財務省は変わるのか

今日はこの話題です。
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1.日本成長戦略会議のリフレ派


昨日のエントリーで、「日本成長戦略会議」のメンバーであるPwCコンサルティング合同会社上席執行役員、チーフエコノミストの片岡剛士氏を取り上げましたけれども、もう一人、クレディ・アグリコル証券会社東京支店チーフエコノミストの会田卓司氏も積極財政派です。

9月21日、ネット番組「楽待」チャンネルにゲスト出演した会田卓司氏は、財政収支のみを見るミクロ的な財政規律ではなく、経済のバランスを見るマクロの財政規律を導入し、積極財政の方法について議論を深めるべきと述べています。

件の動画の概要は次の通りです。
・経済規模が拡大しない状況下では、企業はコストカットによるシェア奪取を優先し、投資を控えるのは合理的な戦略である。
・「財政危機」は政府の責務放棄: 過去の緊縮財政(消費税増税やPB黒字化目標)は、経済規模を拡大させるという政府の責務を放棄した政策ミスであり、企業がコスト削減をやめられない悪循環を生んだ。
・財政健全性はストック面で問題ない。政府の「純債務残高」(金融資産を引いた負債)はGDP比マイナス87%であり、他国と比べて非常に小さい。
・企業が借入れをしないため、企業と政府を合わせた経済全体の負債構造は他国より圧倒的に小さく、むしろ負債が不足している状況である。
・財政はフロー面で「緊縮すぎる」。財政の適正水準は財政収支(赤字)ではなく、ネットの資金需要(政府の赤字と民間の貯蓄のバランス)で判断すべき。
・他国がコロナ後に景気回復する中、日本だけが回復せず、消費もコロナ前の水準を回復していないのは、日本の財政が他国に比べて緊縮すぎるためである。
・財政が緊縮すぎる結果、ネットの資金需要が消滅し、家計に所得が回らず国民が疲弊している。
・経済規模拡大にはネットの資金需要が十分にマイナスになる財政拡大(赤字)が必要であり、PB黒字化は「全く意味のない」目標であった。
・真の財政健全化: 政府が財政を拡大し、企業が国内投資を増やして借入れ(貯蓄率マイナス)を行うことで、最終的にネットの資金需要がゼロになり、政府の財政収支も赤字が不要となる状態こそが健全な財政健全化である。
動画の最後で、合田氏はキャスターの須田慎一郎氏と次のように会話しています。
会田氏:IMFの推計でも、日本の総債務残高GDP比は他国が改善していない中、コロナ前よりも改善しています。一方で、実質民間最終消費を見ると、日本だけがコロナ前の水準を回復していません。財政は先進国で一番改善しているのに、消費は一番悪い。これは明らかに政府が取り過ぎており、家計が疲弊しているので、家計にちゃんと政府からお金をしっかりお返しする状況が重要だということを示します。

須田氏:コロナショック後に日本を除く各国先進国は景気V字回復しましたが、日本だけが回復できなかったのは、消費が足りなかったことと、財政が絞り込まれたことに直結しているんですか?

会田氏:はい、そういうことです。コロナショック後、日本だけが景気が回復しないで低迷しているのは、政策ミス、財政が緊縮すぎるからです。

会田氏:今後、ネットの資金需要をマイナス5に戻すような動きが出てくれば、家計に所得が回っていき、消費が回復します。消費が回復すると国内に需要が生まれるため、企業は国内投資をすることが重要になってきます。これを粘り強く続け、企業の貯蓄率がマイナスに転じれば、ネットの資金需要をゼロにするために必要な政府の財政収支もゼロでよくなります。これが健全な財政健全化です。フローの財政収支だけを見るミクロ会計ではなくて、ネットの資金需要がマイナス5ぐらいになるように運営するマクロの財政規律の考え方を導入しなきゃいけない。

