1.あなたの最後のラインはどこですか?
11月28日、中国の王毅共産党政治局員兼外相は、訪中した英国のパウエル首相補佐官と北京で会談しました。中国外務省による会談についての発表は次の通りです。
2025年11月28日、中国共産党中央委員会政治局委員で中央外事工作委員会弁公室主任の王毅氏は北京でイギリス首相の国家安全保障問題担当大統領補佐官のジェローム・パウエル氏と会談した。
王毅外相は、中国と英国は国連安全保障理事会の常任理事国として重要な国際的責任を担っていると述べた。現在の複雑かつ不安定な国際情勢を踏まえ、中英両国は戦略的意思疎通を維持し、相互信頼を増進し、必要な連携を強化すべきである。王氏は、英国が中英関係を長期的な視点に立って捉え、中国の発展を合理的かつ友好的に捉え、対中政策において積極的かつ実利的な姿勢を取り、中国と直接協力して問題に対処し、協力という基本方針を堅持し、中英関係の健全かつ安定した発展を促進し、世界の平和、発展、繁栄の促進に積極的に貢献することを期待すると述べた。ここでも中国側は「日本に関する問題について中国の原則的な立場」を説明したとのことで、台湾問題に関して欧米各国の支持を得ようと、イギリスに対しても「告げ口外交」を行っています。
王毅外相は、対日問題に関する中国の原則的な立場を詳しく説明し、英国が引き続き「一つの中国」原則を堅持し、中国と協力して第二次世界大戦の勝利の成果を守り続けることに期待を表明した。
パウエル氏は、中国が今日の世界で極めて重要な役割を果たしており、英国労働党政権は中国と首尾一貫した永続的な戦略的な関係を構築し、各レベルでの定期的な対話をさらに強化し、実りある協力を推進したいと強調した。
両者はウクライナ危機などの問題についても意見を交換した。
もっとも、声明で、イギリスのパウエル補佐官の台湾問題に関する発言は伝えていないところをみると、少なくとも中国にとって都合のよい発言はなかったのだろうと思われます。
こうした中国の外交その他の戦略ついて、ジャーナリストの門田隆将氏は自身の動画チャンネルで次のように述べています。
さて、ここからが本題です。「左翼の皆さんに問う。あなたの最後のラインはどこですか?」 今回の存立危機事態問題において、左翼の親中派の人々は、習近平国家主席の台湾侵攻を容認するかのように「高市発言は間違いだ、撤回せよ」と主張しています。門田氏は、追い詰められているのは中国の方であり、日本国民が高市総理を支援し続ける限り中国は手も足も出せないと述べています。
国がなくなれば、私たちは生きていけません。チベット、ウイグル、香港の人々の悲惨な現状を見れば、日本国が掲げる自由、民主、人権、法治の支配を守り抜くことが私たちの願いのはずです。左翼の皆さんは、日本国がどうなってもいい、なくなってもいいと考えて運動されているのでしょうか。
皆さん、中国の「三戦」(世論戦、心理戦、法律戦)に簡単に踊らされ過ぎてはいませんか。「三戦」は、中国の専門家の間では常識です。今、日本はマスコミを中心にこの「三戦」による大攻勢を受けて、中国に有利な報道が続いています。
しかし、台湾侵攻は第三次世界大戦の始まりです。巡航ミサイルが飛び交い、台湾は火の海となり、上海や廈門も破壊される可能性があります。さらに、ロシア、北朝鮮、イランがほぼ同時に様々な問題を起こすことも、世界のシンクタンクが警鐘を鳴らしていることです。だからこそ、台湾侵攻だけは止めなければなりません。
左翼の人々が「高市発言を撤回せよ、台湾侵攻に文句を言うな」と主張すればするほど、日本の「最後のライン」は突破されてしまうのです。
