コア・ファイブとトランプの引き剥がし

今日はこの話題です。
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1.コア・ファイブ


昨日のエントリーで、アメリカの国家安全保障戦略(NSS)の長大版があることを紹介しましたけれども、その中に、米・中・露の新たな枠組みとして「コア5(C5)」構想について触れられています。

これについて、12月10日、ポリティコ紙は、「新たなロシア・中国・米国のネットワークがどのように機能するか」という記事を掲載しています。

件の記事の概要は次の通りです。
・ワシントンで今週、米国が中国、ロシアを含む新たな「コア5」を設立するという、かつては考えられなかった構想が浮上しています。これは既存のG7とは対照的な、伝統的な敵対国を呼び込む枠組みだ
・エヌビディアのAIチップの対中輸出許可や、ウクライナ和平交渉のためのロシアへの特使派遣など、トランプ大統領の「ライバル国と取引する」スタイルに合致すると見る向きもあります。
・メンバーは、米国、中国、インド、日本、ロシアの5カ国。
・既存のG7や国連安保理が「今日の主要プレーヤーを反映しておらず、機能不全に陥っている」という認識に基づいている
・国家安全保障の実務家たちは、このホワイトハウスにとってC5が理にかなっている側面があると見ている。
・欧州諸国が含まれていないことから、トランプ政権が「ロシアを欧州における覇権国」として認めているのではないかとの不安が広がっている
・第1次トランプ政権でテッド・クルーズ上院議員の補佐官を務めたマイケル・ソボリク氏は、C5をトランプ自身の第1期対中政策の逆転と見ている。
・国家安全保障戦略自体も、従来の欧州の同盟国から離れ、西半球へ重点を移すことを示唆している。
また、UAE最大の新聞社「Gulf News」は、12月12日、「トランプ大統領の「コア・ファイブ」計画は世界の権力の将来をめぐる議論を巻き起こす」という記事を掲載しています。

件の記事の概要は次の通りです。
・ドナルド・トランプ米大統領は、米国、中国、ロシア、インド、日本を結集し、G7などの伝統的な西側主導のグループを脇に置く可能性のある「C5」または「コア・ファイブ」と呼ばれる新たなエリートによる国際フォーラムの創設を検討していると報じられている。
・この提案はポリティコが最初に報じた。ポリティコによると、このアイデアはワシントンで流通しているとされる国家安全保障戦略(NSS)のより長い未発表版に記載されているという。ホワイトハウスは先週、33ページに及ぶNSSの公開文書を公開したが、Defense OneはC5構想を含む、より広範なNSS版が存在すると主張した。
・ホワイトハウスは代替案の存在を否定している。報道官ハンナ・ケリー氏はポリティコに対し、公式戦略の「代替案、非公式版、あるいは秘密版」は存在しないと述べた。

〇報告された計画が提案するもの
・ポリティコによると、この草案ではC5は人口1億人超の大国による小さなクラブであり、G7のように定期的に会合を開いて世界の安全保障や戦略問題を議論することを目的としているとされている。
・報告書によると、最初に提案される議題は、イスラエルとサウジアラビアの関係正常化に向けた取り組みを含む中東安全保障となる。
・アナリストらは、G7との主な違いはその基準にあると指摘する。C5は富や民主主義の規範ではなく、「ハードパワー」、つまり人口規模、軍事力、世界的な影響力によって定義される。

〇アナリスト:「まさにトランプ的なアイデア」
・ポリティコが引用した国家安全保障の専門家らは、この考えは、政治体制に関わらず、取引中心、人格重視、強い国家に重点を置くというトランプ氏の世界観を反映していると述べている。
・「これは、トランプ大統領の世界観、つまり非イデオロギー、強国への共感、勢力圏を持つ大国間の協力という考え方に一致している」と、バイデン政権下で米国国家安全保障会議の欧州問題担当ディレクターを務めたトーリー・タウシグ氏は述べた。
・タウシグ氏はさらに、理論上のC5から欧州が除外されることで、トランプ政権が欧州の支配的勢力としてEUではなくロシアを見ているのではないかという懸念が強まるだろうと付け加えた。
・共和党のテッド・クルーズ上院議員の元側近、マイケル・ソボリック氏は、この構想はトランプ政権1期目の対中政策からの転換を示すものだと述べた。「トランプ政権1期目は大国間の競争路線に固執していた…これはそこから大きく逸脱している」と、ソボリック氏はポリティコに語った。

