目次

1.中国の国連における唯一の合法的な代表者の地位の回復、および蔣介石の代表の国連からの追放に関する決議
昨日のエントリーで、経済評論家の渡邉哲也氏が、ネット番組内で「中国が持ち出したサンフランシスコ平和条約やアルバニア決議が、かえって中国側の主張の矛盾を国際的に露呈させる結果となった」と指摘したことを紹介しましたけれども、今日はアルバニア決議について振り返ってみたいと思います。
アルバニア決議とは、1971年10月25日、国連総会第26会期・第1976回会合で採択された「中国の国連における唯一の合法的な代表者の地位の回復、および蔣介石の代表の国連からの追放に関する決議(国連総会決議第2758号)」のことを指します。
2025年9月30日、中国外交部はこのアルバニア決議についての立場表明の声明を出しています。
件の声明の概要は次の通りです。
〇国連総会決議第2758号決議は、一つの中国原則を厳粛に確認し、十分に体現している中国は、50年以上も前の国連決議で「一つの中国」原則は認められていると主張しています。
+ 一つの中国原則の基本的含意は三層からなる。
/ 世界上に中国は一つだけであり、台湾は中国領土の不可分の一部である。
/ 中華人民共和国政府は全中国を代表する唯一の合法政府である。
+ 決議は、世界上に中国は一つであり、中華人民共和国政府が台湾を含む全中国の唯一の合法的な代表であることを明確にした。
/ 「二つの中国」や「一中一台」は存在しない。
+ 決議は、政治的、法律的、手続き的に、台湾を含む全中国の国連における代表権問題を完全に解決した。
+ 台湾は中国の一部であり、主権国家ではないため、国連に代表を派遣する権利はない。
+ 決議採択後、国連の公式文書において台湾の呼称は「台湾、中国の一省」(Taiwan, Province of China)とされている。
+ 国連事務局法律事務局の法律意見も、「台湾は中国の一省として独立した地位を持たない」と強調している。
+ 決議の採択は、一つの中国原則が国際関係の基本準則および国際社会の幅広い共通認識となるよう力強く推進した。
〇 国連総会決議2758号決議の投票過程は、国際社会が一つの中国原則を堅持する流れが不可逆であることを示している
+ 決議の可決は、米国など一部の西側諸国が22年間にわたり中国の合法的な席回復を妨害しようとしたことに対する勝利である。
+ 米国が試みた「重要問題」提案と「二重代表権」提案は、いずれも失敗に終わった。
/ 「重要問題」提案は否決され、「二重代表権」提案は決議によって代表権問題が解決したため廃案となった。
+ 協議過程で、ほとんどの国が台湾は中国に属するという見解に同意し、「二つの中国」や「一中一台」に反対した。
〇 挑戦国連総会決議2758号決議就是挑戦二戦后国際秩序和聯合国権威,開歴史倒車必遭失敗(国連総会決議2758号決議への挑戦は、第二次世界大戦後の国際秩序と国連の権威への挑戦であり、歴史を逆行させる行為は必ず失敗する)
+ 決議は、国連憲章を維持するために不可欠であると明確に述べている。
+ 中華人民共和国の国連における合法的な席回復は、第二次世界大戦後の国際秩序の核心である国連の権威を守る上で重大かつ深遠な意義を持つ。
+ 決議に挑戦するいかなる行為も、中国の主権と領土の一体性に挑戦するだけでなく、国連の権威と戦後国際秩序にも挑戦するものであり、極めてばかげて危険である。
+ 米国など一部の国は、決議を歪曲し、いわゆる「台湾の地位未定」の誤った言論をあおり立てて、台湾の「国際空間」を画策している。
+ 台湾は過去も現在も、そして今後も絶対に国家ではない。
+ 中国の主権と領土は決して分割されておらず、分割も許されない。台湾が中国領土の一部であるという地位は変わらないし、変わることも許されない。
+ 台湾を中国から再度分裂させようと企む歴史の逆行は、14億の中国人民も国際社会も絶対に許さない。
2.記されていない一つの中国原則
では、アルバニア決議で本当に「一つの中国」原則が認められているのか。
実際のアルバニア決議(国連総会決議第2758号)の原文を見てみると非常にシンプルなもので、その原文は次の通りです。
2758 (XXVI). Restoration of the lawful rights of the People's Republic of China in the United Nations
The General Assembly,Recalling the principles of the Charter of the United Nations,Considering that the restoration of the lawful rights of the People's Republic of China is essential both for the protection of the Charter of the United Nations and for the cause that the United Nations must serve under the Charter,
Recognizing that the representatives of the Government of the People's Republic of China are the only lawful representatives of China to the United Nations and that the People's Republic of China is one of the five permanent members of the Security Council,Decides to restore all its rights to the People's Republic of China and to recognize the representatives of its Government as the only legitimate representatives of China to the United Nations,
and to expel forthwith the representatives of Chiang Kai-shek from the place which they unlawfully occupy at the United Nations and in all the organizations related to it.
