ミュオンの力

今日はこの話題です。
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1.今後の課題


昨日のエントリーで、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」報告書を取り上げ、放射性廃棄物処理には課題が沢山あるのではないかと述べましたけれども、その報告書には今後の課題として次が挙げられています。
■今後の課題

〇2-1. 処分後臨界安全評価技術の高度化
・装荷曲線の妥当性検証:
 +PWR 使用済燃料の評価における不確実性因子の設定の妥当性検証と、他に考慮すべき因子の有無の検討。
・MOX 燃料の評価詳細化:
 +MOX 燃料製造前後のパラメータを拡充し、処分後の臨界安全性への影響を詳細に把握。燃料配置を考慮した臨界安全評価の必要性の有無を検討。
・容器破壊・崩落の対応:
 +仕切り部厚さ増加による破断時期の遅れが未臨界維持にどの程度効果があるかを検証。BWR 燃料やPWR 2体収容容器など、未想定の設計仕様についても力学解析を行い、臨界リスクの可能性を検証。

〇2-2. 使用済燃料からの核種溶出挙動評価
・瞬時放出率の実測値拡充:
 +改良した試験系を用いて、還元条件下での瞬時放出率の実測値の拡充を進める。
・正確な長期溶解速度の算出:
 +長期試験を行った固相サンプルを用いて、正確な表面積の分析を進め、溶解速度の精度を向上させる。
・溶解・再沈殿の理解深化:
 +UO2 ペレット表面のウランの化学状態の詳細な分析や、再沈殿ウラン固相の分析を継続し、溶解と再沈殿の挙動についての理解を深める。

〇2-3. 直接処分システムの成立性の検討に向けた基盤情報の整備
・重要課題への対応継続:
 +本年度整理された重要課題(温度分布解析手法、隆起・侵食評価における時間分散効果の検証等)への対応と、安全性の論拠の拡充。

〇2-4. その他代替処分オプション(深孔処分)
・技術情報の更新・拡充:
 +建設・操業・閉鎖の各段階および段階間の関係に係る技術的知見の最新情報の調査・整理を継続し、深孔処分に係る技術の現状と課題を取りまとめる。
・成立性検討の深化:
 +論点に対する主張・根拠等の情報の調査・整理の対象を複数の諸外国の事例に拡張。わが国の情報も見据えながら、「成立の可否に係る条件等の具体化」や「わが国での成立性についての考察」の具体的な進め方の検討と試行を進める。
やはり使用済み燃料の保管容器の安全性や、核種の溶出がどれくらいになるのかといった、要するに地層処分しても放射線の問題は抑えられるのかという課題が依然としてある訳です。


2.ミュオンによる核変換


そんな中、高レベル放射性廃棄物をごく短時間で無害化できる技術が開発されたと一部で話題になっているようです。

これは、東京科学大学の奈良林直特任教授が3年間の研究を経て、ミュー粒子であるミュオンを利用して、核変換を行うことで無害化するというもので、昨年8月国際会議で発表されました。

ミュオンとは、宇宙から降り注ぐ宇宙線の一部である素粒子です。寿命が約2.2マイクロ秒と非常に短く、自然界には安定して存在しません。現在の科学研究では、加速器を使って人工的に作られ、物質内部の磁気状態や元素を調べるための「探針」として利用されています。 

ミュオンには、正電荷と負電荷の粒子があり、電子と同じく強い力の影響を受けない素粒子「レプトン」に分類されます。

質量は電子の約200倍、陽子の約9分の1程度あり、非常に不安定な物質で、負電荷のミュオンは電子とニュートリノに、正電荷のミュオンは陽電子とニュートリノに壊れます。
自然界では、宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線が、大気中の原子核に衝突して生成され、人工的には、加速器で高エネルギーの陽子を標的原子核に衝突させることでパイ中間子が発生し、このパイ中間子が崩壊して、ニュートリノとミュオンになります

ミュオンが物質中に入ると、原子に含まれている電子と置き換わってミュオン原子を形成します。ミュオンは電子よりも重たいため、通常の電子と比べると軌道半径は1/200程度と原子核並みの大きさになります。これにより、原子核の内部にミュオンが侵入することがあります。

原子核の内部に入ったミュオンは、原子核中の陽子に吸収され、陽子は中性子とニュートリノに変換されます。この結果、原子核中の陽子の数が減ることになり、元の元素とは別の元素に核変換されます。 この核変換により、例えば長寿命のパラジウム107を、安定なロジウムに変えるといったことが可能になります。

