。様々な議論が仮に議論を呼ぶようなことがあれば、その矢面に立つのは私を含めて政治が立ちますと。 あらゆる選択肢を排除せず議論をし、国民の皆さんの理解を得るための情報発信にも強化をして、丁寧な説明を続けていきたいと思います。
この答にネットも「農水相の時と違いすぎて五度見」「お前ホンモノか?まともなコメントやんけ」「日曜討論を途中から見て別人かと思いました」「話しの内容も含めて、いつもの進次郎とは思えない変身ぶり」など、いままでのイメージを覆すとする好意的な反応が相次ぎました。
2.防衛装備品の五類型
小泉防衛相は、防衛装備品の海外移転に関する三原則の下にある「5類型」について触れていますけれども、現在、日本は、輸出を認める装備品を「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の5類型に限っています。
防衛装備移転三原則とは、冷戦後の安全保障環境の変化や、国際的な平和貢献・協力の必要性を踏まえ、それまでの「武器輸出三原則」に代わり、2014年に閣議決定された政府方針です。
その三原則は次の通りです。
第一原則:移転を禁止する場合の明確化このように、防衛装備移転三原則は、日本の防衛装備の移転に関する基本的な枠組みを定め、運用指針が具体的な実行方法を規定しているのですけれども、小泉防衛相は防衛装備品の輸出拡大方針を掲げています。
・以下のいずれかに該当する場合は、防衛装備の海外移転は認められない。
・我が国が締結した条約その他の国際約束に基づく義務に違反する場合(例:クラスター弾禁止条約、対人地雷禁止条約など)。
・国連安全保障理事会(安保理)の決議に基づく義務に違反する場合。
・紛争当事国への移転となる場合。(武力攻撃が発生し、国際の平和及び安全を維持し又は回復するため、国連安保理が措置をとっている対象国を指します。)
第二原則:移転を認め得る場合の限定並びに厳格審査及び情報公開
・第一原則に該当しない場合でも、移転を認め得るケースは以下に限定され、透明性を確保しつつ厳格な審査が行われる
・平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合。
・我が国の安全保障に資する場合(例:安全保障面での協力関係がある国との国際共同開発・生産や、安全保障・防衛協力の強化に資する場合など)。
・重要な案件については、国家安全保障会議で審議され、情報の公開が図られる。
第三原則:目的外使用及び第三国移転に係る適正管理の確保
・移転を認める際には、適正な管理が確保される場合に限られる。
・原則として、目的外使用および第三国移転について、我が国政府の事前同意を相手国政府に義務付ける。
3.適材適所
小泉防衛相の「覚醒」ぶりに、28日ネット番組「ニッポンジャーナル」は次のように解説しています。
・小泉進次郎氏の防衛大臣就任は、自衛隊員への士気高揚や募集活動への貢献、および広告塔としての役割から「適材適所」。なるほど、世論が小泉防衛相を是々非々で「教育して躾して」やればよいという見方は中々面白い。
・小泉大臣が防衛装備品の海外輸出拡大のため「トップセールスを強化したい」と発言したことは、従来の日本の慎重な姿勢を打破するものであり、大きな驚きをもって迎えられた。
・この発言は、高市大臣の指示書には含まれておらず、大臣が就任後のブリーフィングを通じて自発的に重要性を感じ取った可能性が高い。
・韓国など他国の大統領が常に行っているトップセールスを、日本も国益のために行うべき。
・防衛装備品輸出の課題として、防衛装備品移転三原則の下にある「5類型」の撤廃問題があり、これが撤廃されれば輸出の経験値を積み、協力の強化や経済的なメリットにつながるため、早急に進めるべき。
・小泉氏の特性として、彼の言葉がシンプルで人々に刺さりやすいこと、そして他者が同じことを言えば叩かれるような発言でも、彼なら世論が叩かないという特性が、この路線の推進に有利に働いている。
・防衛大臣としての経験は、数年後総理を目指す小泉氏にとって非常に良い勉強の機会となる。
・世論は、彼の言動に対して「良いことをしたら褒め、悪いことをしたら叩く」という適切な「躾」を行うことで、この防衛装備品輸出拡大の路線を順調に進ませることが重要だ。
こうすることで、小泉氏が保守として「完全覚醒」するのなら、意外と悪い話ではないかもしれません。いい悪いは別として小泉氏の発信力は抜群ですからね。やりにくいことを小泉氏に請け負ってもらうことで話が進むのであれば、使わない手はないでしょう。
4.もどかしい思い
小泉防衛相は、26日、ネット番組「反町理のソコが聞きたい‼」に出演しているのですけれども、そこでも覚醒振りを見せています。
小泉防衛相の発言の一部を抜粋すると次の通りです。
小泉防衛相:やっぱりめちゃめちゃマトモなことを言っています。別人かと思うほどです。物事を進める手腕という意味ではまだまだ疑問がありますけれども、こと発信力に限れば、稀有な存在です。ここはひとつ小泉防衛相に大いに発信していただき、日本国民の国防に対する意識を変えていただきたいと思いますね。
これはだから今後の議論の中で具体的には、進めていかなければいけないと思いますが。今、大臣になってですね、本当にこれ農水大臣と一番変わったの何ですかって。多分、反町さんも気になりますよね?
