日中首脳会談と要求

今日はこの話題です。
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1.日中首脳会談


10月31日、高市総理は韓国・慶州で中国の習近平国家主席と初会談しました。

外務省のサイトで公開されている会談の概要は次の通りです。
1 習主席から高市総理大臣就任に対する祝意が表明されました。両首脳は、「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、「建設的かつ安定的な関係」を構築するという日中関係の大きな方向性を改めて確認しました。その上で、高市総理大臣から習主席に対し、地域と国際社会の平和と繁栄という重責を果たしていく重要性について働きかけました。

高市総理大臣から、安全保障や経済安全保障など懸案や課題があるからこそ、それらを減らし、理解と協力を増やし、具体的な成果を出していくとともに、首脳間で、戦略的互恵関係を進める意思を確認する重要性を指摘しました。

2 両首脳は、首脳間での対話、そして日中間の幅広い分野での重層的な意思疎通を行う重要性を確認しました。
両首脳は、日本産水産物の輸入再開を前向きに受け止め、引き続き昨年9月に両政府で発表した「日中間の共有された認識」をきちんと実施していくことを確認し、高市総理大臣から、日本産水産物の輸入の円滑化を求めました。

高市総理大臣から、日本産牛肉の輸入再開と10都県産の農水産物など残された輸入規制撤廃の早期実現に向けて、関連協議の促進を求めました。また、両首脳は、第三国市場協力、グリーン経済、医療・介護・ヘルスケア等の分野において、具体的な協力の進展を図っていくこと、グローバルな課題で協力していくことで一致しました。

高市総理大臣から、大阪・関西万博での中国館の金賞受賞に対し祝意を示しました。

3 高市総理大臣から、尖閣周辺海域を含む東シナ海での中国によるエスカレーションや海洋調査活動、我が国周辺の中国軍の活動の活発化につき、深刻な懸念を伝え、中国側の対応を求めました。両首脳は、防衛当局間の実効性のある危機管理と意思疎通の確保の重要性について一致しました。

高市総理大臣から中国によるレアアース関連の輸出管理措置に強い懸念を表明し、両首脳は、日中輸出管理対話を始め、当局間の意思疎通を強化していくことを確認しました。

4 高市総理大臣から、中国での邦人襲撃事件や邦人拘束が発生する中で、中国滞在に不安を感じている日本国民のため、安全確保を求めるとともに、拘束中の邦人の早期釈放を求めました。

高市総理大臣から、台湾海峡の平和と安定の我が国を含む国際社会にとっての重要性を強調しました。また、南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区等の状況に対する深刻な懸念を表明しました。

両首脳は、拉致問題を含む北朝鮮情勢等についても意見交換を行いました。
これを読む限り単なる挨拶だけに終わらず、それなりに議論はあったようです。


2.一致と言及


ここから両首脳で一致したこと、高市総理が言及したこと、習近平主席が語ったことをそれぞれ抽出すると次のとおりです。
〇両首脳で一致したこと
・「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、「建設的かつ安定的な関係」を構築するという日中関係の大きな方向性を改めて確認。
・首脳間での対話、そして日中間の幅広い分野での重層的な意思疎通を行う重要性を確認。
・日本産水産物の輸入再開を前向きに受け止め、引き続き昨年9月に両政府で発表した「日中間の共有された認識」をきちんと実施していくことを確認。
・第三国市場協力、グリーン経済、医療・介護・ヘルスケア等の分野において、具体的な協力の進展を図っていくこと、グローバルな課題で協力していくことで一致。
・防衛当局間の実効性のある危機管理と意思疎通の確保の重要性について一致。
・日中輸出管理対話を始め、当局間の意思疎通を強化していくことを確認。

〇高市総理が言及したこと
・習主席に対し、地域と国際社会の平和と繁栄という重責を果たしていく重要性について働きかけた。
・安全保障や経済安全保障など懸案や課題があるからこそ、それらを減らし、理解と協力を増やし、具体的な成果を出していくとともに、首脳間で、戦略的互恵関係を進める意思を確認する重要性を指摘。
・日本産水産物の輸入の円滑化を求めた。
・日本産牛肉の輸入再開と10都県産の農水産物など残された輸入規制撤廃の早期実現に向けて、関連協議の促進を求めた。
・大阪・関西万博での中国館の金賞受賞に対し祝意を示した。
・尖閣周辺海域を含む東シナ海での中国によるエスカレーションや海洋調査活動、我が国周辺の中国軍の活動の活発化につき、深刻な懸念を伝え、中国側の対応を求めた。
・中国によるレアアース関連の輸出管理措置に強い懸念を表明した。
・中国での邦人襲撃事件や邦人拘束が発生する中で、中国滞在に不安を感じている日本国民のため、安全確保を求めるとともに、拘束中の邦人の早期釈放を求めた。
・台湾海峡の平和と安定の我が国を含む国際社会にとっての重要性を強調した。
・南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区等の状況に対する深刻な懸念を表明した。