これにより、高レベル放射性廃棄物においても、ミュオンによる人工的な元素変換を行うことで理論上は無害化することができるという訳です

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3.加藤康子の日本のものづくり応援チャンネル


ネットでは、「加藤康子の日本のものづくり応援チャンネル」という番組でこの技術を開発した奈良林教授のインタビューをしています。

件の動画の内容は次の通りです。
加藤康子:皆さんこんにちは。加藤康子康子です。「ものづくり応援チャンネル」。今日はですね、大変珍しいお客様をお迎えしております。東京科学大学の特定教授の奈良林先生です。私にしてみたらノーベル賞級の発見をされたということで、奈良林先生をご紹介したいと思います。例えば、原発をどんどん推進するのはいいけれど、「核のゴミ」ってのをどうするのか?使用済みの核燃料とか放射性廃棄物、こういったものをどういう風にこれから処分し、取り組んでいくのかということが、最も大きな課題としてあるんですけれど。実は先生、最近フランスで国際会議で発表されましたが、画期的な実験に成功されたと伺っています。このことについて皆さんに教えていただいてもよろしいでしょうか?

奈良林教授:はい、もちろんです。東京科学大学の奈良林と申します。加藤康子康子先生とは国家問題研究所のエネルギー問題研究会で、ずっとタッグを組んで色々な情報発信をしてまいりました。たまたまなんですけど、3年前にアメリカの方から「こういう現象が起きているんだけど、誰も解明できない」と。ワシントン大学もオークリッジナショナルラボラトリーも、テネシーバレーオーソリティも誰も分からなかったと。是非先生に解明してほしいと言われて、3年間検討を重ねた結果、これがミュオンという特殊な素粒子によるものだということが分かりました。それを使って、この間9月の19日にフランスで、アンティーブというリゾート地で国際会議が開かれ、そこで発表いたしました。私が発表したらですね、会場にいた方が皆スマホを出して撮影し出しまして、非常に今盛り上がっているという状況でございます。

奈良林教授:原子力発電所の欠点とは、高レベル廃棄物が発生することです。これを処分して、7,000年間保管しないと、放射能の毒性が下がりません。それから、福島第一原発で取り出したデブリ(放射能の塊)についても、「取り出したのはいいが、どこへ持っていくんだ」という話があり、福島の廃炉も「100年経っても無理ではないか」という疑問がありました。今回の発見は、その2つの課題を同時に解決できることになります。

奈良林教授:私があのミュオンの秘密を説明しますと、ミュオンというのは原子核にピュッと入っちゃうんです。マイナスの電荷を持つミュオンは、電子と似た特性を持ち、重さが電子の200倍くらいあります。非常に重たいため、原子核の近くにミュオンが軌道を描いてしまいます。この状態をエキサイテッド・ニュクライド(励起状態の原子核)と言うのですが、強い引力を持つので、隣の原子核と融合して核融合を起こしたり、あるいは核分裂をしたり、という作用が出ます。これが特徴なんです。

奈良林教授:例えばトリウムにミュオンを照射すると、クラスターフィオン(集団核分裂)という形でネオンと水銀に分かれます。これは核分裂です。その後、ベータ崩壊を2回繰り返して、ネオンは安定元素のマグネシウムに、水銀は最終的に鉛に変わります。変化にかかる時間が短いため、ミュオンを照射した瞬間に別の物質、例えば鉛などができちゃうんです。一番時間のかかるナトリウムがマグネシウムに変わるのも約15時間です。この15時間ごとの半減期に測定結果が完全に一致し、ミュオンによって核融合が起き、それがベータ崩壊して安定元素になっていくという、この現象の証拠を私が掴んだわけです。

奈良林教授:装置は非常に簡単なもので、ドラム缶のようなところにミュオン反応装置を入れます。ここで鉛が沸騰するので、有害な鉛の蒸気を吸引する装置も必要ですが、これで放射性物質はみんな安定な物質に変わってしまうというものです。この反応機の中には、昔電車のレール溶接に使われたテルミット反応を応用しています。ここでは酸化鉄ではなく酸化鉛を使うのがポイントで、これはミュオンのスピードを落とすために非常に有効な物質なのです。

奈良林教授:ミュオンは加熱すると増殖します。加速器の電極を加熱したらミュオンが増えたという論文もありました。これらを組み合わせることで、ミュオンを加熱して増殖させ、ミュオンの励起状態ができ、こういう簡単な装置で核分裂が起き、最終的にマグネシウムと鉛といった安定元素になってしまうのです。

加藤康子康子:これが実験すると最終的にどういう風になるんですか?