1976th plenary meeting,
25 October 1971.
〇和訳アルバニア決議を読む限り、「中華人民共和国政府の代表を、国連における中国の唯一の合法的な代表とすること」と「蔣介石の代表(中華民国/台湾当局の代表)を、国連およびその関連機関から、直ちに追放すること」の2つしか言っていません。
2758(XXVI)。中華人民共和国の国連における正当な権利の回復
総会は、国連憲章の原則を想起し、中華人民共和国の正当な権利の回復が、国連憲章の保護と、国連が憲章の下で果たすべき使命の両方にとって不可欠であることを考慮し、
中華人民共和国政府の代表が、国連における中国の唯一の合法的代表者であり、中華人民共和国が安全保障理事会の常任理事国の一つであることを認識し、 中華人民共和国に対し、その一切の権利を回復し、その政府の代表者を国連における中国の唯一の正当な代表者として承認するとともに、
蒋介石の代表者を国連及びこれに関連する全ての機関において不法に占拠している地位から直ちに追放することを決定する。
第1976回総会
1971年10月25日
「台湾」という言葉も、「一つの中国」という言葉も何もありません。
これで「一つの中国原則」が認められているというのは流石に無理があります。
3.中国代表権巡る「アルバニア決議」を読み解く
この中国の無理無理解釈は、何年も前から主張しているのですけれども、当然ながら、当の台湾は、これを否定しています。
昨年9月26日、台湾メディア「フォーカス台湾」は、「中国代表権巡る「アルバニア決議」を読み解く 歴史的背景から中国側の解釈の変化まで」というコラムを掲載しています。
件のコラムの概要は次の通りです。
中国は近年、この決議を台湾に対する法律戦の重点とし、「一つの中国」原則と決議を結びつけることで、台湾の地位を制限しようとしている。コラムによれば、アルバニア決議の採択当時、アメリカは、蒋介石の代表らの追放反対重要問題決議案と「二重代表制」決議案を提案し、中華民国と中華人民共和国を併存させようとしていたというのですね。
〇 アルバニア決議(国連総会2758号決議)の概要と歴史的背景
+採択日と内容
/1971年10月25日、第26回国連総会で採択
/「中華人民共和国の一切の権利を回復し、中華人民共和国政府の代表が国連における中国の唯一の合法的な代表であることを承認する」
/中華人民共和国が国連安保理の常任理事国の一つであることを承認
/「蒋介石の代表を国連から追放する」との内容も含む
+採択までの経緯(1949年~1971年)
/1949年:中華人民共和国建国宣言。北京当局は中華民国の国連議席を奪おうと画策
/1950年:周恩来(当時政務院総理兼外交部長)が蒋介石の代表排除を国連に訴える
/1950年代中盤以降:国連総会で中国の加盟資格に関する議題がほぼ毎年議論されるが、米国支持勢力が優勢
/冷戦時代:中華民国の議席は米ソの戦略的利益に基づき決定。中国共産党は米国を引き込む必要性を認識
+国際情勢の変化と中華民国への支持崩壊
/1958年以降:米ソ関係悪化
/1960年代:米国はベトナム戦争による巨額の軍事支出と反戦の声の高まりから、「第三国」によるソ連との均衡が必要に
/1971年:「ピンポン外交」で米中関係が急速に熱を帯び、中華民国を支持する陣営が崩壊し始める
/中国共産党は「1国1票」の国連で第三世界の国々との関係構築を積極推進
+2758号決議の提案と表決
/1971年7月15日:アルバニア、アルジェリアなど18カ国(後に23カ国、うち11カ国はアフリカ諸国)が共同提案
/米国は「二重代表制」(追放反対重要問題決議案と「二重代表制」決議案)を提案し、中華民国と中華人民共和国の双方を両立させようとする
/1971年10月25日:アルバニアなど23カ国共同提案の決議案が賛成76、反対35、棄権17で採択され、「二重代表制」決議案は表決に付されないこととなった
