1.中国は不断に台湾攻撃作戦を訓練
10月9日、台湾の国防部は、2年に1度の「国防報告書」を公表しました。報告書は、中国の軍事的脅威に関して「台湾周辺での軍事演習や訓練を常態化させ、不断に台湾攻撃作戦を訓練し、計画を整えている」と述べています。
報告書によると、中国が2024年以降に台湾周辺で実施した演習について「台湾の対外航路を封鎖することが主軸」だと分析。昨年5月の演習「連合利剣-2024A」と10月の「同B」は封鎖・隔離能力を訓練したもので、さらに12月に中国海軍や海警局の計100隻近くが展開した大規模軍事行動については「台湾海峡周辺で航路や海空域を封鎖する動きの常態化を企図した」と指摘しています。
報告書は、中国側の公開資料を基に、台湾攻撃に必要な兵力は降下部隊や水陸両用の上陸部隊などで約10万人と言及。中国は近年、「新領域と新たな質の作戦力」の発展に注力しており、人工知能(AI)や無人システムを各作戦領域で運用しているとしています。
更に、中国独自の衛星利用測位システム「北斗」を軍事化し、ミサイルの長距離打撃の精度向上やドローン(無人機・無人艇)の作戦半径の拡大などにつなげていると分析。また近年、中国とロシアが戦略的パートナー関係を深化させ、合同の軍事演習や海上パトロールを通じて軍事協力を緊密化していると警戒感を示しています。
昨日のエントリーでアメリカの戦略国際問題研究所(CSIS)の「中国による台湾封鎖の兵棋演習」のレポートを紹介しましたけれども、台湾国防部も中国の戦略を「台湾海峡周辺で航路や海空域を封鎖する」ことだと認識しているということです。
2.中国軍の台湾攻撃パズル
9月8日、台湾最大級の政治・経済メディアの「風傳媒(Storm Media)」は、「中国軍の台湾攻撃パズル 『ウォール・ストリート・ジャーナル』が最新衛星写真を解析 ― 上海から福建沿岸の「戦備建設」を徹底解剖」という記事を掲載しました。
これは、9月4日『ウォール・ストリート・ジャーナル』が、衛星画像などの公開情報を基に、中国人民解放軍が台湾海峡を挟んだ対岸で進めている基地建設の現況を独自に報じたのを受けたものです。
件の記事の主なポイントは以下の通りです。
〇上海に新たな侵攻拠点を建設記事では、浙江省・楽清湾にある巨大桟橋の動画もついているのですけれども、記事では次のように説明されています。
・上海・浦東国際空港近くの長江河口に、大規模な両用作戦を想定した本格的な軍事基地が建設されています。
・大型艦艇用の桟橋、ヘリコプター離着陸用の滑走路、兵舎、運動施設が整備されており、大量の部隊が長期駐留できる体制が整えられています。
・2025年5月時点の衛星写真では、075型大型両用揚陸艦を含む十数隻の両用艦艇が停泊していました。
・燃料タンクはコンクリートと土で補強されており、爆撃を受けることを前提に設計されていると分析されています。
・建設中の高速鉄道との接続線が設けられる可能性が高く、重装備と兵員を鉄道で迅速に輸送し、艦艇に積み込む体制が計画されています。
・この基地は台湾海峡の外側に位置しており、紛争時に侵攻艦隊を分散出撃させる戦略上の優位性を持つと指摘されています。
〇浙江省・楽清湾での超大型桟橋の拡張
・台湾により近い浙江省・楽清湾では、海軍施設に全長1.6キロメートルを超える巨大桟橋が拡張され、多数の艦船が同時に作業できる能力が向上しています。
・最新の衛星写真では、戦車揚陸艦、沿岸揚陸艦、補給タンカー、中国海警の巡視船など約20隻が停泊しているのが確認されました。
〇福建省沿岸でのヘリコプター基地の新設・拡張
・台湾海峡を隔てた福建省沿岸では、ヘリコプター基地が拡張されています。
・この基地は、突撃部隊を台湾本島に直接輸送したり、上陸部隊への空中支援を行ったりするのに理想的な位置にあり、台湾西南部の上陸候補海岸に短時間で到達できます。
・台湾海峡の中間に位置する澎湖諸島の攻略にも戦略的意義があると分析されています。
〇軍民両用空港の潜在的な軍事ハブ化
・台湾海峡西岸にある厦門の翔安国際空港と福州長楽国際空港など、近年出現している巨大空港が注目されています。
・これらは危機時には民間便を停止し、軍事利用に転換できると見られており、前線での給油拠点、部隊集結地、物流ハブとして機能する可能性があります。
・特に厦門の翔安国際空港は、台湾の金門島からわずか約4キロの距離にあり、極めて軍事的価値が高いとされています。
軍事専門家は、これらの建設はすべて台湾を標的とした複雑な渡海作戦の「パズルを埋める役割を担っている」と分析し、中国が台湾奪取に必要な能力を着実に積み上げていることを示していると結論付けています。
台湾により近い浙江省・楽清湾では、海軍施設が全長1.6キロメートル超の巨大桟橋を拡張し、多数の艦船が同時に作業できるようになった。最新の衛星写真には、戦車揚陸艦、沿岸揚陸艦、補給タンカー、さらに中国海警の巡視船を含む約20隻が停泊する様子が確認されている。これらはいずれも台湾有事の際に欠かせない戦力となる。2018年から2025年にかけて、桟橋は0.3マイルから1.25マイルへと延伸されており、その戦略的な意図は明らかだ。
こんな桟橋を見せられては、台湾侵略する気満々であることは明らかです。
Beijing’s new ships can land on beaches and link to form massive mobile piers. Analysts say they’re intended to rapidly offload military equipment, setting the stage for a D-Day-style invasion of Taiwan.