奈良林教授:はい。今は実験中ですが、この簡単な装置で強烈な放射能を出しているものを3つ入れて同時に反応させているわけです。この規模の2倍くらいの装置になると、1回に5kgの高レベル廃棄物を処理できるようになります。

奈良林教授:これを今、福島第一原発に適用したイメージを構想しています。炉心下のデブリをロボットなどで取り出し、補助建屋に置いたミュオン反応装置で、デブリを砕いて粉にし、テルミットのパウダーと混ぜて反応させます。空気をきれいにする装置を通すことで、きれいな空気を排出する形になります。ロボット大車を使ってデブリをミュオンの無害化装置まで運ぶシステムなど、大体シナリオはできており、あとは日本の「ものづくり」をしっかりすれば実現できます。

加藤康子:先生のこのお話を聞いてみると、結構簡単にできちゃうんじゃないかっていう感じがするんですけれど、これって例えば技術をこう発表すると、そのまま中国に特許を盗られちゃうんじゃないですか?

奈良林教授:あ、そう。だから特許をとっても盗られちゃうので、中国と戦うのは難しいなと思ってて。まずは日本で、そして日本とアメリカで、この技術を確立したいと考えています。

加藤康子:先進性の高い、人類の課題を解決できるような新しい発見に関しては、日本国内で。非常に不幸な事故があった福島を乗り越えることによって、新たな未来が生まれてくると思います。それはやはりこう問題を避けるのではなく、それをやはり未来に生かすという、そういう技術が生まれてくることが、私は一番日本人にとってはベストだと思います。

奈良林教授:原発が抱える欠点というのは、高レベル廃棄物が発生することですね。7000年間保管しないと放射能のその毒性が下がらないと。ミュオンを反応させると、変化する時間が短いので、ミュオンを照射した瞬間に別の物質、あの鉛とかができちゃうんですけど、2、3日で、例えば放射性物質はみんな安定な物質に変わってしまうということですね。

加藤康子:日本というのは、宇宙線が空からどんどん、それが大気圏に突入すると、そのミュオンと...

奈良林教授:はい。最初は陽子(プロトン)と言いますけど、そういったいの粒子が高速で地球に降り注いでるんですね。それで大気に突入すると、高エネルギーの粒子プロトンやなんかが大気中の酸素とか窒素とぶつかって、そこで中間子というのができるんです。中間子は湯川秀樹博士がノーベル賞を受賞した、この中間子を予言されて、そして西方があさらに霧箱でその中間子からミュオンができるということも発見されてるんです。実はそのノーベル賞が発見した成果を紐解いていくと、ミュオンによって、原子が別の物質に変えられるという、高レベル廃棄物のアメリシウムという厄介なやつがあるんですけど、このアメリシウムを鉛とマグネシウムに変わるということを実験で確認しました。理論付けもできましたので、国際会議で発表しました。

加藤康子:酸化ウランも、酸化トリウムも、アメリシウムも、無害化に成功したんですね。

奈良林教授:そうです、そうです。同時に処理できるというのは非常に大事で、高レベル廃棄物の中から特定の元素だけを取り出すのは手間がかかるんですけど、まとめて全部面倒を見るということができるということが分かりました。

加藤康子:すごいですね。今続けてアメリカの研究所でセシウムとストロンチウムについても実験継続しているんですね。

奈良林教授:はい。厄介なのは重たい元素と軽い元素はミュオンで処理できることが分かっているんです。ちょうどやりにくいのが重たい原子と軽い原子の間にある領域で、鉄とかコバルトとか、あとセシウムとか、そういったちょっと中間的な元素が難しいんじゃないかと言われているんですが、アメリカでコバルト60も無害化できるのは分かっているので、多分セシウムとストロンチウムも処理できるかと、いう風に思っています。

加藤康子:すごいですね。いつ頃分かるんでしょうかね?

奈良林教授:今、早くやってくれと頼んでいるので、テストをやってくれると思うんですけど。作業ロボットはこれから開発しますが、工学的に作れることは分かっているので、大きな問題にはならないと思います。ただ全て遠隔操作でやらなきゃいけないので、全部デバイスも開発しなきゃいけないんですけど。

加藤康子:実験できる施設というのはアメリカにしかないんですか?

奈良林教授:8月の中旬に、アメリカの原子力学会のジャーナルに投稿しました。原発の負の部分であった高レベル廃棄物をなくせるってことが分かってきましたので、原発の欠点がなくなってしまうわけですから、未来のエネルギーどうしたらいいかってのは全部決まってしまうような気もしますけど、いかがですか?