〇米国の同盟国の懸念
・これらの報道は、第2次トランプ政権が世界秩序をどこまで再編するのかをワシントンが議論しているさなかに発表された。C5構想が実現すれば、G7やG20といったフォーラムは多極化・した世界において時代遅れのものとして再定義され、主要な軍事・経済関係のプレーヤーが伝統的な同盟よりも重視されるようになるだろう。
・米国の同盟国は、この動きによって以下のような事態が起こることを懸念している。
 +ロシアと中国を特権階級に昇格させ、
 +ヨーロッパを脇に追いやり、大西洋横断の結束を弱め、
 +ロシアに事実上の勢力圏承認を与えることでNATOの結束を弱める。
・一方、インドはこれらの報道についてコメントしていない。ザ・ウィーク誌やタイムズ・ナウ誌などのインドメディアは、C5がインドにとっての地政学的な影響を強調し、イデオロギー的な前提条件なしに世界大国と肩を並べることになるだろうと指摘した。
・現時点では、すべての詳細は未確認のままであり、ホワイトハウスはそのような計画は存在しないと主張している。
このコア5構想が、アメリカの国家戦略として採用されているとすると、今後、世界は大きく変わっていくのではないかと思います。


2.覇権を失うヨーロッパ


ただ、コア5構想を進めるにしても、そのメンバーは、アメリカ、中国、ロシア、インド、日本の5ヶ国であり、ヨーロッパ諸国は一つも入っていません。この5ヶ国が即、地域覇権国になっている、あるいは地域覇権国になる、とは言いませんけれども、メンバーを見る限りトランプ政権が、ヨーロッパが地域覇権を握るとは考えていない節を感じてしまいます。

その意味ではポリティコ紙が指摘したように「トランプ政権が、ロシアを欧州における覇権国、として認めているのではないかとの不安が広がる」のも理解できます。

と思っていたら、12月12日、インディペンデント紙が、「トランプ大統領は「MAGA同盟国4カ国」をEUから引き離すことでEUを解体する計画だと報道されている」という記事を掲載しました。