/中華民国は国連脱退を余儀なくされた
+決議における台湾の地位
/2758号決議は中華人民共和国の代表権問題を処理しただけで、台湾の政治的地位には言及していない(中山大学・郭育仁教授の指摘)
/米国の「二重代表制」提案は北京に「台湾」に対する態度への疑念を抱かせた
〇決議採択後の展開と中国による解釈の変化
+決議採択後の状況
/中華人民共和国の国交樹立国が増加し、国際的地位が大きく向上
/1979年:米中が国交樹立。2758号決議は棚上げされ、台湾の地位も議論されなくなる
+台湾による「国連復帰」・「加盟」行動の開始
/1997年:国民党・李登輝政権が国連「復帰」行動を開始
/2003年:民進党・陳水扁政権が「台湾」名義での国連加盟を目指す
/北京は2758号決議を理由に台湾の国連加盟を拒否し、台湾は中国の一部だと主張する声明を発表
+近年における中国の解釈の拡大と「武器化」
/台湾の国際的存在感(半導体産業、新型コロナ対応、権威主義体制との対抗など)が向上し、国際社会で台湾を再認識する流れが発生
/中国は2758号決議の範囲を拡大解釈し、国際法上で台湾に圧力をかけ、封鎖する「武器」とする
/中国の対台湾政策白書における解釈の変化:
ー1993年・2000年白書:「台湾当局の代表を追放」し、「二つの中国」「一中一台」を否定したとのみ解釈
ー2022年白書:「国連2758号決議は一つの中国原則を体現した政治的文書であり、国際上の実践でその法的効力が十分に裏付けられた」と記す(中国の法的言説が明確化)
+中国が法律戦で確立しようとしている3点(台湾大学・姜皇池教授の指摘)
/中華人民共和国は中国の唯一の合法的政府であること
/中国は2758号決議を根拠に中華民国の一切を継承し、台湾を中国の一部とすること
/中国は国連とその関連機関に中華民国の「国連復帰」または台湾の「国連加盟」申請案を受け入れないよう求めることができる
+姜教授の警戒感
/中国の法的言説に照らすと、台湾問題は国連憲章第2条の「国内管轄権内にある事項」に該当することになる
/中国が将来、武力による台湾問題の解決を含む全ての問題を処理する合法性を取得することを最も期待している
これは、1978年の米中共同声明で、「米国は中華人民共和国が中国の唯一の合法政府であると承認(recognize)する」と明記する一方で「中国はただ1つで、台湾は中国の一部であるという中国の立場」について「米国は認識(acknowledge)する」との表現にとどめたことにも繋がっています。要はアメリカは「一つの中国」など認めていないということです。
それは、1979年にアメリカが中国と国交を結んだ直後に「台湾関係法」を制定し、「平和的な手段以外で台湾の将来を決定しようとする試みは、地域の平和と安全に脅威だ」と明記して台湾への武器提供などを定めたことでも分かります。
4.台湾は中国の一部になったことは一度もない
中国がアルバニア決議を「一つの中国」の論拠にしようとする試みは、欧米各国から否定されています。
例えば、アメリカでは2024年、2025年と連邦上下院で次の決議がされています。
〇アメリカ連邦上院決議 S. Res. 687 (第118議会、2024年5月提出) https://www.congress.gov/bill/118th-congress/senate-resolution/687アルバニア決議は「一つの中国原則」を承認したものではない、と直球で否定しています。
・決議 > 国連総会決議2758号(XXVI)及び中国の「一つの中国原則」と米国の「一つの中国政策」の有害な混同に関する上院の見解を表明する。決議2758の目的は、国連における「中国」の議席をどの政府が代表するかという問題に対処するものであり、台湾の最終的な政治的地位を含むその他の問題に対処するものではなかった。
・「一つの中国原則」は中国共産党が掲げる政策であり、
(1) 中華人民共和国(PRC)が「中国」の名称を使用する唯一の主権国家であること、