加藤康子:素晴らしいですね、先生。そのミュオンによって、酸化ウラン、酸化トリウム、アメリシウム、一緒に無害化するという実験に成功されたと。

奈良林教授:はい、はい、そうです。その原理も解明しました。

加藤康子:もうきちっと解明したと。

奈良林教授:はい。セシウムとストロンチウムは今現在、これから、

加藤康子:はい、これからですね。

奈良林教授:最後そこ見極めをしなきゃいけないと。

加藤康子:それができたら、まさしく宇宙戦艦ヤマトのコスモクリーナーのように、放射性廃棄物から、核のゴミと言われている使用済み核燃料や放射性廃棄物を無害化できると。

奈良林教授:はい、はい。去年、プラハで国際会議があって、欧州の元原子力学会会長が、「ドイツはダークサイドに落ちた」と。原発を止めたから二酸化炭素の排出が増した。だからドイツは間違った判断をしたと。結局、原子力発電所というのは、ジェダイの騎士なんですね。ダークサイドの失策はドイツです。原発を止めるということは悪の所業なんですね。今や原子力発電所は欧州では、これから地球を救う正義の味方にという評価に変わってきてるわけです。

加藤康子:私は、脱炭素と原発を結びつけるのはあまり賛成しないなと思うんです。なぜかと言うと、今GXなんかでも脱炭素政策が非常に行き過ぎていると思っていて、結局17兆円のGXの資金でも、蓋を開けてみると原発に使われるよりも風力とか太陽光に使われる予算の方が多くなっちゃうんじゃないかと。政策的に間違ってるのは太陽光、風力は悪なんですよ。地球の環境破壊をしてCO2を減らすことはできません。そっちの方はだから全部切り捨てなきゃいけないんですね。

奈良林教授:アメリカでもエネルギー基本計画の中に、再エネのようなものは入ってないですからね。

加藤康子:安価で安定した電力といった時に、それこそ火力と原発ときちっとした形で計画を立ててるじゃないですか。アメリカの場合には、もう化石燃料に帰依してますからね。私はやはり日本の技術というのは、このまま掘っておいたら技能者がどんどん高齢化していなくなると思うんですよ。そういう時に、こういう画期的な発明がされたということは、本当に勇気が出るし、若い学生たちにどんどん原子力の分野に進んでもらいたいなと思っております。昔、宇宙戦艦ヤマトで出てきたコスモクリーナーの話だなと思って聞いてましたよ。

奈良林教授:だから、コスミックミュオンクリーナーなんです。宇宙線由来のミュオンを使ったクリーナー、放射能のクリーナーなんです。ネーミングについてはちょっと興味が出るかもしれませんが、まさしくそのコスモクリーナーが今地上に存在するという状態になります。

奈良林教授:トランプ大統領も「風力やめちまえ」とおっしゃってますけど、当然で、洋上風力建設しても非常に建設費が高騰していて、風力発電で得る電気ではそれがその建設が回収できないということはもう明白になっているんです。だから三菱商人も撤退したわけです。日本政府はまだそこにしがみついてるので、無駄な政策を早くやめて、その再エネで今トランプ関税のその自動車産業とか、小金融まで含めて、その支援ということをすれば、なんとか日本の製造は持ちこたえると思うんですね。

加藤康子:素晴らしいお話でした、ありがとうございました。

奈良林教授:はい、どうもありがとうございました。

加藤康子:今回はパート2を撮ることになりました。皆さんが疑問に思っていること、多かった質問を中心に、今日はちょっと先生に質問をさせていただきます。まず先生が、正真正銘の科学者として、大変、原子力学会ではご評価いただいているというところを見せていただきます。

奈良林教授:はい。2018年は、私がアウトスタンディングに選出され、世界で活躍している教授として、素晴らしいISOEという組織からアワードをいただいています。

加藤康子:先生、はい。このISOEという組織は、職員被曝情報システム。実はですね、世界で400機を超える原子力発電所の事故トラブル情報と、働いている人たちの放射線被曝、職業被曝(宇宙飛行士も含めて参加します。NASAも参加します)を対象に、産業員の人たちを被曝させないことを目的に活動している組織です。

奈良林教授:なるほど。これ、何人ぐらい受賞されるんですか?

加藤康子:毎年1人です。おお、毎年の1人に選ばれたんですね。じゃあ本題のちょっと質問に入らせていただきたいと思います。このミュオンはどうやって発生したのですか?もう一度先生ご説明いただいてもいいですか?