幸い、福島氏や原口氏のような方々が国会やメディアで頑張ってくれています。また、中国はトランプ氏にまで泣きつき、高市氏に電話をさせるという手段に訴えるほど追い詰められています。これは、私たちが高市氏を支援し続ける限り、中国は手も足も出せないことを意味します。中国が呼び込んだ解散総選挙で高市氏が地盤を固めれば、それは自由主義圏の盤石な勝利となります。この勝利は、私たちの応援にかかっています。
2.三戦
門田氏は動画の中で「中国の「三戦」に踊らされていないか」と問いかけていますけれども、中国の「三戦」とは、中国人民解放軍(PLA)が用いる非軍事的な闘争を指す公式戦略もことです。これは、物理的な戦闘を伴わずに、世論、心理、法律の3つの分野で敵対勢力を圧倒し、自国の利益を実現することを目的とするもので、2003年に改正された中国人民解放軍の政治工作条例に正式に組み込まれた概念です。
中国の三戦は、次の3つの非軍事的な闘争から構成されています。
〇輿論戦(よろんせん)これは要するに、相手国の「心を折る」ことで目的を達成する戦略といえるのではないかと思います。
・世論戦とも呼ばれ、国内外の世論を自国に有利な方向へ誘導することを目的とします。
・目的:
+中国の軍事行動や政策に対する大衆および国際社会の支持を築く。
+敵対国や国際社会が中国の利益に反する政策を追求しないように、世論に影響を及ぼす。
・具体的な手法:
+国営メディアの海外展開やソーシャルメディアの活用などを通じた、中国に有利な「ナラティブ(物語)」の発信と拡散。
+経済・文化交流などを通じた世論誘導や分断工作。
〇心理戦(しんりせん)
・心理作戦を通じて、敵対国やその軍隊・文民の士気や戦闘意思を低下させることを目的とします。
・目的:
+威嚇、欺瞞、プロパガンダなどを通じて、敵の軍人およびそれを支援する文民に対する抑止・衝撃・士気低下をもたらす。
+敵が戦闘作戦を遂行する能力を低下させ、判断を誤らせるように仕向ける。
・具体的な手法:
+新兵器の導入報道や軍事力の誇示による威嚇。
+航空機や艦船の異常な接近などの実力行使に近い活動。
+偽情報の流布や懐柔工作。
〇法律戦(ほうりつせん)
・国際法や国内法を「武器」として利用し、自国の行動を正当化し、敵の行動を非合法化することを目的とします。
・目的:
+自国の軍事行動や領有権の主張の合法性を確保し、国際的な支持を獲得する。
+敵対国の行動の違法性を主張し、国際的な反発や第三国の干渉を阻止する。
+法解釈をめぐる争いで主導権を握る。
・具体的な手法:
+国際法を独自に解釈し、自国の目的に適う国内法を制定・適用する。
+歴史問題や国際条約を持ち出し、相手国の違法性や非を主張する。
+国際的な裁判や法廷の場で自国の主張を展開する。
現在中国は、今回の問題で三戦をみんな仕掛けています。輿論戦は媚中メディアや媚中野党に高市総理批判させていますし、心理戦では、XなどのSNSを使って恫喝を繰り返してきました。そして、法律戦では、冒頭で取り上げたように告げ口外交などで、世界各国を味方につけようとしています。
11月28日、中国の呉江浩駐日大使はXで「永遠に覇権を追求せず、永遠に拡張せず、永遠に勢力圏を求めない——これが新時代中国の国防の鮮明な特だ。新中国成立から 70 年以上、中国は一度も自ら戦争や衝突を起こしたことがない。改革開放以来、中国は世界平和の促進に努め、軍隊の人員を自主的に400万人余り削減してきた」と「#『新時代における中国の軍備管理、軍縮、不拡散』白書#」とのハッシュタグを付けてツイートしていますけれども、これも輿論戦の一つではないかと思います。
けれども、今のところ、中国の三戦はあまり効果を挙げていないようにみえます。