(2) 台湾は中国から分離不能の一部である
・決議2758は「一つの中国原則」を承認したものではなく、これに相当するものでもなく、決議2758を支持した国々が必ずしも「一つの中国原則」を受け入れているわけではない。
・決議2758は、台湾が中国の一部であるという中華人民共和国の立場に関する国際的合意を表すものではない。
〇アメリカ連邦下院決議 H. Res. 148 (第119議会、2025年2月提出) https://www.congress.gov/bill/119th-congress/house-resolution/148/text
・決議2758の目的は、国連における「中国」の議席を代表すべき政府を定めることにあり、台湾の最終的な政治的地位を含むその他の問題に対処するものではなかった。
・決議2758は「一つの中国原則」を承認したものではなく、これに相当するものでもなく、決議2758を支持した国々が必ずしも「一つの中国原則」を受け入れているわけではない。
・第2758号決議は、台湾が中国の一部であるとする中華人民共和国の立場に関する国際的合意を示すものではない。
また、去年の10月にはEUも「国連決議2758号に関する背景と欧州議会の見解」を採択しています。
その内容は次の通りです。
【前略】こちらの決議では、「台湾は中国の一部になったことは一度もない。中華民国は1912年に建国され、中華人民共和国(PRC)は1949年に建国された」「国連決議2758号は、中国の代表権の地位について言及しているものの、中国が台湾に対して主権を有すると決定したものではなく、また、台湾が将来的に国連やその他の国際機関に加盟することについてもいかなる判断もしていない。それにもかかわらず、中国は決議2758号を誤って解釈し続け、台湾の国際機関への意味ある参加を阻止し、現状を一方的に変更している」と断言しています。
A. 国連総会決議2758号は1971年10月25日に採択され、国連における「中国」の代表権が中華民国(台湾)から中華人民共和国(PRC)へ移行した。現在、台湾は国連加盟国ではないが、193の国連加盟国のうち11か国、およびローマ教皇庁と外交関係を維持している。
B. EUと台湾は、自由、民主主義、人権、法の支配という共通の価値観を共有する志を同じくするパートナーである。台湾は活気ある民主主義国家であり、繁栄した市民社会を有し、2024年1月13日に平和的かつ組織的に選挙を実施した。
C. 国連決議2758号の採択に伴い、台湾はWHOなどの多国間フォーラムへの参加資格を実質的に失った。
D. 台湾は中国の一部になったことは一度もない。中華民国は1912年に建国され、中華人民共和国(PRC)は1949年に建国された。
E. 国連決議2758号は、中国の代表権の地位について言及しているものの、中国が台湾に対して主権を有すると決定したものではなく、また、台湾が将来的に国連やその他の国際機関に加盟することについてもいかなる判断もしていない。それにもかかわらず、中国は決議2758号を誤って解釈し続け、台湾の国際機関への意味ある参加を阻止し、現状を一方的に変更している。これらの行動は、既存の多国間国際秩序を変更し、国際法を弱体化させようとする中国の野心を浮き彫りにし、組織的対立の表れと見ることができる。
F. EUは、中国の「一つの中国」原則とは異なる独自の「一つの中国」政策を維持し続けている。EUは長年、対話と建設的な関与を奨励しつつ、現状維持と台湾海峡を越えた相違の平和的解決を支持する立場をとってきた。
G. 2024年9月23日の声明を通じて、G7加盟国は、とりわけ、「国家としての資格が必須でない場合は加盟国として、また必須の場合にはオブザーバーまたはゲストとして、国際機関に台湾が有意義に参加すること」を支持すると強調した。