奈良林教授:はい。宇宙からは高エネルギーのプロトンというのが、たくさん降り注いでいます。太陽から、もしあと宇宙空間で超新星爆発とか現象が起きますけども、高エネルギーの宇宙線が宇宙では飛び交っているわけです。地球に降り注いでいる絵をここに書いたんですけども、プロトン(陽子)が待機に突入しますと、待機の中で多い酸素とか窒素に衝突します。そうすると、パイ中間子というのができまして、パイ中間子は素粒子の1つなんです。極めて短い時間にミュオンに変わるんです。ですから、世界はミュオンのシャワーの中にいるということです。このミュオンは人体では全く影響ありません。ある特殊な条件で、非常に特殊な作用を起こすようになります。

奈良林教授:前回お話しした、福島第一原発の事故の2号機と5号機で、ミュオンによってレントゲンが撮れたということを示したものですけども、非常に重たい元素に対しては100%、原子番号90以上のものは100%の確率で作用するということが分かっています。原子レベルでお話ししますと、原子核があります。ミュオンは、エネルギーをずっと落としていくと、少しスピードを落としてやると、この原子に取り囲まれて、原子核の周りをぐるぐる回り出します。質量が電子の207倍ありますので、非常に重たい負の電荷を持った素粒子ですので、原子核に非常に近いところを高速でくることもあります。この状態が「ミュオン励起核(ミュオン励起ニュークライド)」といって、非常に活性化された状態のミュオンということになります。このミュオンが取り着いた原子核というのは、非常に強い引力、相互にぐーっと引き寄せる力があったり、あるいは核融合を起こすということもあります。これはもう加速器を使った研究で存在が確認されています。それから重たい元素は核分裂をしますので、ミュオンによって核分裂反応も起きるということになります。

加藤康子:多くの方から「加速器を使うんですか?」という質問がありましたけど、「加速器を使わないのであれば、ミュオンは加熱すると増殖するという根拠の論文が見当たらないんですけれど」…

奈良林教授:はい、今日はその説明の資料をご用意いたしました。ミュオンというのは、空から降り注いでくるのは1秒間に手のひらに1つぐらいなんですね。これではとても莫大な量の放射性物質を処理できません。ところが、加熱するとミュオンが増えるというのが、例えばオックスフォード大学出版局から出版された正規の査読を経た論文に、こういう現象について書かれています。この人たちはレーザービームをターゲットに照射した、つまり加熱したことになります。そうすると、「ミュオンが増え出しました」ということをこの論文の中で書いてあります。それから先ほどの核融合ですけども、核融合反応がミュオンで起こると加速されますから、核融合ではミュオンが湧き出してくると。つまりミュオン触媒核融合という風に言われています。ですから、加熱するとミュオンが増えるというのは、論文もそうですし、加速器を使って研究されている方々にとってはもう常識なわけです。

加藤康子:ミュオンの研究というのは日本が世界でも特に進んでいると伺うのですが、そうなんですか?

奈良林教授:はい。内閣府がプロジェクトに対して集中投資のお金をつけて研究をします。加速器を使ったミュオンの研究というのはダントツに日本が今進んでいます。

加藤康子:嬉しいですね、その話。

奈良林教授:ところが実用面でどうかっていうと、実際の世の中に役に立つところまで持ってかなきゃいけないんですね。そこが非常に難しくて壁があって、そこを乗り越えなきゃいけないというのが、実際私がもう3年もまるまるこの研究をしていましたので、そのくらいの大変さというのはあります。

加藤康子:放射能廃棄物の無害化がものすごいインパクトがあったために、多くの質問が「なぜその放射能を出さなくなるのか?」と。「ゼロになるということはどういうことか?」という質問がたくさんありました。

奈良林教授:はい。実はその証拠が私の手元にありまして、これなんですけど、「クッキー」「ビスケット」と名前をつけてます。これは酸化ウランを中心とする物質の中に、これを均一に混ぜて、テルミット反応を添加して反応しました。今これ私で握ってますけど、これ単に鉛とマグネシウムですから、何の問題もないと。反応前が10万カウントぐらいあるわけです。ミュオン反応するといきなり3桁近く下がります。あとは15時間の半減期に下がって降りてくるんです。この15時間の半減期を持ったナトリウム24が一番半減期長いんです。反応前に例えば1万5000 CPMだったとします。ベータ線が出ているわけです。反応させます。冷えたぐらいのところで30分後に測りました。そしたら600に減ってるんです。今度7日後ですけども、25 CPMで、これもうバックグラウンドレベルです。空から降ってくる宇宙線もカウントしてますので、もうなくなっているわけです。だから私こうやって手に乗ってられるわけです。

加藤康子:じゃあ、これを実際に世のため人のために社会実装して役立てていこうと。どうやって、福島第一原発のデブリの無害化をしていくのか、もうちょっと詳しくご説明いただけますか?

