
1.日本側が意図的に挑発し、デマを流布し、煽動した
12月10日、中国外務省の郭嘉昆報道官は定例記者会見で、この日、日本の小泉防衛相が中国のレーダー照射に関連した説明会見の内容を批判しました。
批判は記者質問に関する中で出たもので、該当のやりとりは次の通りです。
朝日新聞記者:本日、防衛大臣は「レーダー照射」問題について、中国側が断続照射を行ったことが事案の核心であると述べました。標的を定めた断続照射があったかどうか、確認していただけますか。中国外務省は確認できますか。レーダー照射を行ったのかという質問に「繰り返し厳粛な立場を表明しており」とはぐらかした上で、日本政府に対し「意図的に挑発し、その後、デマを流布し、煽動した」と言い放つ。自己紹介乙としかいえないのですけれども、こういう話ができない相手なのだと理解した上で対応する必要があります。
郭嘉昆報道官は:中国はこの問題について繰り返し厳粛な立場を表明しており、事実は極めて明白だ。日本はかつて中国から何の通知も受けていないと主張していたが、今や事前情報を受け取っていたことを認め、自らの主張に矛盾を生じさせ、問題を回避している。さらに、事前通知を受けていたにもかかわらず、なぜ戦闘機を派遣して中国の訓練場に侵入し、近接偵察や妨害行為を行い、緊張を煽り、悪意を持って状況を煽り続けているのか、その理由を説明しようとしない。日本は意図的に焦点をずらし、国際社会を欺こうとしているのか。
日本が今なすべきことは、中日関係の現状の難題の核心を直視し、真摯に反省し、誤りを改め、高雄市首相の台湾に関する誤った発言を誠実に撤回することだ。
NHK記者:防衛大臣は本日、「航空自衛隊の戦闘機が中国の空母艦載機に対してレーダーを使用したことはない」と述べ、「ノータム(情報記録)などの具体的な情報がないため、十分な危険回避情報が得られなかった」と付け加えました。これについて、報道官のコメントをお聞かせください。
郭嘉昆報道官:私は既に関連質問に回答しており、皆さんもよく聞き取れたと思う。日本側は以前、中国側から事前通告を受けていないと主張していたが、今や中国側から事前通告を受けていたことを認めている。この矛盾した発言は、日本側が意図的に挑発し、その後、デマを流布し、煽動したこと、つまりこの茶番劇の立案者であり加害者であることを完全に証明している。日本側に対し、中日関係の現状の難題の核心を直視し、真摯に反省し、誤りを改め、高雄市首相の台湾に関する誤った発言を誠実に撤回するよう強く求める。
2.習近平は焦っている
12月11日、関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」は、中国戦闘機による日本の自衛隊機へのレーダー照射問題で、前参議院議員で元自衛官の「ヒゲの隊長」こと佐藤正久氏と橋下徹氏が解説・議論しています。
この中から佐藤氏の発言部分だけ一部抜き出してみると次の通りです。
司会:日本の広報が弱いというのは、今に始まったことではないですけれども、アメリカのトランプ大統領がこの件でダンマリを決め込んでいるという指摘は重要だと思います。佐藤氏によると、トランプ大統領が黙っていることで、中国の習近平主席が「レーダー照射はまだレッドラインに届いていない」と解釈して、さらにエスカレートさせてくるというのですね。
佐藤さんにまずお伺いしたいんですけども、中国側が公開しているこの音声は本物だと思いますか?
佐藤正久:
多分ほぼ本物だと思います。彼らのことを正当化するための情報戦の一環だと思いますけども、ただ普通に考えてですね、「これから訓練をやります」ってことを現場の艦艇から日本側の護衛艦にちょっと言ったかと言って、それは事前通告になるかというと絶対になりません。当然、航空警報法などがやらなければ、日本の排他的経済水域で空母「遼寧」が展開し、離発着訓練をやれば日本の漁業にも影響しますから、それは事前にしっかり通告してやるっていうのは普通なので、これは「事前通告をした」というのは当たらないし、これでは小泉大臣が言うように、「訓練を行う時間や場所の緯度経度を示すノータム(航空情報)も無く、船舶などに示す航行警報も事前に通報されておりません」。これがあれば事前通告にはなります。
佐藤正久:
今回も、中国が出したこの通信記録でも、現場のその「ふゆづき」と言われる護衛艦の方も、「了解した」って言ってないんですよ。つまり、「I copy you.」という英語で答えているように、「あなたのメッセージを受信しました」と。で、「了解」とか「承諾」って言ってないんですよ。向こうのメッセージをコピーした、受信したっていうだけなので、「了解」にも当たってませんので、これは中国の主張は当たらないと思います。
佐藤正久:
当然ね、自衛隊の方はずっと船の動きを追ってましたから、当然自衛隊としては警戒体制は海上保安庁と連携してやってるのは間違いない。ただそれを発表してないだけで。で、橋本さん言う通り、まあ、広報に弱いんですよ。そこはね、もっと自衛隊側の方も積極的に発表すればいい。5日頃から宮古島と沖縄本島の間を抜ける動きもあったわけですから、僕はどんどんどんどんそこは発信していけばもっと違ったと思います。
司会:
(フリップ内容説明) 「艦艇ではなく戦闘機からのレーダー照射であった」これどういうことですか?
