
1.財務省との全面戦争が始まった
11月14日、公明党の岡本三成政調会長は総理官邸で木原稔官房長官と面会し、政府が近く決定する経済対策に関する提言を手渡しました。提言は物価高を踏まえ「国民所得を継続的に支えるための減税を断行すべきだ」と強調。家計の負担軽減に向け、幅広い所得層を対象とした現金給付などを盛り込んでいます。更に、奨学金返済額の一定割合を所得控除する「奨学金減税」の創設や、年少扶養控除の復活も明記しています。
国会でも経済対策や来年度予算にむけての議論が活発かすることになっていきます。
高市政権が発足直後の10月23日、プレジデントオンライン誌は「ついに"緊縮"財務省との全面戦争が始まった…"安倍首相の側近"だった高市内閣のキーパーソンの名前」を掲載しました。
件の記事の概要は次の通りです。
〇財務省との対決姿勢が鮮明プレジデントオンライン誌によると、高市内閣は経済財政担当大臣に城内実氏を起用する人事によって、積極財政の方向へと舵を切るという明確なメッセージを送り、結果として財務省と全面対立の構図を作り出すことになった、と述べています。
・高市早苗首相は、緊縮財政を掲げる財務省と全面対決する姿勢を明確にした人事を行った。
・特に注目すべきは、経済財政担当大臣に城内実氏を起用した点。
〇経済財政担当大臣、城内実氏とはどういう人物か
・キーパーソンの城内実氏は、「安倍首相の側近」とされる人物で、過去3回の総裁選で一貫して高市氏を支持した。
・前々回の総裁選では、安倍元首相の意向を汲み、高市陣営の事実上の選挙対策責任者を務めた。
・「責任ある積極財政を推進する議員連盟」(積極財政議連)の顧問を務める積極財政派の中心人物。
・この議連は、かつて「安倍別動隊」と目されていた。
・城内氏の起用は、政権が積極財政の方向へと舵を切るという高市総理のメッセージが込められている。
〇経済財政担当大臣の役割と財務省との攻防
・経済財政担当大臣は、国の経済財政政策の根幹を担う「経済財政諮問会議」の中核的存在。
・議長は総理大臣だが、会議を所管し、国の経済財政運営の方向性に直接関与する。
・主な役割の一つが、翌年度予算編成の基本方針となる「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)の策定。
・従来、「骨太の方針」策定は小泉政権下で政治主導となったが、その後、財務省が主導権を握り、緊縮財政を推し進めてきたのが実態。
・積極財政派の城内氏がこの重要ポストに就いたことで、来年度予算編成が緊縮から積極財政へとシフトする可能性が高まっている。
〇積極財政議連の活動
・城内氏らが中心の積極財政議連は、2025年5月に自民党執行部(森山裕幹事長、宮沢洋一税制調査会長)に対し、軽減税率8%品目の消費税を恒久的に0%に減税すべきとする提言書を提出した。
・この提言書には、党執行部の圧力や不利益のリスクを顧みず、当時自民党国会議員約300人のうち96人が実名で賛同・署名した(提言自体は握り潰された)。
2.「衰退途上国」とならないための経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2024への提言
件の記事で取り上げられ、そして結局「握りつぶされた」という積極財政議連の「軽減税率8%品目の消費税を恒久的に0%に減税すべき」とする提言書、「「衰退途上国」とならないための経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2024への提言」の主な内容は次の通りです。
1. カレンダーベースでのプライマリーバランス(PB)黒字化目標を撤廃すること。その上で新たな財政規律置くとすれば、「公共事業費等の投資的な経費をPB対象歳出から除いた経常的歳出」とすること。提言は、デフレ・低成長が続く日本経済の現状に対する強い危機感と、それを打破するための成長重視を明確に謳っており、特に、現行の財政ルールが経済成長の大きな足かせになっているという指摘は注目してよいのではないかと思います。
2. 非社会保障費に係る「3年間で1000億円増以内」とする、いわゆる歳出キャップを外すと共に、公共事業における社会的割引率を長期金利と適切に連動させること。
3. 経常的な歳出は当初予算に計上し、当初予算にはインフレ率も加味すること。
4. 国債60年償還ルールの撤廃により、無用の現金償還を止め、歳出から債務償還費を除外すること。
5. 外国為替資金特別会計の収益を、投資的財源として積極的に活用すること。
〈理由〉
日本独特の財源ルールが我が国の財政運営を歪めている。日本だけが「PB黒字化」を財政運営の目標とし、日本だけが国債60年償還ルールという減債制度に縛られてきた。この結果、需要不足が常態化し、名目GDPが膨らまず、一人当りGDPも先進7カ国で最低、名目GDPはドイツに抜かれ4位に落ちてしまった。国際競争力も35位に落ち込み、「衰退途上国」の道に足を踏み入れ始めている。