奈良林教授:はい。こちら、デブリを砕く装置です。その後にミュオンのリアクターがあって、あと空気を綺麗にする装置が付いています。この中でデブリを切断したりすると、放射性物質がたくさん出てきますので、私が開発した空気を綺麗にするシステムがもう既に開発済みで、これを使って現場の中の作業エリアの放射性塵を減らします。それに加えて、デブリの切断作業、取り出し作業が始まりますので、右側の青い箱の中をしっかりしなきゃいけないわけです。実際にやると、このドラム缶の中にリアクターが入っていまして、空気清浄システムにさらに強力な私の開発したやつを接続します。ミュオンが反応しているところは、鉄が加熱されて赤くなって、これがゆっくりと移動してくるということになります。これが私が開発した、空気を綺麗にする装置です。鉛は放射能はないですが、人体には有害ですから、人体に入らないようにしなきゃいけないので、そのためのマスクが必要になってきます。これもすでに開発済みです。

奈良林教授:あと大変なのは、取り出したデブリを原子炉の中でへばりついているものを引っ剥がしたり、床に堆積しているものを回収して、レール車で補助建屋の中のミュオンリアクターまで持ってきて、砕いてパウダーにして混ぜる。このシステムもちゃんと作らなければいけないんです。現在、福島第一で取り出されているデブリは合計0.8gです。私の計画では1回に5kg取り出すという計画で、1日2回で8時間作動させて、年間300日作動させると、計算上は15年で大体1000tぐらい取り出せることになります。このシステムをちゃんとやれば、880tのデブリは全て15年間で取り去して無害化することができるということになります。ただ壮大なシステムになるので、このシステム開発をしっかりしなきゃいけない。サイエンスから今度はテクノロジー、エンジニアリングに変わります。

加藤康子:作業が遅々として進まない理由に、作業用ロボットが途中で放射能の影響で動かなくなってしまう話をよく聞くんですけど、ミュオンのシステムでは大丈夫なんですか?

奈良林教授:今、福島第一原発の中はドローンが飛んでデブリの堆積具合を撮影したりしてます。短期間なら大丈夫なんです。CCTVカメラは比較的放射線に強いです。弱いのは、半導体のCPUですね。こういったものが微細加工されていて、放射線ダメージが出やすいんです。今度台車型のロボットにして、先端をパワーショベルにしたり、ウォータージェットで切断したり、粉は掃除機みたいにバキュームで、という台車を作ろうと思ってます。ただし、ロボットのアームの中にはCPUや半導体の素子を入れないで、外までワイヤーで引いてくるわけですね。外側で放射線が低いレベルになっているところでCPUを作動させるということになります。

加藤康子:使用済み核燃料の再処理で抽出された高レベル廃棄物は、どうやって無害化する予定ですか?

奈良林教授:はい。周期表の一番下の赤丸のところはウランとかアメリシウム、これ重たい元素で、放射線をいっぱい出す強い物質になります。六ヶ所の再処理工場は、ウランをリサイクルするために取り去っちゃうんですよね。3大放射線源というのが、アメリシウムとセシウムとストロンチウムです。プルトニウムが長いのがあるんですけど、これは再利用しますのでなくなります。だから福島第一よりもむしろ六ヶ所の再処理の方がミュオンによって無害化するのが簡単なわけです。ただ量がすごく多いということになります。

加藤康子:ガラス固化体になっているものに応用されるとどうなんですかね?

奈良林教授:ガラス固化体になっているものは、ガラスごと砕いてパウダーになりますから、やろうと思えばできると思います。もう一つは、ガラス固化体にする前に、溶液の形で取り出してミュオンで反応させるんですけど、この溶液で取り出したものを個体のパウダーにする乾燥させるところは技術的には難しいんです。そこが技術的な課題として残ります。それからあと、セシウムとかストロンチウムはまだミュオンで消せるという確認が取れてません。今、アメリカの共同研究者たちに頼んでるんですけど、ストロンチウムは体内に入ってしまうとカルシウムと同じ系列にありますから、骨に入って癌の原因になるので、まずしっかりした人のうちには漏れないような装置をちゃんと作ってからしましょうと言っていて、とりあえずセシウムは処理できますかというのを今取りやっています。コバルト60というもっと軽い元素ができているので、なんとかいくんじゃないかと言ってますけど、我々原子核物理の専門家としては非常に難しいんです。重たい元素と軽い元素は一粒あたりのエネルギーが大きいんですけど、中間的な元素は核結合のエネルギーが少ないので非常に難しいんですけど、テルミット反応で加熱しますからできるかもしれないという期待は持っています。これはちょっと試験をやってみて確認ということになります。

奈良林教授:このセシウムとストロンチウムは30年の半減期なので、今まで7000年かかったものが120年になります。アメリシウムを消しただけでもすごいですよ。これは7000年が120年に短縮した。

加藤康子:今話題になっている核融合、2030年代には成功させたいと高市先生おっしゃってましたが、このミュオンで核融合の可能性広がりますか?