件の記事の概要は次の通りです。
・報道によると、トランプ政権は「欧州を再び偉大にする」取り組みの一環として、友好国4カ国を欧州連合から離脱させ、米国の勢力圏に引き入れる計画を立てたという。
・29ページに及ぶ米国の国家安全保障戦略(NSS)は先週公表され、米国のヨーロッパ同盟国を「弱体」と非難し、極右政党への支援を示唆する内容で、ヨーロッパ中に衝撃を与えた。
・ディフェンス・ワンによると、この文書のより長い未発表バージョンは、オーストリア、ハンガリー、イタリア、ポーランドをEUから脱退させ、米国との連携を深める一方で、「伝統的なヨーロッパの生活様式」を支持する運動を支持することを提案している。
・文書を精査したと主張する米国を拠点とするニュース局によると、これら4カ国は米国が「EUからの離脱を目指し、より一層協力すべき」国として挙げられている。
・ホワイトハウスは報告書の完全版の存在に強く反対した。
・ディフェンス・ワンは、米国が国内の優先事項に重点を置く中、ドナルド・トランプ氏がイデオロギー的に一致する政権とワシントンの関係をどのように構築したいと考えているかを詳しく説明したと主張している。
・ディフェンス・ワンによると、声明は「親米姿勢を保ちつつ、主権と伝統的なヨーロッパの生活様式の保存・回復を求める政党、運動、知識人・文化人を支援すべきだ」としている。
・NSSがフランスやドイツなどの国が移民や経済成長の停滞により「衰退」していると主張してからわずか数日しか経っていないため、この疑惑の文書は欧州でさらなる不安を引き起こす可能性がある。
・ホワイトハウスのアナ・ケリー報道官代理は報告書の存在を否定し、Defense Oneに対し「代替版や非公開版、機密版は存在しない」と語った。
・「トランプ大統領は透明性が高く、米国政府に自らが定めた原則と優先事項を実行するよう明確に指示する国家安全保障戦略(NSS)に署名した。」
・公表された文書ではまた、欧州がウクライナでの戦争を止められなかったと非難し、欧州の指導者らが紛争を「延々と続くまま」にさせたと主張した。
・「トランプ政権は、不安定な少数派政権に根ざし、戦争に対して非現実的な期待を抱く欧州当局者らと対立している。その多くは反対勢力を抑圧するために民主主義の基本原則を踏みにじっている」と報告書は述べている。
・この報告書はまた、ヨーロッパが「文明の消滅」に直面していると主張している。これは極右政党の主張と一致する。先週、元米国外交官はインディペンデント紙に対し、この文書は「悲惨なほど愚かだ」と語った。
・欧州が疲弊した防衛産業の補充にさらなる支出を迫られる中、NATO事務総長は木曜日、欧州大陸は「祖父母が耐えたような」戦争に備え、ロシアを抑止するために防衛費を増額すべきだと警告した。
・「あまりにも多くの人が静かに現状に満足しているのではないかと懸念しています。あまりにも多くの人が緊急性を感じていません。そして、あまりにも多くの人が時間は我々の味方だと考えています。しかし、そうではありません。行動を起こすべき時は今なのです」と彼は述べた。
・「同盟国の防衛費と防衛生産は急速に増加しなければなりません。我が国の軍隊は、我々の安全を守るために必要なものを備えていなければなりません。」
オーストリア、ハンガリー、イタリア、ポーランドと比較的ロシアに近いヨーロッパの国々をEUから引き剥がして、親アメリカ国とすることで、ロシア+これら4国で疑似的な地域覇権国状態を作ることができれば、アメリカもヨーロッパから手を引くことも可能になってくるのではないかと思います。

本当にこれら4カ国が引き剥がせるかは別として、やはり大きな枠組みでみれば、アメリカはヨーロッパから撤退することを視野に入れているのではないかとさえ。

コア5構想が進み、この4ヶ国がEUから離脱すれば、少なくとも残されたヨーロッパはこの地域に対する影響力をうんと下げることになるかと思います。


3.THE CORE FORUM 2025冬


昨日のエントリーで紹介したシカゴ大学のジョン・J・ミアシャイマー教授ですけれども、つい先日に来日して、一般社団法人THE CORE FORUMが主催する「THE CORE FORUM 2025冬」において基調講演とディスカッションを行っています。

その時の模様の一部は、ネット動画が上がっているのですけれども、ミアシャイマー教授は、中国の狙いについて次のように述べています。
ジョン・ミアシャイマー教授(通訳): では、中国が今、東アジアで何をしようとしているのか。それは明らかなことで、彼らは東アジアの地域覇権になろうとしています。それは当然のことで、もし私が北京で国家安全保障のアドバイザーを務めていたとしたら、習近平氏に対して「私たちはちょうどアメリカが西半球で地域覇権になっているように、東アジアで地域覇権になるべきだ」とアドバイスするはずです。

ジョン・ミアシャイマー教授(通訳):このような力関係において、日米はどうしても「中国は悪い国」「日米は良い国」という風に考える傾向があります。しかしながら、これは国際政治において間違った考え方です。中国が今やっていることは、最大限の努力をして自分たちの生存競争に打ち勝とうとしている、自分たちの生存権を守ろうとしているのです。それは、かつて日本が1868年から1945年にかけて、自分たちの生存を守るために努力をしたのと同じことです。