H. 台湾の国際機関への参加を支持することは、EUと中国の関係の政治的基礎であり続ける「一つの中国」政策に対するEUのコミットメントを損なうものではない。
I. 過去10年間、中国は国際機関に対する影響力を執拗に強化し、それを利用して台湾を疎外してきた。ジャーナリスト、非政府組織の活動家、政治活動家を含む台湾のパスポート保持者が国際機関にアクセスすることを阻止している。さらに、中国は犯罪人引渡し条約を悪用して海外の台湾人を標的とし、恣意的な迫害や人権侵害の危険にさらすという国際的な弾圧を行っている。
J. WHO、UNFCCC、インターポール、ICAOなど、地球規模の問題に対処する任務を負うほとんどの国際機関の規約は、加盟国の権利を侵害することなく台湾のような団体が参加する機会を与えている。
K. 台湾は世界において一貫して平和的かつ協力的な姿勢を示し、世界情勢の発展を著しく促進しており、さまざまな国際機関の活動に大きく貢献できる可能性がある。
L. 中華人民共和国は、中国共産党によって完全に管理され統治される一党独裁国家である。
M. 2024年10月10日の台湾建国記念日の演説で、台湾の頼清徳総統は、中国には「台湾を代表する権利はない」と述べ、両国は互いに「従属していない」と改めて強調した。対して中国は、頼清徳総統が分離主義戦略を追求していると主張し、最近の軍事演習を正当化した。
N. 2024年10月14日、中国は台湾封鎖を模擬した大規模軍事演習「ジョイントソード2024B」を開始した。この演習では、台湾周辺で過去最多の153機の中国航空機、18隻の軍艦、17隻の中国沿岸警備隊艦艇が確認された。
O. 演習中、中国沿岸警備隊の4編隊が島を巡回し、一時的にその制限水域に入った。中国が「法執行」任務とみなす海峡での沿岸警備隊の頻繁な展開は、台湾当局に絶え間ない圧力をかけ、衝突の危険を危険なほどに増大させている。これは、現状を侵食しようとする中国の意図を最も具体的に示すものの一つである。2024年10月14日に開始された演習は、中国によるわずか2年余りでの4回目の大規模軍事演習であった。
P. これらの行動は台湾によって「不当な挑発」として非難されており、中国が台湾に対して行った一連の軍事演習の最新のものである。これらの軍事演習は、台湾の新総統である頼清徳氏が、中国からの挑戦に直面して台湾の主権を守ると誓う演説を行った数日後に行われた。
Q. 台湾海峡の中間線は、両岸間の数十年前の暗黙の合意で設定され、軍用機を安全な距離に保ち、致命的な誤算を防ぐことで紛争のリスクを減らすことを目的としていた。中国人民解放軍は1954年から2020年の間に中間線を4回しか侵犯していなかったが、現在では日常的な侵犯が見られ、これは長年のベンチマークを不可逆的に再設定しようとする北京の意図を反映している。
R. 欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表と米国務省のプレス声明は、台湾海峡の平和と安定が地域と世界の安全と繁栄にとって戦略的に重要であることを再確認している。上級代表の声明は、台湾海峡の現状維持の必要性を想起させ、力や威圧によって現状を変更するいかなる一方的行動にも反対し、すべての関係者に自制を促し、海峡両岸の緊張をさらに高める可能性のあるいかなる行動も回避するよう求めている。
S. 2024年5月23日、中国は頼清徳氏が台湾の新総統に就任したわずか数日後に「統合剣-2024A」と呼ばれる軍事演習を開始した。
T. 過去数年間、中国は台湾周辺で同様の軍事演習を実施してきたが、その激しさは増し、台湾本土にますます近い場所で実施されるようになっている。2022年8月の演習では、中国は日本の排他的経済水域に向けてミサイルを発射した。
U. 中国は軍事的圧力に加え、ハイブリッド攻撃やサイバー攻撃を含む外国情報操作・干渉(FIMI)によって台湾を標的とし、台湾の民主社会を弱体化させるという高度な戦略を長年追求してきた。