奈良林教授:そうですね。先日AI核融合フォーラムというのが議員会館で開催され、大勢の方々が参加されました。専門家の方々が今の実現状を詳しく説明いただいたんですけど、材料の問題があるんですね。炉壁が非常に強いエネルギーの中性子で劣化しやすいので、その材料を開発する必要がありますとかですね。そういうことを考えると、ミュオンを使って、加速器じゃなくてミュオンを増して直接核融合、ミュオン触媒核融合を起こせれば、もう一つのその核融合のやり方ということになります。

加藤康子:夢になるお話で本当にありがとうございます。あまりお話ををしすぎると、公開している部分が特許の対象にならないということで、私はヒヤヒヤしながらですね...

奈良林教授:コメントの中にも特許の方は心配されているのがよくあって大変ありがたいです。ある程度今お話できるような、学会でも既に公表したようなお話を今中心にご紹介して、これだけ万人の方々から応援をいただくと、私もう本当に頑張ろうという気になります。温かい声をいただくのは、福島にお住まいの方で事故の影響を受けられた方々が、「このYouTubeを見て光が見えました」という風におっしゃっているコメントを拝見しまして、本当に嬉しく思います。

加藤康子:涙が出るほど、嬉しく。

奈良林教授:国を幸せにしないといけないというのは本当に心からそういう風に思っていますので、なんとか頑張りたいと思います。

加藤康子:この研究の成果が今アメリカの原子力学会の方の論文をお出しになっているということなので、是非朗報を期待いたしております。また今回パート2のビデオができるということで、また大勢の方に見ていただいて、応援していただければと思います。

奈良林教授:はい、先生ありがとうございました。また色と教えてください。
ミュオンを安価で大量に、しかもドラム缶程度の装置で出来てしまうとは。これが本当であればすごいことです。核廃棄物処分問題が一気に解決することになります。




4.『超自然現象』を科学的・批判的に究明する会


けれども、この技術は不可能だという反論もあります。

神戸大学名誉教授の松田卓也名誉教授は、自身が主催するシンギュラリティサロンで「奈良林教授の放射性廃棄物無害化のウソ」という動画を挙げています。
塚本昌彦教授: はい、撮り始めました。さて、今日は何のお話ですか。

松田卓也名誉教授: はい、今日はね、最近YouTubeで見つけたある面白い動画が2本ありまして、それが非常に話題になっています。それに関する、まあ、同じような解説というのかな、それを後押しするような動画がたくさん出ています。

塚本昌彦教授: へえ、何ですか?

松田卓也名誉教授: はい。こういうYouTube動画で、「驚愕!技術界に激震!日本の研究者が放射性廃棄物無害化に成功」というものです。奈良林教授のニュースですね。これがパート1で、パート2というのもある。「どういう原理?YouTubeコメントに詳しくお答えします」と。これはある理事長が送ってきて、「これについてどう思う?」と聞いてきたので調べました。これはどういう話かと言うと、原子炉などで溜まる放射性廃棄物を、例えば7000年間保存しないといけないと言われているところ、それを無害化できる、処理できるという技術を日本の研究者が開発に成功したという主張です。結論から先に言えば、あの、ダメです。

塚本昌彦教授: やはりダメですか。

松田卓也名誉教授: ただ、期待がものすごく大きいので、「これが間違ったまま広まって良いのか」ということで調べました。素粒子・原子核の専門家である教授や名誉教授合わせて3名に意見を聞いたところ、「間違いだ」という見解で、私もそれに同意するという話です。動画が主張する画期的な成果とは、放射性廃棄物(高レベル廃棄物、福島のデブリ等)の無害化に成功したというものです。原理は、ウランなどの放射性物質にミュオンという素粒子の力を借りて核変換を起こさせ、最終的に放射能を持たない安定な物質(鉛、マグネシウムなど)に変化させるというものです。

塚本昌彦教授: その時に放射線は出さないということですか?