須田氏:財政を出すべきだというのは、何も財政を犠牲にした上でそうすべきだと言っているのではなく、結果的に財政健全化に到達するということですね。

会田氏:そうですね。財政健全化の指標がおかしかったということです。……減税なのか、成長投資なのかといった、積極財政の方法についての政策議論が必要なんだと思います。
会田氏は日本が景気回復しないのは、緊縮過ぎる財政という政策ミスが原因であり、そのベースとしている財政健全化の指標がおかしいとはっきり指摘しています。




2.サナエノミクスとは何か


更に会田氏は、11月6日放送のネット番組「ニュースの争点」に出演し「サナエノミクス」について解説し、財務省の財政健全化指標のおかしさを指摘しています。

件の動画の概要は次の通りです。
〇サナエノミクスの基本思想と目標
・目標:高圧経済の実現
 +企業の国内支出を促すため、現在のプラスになっている企業貯蓄率をマイナスに戻すことを目指す
 +そのための指標として、需給ギャップ(GDPギャップ)を過去の「ゼロ目標」ではなく、プラス2%を超える水準まで経済を押し上げる。
・政策の柱:責任ある積極財政
 +アベノミクスが「中立財政+大規模金融緩和」だったのに対し、サナエノミクスは「積極財政(官民連携の成長投資と需要拡大)+緩和的な金融政策維持」
 +積極財政によって、国内の「膨らむ力」であるネット(正味)の資金需要を、コロナ後の水準であるマイナス5%に戻し、名目GDPの成長と家計への所得循環(実質賃金プラス)を目指す
 +このマイナス5%は、過度なインフレ(英国トラス政権時の-15%など)を避け、適度な2%程度の物価上昇に抑えられる水準と試算。

〇財政規律の指標変更と円安の解釈
・新しい財政規律の提案
 +長年政府が目標としてきたプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化目標は、「将来の投資を税収の範囲内でやれ」という新自由主義的な古い考え方に基づくものとして否定。
 +代わりの指標として、純債務残高のGDP比に注目します。日本の総資産(年金資産含む)を考慮した純債務残高(約85%)は、総負債(約229%)で見るよりも健全であり、官民連携の投資(負債と資産が両方増える)をしても悪化しないため、成長投資に適した指標
 +財務省がIMFデータ(年金資産を外す)を使い、日本の財政を悪く見せようとする姿勢は駄目。

・為替(円安)の解釈
 +現在の150円台の円安は、バブル崩壊後の異常な円高(110円台)が修正され、**「正常化」**に向かった結果と解釈されます。
 +適度な円安(150円)は、企業の国内投資を促進し、経済安全保障や関税へのバッファーとなり、日本経済に利益をもたらす。
 +積極財政によって家計の負担を軽減する政策(消費税全廃など)を取ることで、「無策の円安」とは異なる「家計を支援できる円安」を実現できる。

〇具体的な投資先(経済安全保障と防災)
・真の財政余力は「供給能力」
 +有事や震災に備えるべきは、現金や国債発行余力ではなく、「供給能力」を国内に持っておくことです。
・重点投資領域
 +サプライチェーンの強靭化: 特定物質(半導体、重要鉱物など)の国内生産能力を官民連携で強化。
 +特定重要技術の開発: 宇宙航空、サイバー空間、バイオ、海洋といった将来の国力を左右する技術領域への長期的な研究開発投資。
 +防災・国土強靭化: 南海トラフ地震などの大規模災害に備えた強靭化投資を行うことで、企業が国内投資を控えるリスクプレミアムを解消し、安心感を確保。
会田氏は有事の為には、「供給能力」を持つことだと強調し、次のように述べています。
重要なのが財政余力の考え方です。今までのやり方だと、有事や震災のために「お金を取っておきましょう」でしたが、お金を持っていても物は作れません。日本を守る真の財政力は、供給能力です。これらの領域でしっかりとした供給能力を持っていること、または今から防災に投資をして、震災でもそれほど被害を受けないようにする投資をしていくことが、いざ震災や有事が起こった時の本当の財政余力になります。単純に財政収支を黒字にしなければいけないということではないのです。