V. 習近平指導下の中国は、台湾との統一を目指して武力行使を放棄しないと述べている。
W. 2005年の中国の国家分裂防止法には、曖昧な条件に基づき非平和的手段を用いて、中国が台湾との「統一」と呼ぶものを達成することが含まれている。このような軍事行動は、地域全体の安全と安定に対する重大な脅威であり、世界的に悲惨な結果をもたらす可能性がある。EUと米国の抑止力は、中国が台湾に対して一方的な行動をとることを思いとどまらせる上で戦略的に重要である。
X. 中国のますます攻撃的な行動、特に台湾海峡や南シナ海などの近隣地域における行動は、地域および世界の安全保障に対するリスクをもたらしている。2019年以来、中国は台湾の防空識別圏(ADIZ)への侵犯をますます頻繁に行っている。中国はインド太平洋の広範な地域で攻撃的な行動をとり、さまざまな程度の軍事的または経済的強制力を行使しており、日本、インド、フィリピン、オーストラリアなどの近隣諸国との紛争につながっている。
Y. EUは、2024年8月31日に南シナ海でフィリピンの合法的な海上活動に対して中国の海警船が行った危険な行為を非難する。この事件は、海上における人命の安全を危険にさらし、国際法に従った航行および上空飛行の自由の権利を侵害する一連の行為の最新のものである。海上の安全保障と航行の自由は、国際法、特に国連海洋法条約に従って確保されなければならない。
Z. 中国は、特にロシアへの軍民両用製品の輸出や、中国に拠点を置く企業による制裁回避および迂回への継続的な関与を通じて、ウクライナに対するロシアの侵略戦争を支援している。
AA. 中国は国連安全保障理事会の常任理事国として、この地域、特に台湾海峡の平和と安定のために努力する責任がある。
AB. EUとその加盟国は、2021年インド太平洋協力戦略を通じて、一部の加盟国の軍事プレゼンスの強化や、台湾海峡での軍艦の継続的な航行などを通じて、この地域におけるプレゼンスを強化した。
AC. 台湾は、特にハイテクサプライチェーンにおいて貿易上の戦略的な位置にある。台湾海峡は、中国、日本、韓国、台湾からヨーロッパに向かう船舶の主要航路である。台湾は半導体製造市場において優位な位置を占めており、台湾のメーカーは世界の半導体生産量の約50%を占めている。EUのインド太平洋協力戦略では、台湾との貿易・投資協力の拡大を主張している。
AD. EUは台湾にとって、中国、米国、日本に次ぐ第4位の貿易相手国である。一方、2022年には台湾はEUの第12位の貿易相手国であった。EUは台湾にとって最大の外国直接投資の供給元であるが、台湾のEUへの投資は潜在的価値を下回っている。
AE. オーストラリア上院議員とオランダ下院議員は最近、国連決議2758号の中国による歪曲に関する動議を採択し、台湾の多国間組織へのさらなる参加への支持を求めた。
(欧州議会決議 採択部分:1~22)
1. 台湾はEUの重要なパートナーであり、インド太平洋地域における志を同じくする民主主義の友人であることを改めて表明する。2024年1月13日の平和的かつ組織的に行われた選挙によって示された、台湾と台湾人民の強固な民主主義と活気ある市民社会を称賛する。
2. 中国が国連決議2758を常に歪曲し、台湾の多国間組織への参加を阻止しようとしていることに反対する。EUとその加盟国に対し、WHO、ICAO、インターポール、UNFCCCなどの関連国際組織への台湾の意義ある参加を支持するよう求める。さらに、国連事務局に対し、台湾国民とジャーナリストに訪問、会議、取材活動のために国連施設へのアクセス権を与えるよう求める。
3. 2024年10月14日の中国の不当な軍事演習、台湾に対する継続的な軍事挑発、インド太平洋の力のバランスを変えつつある継続的な軍備増強を強く非難し、台湾海峡の現状のいかなる一方的な変更も断固として拒否することを改めて表明する。台湾当局の自制と規律ある対応を称賛し、関連する安全保障問題についてEUと台湾のカウンターパート間で定期的な意見交換を行うことを求める。