反町理:
どうぞ。
小泉防衛相:
あの、一番違うのは、毎日提供される大臣への情報の中身です。なるほど。農水省に大臣としている時に、何が対外的に秘密なことか、これはもちろんありますけども、例えば日米の関税交渉も含めてですね。ただ防衛大臣は毎日その秘密の重み、これは次元が違います。
それを毎日現場でも受けて、昨日も司令部でもそういった機微なことに対するブリーフィングを受けていた時に、改めてもどかしい思いになるのは、全部言えないじゃないですか。はい。言えたら、この3文書の改定、5類型の撤廃、そして次世代動力潜水艦、これはまあ原子力も含む議論を決して排除しませんが、「こんなに防衛力強化するの?」という批判は全く当たらないことがよくわかる。だけどそれを具体的には言えない中で、国民の皆さんに「なぜここまでやる必要があるのか」ということを説明しなければいけない、というのが大臣のもどかしさ。
反町理:
それできないでしょ。できないっていうこと失礼ですけど、要するにこういう危機的な状況があるから必要なんだっていうのが普通の説明じゃないですか。
小泉防衛相:
で、そこにとどまるじゃないですか。だけど今、防衛省を挙げて、自衛官、自衛隊の幹部も含めて今話をしているのは、今までだったら出すのはここの基準をセットするという風にしていたものも、今までルーティンになっていたものも、「一回見直してくれ」と。その表現ぶりも。
例えばですよ、日米同盟は進化を続けていますと。連携は密にやってますという時に、私はその具体的なオペレーションがどのように行われているかということも含めて、しっかりと上げてもらうために、司令部に行き、司令部で情報保全を図った上で、そういった報告を受けるわけです。
だから今日のNHKの日曜討論に出た時も、「国民の皆さんに安心してもらいたいと。日米同盟は機能している」と。で、ここも、どのような表現でどのようなことを伝えれば、その秘密を守った上でですよ、国民の皆さんに防衛力の強化が必要だということもご理解いただけるかなというのが、やはりこれからこのような抜本的な強化を進めていく上では不可欠なので、さっきのロシアの爆撃機の接近も、私が自ら発信すると。
そして様々な攻撃や、また批判はね、政治が受けるもんだから。それはこちらが受ければいいと。で、国会やメディアとのその向き合いも、それは我々がやると。だからこの防衛三文書の改定を具体的に進める本部、これを防衛省に、おととい立ち上げて、防衛力変革推進本部って言うんですけど、その変革をしなければいけない中では、この次世代動力潜水艦もよくメディアからは「これは原子力潜水艦なんですか」とか言われるんですけど、その選択肢は否定をしないから。タブーなくあらゆる選択肢を議論をしてくれ。それを言ってるのは、指示を出したのは間違いなく。この一つ一つ全てに、まあ歴史がありますから、反対論出ますよ。抵抗も出ます。だけど乗り越えていかなければ日本の平和は守れない。その思いで政治がしっかりと立ち向かう。そこがあれば部内、省内、どんな議論も妨げない、それが一番今大事だと思いますね。
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