ジョン・ミアシャイマー教授(通訳): 明らかなことは、もし日本が今日、中国や他のどの国よりもパワフルで力を持っているとしたら、必ず日本はこの地域の覇権になろうとするでしょう。つまり、地域覇権になるというのは、国として存続していく上で一番ベストな方法だからです。

ジョン・ミアシャイマー教授(通訳): では、アメリカはこれから何をしようとするのか。歴史が証明している通り、アメリカは自分たちと同じレベルの地域覇権が生まれることを阻止します。したがって、アメリカはどんなことをしてでも中国を封じ込めることになるでしょう。中国が東アジアを独占することを許しません。また日本も、中国が中心となって力を増すことは許さないということになります。

ジョン・ミアシャイマー教授(通訳): 私の申し上げていることは非常に明確な戦略的論理です。一点目として、中国は生存をかけて東アジアで覇権になろうとする。しかし、それに対して日米は、中国がそうなることをどんな努力をしてでも阻止するということです。その結果、東アジアにおいて非常に強い安全保障上の競争が起こります。これは、アメリカとその同盟国、そして中国とその同盟国の間での競争です。

ジョン・ミアシャイマー教授(通訳): 最後に結論です。今、皆さんに理解していただきたいのは、日本の皆さんは非常に危険な地域に暮らしているということです。つまり、東アジアが今や地球上で最も危険な地域であるということです。それは、米中の対立競争が東アジアを中心に展開されるからです。冷戦時代、超大国同士の対立の中心はヨーロッパでした。しかし今では、東アジアが最も危険な地域となっています。

ジョン・ミアシャイマー教授(通訳): 日本はアメリカ側につく形になりますが、この対立は非常に激しいものになり、戦争の可能性もあります。ですから、日米、そして中国の政策立案者が非常に賢明な政策を取っていくことが重要です。また、非常に運が味方してくれないと、戦争を避けることは難しいでしょう。

また、質疑応答では、台湾有事について触れています。

ミアシャイマー教授(通訳): 私の基本的な結論として、もし中国が台湾を征服しようとする際に、非常に迅速かつ決定的な勝利を収めることができないと考えたならば、彼らは攻撃を仕掛けてこないでしょう。つまり、勝てないかもしれないと少しでも考えた場合には、台湾を攻撃しない。そうなる と戦争は回避されることになります。

申し上げた通りですが、ここで再度強調したいのは、中国に対して、もし台湾が攻撃された場合には、日本とアメリカが必ず救済に向かうということを、はっきりと明確に理解させておく必要があるということです。これが非常に重要であり、台湾を巡る戦争を回避するための最善の策です。

皆さんもご存知かもしれませんが、バイデン大統領は過去に4回にわたって、「もし台湾が攻撃を受けたら、アメリカは防衛する、台湾を守りに行く」と発言しました。これは決して偶然に4回言ったわけではありません。バイデン大統領が、多少記憶力が衰えている、あるいは曖昧な言葉遣いをすることがあったとしても、アメリカの大統領が4回も「台湾を防衛する」と公言したことは、中国に対して明確なシグナルを送っていたのは明らかです。

(高市)総理大臣の発言に移ります。彼女は非常に微妙な言い回しではあったものの、「中国が台湾を侵略した場合には、それは日本にとっての危機に値する」という意味のことを述べました。つまり、中国が台湾を攻撃した際には、日本はその戦いに参加するということを示唆したわけですが、これは非常に賢明なやり方だったと私は思います。

バイデン大統領のコメント、そして高市総理大臣のコメントに対し、「戦争発生の確率をより高めてしまった危険な発言だ」と批判する向きもあったでしょう。しかし、私はそうは思いません。バイデン氏も高市総理も、非常に賢明なコメントをしたと考えています。これらの発言によって、戦争の可能性はむしろ低くなったと思います。そして、中国に対して、もし戦争があれば、それは必ず敗北に終わるということを、ほぼ確実に明確にしたと言えます。