4. 台湾海峡の現状維持への強い決意を再確認し、特に武力や強制力によって台湾海峡の現状を一方的に変更しようとするいかなる試みも受け入れられず、断固たる態度で対処することを強調する。
5. 国連決議2758号は台湾に関していかなる立場も取っていないことを強調し、中国による歴史と国際ルールの歪曲の試みを強く拒否し、反駁する。
6. EUと中国の関係の政治的基礎としての「一つの中国」政策に対するEUのコミットメントを改めて表明する。EUの中国戦略では、建設的な両岸関係がアジア太平洋地域全体の平和と安全を促進する一環であることを強調し、EUが対話と信頼醸成を目指す取り組みを支持していることを想起する。
7. 台湾の人々には、どのように暮らしたいかを民主的に決定する責任があり、台湾海峡の現状は武力の使用や威嚇によって一方的に変更されてはならないことを強調する。
8. 習近平中国国家主席が、中国は台湾に対する武力行使の権利を決して放棄しないと発言したことを改めて強く非難する。統一を達成するために中国が武力や脅迫、その他の極めて強制的な手段を用いることは国際法に反することを強調する。台湾の民主主義と統治に対する信頼を損なわせるために中国が敵対的な偽情報を使用していることに深刻な懸念を表明する。EUとその加盟国に対し、国際パートナーと協力して台湾の民主主義を維持し、外国の干渉や脅威から台湾を守るようこれまで繰り返し要請してきた。国際舞台で台湾の人々を代表できるのは、民主的に選出された台湾政府だけであることを強調する。
9. 台湾に対するサイバーおよび偽情報作戦を含む中国の組織的なグレーゾーン軍事行動を非難し、中国に対し、これらの活動を直ちに停止するよう強く求める。これに関連し、偽情報および外国の干渉に対抗するための構造的協力を強化するため、EUと台湾の協力をさらに深めるよう求める。偽情報および干渉に対処する共同の取り組みを調整するために台湾の欧州経済貿易事務所に連絡官が配置されたことを、EUと台湾の協力を深めるための最初の重要な一歩として歓迎し、EUに対し、この重要な分野で台湾との協力をさらに深めるよう求める。中国の脅威と活動の激化に直面した台湾の人々の勇気と、台湾当局および機関の適切かつ威厳ある対応を称賛する。
10. 台湾やその他の国々、そしてEU加盟国に対する中国の経済的強制を断固として拒否する。そのような行為は世界貿易機関(WTO)の規則に違反するだけでなく、世界中で中国の評判に壊滅的な影響を与え、責任ある主体としての中国への信頼をさらに失うことにつながることを強調する。EUとその加盟国には、外国の干渉を受けることなく、それぞれの利益と民主主義、人権という共通の価値観に沿って台湾との関係を発展させる独立した権利があることを強調する。特に南半球における中国の悪質な商慣行に対処し、代替案を提供するよう、EUと加盟国の海外代表部に対して求める。
11. 最高人民法院、最高人民検察院、公安部、国家安全部、司法部が共同で2024年6月に発表した、国家分裂罪および国家分裂扇動罪を犯した「強硬な台湾独立分裂主義者」に対する処罰に関するいわゆるガイドラインの採択を非常に懸念する。このガイドラインは、国家分裂罪に対して死刑を含む厳しい刑罰につながる可能性がある。2022年に中国で逮捕された台湾人活動家1名に2024年9月に懲役9年の判決が下されたこと、および中国で働き、暮らす台湾人に対する絶え間ない嫌がらせを強く非難する。
12. 東シナ海及び南シナ海の状況を深刻に懸念し、国連海洋法条約(UNCLOS)を含む国際法、特に平和的手段による紛争解決の義務、並びに航行及び上空飛行の自由の維持に関する規定を尊重することの重要性を想起する。UNCLOSを批准していないすべての国に対し速やかに批准するよう求め、EU及びその加盟国に対し、この地域における自らの海洋能力を強化するよう求める。また、中国に対し、国連安全保障理事会の常任理事国として国際法を遵守する責任を想起させ、紛争を平和的に解決する義務を強調する。
