
1.再稼働の条件は整っていない
11月6日、新潟県柏崎市の桜井雅浩市長は定例記者会見で、柏崎刈羽原発の再稼働に関する自身の「地元同意」について、花角英世知事の判断の前に表明したいとの意向を示しました。
桜井市長はこれまで6、7号機の再稼働に「条件付き容認」の姿勢を示していたのですけれども、10月7日に行われた前回の定例記者会見では、「地元」の定義などを求めて、7月に当時の石破総理と花角知事宛てに出した文書に対する国の回答を「赤点以下」と評し、「現時点では理解に及ばない」と語っていました。
この日の記者会見で、桜井市長は「まだ『理解する』と国に返事するには至っていない」と述べながらも、資源エネルギー庁幹部と協議を続けているとして「かなり良い線まで来ている……後は長官、大臣レベルで調整をすることになると思う。今月中にはしっかりしたお返事を頂けると期待している」と、赤沢亮正経産相と面会して改めて文書への考え方を聞いたうえで、再稼働に同意するとのプロセスを望んでいることを明らかにしています。
この日、新潟県は、柏崎刈羽原発の再稼働に関する「県民意識調査」の事実上の最終結果を公表しているのですけれども、今回示された原発から30キロ圏内の9市町村で、再稼働の条件が現状で「整っていない」との回答が、長岡市63%、小千谷市62%、十日町市59%、見附市60%、燕市64%、上越市57%、出雲崎町57%、柏崎市でも53%と8市町村で過半数を超え、刈羽村でも48%と半数に迫っています。
東電が原発運転主体であることを懸念する回答は9市町村全てで過半数に上り、長岡市の71%をはじめ、燕市の77%や小千谷市の74%、見附市の70%などとなり、柏崎市でも65%、刈羽村も52%となり、県全体(30市町村)の6000人を対象とした調査では、再稼働の条件が現状で「整っていない」と回答した人は「東電による運転の心配」と「使用済み核燃料の処理問題」を重視している傾向が明らかになっています。
2.寿都と神恵内
日本では、使用済み燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の最終処分方法として地層処分を選択しています。地層処分は廃棄物を地表から300m以上の深さにある安定した岩盤に埋めるもので、国内にも実施できる見込みのある場所が存在するとされています。
高レベル放射性廃棄物などの最終処分事業は原子力発電環境整備機構(NUMO)が実施主体となっておこなわれ、処分地の選定プロセスは、1)文献調査、2)概要調査、3)精密調査の3段階の調査を約20年にわたっておこないます。
2020年10月、北海道寿都(すっつ)町が文献調査への応募を表明。また、神恵内(かもえない)村が国からの調査の申し入れを受諾し、2020年11月から両町村で文献調査がおこなわれ、2024年11月に第一段階の文献調査が終了しました。
原子力発電環境整備機構(NUMO)は報告書を公開し、両地域は国内で初めて次の段階の概要調査の候補地となりました。両町村は人口減少が進み、将来の展望が大きな課題で、共に、北海道の泊原発から30キロ圏内に位置します。
寿都町の片岡春雄町長は、住民投票を経て概要調査へ進むかを判断する方針で、神恵内村の高橋昌幸村長は、住民投票を選択肢の一つとして検討するとしています。
処分場選定の第一段階である文献調査に応じると20億円、第二段階の概要調査では70億円の交付金が自治体に配られる仕組みになっているのですけれども、金で解決する問題という訳でもありません。反対の声が大きいからです。
寿都町の片岡町長は、文献調査の経緯を振り返り、文献調査の間、町民の間に核のごみ問題を自分ごととして考える人が増えた一方で、町や町長自身への風当たりが予想以上に強かったとし、「私は、停滞する国内の核のごみの議論に一石を投じようと手を挙げた。核廃棄物は国内のどこかに処分しなくてはならず、本来はどの地域も真面目に考えなくてはいけない。それに手を挙げた小さな自治体が、なぜこんなにも叩かれなくてはならないのか」と零しています。
ネットでは、「北海道の恥さらし」「寿都の特産物はもう買わない」「狂気の沙汰だ」など批判の書き込みが相次ぎ、役場には抗議の電話やファクスもあったそうです。
北海道の鈴木直道知事は当初、「札束で頬をたたくやり方だ」と国やNUMOを批判。調査について「現時点で反対」の立場を示した。北海道は、核のごみの地層処分を研究する「幌延深地層研究センター」建設に関し、2000年に核のごみの持ち込みを「受け入れ難い」とする条例を制定。寿都と神恵内の周辺の4町村は、調査開始に対して「核抜き条例」を制定し、核のごみの持ち込みに反対を表明するなどしています。
実際、寿都、神恵内以外の地域で調査を決めたのは原発が立地する佐賀県玄海町だけ。候補地を集めるため、経産省とNUMOは全国100以上の地域で説明の場を開くなどしてきたのですけれども、効果は出ていません。2007年には高知県東洋町が調査に応募したものの、町民の反対で撤回。長崎県対馬市は2023年、議会から調査開始の請願があったのですけれども、市長が拒否。住民の一定の反発が起きる可能性はどの自治体でも想定され、調査開始の大きな壁になっているのが現状です。
3.高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業
今年3月、日本原子力研究開発機構(JAEA)は 「高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業」という報告書を公開しています。
件の報告書に記載された背景と成果について簡単にまとめると次の通りです。