この際、我が国独自の財政ルールを見直し、国際標準に合わせる必要がある。財務省は「健全な財政の確保」を任務としているが、我々政治家は、責任ある財政運営の下、国民の幸福と国家の発展を目指すべきであり、国民負担率が上昇し個人消費が上向かない中で、これまでの財政政策を継続していくならば、需要不足が継続し、経済成長を阻害し「衰退国家」への道を歩んでしまう。
政府の投資不足から、ワクチン等の創薬や半導体、自動運転、宇宙、DX等の分野で国際的な遅れが生じており、大学ランキングでも低位に甘んじ、少子化も進行している。国土強靭化についても、大災害から国民の命を守る事前防災や、生産性向上に資するインフラ整備について、新たな国土強靭化中期計画を早急に策定し、充分な予算を措置することが、結果としてトータルコストを下げ、財政健全化にも資するのである。
国内の需要不足から企業は国内投資を控えてきた。企業はまだ貯蓄超過の状態にあり、民間投資は圧倒的に不足している。この際、民間投資が活発になるまでは、政府の積極的な財政運営により資金需要を拡大し、総供給を上回る国内需要を創出し(高圧経済)その構造を持続すべきである。
高圧経済は増産投資や省力化投資を誘発し、買い叩きを防ぎ、生産性の高い分野への労働移動を促し、賃上げと経済成長を成し遂げる経済構造である。
名目経済成長率が国債金利を上回ることで(ドーマー条件)債務比率は発散しないが、そのためにはデフレからの完全脱却が最優先であり、経済再生と財政健全化の二兎を追うのではなく、経済成長に注力すべきである。財政健全化を叫んで財政を抑えると経済成長を阻害し、かえって財政再建が遅れてしまう。
よってPB黒字化のカレンダーベースでの目標は撤廃し、その上で、仮に新たな財政規律を置くならば、高圧経済を維持するために建設国債等の投資的歳出をPB対象歳出から除いた経常的歳出とすべきである。
政府の財政については、統合政府のバランスシートで評価することが国際標準であり、債務や利払いについても、資産も考慮した純債務で評価し、利払いについても受取り利息や経済成長による税収増も勘案した分析を行うべきである。
総債務をことさらに強調することは、日本の財政状況に対する誤った認識を国民に与え、官僚らが日本国債の信用失墜に繋がる発言を繰り返すことは、過度な円安を招くことから厳に慎むべきである。
統合政府のバランスシートで見ると、我が国の財政は他国と比較して健全であり、日本国債のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)はドイツに次いで信用がある。この事実が忖度のないマーケットの評価である。
日本に財政問題は存在しない。税収の範囲内でしか行政を行わないとすれば、むしろ財政を悪化させ、国民を貧困化し国家を衰退させる。一定のPB赤字を許容し、経済成長重視の積極的な財政運営を行ってこそ、岸田政権が目指すデフレからの脱却を可能とし、国民を窮乏化から救い、財政健全化にも資するのである。
3.財務省vs高市政権の骨太決戦
冒頭で取り上げた、プレジデントオンライン誌の記事の著者は、ジャーナリストの須田慎一郎氏なのですけれども、須田氏は、11月15日、嘉悦大の高橋洋一教授がホストを務めるネット番組「文化人放送局:洋一の部屋」に出演し、件の記事について議論を交わしています。
動画の主な内容は次の通りです。
〇高市政権の積極財政の推進体制なるほど、経済対策をやった上で、定数削減法案を出すことで、解散総選挙の大義名分を得るという手は、可能性としてはあるかもしれません。
・高市氏のキーパーソンは城内実氏で、骨太の方針を積極財政路線に変えるための重要ポスト(経済財政諮問会議)。
・城内氏は郵政民営化に反対して辞任した経緯があり、筋を通す人物。
・城内氏と、かつて刺客だった片山さつき氏が並ぶ人事は、積極財政推進の強力な布陣と見られている。
〇郵政民営化の裏側
・郵政民営化の真の理由は、郵便事業の赤字と、貯金・簡保の国債運用による10年以内の破綻リスクだった。
・破綻を防ぐために、郵政は「ミルク補給」というカラクリによって、国債金利よりも高い予託金利を受け取っていた。
・このカラクリは、財政投融資機関が財務省の天下り先であり、そこに補助金が投入されることで、全員が恩恵を受ける仕組みだった。
・高橋氏は、これを指摘し、郵政の「健全性」の虚偽と天下り構造が暴くことで、民営化を後押しした。
〇直近の政治課題と解散総選挙の可能性
・年収の壁問題は、自民・維新がインフレ連動、国民民主が最低賃金をベースに引き上げを検討しており、実現は確実視されている。
・国会日程に余裕があり、維新との約束である定数削減法案を提出すれば、野党の反対で揉めることは必至。
・この混乱を理由に、政権が「信を問う」として解散総選挙に踏み切る可能性も否定できない。
〇公明党と政治潮流
・高市政権が終われば公明党が復縁する、という報道は現在のところ根拠がない。公明党は野党とも連携して政策実現を目指す方向にシフトしている。
・現在の日本の政治潮流は、安全保障に対するリアルな考え方を求める有権者が増えた結果、保守が優勢な流れとなっている