輿論戦で、媚中メディアや媚中野党、あるいはその手の勢力に散々高市総理を批判させたものの、支持率は落ちるどころか横這いもしくは上昇しています。心理戦のSNSによる恫喝についても、日本のネット民から大喜利にされ、悉く打ち落とされています。法律戦での各国は中国よりも高市総理の方が理性的とみています。
このまま三戦を続けても、効果は見込めないどころか、中国自身の評判を落としていくように思います。
永遠に覇権を追求せず、永遠に拡張せず、永遠に勢力圏を求めない——これが新時代中国の国防の鮮明な特だ。
— 吴江浩WuJianghao (@AmbWuJianghao) November 28, 2025
新中国成立から 70 年以上、中国は一度も自ら戦争や衝突を起こしたことがない。改革開放以来、中国は世界平和の促進に努め、軍隊の人員を自主的に400万人余り削減してきた。… https://t.co/4YYVHiJcMf
3.中国と日本は対決状態にあり、トランプ大統領がその中心にいる
11月25日、ニューヨークタイムズ紙は「中国と日本は対決状態にあり、トランプ大統領がその中心にいる」という記事を掲載しました。
件の記事の概要は次の通りです。
・現状の認識:題名のせいなのか、日本で騒動になった、WSJ紙の例の記事とは違って、事実を報じることを中心として、中立的な記事に見えます。
+中国と日本は対決状態にあり、ドナルド・トランプ大統領がその中心にいる。
+中国の習近平国家主席は、日中関係の緊張が高まる中でトランプ大統領に電話をかけ、日米同盟を崩壊させようと試みている。
・日本の新指導者の強硬姿勢(高市早苗首相):
+日本の新首相である高市早苗氏は、中国の武力誇示と台湾に対する主張の撤回を拒否している。
+11月7日、高市氏は国会で、中国による台湾封鎖・侵攻は日本にとって「存亡の危機」にかかわる問題だと発言した。
/この「存亡の危機」という言葉は、自衛隊の海外派遣を認めるという点で法的意味合いを持つ。
+小泉進次郎防衛大臣は、台湾の東約110キロに位置する与那国島の米軍基地を視察し、中距離地対空ミサイル配備計画を進める意向を表明した。
・中国の対応と戦略:
+習近平主席がトランプ大統領に接触したのは、高市首相が「台湾の安全保障は日本の安全保障でもある」と第二次世界大戦以来最も強い姿勢で主張した直後である。
+中国は日本に対し、経済(海産物輸入停止、コンサート中止、航空便停止)、軍事(軍艦・海警局武装船の航行)、外交(国連での批判文書配布)の一連の措置で報復した。
+習近平主席と王毅外相は、中国を「第二次世界大戦後の世界秩序の保証人」として、台湾とその防衛勢力を「秩序への挑戦者」として描く外交的物語を広めている。
+王毅外相は、日本の指導者が台湾問題への軍事介入を試みる「誤ったシグナル」を送ったことを「衝撃的」だと批判した。
・トランプ大統領の動き:
+トランプ大統領は、習近平主席との電話会談の数時間後に高市首相とも電話会談を行った。
+トランプ氏は、数十年にわたる米国の台湾支援を転換させるという中国の圧力に屈するかどうかについて明言を避け、来年4月に北京を訪問する予定だと述べるにとどめた。
+中国と日本はいずれも、台湾問題におけるそれぞれの立場を米国に支持してほしいと考えており、トランプ氏の交渉力が強化されている。
・日本国内の反応:
+中国からの圧力が強まるほど、日本の世論は高市首相の指導者を支持し、国民の危機感が高まっている。
+日本当局は、与那国島へのミサイル配備計画は武力投射のためではなく、自国の防衛のためだと説明している。
特に、中国と日本はいずれも、台湾問題におけるそれぞれの立場を米国に支持してほしいと考えており、トランプ氏の交渉力が強化されている、という部分は現状を客観的に見た上での見解だと思います。
4.Lights Out?