— The Wall Street Journal (@WSJ) June 4, 2025
Watch more: https://t.co/J2xBiu0ng3 pic.twitter.com/34GvtjwP0V
3.台湾の単独抵抗の限界
昨日のエントリーでアメリカの戦略国際問題研究所(CSIS)のレポートを取り上げましたけれども、CSISが行った合計26回のシミュレーション結果から、次の点が明確になったと報告されています。
〇台湾の単独抵抗の限界はっきりと台湾単独では中国の侵略は防げないと断じられています。そして、如何にアメリカの支援が迅速に行われるかと、エスカレーションをどう防ぐかが鍵になると述べています。
・中国が非軍事的な臨検(レベル1)に留まる限り、台湾の海巡署(CGA)を強化することで封鎖を破ることは可能(1x1 Prepared w/CGA)。
・しかし、中国が潜水艦と機雷(レベル2)を導入すると、米国の介入がない場合、台湾のASW能力が強化されても(2x2 Prepared w/ Ukrainian-Style Aid)、物資到達は不十分であり、封鎖は成功する(2x1 Base, 2x2 Base)。
・中国が水上艦や航空機(レベル3、4)を導入した場合、台湾は迅速に降伏を迫られる(3x2 Base, 4x2 Base)。
〇米国の介入の必要性と代償
・米国が排除水域内で直接戦闘支援(レベル3)を行えば、封鎖はほぼ確実に失敗する(2x3 Base, 3x3 Base)。
・しかし、中国が広範な戦争(レベル4、台湾本土攻撃)にエスカレートした場合、米国の介入(レベル3、4)があっても、米軍の損失は極めて大きく、台湾への物資到達率は低下する(4x3 Base, 4x4 Base)。
・米軍の空軍基地の抗堪性(Hardening)が生存率と作戦能力に決定的な影響を与える(4x3 Hardened, 4x4 Prepared)。
〇エスカレーションの危険性
・自由演技ゲームの多くが示すように、低レベルの衝突(レベル1)から全面戦争(レベル4)へのエスカレーションは非常に起こりやすく、制御が難しい(FP-1, FP-3)。
・「出口戦略」(Off-ramps)の事前準備が、全面戦争への突入を防ぐ上で極めて重要となる(FP-5)。
〇台湾の脆弱性
・エネルギー(特にLNG)の在庫不足が最大の弱点であり、すべてのシナリオで約10日で枯渇し、台湾を脆弱にする。
・商船の確保も極めて重要であり、正規の海運会社がリスクを避けるため、徴用や代替船の事前計画が不可欠となる。
4.台湾有事に日本が支援しないケース
戦略国際問題研究所(CSIS)のレポートでは、台湾有事に日本が支援しないケース 「3x3 Japan Out」 設定されています。
その内容の概要は次の通りです。
〇シナリオの前提条件この結果は、米国が単独で作戦遂行能力を持つことは確認されたものの、同盟の有無が作戦の効率とコストに劇的な影響を与えることを示しています。
このシナリオは、エスカレーション・レベルが互いに高いが、全面戦争(レベル4)には至らない「武力による限定的な封鎖と対抗」の段階を想定しています。
・中国の行動 (レベル3: オフショア・キネティック): 中国は、潜水艦と機雷に加えて、水上艦と航空機を排除水域に投入し、商船およびそれを護衛する台湾・米軍の艦艇を積極的に攻撃します。
・米国の行動 (レベル3: 米国制限): 米国は、排除水域内でPLA軍と直接戦闘を行い、護衛船団を台湾へ通すことを目標とします。ただし、中国本土への攻撃は行いません。
・日本の不参加 (Japan Out): 日本は、軍事的な協力、領土内からの米軍の出撃、または兵站支援を一切提供しないという、米国にとって非常に厳しい状況が設定されています。
〇軍事的な力学と結果
・日本が不参加という条件は、軍事的な力学に深刻な影響を与えますが、封鎖を破るという結果自体は変わりませんでした。
〇米国の作戦上の制約
・航空作戦の困難:
+米国の航空機は、日本の基地(嘉手納など)を使用できないため、グアムやオーストラリアなど、より遠方の基地から出撃せざるを得ません。
+これにより、戦闘機や早期警戒機の航続距離と滞空時間が大幅に制限され、台湾周辺での制空権確保がより困難になります。
・兵站の負担の増大:
+日本国内の港湾施設、空港、補給施設を利用できないため、米軍は燃料、弾薬、予備部品の輸送を、より遠方にある拠点(主にグアムやハワイ)から行う必要が生じ、兵站ラインが伸びて脆弱化します。