〇背景報告というから、結論が出たのかと思いきや、リスクが軽減できそうだだの、知見が乏しいことが分かっただの、まだまだ課題だらけであることが分かります。
「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」(2015年、資源エネルギー庁)に基づき、国および関係研究機関は、幅広い選択肢を確保する観点から、使用済燃料の直接処分その他の処分方法に関する調査研究を推進する必要がある。
これまでの研究開発(「直接処分第1次取りまとめ」など)で、使用済燃料の直接処分に特有の課題が抽出されており、「地層処分研究開発に関する全体計画(令和5年度~令和9年度)」においても、これらの課題への検討継続とその他代替処分オプションの検討が求められている。
〇目的
本事業は、上記の状況と全体計画を踏まえ、5か年(令和5年度から令和9年度まで)で以下の技術開発と調査を重点的に行うことを目的としています。
・直接処分技術:
+使用済燃料の直接処分に係る人工バリアの成立性の評価の高度化への対応。
+地質環境条件や使用済燃料の多様性への対応などに係る技術開発。
・その他代替処分オプション:
+深孔処分を対象に、諸外国の事例調査を通じて最新の技術動向や課題を把握した上で、わが国における成立性や課題の検討に資する調査。
■成果のまとめ (令和6年度)
〇1-1. 処分後臨界安全評価技術の高度化
・装荷曲線評価手法の具体化(UO2 燃料):
+諸外国の事例を参考に、UO2 使用済燃料を対象とし、金属腐食等を考慮した装荷曲線の評価手法を具体化し、試行的な評価を実施。
+処分容器1体に4体収容し、処分後の状態変化を考慮しても、国内の多くのPWR-UO2 使用済燃料で未臨界を維持できる可能性がある。
・MOX 使用済燃料の検討:
+収容体数を4体から1体に減らす臨界解析を実施し、燃料ペレットが自然落下・堆積し水/燃料比が小さくなることを想定する場合に未臨界を確保できる可能性が示唆された。
+MOX 燃料製造前後の履歴パラメータ(冷却期間、貯蔵期間など)が処分後の臨界性(約 $2 \times 10^7$ 年後)に及ぼす影響を把握し、Pu富化度が高いほど臨界性が高まるなどの知見を得た。
・処分容器の破壊・崩落の検討:
+力学解析により、処分容器の仕切り部の厚さを増す(50mmから最大200mm)ことで、仕切り部の破断時期を従来の約1万年から約3.9万年程度まで遅延できることが示唆された。
〇1-2. 使用済燃料からの核種溶出挙動評価
・瞬時放出挙動の調査:
+低酸素雰囲気・炭酸共存条件下での浸漬試験(ふげん使用済燃料使用)を実施し、U-238とTc-99の溶解挙動を確認。Tc-99については瞬時放出する挙動を確認。長期の還元条件維持のため、試験容器を金属製にするなど試験系の改良を行い、長期試験の継続に目途を立てた。
・長期溶解速度への炭酸影響評価:
+溶解指標物質($^{26}\text{Mg}$)を固溶させたUO2ペレットを用いた長期浸漬試験の結果、炭酸濃度の増加に伴い溶解速度が上昇する傾向があることを確認。
+正確な表面積(クラック等を含む)を測定するため、CeO2を用いた分析法の調査を行い、BET法で測定可能という見通しを得た。
・溶解メカニズムの評価:
+浸漬後のUO2ペレット表面の分析(ラマン分光法、XPS)の結果、表面近傍(深さ約5nm程度)のウランが酸化している可能性が示唆された。
+還元再沈殿試験では、UO2よりも酸化数の高いウラン酸化物が再沈殿物として生成することが示唆された。
〇1-3. 直接処分システムの成立性の検討に向けた基盤情報の整備
・発熱影響の調査検討:
+熱伝導率の低い埋め戻し材を使用する坑道断面オプション(UO2 燃料)でも、緩衝材最高温度を100℃以下に保つことが可能と示唆された。
+発熱量の高いMOX 燃料も、冷却期間を250年まで延長するか、吹付け方式等で緩衝材の含水比を上げて熱伝導性を向上させることで、100℃以下とできる見込みを確認した。
+多様な燃料を混在処分する地下施設の設計フローの試作と課題整理を行った。
・閉鎖後長期安全性の論証基盤整備:
+発熱影響に着目した「燃料と調和溶解する核種の移行によるリスク」に関する討論モデルを見直し。
+隆起・侵食による「処分場の地表接近・地表露出」に着目した討論モデルを試作し、評価における時間分散効果の検証(多段化など)の必要性を整理した。
〇1-4. その他代替処分オプション(深孔処分)
・技術情報の調査・整理:
+操業段階(定置)と閉鎖段階(深孔の閉鎖)に係る因子や条件を整理し、諸外国の検討事例でも施工方法や品質確認に関する知見が乏しいことを確認。
・成立性についての検討:
+成立の可否の判断における「論点」を起点とした調査・整理のアプローチを考案し、論点の抽出と主張・根拠等の情報整理を試行。
+この枠組みにより、論点の全体像の俯瞰と情報の有無の可視化が可能となり、効果的な整理の見通しを得た。
これではどんなに丁寧に説明したとしても、核廃棄物が埋められる地域の住民は、なかなか納得できないのではないかと思います。処分技術の進展が望まれます。
この記事へのコメント
日比野庵本館愛読者
また、常温核融合の研究の第一人者である水野忠彦(元北大助手)氏が、過剰熱は、核融合ではなく、核分裂だった。大体の原理が理解できたそうです(月刊ムーNo540号2025年11月号)。これなども、ミューオンが、関係しているような気がします。
日比野庵
>東京科学大学の奈良林直教授が、ミューオン素粒子・・・
いやぁ、明日のエントリーのネタですね。私もみました。実に興味深い技術ですね。成り行きを見守っていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。