佐藤正久:
実は「間合いがない」ということです。船の場合は特に2013年の時は、あのレーダー照射をするこのレーダーというものと、実際あの過飽(火器)というものがズレてたわけですよ。大砲がそっちを向いてない、向いてなかった。今回は戦闘機の場合は、あのレーダーとミサイルというのは同じ方向を向いてますから。で、火器管制レーダーが発射されたらいつでもミサイル撃てるっていう状況。これだから現場の航空自衛隊、あ、日本の自衛隊の戦闘機のパイロットの危機感というのは相当強かったと。
【中略】
佐藤正久:
過去の話はもう言ってもしゃあないので、これからどうするかが今一番のポイントで、私が一番問題だと思ってるのは、同盟国のトランプ大統領はだんまりを決め込んでるっていうことですよ。トランプさんが。で、これあの、トランプさんが反応しなければ、習近平からすると「レーダー照射はまだレッドラインに届いていない」という風に思っても当然なんですよ。だからこれはどんどんどんどんまだやってくる可能性がありますから。
佐藤正久:
既成事実の積み重ねで今後もやってくる可能性。だから今はやっぱり総理が電話会談でもトランプさんとやって、トランプさんと二人で共同メッセージで「こんな危険なレーダー照射はだめだ」と。このメッセージを出すのがやっぱ一番大事で。
司会:習近平国家主席に関しては、もう一つポイントを佐藤さんにあげていただきます。
佐藤正久:
はい。習近平国家主席は焦ってると。実は彼は今3期目の主席なんです。通常は中国はすごく指揮権限が強いので、2期10年と決まっていたやつを、この台湾統一という悲願のために憲法を改正して、「何期でもできる」という風にやりました。で、2027年10月の党大会では4期目の演説をしないといけない。じゃ、この3期目で台湾についてなんか成果があったかというと、今まだないんですよ。なので、これから2027年までの間、相当台湾についてはレベルを上げてくると思います。ただ、今成果が出ていないので、台湾については相当程度習近平はこれからもレベルを上げてくる。で、日本の場合、習近平がトランプさんに頼んでも、総理は発言を撤回しないし、国民の支持も高いということで、今回レベルをさらに一歩上げたということもあるので、これは習近平にとっては2027年までに何らかの成果をやっぱり出さないと、4期目についての箔がつかないという風に思います。
3.中国とも良好な協力関係築くべきだと考えている
確かに、レーダー照射に関するアメリカの反応は今一つすっきりしません。
12月11日、アメリカのキャロライン・レビット大統領報道官は記者会見で、中国軍機による航空自衛隊機へのレーダー照射を念頭に、「日本は米国の重要な同盟国だ」と強調したものの、中国を批判する言葉はありませんでした。
件の会見から該当部分を抽出すると次の通り。
記者:確かに中国を直接批判するコメントはありません。
質問が二つあります。一つは韓国、もう一つは日本についてです。最初の質問ですが、最近の米韓貿易のファクトシートには、農産物について一切言及がありませんでした。米国は韓国に対し、米と牛肉の市場を完全に開放したいと考えているのでしょうか?二つ目の質問は日本についてです。中国が軍事力を使って日本の沖縄を囲んでいます。米国は中国と日本の軍事紛争を懸念していますか?また、米国はどのような行動を取るのでしょうか?