+結果として、作戦のコストと時間が大幅に増加します。
・潜水艦作戦への影響:
+日本の港湾施設での補給や修理ができないことは、米国の潜水艦部隊の作戦サイクルにも影響を及ぼし、中国の潜水艦や機雷への対抗力を弱める可能性があります。
〇中国と連合の損失
・封鎖の失敗: 米国の潜水艦部隊、長距離スタンドオフ兵器(JASSM-ER、LRASM)を搭載した爆撃機、および台湾軍の抵抗の組み合わせにより、中国の封鎖部隊(水上艦艇、潜水艦、航空機)は依然として高い損失を被り、作戦を継続することができなくなりました。
・物資の到達率: 護衛船団の規模は制限されるものの、米軍の直接支援により、約90%の物資が台湾に到達しました。
この「3x3 Japan Out」シナリオは、CSISの報告書全体を通じて強調されている、日本と米国の同盟の決定的な重要性を逆説的に示しています。
・日本は「魔法の弾丸」ではないが「触媒」である:
+日本の支援がなくても、米国は封鎖を破ることができますが、その作戦は極度に高価になり、時間がかかり、米軍自身の損失リスクが高まります。
+日本は、米軍が台湾近傍で迅速、効率的、かつ持続的に作戦を行うための地理的、兵站的触媒として機能します。
・地理的近接性の価値:
+日本からの出撃ができない場合、航空機は台湾上空での任務遂行に必要な給油とローテーションを維持できず、中国の封鎖に対する即時的な対応能力が大幅に低下します。
・抑止力の低下:
+中国は、日本が不参加の場合、米国の作戦が非常に困難になることを理解しており、これが中国のエスカレーションのインセンティブを高める可能性があります。日本との連携が機能することが、中国に対する強力な抑止力となります。
このシミュレーションでは、日本の支援がなくても、アメリカの支援はなんとか成功するが被害が甚大になると結論づけています。戦争嫌いのトランプ大統領がこんなシナリオを許容するとは思えません。
やはり台湾有事は日本有事であることは避けられないように思います。日本はそれに対する備えを今から進めておくべきだと思いますね。
この記事へのコメント
かも
台湾有事が亡くなると政府は、そこに危機があるという理由で国民を統制し扇動する論拠を失ってしまいます。
アメリカも又、台湾有事を利用しています。米軍を沖縄に配備して台湾有事に備えるという理由で軍事費を獲得し軍備増しを維持しているからです。
いざ中国が台湾侵攻を企てたとしてもアメリカは動かないでしょう。
中国の国内問題だと宣言してしまえば其れで終わりです。台湾を守るために軍を動かして莫大な戦費を使うことのメリットがないからです。中国人を守るためにアメリカ人の血を流すことはないのです。
日本も又、アメリカに先んじて台湾有事に侵攻するっことはありません。集団的自衛権はアメリカを守るためにあるからです。
或いはアメリカは動かないが日本がすの代行を背せよという圧力はかかるかもしれません。
それでも日本は動かなくても良いのです。台湾有事は中国の国内問題だと宣言してしまえば良いからです。
沖縄に侵攻してもアメリカは動かない可能性があります。下手に動けば米中戦争の引き金を引いてしまうからです。
日本を守るためにニューヨークにミサイルが飛んでくることを受け入れるかという損得になるからです。
勿論尖閣も緊張を高めようとするでしょう。でも其れは緊張を高め、誇張された脅威を中国国民に見せつけることで政権の維持安定を図ろうとする企みに他なりません。
今回の騒動でも、レアアースや、邦人問題にならずに、渡航禁止のレベルにとどめているのは、過ぎたるは及ばざるが如きを知っているからです。やり過ぎるな、されど手を緩めるな。
其れが中国の方針です。
そこにロシアの失敗が前例としてあるのです。侵攻に失敗した泥沼です。
日本でも、中国の危機を煽ることで軍事業界は沸き返っています。沖縄にミサイルを配備してすぐにでも攻めてくるから避難訓練をしろと騒ぎ立てています。
改憲して再軍備して、軍事産業で大もうけをしたいという旧財閥の企みがそこにあるからです。
武器輸出も緩和しようとしてしています。大儲けできるからです。
何より、アメリカが手を出さないとなれば中国は何時でも飽和攻撃に出て一夜で日本の国家機能を破壊してしまうでしょう。其れで五月蠅い存在が無くなるならやるでしょう。気付かねばならぬのはそのことです。