13. 中国の軍事投資と能力の増大に対する重大な懸念を再確認する。中国とロシアが両国の軍事関係をさらに強化するという新たな約束に対して重大な懸念を表明し、モスクワの軍事産業への中国による部品と装備の供給を非難する。ロシアのウクライナ戦争を支援したとして中国企業に制裁を課すという安全保障理事会の決定を歓迎する。ロシアと中国の間の「無制限の」パートナーシップを遺憾に思い、インド太平洋における米国の関与と軍事的プレゼンスの増大を歓迎する。大西洋横断議会対話などを通じて、安全保障問題に関するEUと米国の協力を深めるための協調的なアプローチを求める呼びかけを改めて表明する。
14. ロシアのウクライナに対する戦争に対応し、この明白な国際法違反に応じて制裁を発動する上で、台湾がEUおよび米国と緊密に協力し、足並みを揃えたことを強く歓迎する。また、ロシアのウクライナ侵略戦争によって引き起こされた人道危機への対応における台湾の貢献、並びにウクライナ政府とウクライナ難民を受け入れている国々に対する台湾の継続的な関与と支援を想起する。
15. 認知戦争および法的戦争の分野における中国のさまざまな行動が徐々に現状を揺るがし、検出、既存の法律、対応の閾値を回避することを目的としたグレーゾーン活動を激化させていることを強調する。EUに対し、ハイブリッド活動やサイバー脅威に対するセクター別制裁を含む制裁措置のツールボックスを通じてレッドラインを確立し、執行し、志を同じくするパートナーと強力な外交的および経済的抑止措置を調整するよう求める。
16. COVID-19パンデミック中の台湾の支援と援助に感謝の意を表する。
17. 台湾が世界のサプライチェーンの安全を確保する上で、特にハイテク分野で半導体の主要生産国となっていることの重要性を認識し、EUとその加盟国に対し、台湾とのより緊密な協力を求める。
18. 委員会に対し、台湾との二国間投資協定またはその他の協定の交渉のための準備措置を遅滞なく開始するよう求める。外国直接投資審査政策および経済的強制と報復への対処に関する協力の可能性を強調する。
19. フランス、オランダ、ドイツを含むいくつかのEU諸国による航行の自由演習の増加を称賛し、これらの活動が国際法に合致するものであると留意する。この地域における航行の自由作戦を拡大するために地域のパートナーとのさらなる協力と調整を求める。
20. 2024年10月17日の蔡英文前総統の欧州議会訪問を含め、台湾の元および現職政治家の欧州訪問を歓迎する。さらに、欧州議会議員と台湾の継続的な交流を歓迎し、欧州議会の公式代表団の台湾へのさらなる訪問を奨励する。また、政治会議や国民交流を含む、あらゆるレベルでのEUと台湾のさらなる交流を奨励する。
21. この観点から、青年、学術界、市民社会、スポーツ、文化、教育、都市間および地域間のパートナーシップなど、他の分野にも重点を置いた経済的、科学的、文化的な交流の拡大を奨励する。加盟国に対し、台湾の国家消防庁、国家警察庁、および民間防衛と災害管理の分野での地方自治体との有意義かつ構造的な技術協力を行うよう改めて呼びかける。
22. 国連議長に対し、この決議を安全保障理事会、委員会、委員会副委員長/外務安全保障政策上級代表、中華人民共和国政府および台湾政府に送付するよう指示する。
特に、中国が「現状を一方的に変更している」という指摘は、現状変更は武力によるものだけではないという認識を示すものであり、中国の三戦の一つである「法律戦」をちゃんと認識していることを窺わせます。
確かに、日本もアルバニア決議を振り返り、中国はこういうことをやってくる国なのだということをしっかり識るべきだと思いますね。
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