冒頭で、公明党が経済対策に関する提言を政府に手渡したことについて触れましたけれども、これは総選挙を睨んでの国民に対するアピールであると同時に、高市政権が終わったら、連立に復帰するよ、というアピールも兼ねているのかもしれません。
4.政治における意思決定構造と事務方の影響
けれども、目先の経済対策もさることながら、来年度予算編成で、緊縮から積極財政へとシフトできるかどうかが大きなポイントとなることは間違いありません。
これについて、11月7日のネット番組「百田尚樹・有本香のニュース生放送 あさ8時!」にゲストとして出演した、高橋洋一氏が、実際には、諮問会議の「委員」よりも「事務局長」などの人選がより重要だと指摘しています。
件の動画での該当部分のやりとりは次の通りです。
有本香: 高橋さん、高市首相のですね、財政関係の諮問会議の委員なども決まってきて、これいわゆるリフレ派って言うんですかね。そういう方々が多いです。これはまあいいことですよね。なんと、諮問会議よりも事務局が全然重要で、彼らが左傾化しているのが問題だというのですね。筆者は経団連が夫婦別姓だなんだと言うのを不思議に思っていたのですけれども、事務局側の意向だったとすると、事は非常に深刻です。彼らがほとんど日本を牛耳っているようなものですから。
高橋洋一:でも、ま、審議会だからね。うん。
有本香:そうですね。ま、あの、誰にしても、まあ、議会だから支障ないといえば支障ないんだけど、まあ、そういう風にね、メッセージだからね。
【中略】
高橋洋一:そうですよ。だから委員よりか事務局長のが多分重要だからさ。
有本香:そうですね。そうです。ま、委員の皆さん、ま、正直そこに来てただ、ま、あの、もう作られたアジェンダについて多少ご意見言うっていう感じでしかないけど、事務局だとどういうものを議題にするかっていうことを
高橋洋一: するかしないかってかね。私だからその、ああ、なんかそうなるって言われてたから、ならなかった。ま、別になりたくもなかったからね。別にどっちでも良かったけどね。そこで事務局長なんかやったら今頃有本さんにすごい怒られてたな。
有本香: いやいや、そんなことはないんですけど。少なくともその安倍政権の前半ぐらいですかね。あの、竹中さんたちがね、お入りになってて、これはかなり影響力ありましたよ。
高橋洋一: うん。だからその事務局長がやったんじゃないの。
有本香: あの、経団連も、事務局長っていうのがすごい力あるんですよね。力っていうか影響力あるんですよ。
高橋洋一: うん。その頃は経団連の意向であの労働力が欲しいというそういうのが強かったからじゃないかな。
有本香: そうですね。で、今や経団連が夫婦別姓だなんて言い始めたのもこれ、ま、その事務局側のね、やっぱり意向が相当強いんじゃないかと言われていて、え、だってここの経営者の皆さんがそんなことそんなに望むはずもないですから。
高橋洋一: だからもう、あの、審議会とかあいうのはね、ま、あの、ロジ担当するうん、あの書務権って言うんだけどさ、書務の権利って言ってんだけど、別に書務に権利なんかないんだけど、ふざけて言ってんだけどね。うん。ま、あの、事務局でまあ8割方は決まるかな。
有本香: なるほどね。そういうものです?
高橋洋一: あと、ま、1、2割なんかちょっとね。うん。が言ってんのちょこっとつまみ食いする時があるってそのくらいかな。
有本香: うん。へえ。あの実はね、昨日ま、とある元自民党の幹部ですけれどにお会いしたら、やっぱり自民党が左傾化したっていうことの理由は、ま、1つはもちろんその公明党との連立ってこともあるんだけれども、議員の中にもそういうね、ま、左に傾きそうな人とか左に傾いてる人が入ってきたってこともありますが、やっぱりね、事務方の影響結構大きいって言ってましたね。
高橋洋一: まあ、そうだろうね。
有本香: ええ、ま、政党である以上、その事務方がね、かなりの仕事をしなきゃいけないってのはこれはそうなんだけど、これは私たちもちょっとね、他山の石としないと、だんだん業務拡大していく中でうん。いろんな人入ってきますからね。
高橋洋一:だからよくそういうのはよく人選を間違えないように。だからあの外向けの委員ってのは外向けのメッセージだけど、いや本当はあの事務局長とかそういうのが重要だけどね。
有本香: なるほどね。いや、本当にですから、あの、見ているとね、ま、いろんなところでそういう人たちが決まってきてる。で、ま、しかし高市政権が一応スタートして、まだ、ま、代表質問とかそういう程度なんで、シナリオのある範囲なんですけど、もうすでに財務省の影が・・・
高橋洋一:だんだんだんだんね、見え始めましたね。あの、片山さんがどこどこの山で頑張れるかというそうですね。ことなんだけどね。彼女もね、あんな大見得切っちゃったから。うん。うん。なかなかあれだよね。あの事務局にやられたじゃ済まないと思うけどね。
世界はようやく保守に向けて流れ始めていますけれども、既に足元の相当の部分は左に浸食されていることに目を向けて立て直すよう教育から考えるべきではないかと思いますね。
この記事へのコメント
ス内パー
財務省の健全財政宗教の改革と
両方確認しながら前に進むことが必要なのですが出来ますかね?