では、実際に台湾有事が起ったらどうなるのか。
少し前に話題になりましたけれども、今年7月、アメリカの戦略国際問題研究所(CSIS)が「Lights Out? 中国による台湾封鎖の兵棋演習」というレポートを発表しました。
このレポートは、中国による台湾封鎖が取り得るあらゆる形態を研究し、政策に情報を提供することを目的として、26回の兵棋演習(固定エスカレーション・シナリオ21回、自由演技シナリオ5回)を通じて分析を実施したものです。
件のレポートの概要は次の通りです。
〇封鎖を理解するための枠組みシミュレーションは台米・中双方に4つのエスカレーションレベルがあるとした上で、それぞれであり得る組み合わせを想定し、勝敗の判定は行わず、(1) 軍事的な損失、(2) 台湾に到達する物資の量、(3) 台湾の経済と社会への影響という3つの要素で結果を評価しています。
・すべてのシナリオは、中国が排除水域を設定し、これに入る船は中国港での検査・承認を必須とすることから始まる。
〇中国のエスカレーション・レベル(4段階)
1)臨検: 中国の非軍事部隊(CCG, MSA, PAFMM)が発砲せずに商船の立ち入り検査と拿捕を試みる。
2)潜水艦と機雷: 台湾の領海外(排除水域内)で潜水艦と機雷を使用して商船を阻止する。
3)オフショア・キネティック(遠洋での実力行使): 排除水域内で商船と護衛艦に対して公然たる武力を行使する。
4)より広範な戦争: PLAが排除水域外、台湾本土、米国、潜在的に日本に対しても公然たる武力を行使する。
〇台湾・米国のエスカレーション・レベル(4段階)
1)台湾制限: 台湾が軍事力の使用を領海および接続水域に限定する。
2)台湾積極: 台湾が排除水域内で攻撃を試みた中国軍への攻撃を許可する。
3)米国制限: 米国が排除水域内でPLAと直接戦闘に従事する部隊で、積極的な台湾を支援する。
4)より広範な戦争: 米国が排除水域外(中国本土を含む)のPLA軍を攻撃する。
〇兵棋演習の主要な結果と教訓
・死傷者の発生: ほぼすべてのシナリオで数千人規模の死傷者が発生する(高エスカレーションでは米国は数百機の航空機、数十隻の軍艦を損失)。中国の損失も高い。
・エスカレーション圧力: ほとんどのゲームでエスカレーション圧力の封じ込めは困難であり、マイナーなエスカレーションが全面戦争に発展するリスクがある。
・米国の介入の必要性: 中国が軍事力を行使する場合、台湾は単独では対抗できず、米国は中国の条件での台湾の降伏を受け入れるか、直接介入するかの選択を迫られる。「ウクライナ戦略」は台湾のニーズと封鎖の厳しさから不十分である。
・決定的な不足:
+エネルギー: 天然ガスは約10日で枯渇。石炭(7週間)、石油(20週間)の備蓄はあるが、再供給が必要。
+商船: 封鎖突破には迅速な商船の確保が不可欠。空輸、潜水艦、小型船は貨物船の不十分な代替手段でしかない。
・中国にとって「低コスト・低リスク」ではない: ほぼすべてのシナリオで高い死傷者とエスカレーション・インセンティブが存在。高エスカレーションでは、米国の爆撃機、潜水艦、戦術航空機による攻撃は中国軍事資産に壊滅的な打撃を与え得る。
〇政策提言(4つの柱)
・商船隊の準備:
+台湾所有船舶の緊急時の動員を手配する。
+LNGタンカーをVISAプログラムに契約し、台湾版を創設するなど、予備のLNGタンカーを確保する。
+海上・航空輸送を維持するため、**商業部門での戦争リスク(保険)**管理計画を策定する。
+日本、グアム、オーストラリアでの積み替え(トランシップ)地点の計画を事前に策定する。
・台湾のエネルギーインフラの準備:
+エネルギー備蓄を増やす(貯蔵施設の建設、既存ロジスティクス・チェーンの満載)。
+原子力発電所を維持・活用するなど、レジリエントなエネルギー源を維持・拡充する。
+エネルギーインフラの抗堪性を強化する。
+緊急時に最も重要な品目に集中し、ニーズの高い活動に分配するための資源配分計画を拡大する。
・米国による台湾支援の緊急計画の準備:
+護衛船団を実施するためのスキルを再構築し、平時の訓練と計画を行う。
+日本を含む同盟国・パートナーとの共同計画を策定する。
+空輸と軍事物資再供給のためのコンセプト計画を策定する(限界を認識しつつ)。
・封鎖に対抗し、終結させるための準備:
+封鎖を侵攻とは異なるものとして扱い、異なる計画を策定する(例:外交的連合確立のための時間稼ぎ)。
+中国が実質的な譲歩なしに勝利を宣言し、封鎖を解除できるような創造的な出口戦略(オフランプ)のメニューを事前に開発する。
その結果は、ほぼすべてのシナリオで数千人規模の死傷者が発生すること、全面戦争に発展するリスクがあること、そして台湾は単独では対抗できず、アメリカの支援が必須であることが強調されています。
特に、台湾のエネルギー不足は致命的で、天然ガスは約10日で枯渇。石炭は7週間、石油は20週間の備蓄はあっても補給が必須であることが指摘されています。つまり中国からみれば、小田原水攻めよろしく、半年程度台湾全土を封鎖して補給を経ってやれば、台湾は労せずして「降伏」してくれることになります。
日本の存立危機事態は、すぐ傍にあることを、日本国民ももっと自覚する必要があるのではないかと思いますね。
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