
1.旧姓使用法制化の検討
12月9日、高市総理は衆院予算委員会で、旧姓の使用法制化の検討を進める旨の発言を行いました。
自民党の柴山元文科相から、選択的夫婦別姓をめぐり、「現在、衆議院の法務委員会では、選択的夫婦別姓に関する複数の法案が議論されている。このような中で政府において旧姓の通称使用を拡大する法案を検討するということだが、この問題について深く検討を続けてきた高市首相の見解を伺う」と問われた高市総理は、「政府におきましては、これまで20年以上にわたり、旧氏の通称使用の拡大や周知に取り組んできた。私自身、総務大臣在任中は総務省単独で措置できる手続き等について、1142件を旧氏や併記で対応できるようにした……すべての省庁、地方公共団体、公私の団体・事業者において同様の取り組みを行えば、婚姻による氏の変更により社会生活で不便や不利益を感じる方を減らせると感じている。その効果は旧氏の通称使用をを法制化することで、さらに大きなものとなると考えている……政府としては本年10月の連立政権合意書の内容を踏まえ、旧氏の通称使用の法制化について与党と緊密に連携しながら、必要な検討を進めていく」と答えています。
政府は、結婚後の旧姓の通称使用を法制化するため、来年の通常国会に関連法案を提出する方向で調整に入ったとのことで、行政手続きなどで旧姓の通称使用を法律で促すようです。
2.旧姓使用拡大に反発する連合会長
この高市総理の答弁で、選択的夫婦別姓議論にもようやく一つの方向性が出された感がありますけれども、やっぱり抵抗勢力はいます。
自民党の小林鷹之政調会長は12月4日の記者会見で「結婚した後の旧姓の使用について不便を感じている方がいるのは事実なので、速やかに解消していくことが必要だ」と述べ、党内で議論を進める考えを示していますけれども、夫婦別姓推進派の中堅議員は5日、東京新聞の取材に、旧姓の通称使用拡大法案について「中身のない法案で、成立するわけがない」と静観する構えを示しました。
立憲民主党の本庄知史政調会長は3日の記者会見で「旧姓使用の拡大を否定しているわけではない……選択的夫婦別姓が導入されても通称使用はできる。私たちは選択肢を広げるべきだという提案をしている……結婚しても名字を選べる、そういう選択肢のある社会を目指していく」と強調しました。
共産党の田村智子委員長も4日の記者会見で、旧姓使用拡大の法案について「選択的夫婦別姓をつぶすためにやっていることだ」と批判。公明党の斉藤鉄夫代表も、5日の記者会見で「(政府提出法案として出す場合は)法制審に諮問し直すべきだ」と述べています。
また、12日に行われた政府の男女共同参画会議では、今後5年間で取り組むべき女性政策などの指針となる「第6次男女共同参画基本計画」の「基本的な考え方」の案が示されたのですけれども、その中に、「社会生活のあらゆる場面で旧氏(旧姓)使用に法的効力を与える制度の創設を検討する」との記載が盛り込まれていました。
これは、自民党と日本維新の会が10月に結んだ連立政権合意書で「旧姓使用の法制化法案を通常国会に提出し、成立を目指す」とされ、来年の通常国会への関連法案提出を目指す高市政権の意向を反映したものと見られていたのですけれども、会議で一部から反対意見があり、12日中に予定していた高市総理への答申は見送りとなっています。
では、一部の反対意見とはどこから出たのかについてですけれども、どうやら連合の芳野会長だったようです。
報道によると、芳野会長は「旧姓使用を法的根拠にすること自体が連合としては反対です。あくまでも選択的夫婦別氏制度導入を求めております……何の説明もなく認められない」とコメントしています。
3.衆議院法務委員会
選択的夫婦別氏制度については、賛成側と反対側で議論が平行線にしかならないような気がしないでもありませんけれども、今年の6月10日、国会の法務委員会で参考人を呼んでの意見陳述が行われています。
出席参考人の中から、元東京新聞編集委員、皇學館大学特別招聘教授の椎谷哲夫氏、日本労働組合総連合会総合政策推進局長の小原成朗氏、作家の竹田恒泰氏、日本経済団体連合会審議員会副議長/ダイバーシティ推進委員長の次原悦子氏の意見陳述の概要を拾ってみると次の通りです。
〇 椎谷参考人の意見陳述と質疑応答(抜粋)選択的夫婦別氏に賛成2名、反対2名の意見陳述を紹介しましたけれども、賛成派は人権だ、アイデンティティだと主張するのに対し、反対派は今現在不都合がないのに何故変える必要があるのか。変えた方が却ってデメリットが大きいという意見で対立しています。
+ 法案提出への評価と議論の姿勢
/ 各党の熱心な議論を高く評価する。
/ 三党の法案の内容が異なるのは当然であり、時間をかけて議論すれば一つの方向に収まると考える。
+ 世論調査の結果(JNN)
/ 参議院選挙で最も重視する政策として、選択的夫婦別姓はわずか1%。
/ 今国会で結論を出す必要はないという人が半数を超えた。
+ 議論の問題点
/ 30年間議論ばかりしていたのではなく、子供の姓の問題をほとんど議論してこなかったのではないか、という印象を持っている。
+ 世論調査の結果(NHK・三択)
/ 導入すべき(25%)、通称使用拡充すべき(31%)、現状のままでよい(37%)であった。
/ NHKが初めて三択調査を行ったことに驚いている。三択の方が広く国民の声(スタンス)を拾い上げているのではないか。
+ 自身の立場と提言
/ 同一氏同一戸籍の維持、そして旧姓使用の法制化を自身の持論とする。
/ 国民の分断を避けるためにも、内閣立法(閣法)でやるのも一つの方法ではないか。