〇習近平主席が語ったこと
・高市総理大臣就任に対する祝意が表明された。
両首脳が確認したのは、意思疎通や過去の約束の実行が主なもので、新しくどうこうというのがありません。また、高市総理が10項目ほど習近平主席に求めたのに対し、習近平主席は高市総理就任への祝意だけ。これはあまりにバランスが悪いように思います。




3.中国の要求


ここまでアンバランスな内容であると、実は中国が日本にあれこれ注文をつけていて、それを隠しているのではないのかという疑問も浮かんできます。

中国側の主張について、11月1日付の人民日報が次のように伝えています。
習近平国家主席は10月31日午後、第32回アジア太平洋経済協力(APEC)非公式首脳会議に出席するため訪れた韓国・慶州で、要請に応じて日本の高市早苗首相と会談した。新華社が伝えた。

・習主席は、「中日両国は一衣帯水の関係であり、互いに重要な隣国である。中日関係の長期にわたる健全で安定した発展を促進することは、両国民及び国際社会の普遍的な期待に沿うものだ。中国は日本と共に、中日の4つの基本文書によって確立された原則と方向性に従い、二国間関係の政治的基礎を維持し、戦略的互恵関係を推進し、新時代の要請に適った建設的で安定した中日関係の構築に取り組むことを望んでいる」と指摘。

・「現在、中日関係には機会と課題が共存している。日本の新内閣が正しい対中認識を確立し、両国の一世代上の政治家や各界の人々が中日関係の発展に注いだ心血と努力を大切にし、平和、友好、協力という中日の大きな方向性を堅持することを希望する」と強調し、次の5点を提言した。

1)重要な共通認識の遵守。「戦略的互恵関係の包括的な推進」「互いに協力パートナーであり、互いに脅威とならない」「歴史を鑑として未来に向かう」などの政治的共通認識を着実に実行する。歴史や台湾地区など重大な原則的問題に関する中日の4つの基本文書の明確な規定を遵守・履行し、中日関係の基盤が損なわれず、動揺しないようにする。「村山談話」は日本の侵略の歴史を深く反省し、被害国に謝罪したもので、この精神は大いに発揚する価値がある。

2)協力とウィンウィンの堅持。中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(四中全会)では、「第15次五カ年計画」における中国の発展の青写真が描かれた。中日協力の余地は広い。中国と日本は、ハイエンド製造、デジタル経済、グリーン発展、財政・金融、医療・介護、第三国市場などの分野での協力を強化し、多角的貿易体制と産業チェーン・サプライチェーンの安定と円滑性を共に維持することができる。

3)民心の通じ合いの促進。政府、政党、立法機関などの意思疎通を継続的に展開し、人的・文化的交流と地方交流を深化・拡大し、国民感情を改善する。

4)多角的協力の強化。善隣友好、平等互恵、内政不干渉の原則を堅持し、真の多国間主義を実践し、アジア太平洋共同体の構築を推進する。

5)意見の相違の適切な管理・コントロール。大局を見据え、違いは違いとして尊重しながら共通点を探り、共通点に注目して意見の相違を乗り越えて理解や調和を目指し、対立や意見の相違が両国関係を定義することを避ける。

・高市首相は、「中国は日本の重要な隣国であり、日中両国は地域及び世界の平和と繁栄に重大な責任を負っている。日本は中国とハイレベル交流を維持し、各レベルでの交流を緊密にし、意思疎通を強化し、理解を増進し、協力を促進し、両国の戦略的互恵関係を着実に推進し、建設的で安定した日中関係を構築することを望んでいる。台湾問題に関して、日本は1972年の日中共同声明の立場を堅持する」との意を表した。
やはりです。4つの基本文書を出して、5つの要求をしています。

その要求をそれぞれ筆者なりに一言で纏めると「村山談話を守れ」「中国の発展に協力しろ」「対中感情を改善しろ」「アジア太平洋共同体の構築に乗れ」「世論をコントロールしろ」ではないかと思います。特に、対中感情を改善しろ、とか世論をコントロールしろ、とか如何にもかの国らしい要求です。