キャロライン・レビット報道官:
オーケー。最初の韓国の牛肉、または韓国への牛肉輸出に関するご質問については、貿易チームに確認し、回答させていただきます。 日本と中国に関する二つ目のご質問についてですが、ご存知の通り、大統領は日本の新しい首相と驚異的な関係を築いています。数ヶ月前にアジアに行った際にも喜んでお会いしましたし、それ以来、何度か話し合っています。両者は引き続き連携しており、日本は米国にとって偉大な同盟国であり、それは両者の個人的な関係と継続的な貿易関係によって証明されています。中国については、大統領も習近平国家主席と良好な協力関係を持っており、これはわが国にとって良いことだと信じています。そして、大統領は、米国が日本との非常に強固な同盟関係を維持しつつ、中国とも良好な協力関係を持つことができる立場にあるべきだと考えています。
4.進次郎の後押し
一方、一部マスコミは、アメリカ国務省が9日に中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射について「中国の行動は地域の平和と安定に資するものではない……日米同盟はこれまでになく強固で結束している。同盟国である日本へのアメリカの関与に揺るぎはなく、中国軍機によるレーダー照射を含む様々な課題について緊密に連携している」とコメントしたと報じています。
これについて、ジャーナリストの須田慎一郎氏は自身の動画チャンネルで次のように解説しています。
【前略】進次郎防衛相の働きで、オーストラリア経由でアメリカ国務省を動かしたのであれば、素直に凄いことだと思いますし、つくづく外交は人間関係に支えられたものだと痛感させられます。けれども、この国務省コメントが本当に正式なものなのかについては、多少の疑問があります。
まあ、あの、アメリカ国務省ないしはホワイトハウスがですね、この件の正式なコメントを出すということは、このレーダー照射の一件に関しては初めてのことなんですよ。 これまでですね、トランプ大統領の中国に対する配慮とでも言ったんですか。せっかくうまくいっている経済交渉、トランプ関税交渉に水をさしたくないという、そういう意識が働いていたようで、これまで中国を刺激するようなこの種のコメントについてはですね、ホワイトハウスにしても国務省にしても、これを控えてきたという経緯があります。 それがとうとうですね、アメリカ東部時間この夜にですね、アメリカ国務省が正式なコメントを発表するに至りました。
【中略】
12月7日の日に、オーストラリアのマールズ国防大臣がですね、日本に入ってきまして、そしてですね、小泉進次郎防衛大臣と会談を開いております。
12月7日というとですね、これはその前日に、つまり12月6日に、まさにその日にですね、中国の戦闘機がですね、沖縄の海洋上、まあ、公海ではあるんですが、これで断続的にレーダー照射をやったという、極めて危険な、極めて挑発的な行為行動に出た、その翌日に当たるんですね。
【中略】
そしてその後にですね、非常に興味深いエピソードが残っております。どういうことかというと、この会談を終えた後、防衛省の敷地内をですね、小泉進次郎防衛大臣とマールズ国防大臣がですね、一緒にジョギングをやったというシーンが出てきますけれども、揃いの黒いジャージを着てですね、これは自衛隊支給の黒いジャージが提供されまして、小泉進次郎、マールズ国防大臣に提供されました。 そして、その注目されたのは、ここも憎い演出が出てきたわけなんですよ。小泉進次郎防衛大臣はですね、アメリカのブランドのオールバーズというスニーカーを履き、そしてマールズ国防大臣もですね、日本のブランドであるミズノのスニーカーを履くという状況になりましたね。 これはですね、日本サイドは明らかにしておりませんけれども、防衛省サイドに聞いてみると、このスニーカーはですね、日本サイドから、小泉進次郎サイドからですね、提供された、そういったスニーカーだったようです。このミズノ、マールズ国防大臣が履いていたスニーカーはですね、日本サイドから提供されたミズノの製品だった。 さらにですね、この話には続きがあります。ここからですね、日本からアメリカに飛んだマールズ国防大臣はですね、ワシントンにおいてもですね、そのミズノのスニーカーを履いてワシントン市内をジョギングをしたという、それをですね、自分のX(旧Twitter)上にアップする、その写真をアップするというようなことになりました。 その後、どうやらアメリカの国防大臣と、国防総省の長官と面談を開くという段取りになっていたようです。
当然ですね、日中間のこの緊張状態というのがアメリカにも伝えられて、その意識の共有化が進められた。
【中略】
そのオーストラリアが日本と歩調を合わせる、足並みを揃えるというところで、そしてもう一点。このオーストラリアというのはファイブ・アイズ構成国です。ファイブ・アイズ構成国と言ってですね、このファイブ・アイズというのは改め言うまでもなく、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アングロサクソン五ヶ国による軍事情報同盟と言ってもいい存在です。 そういう点で言うと、オーストラリアとアメリカというのもまたこれ特別な関係に結ばれているという状況です。 そして日本の置かれている状況をオーストラリアが共有し、オーストラリアがそれを伝えて、そして、まあ、今回のですね、アメリカの国務省による正式コメントという運びになったようです。
このコメントについてAIに、米国務省(state.gov)の公式サイト内を検索させたのですけれども、ヒットせず、次のような回答を返してきました。
このコメントは、公式の定例記者会見(Press Briefing)のトランスクリプト(記録)ではなく、報道機関の個別の問い合わせに対する「報道担当官の声明(Statement by the Spokesperson)」として発せられたため、単独のプレスリリースとしては掲載されていませんでした。
日本でいえば、差し詰め、ぶらさがりでのコメントといったところでしょうか。
須田氏は、正式コメントと述べていますけれども、厳密にいえ正式コメントとしては依然でていないと見るべきかと思います。
従って、佐藤正久氏の見立てどおりだとすると、中国の習近平主席は、まだレーダー照射くらいでは「レッドラインに届いていない」と判断し、さらにエスカレートさせてくることも想定しておいた方がよいかもしれませんね。
この記事へのコメント