+ 日本の戸籍の優れた点
/ 一覧性があり、全てをたどっていくことができる点。
〇 小原参考人の意見陳述と質疑応答(抜粋)
+ 連合の立場と要求
/ 選択的夫婦別氏制度の早期実現は、働く者、生活者の立場から長年重点的に取り組む要求項目。
+ 連合の調査結果
/ 「夫婦は同氏でも別氏でも構わない。選択できる方がよい」が「夫婦は同氏がよい」を大きく上回った。
/ 20代男性の5人に1人が、婚姻時の改氏が婚姻の妨げになると回答。少子化対策のためにも婚姻の妨げとなる可能性のあるものを取り除くべき。
+ 請願署名
/ 衆参両議長宛てに31万筆を超える請願署名が集まっており、切実な声が寄せられている。
+ 通称使用の限界
/ 通称使用では国際社会に通用せず、人権尊重に応えられない。
+ 早期実現に向けた考え方
/ 国連女性差別撤廃委員会から4度目の勧告がある。
/ 選択的夫婦別氏制度の導入を優先すべき。
/ 選択的夫婦別氏制度は戸籍の機能に影響を与えるものではないという認識。
+ 反対意見への反論
/ あくまで選択制であり、家族の一体感や子供のことは選んだ家族が考えればよいことで、外部が言うべきではない。
/ 立憲案、国民民主案の一本化と速やかな成立を求める。
+ 働く現場の実情
/ 国際結婚や離婚などで夫婦別姓、親子別姓である方々がいるが、特に不都合が生じているという話は聞いていない。
〇 竹田参考人の意見陳述と質疑応答(抜粋)
+ 世論調査について
/ 三択で聞くことが重要であり、二択で聞くと賛成が多くなる。
+ 旧姓の通称使用拡大と立法事実
/ 旧姓の通称使用は拡大しており、ほとんどの不便は解消済み。
/ 家族制度の変更には大きな社会的コストが生じるため、立法事実がない。
/ パスポートの問題で不便を感じている人は少数であり、旅券法改正で対応可能ではないか。
+ 家族制度の変更の是非
/ 家族法は、伝統・慣習の上に成り立つものであり、目先の流行で安易に変えるべきではない。
/ 選択的夫婦別姓の導入は、結婚への障壁となり少子化を加速させると考える。
/ 選択的夫婦別姓は強制的親子別姓であり、子供は家族が違う名字になることを嫌がっている。
+ 維新案の評価
/ 維新案(戸籍法改正による旧姓使用の法制化)は、家族制度を変えることなく、苦しんでいる方の不便を解消できる上策であると評価する。
+ 日本の家族の伝統
/ 夫婦同姓の期間が日本の歴史の約4.7%という指摘に対し、日本の伝統的な家族観は長く続いており、氏の使用も江戸時代以前から広くなされていたと反論。
〇 次原参考人の意見陳述と質疑応答(抜粋)
+ 経団連の立場
/ ダイバーシティ推進のため、現行の夫婦同姓制度という壁を乗り越える必要がある。
/ 女性役員の88%が、通称使用が可能でも何かしらの不便や不利益があると回答。
+ 個人的な経験と通称使用の限界
/ 自身も上場申請時に戸籍名の壁に直面し、離婚を選択した経験がある。
/ 通称使用では、税・社会保障といった行政手続きや海外でのビジネスで旧姓の単独使用は認められていない。
/ 海外ではダブルネームの意味を理解してもらうのは困難。
/ 不便の解消だけでなく、姓が変わることによるアイデンティティーの喪失感は通称使用では解決できない。
+ 提言
/ 求めるのはあくまで選択の自由であり、多様な価値観が尊重されるための制度改革。
/ 1996年の法制審答申は極めて妥当であり、戸籍制度の根幹を揺るがすものではない。
+ 雇用する側の実情
/ 社員の御家庭の事情は様々であり、結婚でさえ会社に知られたくないという人もいる。選択肢はそうした人の気持ちを救うためにも必要。
/ 自身の子どもたちは離婚により姓が異なるが、違和感を唱えられたことは一度もない。
4.二択と三択
この参考人意見陳述の中で、竹田恒泰氏が、世論調査について「三択で聞くことが重要であり、二択で聞くと賛成が多くなる」との意見を述べていますけれども、これは直前に意見陳述した連合の小原成朗氏が、連合の世論調査を持ち出して、 「夫婦は同氏でも別氏でも構わない。選択できる方がよい」が「夫婦は同氏がよい」を大きく上回ったと述べたことに対する牽制の意味合いで述べたのではないかと思われます。
こちらに件の連合の世論調査結果がありますけれども、見事に2択です。まぁ「分からない」をいれれば形の上では3択になりますけれども、第三の選択肢を示していないという意味では2択です。
こちらの産経新聞社とFNNが1月に行った世論調査では、「賛成」「反対」「夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用を広げる」と三択で調査していて、その結果、「夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用を広げる」45.2%、「賛成」は37.5%、「反対」が14.7%と約6割が「選択的夫婦別姓」の導入に否定的という結果となっています。
更に、自民党所属で前参院議員の赤池誠章氏は、今年1月、自身のブログでの「選択的夫婦別氏の是非 世論調査が2択か3択かで結果が違う!!!」という記事で、「どの報道機関の調査でも、2択で聞くと、賛成が反対を上回り」、「3択で聞くと、通称使用拡大が1位となり、反対と足すと圧倒的多数になる」と報告しています。
先述の意見陳述で、椎谷哲夫氏がNHKの三択世論調査を取り上げ、三択の方が広く国民の声を拾い上げているのではないかとコメントしていますけれども、国民の多くは、選択的夫婦別氏など求めてなんかいないと思いますね。
この記事へのコメント