松田卓也名誉教授: 元々放射性の物質、例えばウランにマイナスのミュオンを当てるんよ。そうすると、これが原子番号が1つ下がり、不安定な放射性物質が安定な原子に変わる。この現象自体は間違いないので、実は昔から知られておったわけです。問題は、それが現実的にできるかという点です。

松田卓也名誉教授: 次に、その核変換のメカニズムの根幹をなす「ミュオンの増殖」です。マイナスのミュオンは原子核のそばに入り込み、プロトンをニュートロンに変えて原子番号を1つ減らし、無害化ができるという理屈です。このミュオンは宇宙線から発生し、レントゲンのように内部を透視するのにも利用されています。ミュオンを不安定な原子核のそばに持っていけば安定な原子に変わる、これも事実です。問題はコストです。ミュオンは加速器で生成する必要があり、莫大な電力コストがかかります。原子核1つを処理するのにミュオンが1つ必要だとすれば、例えば1モルのウラン(およそ1兆の1兆倍の原子核)を安全化するには、同数のミュオンが必要です。加速器でそれだけのミュオンを作るには、ものすごい電力が必要になり、採算が合わないという問題があります。奈良林先生はこのコスト問題を「ミュオンは加熱すると増殖します」とパート2で主張しました。「少量のミュオンを投入し、テルミット反応などで加熱すれば、ミュオン自体が増殖するためコスト問題が解決できる」と。つまり、温度を上げればミュオンが増えるという、常識にはないことをおっしゃっているわけです。

松田卓也名誉教授: コメント欄を見ると、多くは「ノーベル賞だ」「日本の原発問題が全て解決する」という賞賛の嵐でした。中には、専門家で物理を学んだ人もいて、「ミュオンが増えるという論文を調べたが、見つからない」という疑問のコメントがありました。パート2では、その質問に答えるという形で、ミュオンが増殖する証拠として、オクスフォード・プレスの学術論文「Enhancement of Muonium Emission Rate from Si with an Ablated Surface」を提示されました。しかし、その論文をAIに読み込ませて調べたところ、致命的な問題点が判明しました。

松田卓也名誉教授: それは、ミュオン(素粒子)とミュオニウム(プラスのミュオンと電子が結合した原子)という、全く別の粒子を混同していたことです。核変換に必要とされるのはミュオン(素粒子)ですが、論文が扱っていたのは核変換を起こす能力のないミュオニウム(原子)です。さらに、論文のタイトル「Enhancement of Muonium Emission Rate(ミュオニウムの放出率の向上)」は、ミュオンの増殖(Multiplication)に関するものでは一切なく、ミュオニウム原子をいかに効率よく物質の外部へ放出するかという研究でした。教授は「向上(エンハンスメント)」を「増殖」と誤読してしまったと推測されます。

塚本昌彦教授: そうなんですか。

松田卓也名誉教授: 結論と総括として、動画の主張はその根幹部分で科学的根拠を欠いています。ミュオンで放射性廃棄物を無害化できるという原理は正しいが、その鍵である「ミュオンの加熱による増殖」という現象の唯一の証拠として提示された学術論文は、無関係な粒子ミュオニウムを扱っており、全く異なるプロセス(増殖ではなく放出)を研究している。つまり、その動画の主張は間違っているということです。

塚本昌彦教授: なるほど。世の中で、その論文が当てはまらないという議論は起きていないのですか?

松田卓也名誉教授: 誰も知らないわけです。コメント欄は、物理を知らない人の賞賛と、一部の専門家による「おかしいんじゃないか」というコメントの2種類に分かれていました。教授がタイトルを画面に映した論文を、誰も内容まで深く確認した人がいなかったということですね。

塚本昌彦教授: はい、その論文に対してちゃんとした物理学者の人が読んで反論しているのはまだないということですね。

松田卓也名誉教授: はい、そうです。これは私が(理事長からの依頼で)調べた結果です。素粒子・原子核の専門家4名に問い合わせたところ、皆、原理は正しいが、問題は**数(コスト)**であるという見解で一致しています。ミュオンを当てて放射性元素を安定にするという現象自体は知られていることですが、加速器でミュオンを生成するための莫大な電力が必要になり、現実的には不可能です。そこで奈良林先生は「温度を上げれば増やせる」とおっしゃった。しかし、温度を上げるという発想は、原子核・素粒子のレベルのエネルギーとは全く異なり、常識的な科学のレベルの話ではありません。そして提示された論文も、ミュオンが増えたとは言っておらず、ミュオニウムが外へ飛び出したと言っているだけでした。この先生は、原子炉を扱う分野では専門家ですが、ミュオンの話になると素粒子の問題になり、そこは専門ではありません。したがってその主張は根源的な原理のところで間違っています。
松田氏によると、温めてもミュオンは増えないとのことで、ほぼほぼ全否定です。松田名誉教授はJapan Skeptics「別名:『超自然現象』を科学的・批判的に究明する会」会長で、疑似科学批判を行っている方ですから、余計に厳しく批判しているのかもしれません。

奈良林教授と松田名誉教授のどちらが正しいのか筆者には分かりませんけれども、なんとなくスタップ細胞騒ぎを連想しました。その意味では国内よりは海外でどういう反応があり、興味をもって共同研究を持ちかけたりしないか、視野を広く持って成り行きを見守りたいと思います。





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