4.日本が懸念する十項目


日中首脳会談後、高市総理は記者会見し、日本の中国に対する懸念事項について問われ、次のように答えています。
今日は、習近平主席と初めての首脳会談を行いました。かなり中身の濃い、充実した議論ができたと思っております。

まず確認したのは、日中間で「戦略的互恵関係」、それから、建設的かつ安定的な関係、これを構築していくという大方針でございます。習主席には、地域と、やはり国際社会の平和と繁栄、この責任を果たしていくべきだということについても働き掛けをいたしました。

私から述べましたのは、やはり懸案とか意見の相違があるということは事実です。だからこそ、私たちが直接、率直に対話することが重要だということでございます。

具体的に、もう率直に申し上げました。

例えば、尖閣諸島を含む東シナ海の問題、また、レアアースなどの輸出管理の問題、それから邦人拘束についての懸念、それから中国在留邦人の安全性ですね、これを確保していただきたいといったこともお伝えしました。

その他、南シナ海での行動、また、香港や新疆(しんきょう)ウイグル自治区などの状況に関しても深刻な懸念を伝えました。

それから、拉致問題を含む北朝鮮情勢などについても意見交換をいたしました。

それから、日本産水産物、それから牛肉の輸入の再開、それから10の都県産の輸入規制でも前向きな対応を求めました。

それから習主席との間で、防衛当局間の実効性ある危機管理と意思疎通の重要性については一致をいたしました。そういったことは割と率直に、私が懸念していることも含めて申し上げましたし、協力し合える点について申し上げましたが、この会談を、日中両国が様々な課題に向き合うとともにですね、協力できることはしっかり協力して取り組んでいく、そういうきっかけとしていきたいと思いました。

今回は、日中輸出管理対話ということ、それから日中間の意思疎通、これを様々な分野で強化していくということを確認しました。

私と習主席との間での対話、そして、日中間で、割と重層的に意思疎通を行っていく重要性も確認しました。

それから、やはり懸案があるからこそ、よく話をするということ、そしてまた、双方が利益となる協力は進めていくと、こういう姿勢で、今後も習近平主席とは対話を重ねていきたいと思います。

先方からの反応ですけれども、これは会談の中身に踏み込むことですから、日本側から申し上げたことにつき、皆様に今、お伝えしたとおりでございます。
高市総理が習近平主席に伝えた懸念を整理すると次の通りです。
1)「戦略的互恵関係」および「建設的かつ安定的な関係」を構築していくという大方針の確認。(これは日中間の共通認識とすべき方向性として提起・確認されました)
2)地域と国際社会の平和と繁栄への責任を果たすこと。
3)日本産水産物、牛肉の輸入の再開。
4)10の都県産に関する輸入規制での前向きな対応。
5)中国在留邦人の安全性の確保。
6)尖閣諸島を含む東シナ海の問題。
7)レアアースなどの輸出管理の問題。
8)邦人拘束についての懸念。
9)南シナ海での行動。
10)香港や新疆ウイグル自治区などの状況に関する深刻な懸念。
この内容は前述した政府発表と同じであり、特に何かを隠したということではないようです。ただ、これらに対する中国の反応については、高市総理は、会談の中身に踏み込むことだからといって言及を避けています。

要するに、これら要求に対する中国の反応そのものが会談の中身だったということであり、わずか30分の会談だったことを考えると、YesかNoか、あるいは保留、といった極シンプルな反応だったのではないかと思われます。

ただ、中国が同意すれば、「〇〇について一致した」といった表現になるでしょうし、保留であれば「対話を続けることを確認した」といった言い方になるのではないかと思います。それが日本政府発表で、中国側の反応として「高市総理就任に対する祝意が表明された」だけしか発表されなかったということは、ほぼ全てNoと回答したのではないかと筆者は推測します。

であればこそ、高市総理は、懸案があるからこそ、よく話をするのだ、と強調したのではないかと思います。

それでも、対中懸念をはっきりモノ申したことは、石破、岸田政権とは雲泥の差であることは間違いありません。

今後の中国の出方を含め注視する必要があるのではないかと思いますね。





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この記事へのコメント

  • 超神将軍•オーバーロード

    日中会談は正直いって高市早苗さんの勝ちだと思ってます。習近平氏に対しての日中関係の良い所の語り方や自分の思っている事を出された時点で勝ちであります。中国も嫌なら会談はしないのですが、今の中国の経済はボロボロなのだから日本にすり寄りたいのが本音です。予想通り台湾との議員と会談したら[我々を裏切った~!]等と言ってる時点で負けなんです。
    2025年11月04日 11:37