「お金を持っていても物は作れない」、言われるまでもなく当たり前のことですけれども、財務省はこの「当たり前」を無視して、PB黒字化だなんだと「お金を持つ」ことばかり進めてきました。この「当たり前」が広く浸透、再認識されることで国民の声も変わってくるのではないかと思います。




3.震える財務省


11月6日、ネット番組「ニッポンジャーナル」は、経済評論家の上念司氏と元衆議院議員の丸山穂高氏をゲストに迎え、財務省改革の核心と日本財政のポイントについて議論しています。

件の番組のポイントは次の通りです。
〇財務省と片山さつき大臣
・片山さつき大臣(当時)は経済・財政に詳しいため、分かっていない大臣のほうが御しやすい役人にとってはやりにくくなっている。高市氏の閣僚人事は初手としてお見事。
・役人にとって、権力の源泉は「取って配る」こと(大きな予算規模)。配分権限がなくなることを最も嫌がる。
・財務省は「債務残高GDP比」などの指標を誇張して使い、増税の必要性を強調する傾向がある。統計は使う人によって見せ方が変わるため注意が必要。

〇財政・税制の最大の問題点:「税収弾性値」
・過去10年間の税収弾性値(名目GDPが1%増えたときの税収の伸び率)の平均実績は2.8である。
・しかし、財務省が本予算編成時に使う税収弾性値は1.2と、実態の半分以下に低く見積もられている。
・この低い見積もりのせいで毎年税収が「上ぶれ」し、その余剰分が補正予算で大盤振る舞い(ばら撒き)として使われる、という放漫財政の原因となっている。
・ 「責任ある積極財政」を達成するためには、税収弾性値をせめて2.0程度に引き上げ、実態に合った精緻な本予算を組むべき。補正予算でのばら撒きをやめるべき。

〇その他の税制・経済政策
・消費税減税(立憲民主党案)::食料品のみを1年間ゼロにする案は、便乗値上げを招き、再増税時に価格が大きく上がる可能性があるため、ほとんど意味がない。
・租税特別措置:維新が提案する租税特別措置(大企業優遇税制)の廃止は、歳出削減と間接的な減税につながるため、良い政策。
・金融所得課税:現時点での全面的な強化は市場に悪影響だが、将来的な格差是正のためには、超富裕層(例:10億円以上のキャピタルゲイン)への課税強化など、穏健な形での導入は避けられない可能性がある。NISAはむしろ拡大すべき。

〇リフレ派への批判
・昔デフレ時代に「金融緩和」や「減税」を主張していたリフレ派が、インフレ下で「金融引き締め」を主張するのは、経済状況(インフレ率)の変化に応じた当然の判断であり、一貫性を問う批判は不適切。
・財務省の役人は、一度言ったことを変えると「昔の間違いを認めることになる」という発想から、環境が変わっても政策を変更するのが難しい。
なるほど、財務省官僚に好き勝手やらせないためには、片山さつき財務相はうってつけだという訳です。




4.いい意味で変わってきている


番組で丸山氏は「税の話でいうと、最初にいったことを変えるのは本当に難しい。なんでかというと、役人の発想で言うと、「いや、なんでじゃあ昔の間違ってたってことか」になるから。いや、環境変わったら変わるの当たり前なのに、「先輩が悪いとか、元々の財務省が悪かった」って言われたくないから」と述べていますけれども、未来永劫そうなのかというと少し違うという見方もあります。それは片山財務相本人がそう述べているのですね。

11月4日、片山財務相は、閣議後会見で次のように述べています。
片山大臣:
私からは特にございません。

記者(幹事社):
それでは、幹事社質問をさせていただきます。よろしくお願いします。財務大臣就任2週間が経ちましたが、久しぶりの古巣の雰囲気についてどう感じていらっしゃいますでしょうか。また、第一声の初登庁の職員向けの訓示で、「財務新理教のデモが起きるのではなく、財務省が国の信用を守ってくれている、未来に夢が繋がるものを作ってくれている、希望のある社会が子供たちの世界に引き継げると思っていただけるよう、マインドだけ多少リセットしていただくことをお願い申し上げる」と述べられました。その後の高市内閣が打ち出す「責任ある積極財政」を省内に浸透させるために、職員に対しどのような指示や説明をされていますでしょうか。また、大臣のおっしゃる「マインドのリセット」に向けた手応えや課題について、現時点でのご所見をお教えください。

片山大臣:
はい、ありがとうございます。2週間なんですけれども、もう100日以上過ぎたような案件がとにかくたくさんありまして、やっぱりあの総裁選等等で、率直に申しますと、だーっと色々持ってきますので、そこは非常に「決断と前進の内閣」の財務大臣・金融担当大臣としては、進んでいるという私自身の実感はあります。 やっぱり職員・スタッフは大変優秀ですので、最初に私が申し上げ、また大臣室に持ってきた時に色々やり取りしている部分を、非常によく吸収して、日々その姿勢はいい意味で変わってきていると思います。

例えば、多くで報道していただいたように、10月になってから財政事情のパンフレットというか公表を、まあ、やったわけですね。つまり私が大臣になってからやって、その中で、今までも存在していた統計ではありますけれども、諸外国と比べて、日本がギリシャのように極端に悪いというようなことではなくて、例えば、短年度赤字であれば、日本はG7の中で4番目だとか(後に「直近の実績は2番目」に訂正)。これは端的に言って事実なんですけれども、今まで書いてなかったことも客観的に書くようになったということとか。

また、説明においても、その債務残高については、純債務、総債務、あるいはその取り方も色々あるという風にここで何回も申し上げているような、そういうものの考え方をするようになったので、これは財務省のリサーチや、あるいは現状把握の能力への評価を上げると思うんです。やはり、科学的でなくてはいけないし、冷静客観的でなければいけないし、360度の目線がなければいけないと思うので、非常にいい傾向だという風に思っております。ですから、それで私は報道を見た時に、すぐに担当者を褒めたいなと思って、そのように言い聞かせました。(まだ来てないけど)担当課長とか担当次長とかね。はい、と思っております。
片山財務相は、自身の会見での発言や大臣室でのやり取りを財務省職員が吸収して良い意味で変わってきているというのですね。

そのお陰か、財務省からのパンフレットなどの情報発信では「今まで書いてなかったことも客観的に書くように」なり、債務残高についても純債務、総債務やその定義についても様々な見方をするようになった、と。

片山財務相がいうように、科学的、客観的が目がなければまともな議論になりませんし、そうであって初めて、「日本成長戦略会議」の片岡剛士氏や会田卓司氏と建設的な議論ができるのではないかと思います。

前述の丸山穂高氏は「財務省の役人は、一度言ったことを変えると「昔の間違いを認めることになる」という発想から、環境が変わっても政策を変更するのが難しい」と指摘していますけれども、もし片山財務省がいうように財務省官僚が良い意味で変わってきているとするならば、それは財務大臣自らが「昔の間違い」を認め、責任を負う姿勢を示しているからこそではないかと思います。

片山財務相が具体的に、誰それが間違っていたと糾弾している訳ではないと思いますけれども、政治家が担当部局の内情を知悉、把握した上で全責任を負うという姿勢。これが改革の一番の土台になるのではないかと思いますね。





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この記事へのコメント

  • 超神将軍•オーバーロード

    高市早苗総理が国会や政権運営を無事に行われる事を期待したいですね。財務省は相変わらず[財源など無い!]とか[就職率は上がっている!だから増税しろ!]が本音なのでしょう。マスコミさえ財務省には逆らえないからだんまりを決め込むし、それにおもねる業界も同じです。今回の扉絵には感銘致します。自分ならば拳ならダイナマイトパンチ(鋼鉄ジーグ)でしょう
    2025年11月08日 15:35