質問者: 高市さんの発言について、先ほどのレクチャーでは「中国の侵略の意図を止めるためには良かった、プラスであった」とお話しされましたが、この発言のマイナス面、ネガティブな点があるとすれば、どういうところでしょうか。

ミアシャイマー教授(通訳): 間違いなく、高市総理がおっしゃったことというのは、中国人をひどく怒らせました。そして、その怒りによるマイナスの影響というのも存在するでしょう。しかし、そのマイナス面とプラス面を彼女のコメントに関して比較検討し、バランスを取って考えると、やはり戦争の確率を下げたという意味では、良い判断だったのだと思います。
先日来話題となっている、高市総理の「存立危機事態」発言について、ミアシャイマー教授は、中国による台湾有事、戦争確率を下げたという意味で良い判断だったと評価しています。




4.ウクライナのケースと台湾のケースは違う


また、この「THE CORE FORUM 2025冬」では、参政党代表の神谷宗幣氏、THE CORE FORUM代表理事の及川幸久氏とミアシャイマー教授がディカッションをしていて、その意一部もネットに上がっています。

件のディスカッションでのやり取りは次の通りです。
神谷宗幣氏:
アメリカが弱かったロシアをどんどん削っていったということなんですけども、それが2014年のマイダン革命につながって、2022年のロシアの攻撃という風になるわけです。もう3年経っているわけですよ。やっている間に「ロシアはそんなに弱くないぞ」「これはどこかで手打ちしたほうがいいぞ」という風に思って、トランプさんは今止めようとしています。バイデン政権の時に止めようという人たちはアメリカにいなかったんですか。

ジョン・ミアシャイマー教授:
はい。私の意見では、バイデンが戦争を始めたと思っております。2022年2月24日にこの戦争が始まったわけですが、実際に戦争が始まる前、ロシアはかなり外交的にこの問題を解決しようという努力を行いました。ですが、当時アメリカはそのような外交的な解決に一切関心を持っておりませんでした。

戦争が始まった直後にプーチンはウクライナに対して、NATOに加盟しないということを条件に、この戦争を解決しよう、そのための交渉をしようじゃないかと訴えました。覚えているでしょうか。実際にイスタンブール交渉というのが2022年の3月と4月に行われました。戦争が始まったのが2月24日ですから、その直後に和平のための交渉が行われたわけです。

その時にはロシアとウクライナは、かなり合意に近いところまで来ていたわけです。けれども、そこにアメリカとイギリスが入ってきて、ゼレンスキーに対して、そしてウクライナに対して、「もう交渉から立ち去れ」と言ったわけです。これは驚くべきことです。戦争はもう3年にもなっているとおっしゃいましたけれども、戦争直後にそのような交渉が行われ、実際に和平解決するチャンスはあったわけです。でもそれを止めたのがアメリカとイギリスであったということです。

バイデンは外交的な解決に関しては全く関心がありませんでした。本当にゼロです。一方でトランプは外交的な解決に興味を持っていた。実際に戦争を止めようという努力をしている。そういった意味では、トランプは褒められるべきだと考えます。

及川幸久氏:
教授はトランプの内政に対しては結構厳しいんですが、リアリスト(現実主義者)なので、偏った見方ではなくありのままをご覧になっていて、このウクライナ戦争の仲介の努力はすごく評価されているんですよね。しかし、難しいだろうという風には予想されているわけです。

神谷宗幣氏:
この歴史的事実を見ると、ウクライナの戦争というのは、アメリカの中にもイギリスの中にも「やりたかった人たち」がいるということだと思うんです。私が日本人として、日本の国会議員として心配しているのは、ウクライナ戦争をやりたかった人たちが、台湾で戦争をやりたがっていないかということです。これに非常に懸念を持っています。どうお考えですか。

ジョン・ミアシャイマー教授:
それはあまり考えられないかなと思います。神谷さんが間違っているということを私は希望するのですが、根本的な違いが存在します。

当時はロシアに対して西側が厳しい態度を取っていたのは、「ロシアは弱いだろう」と考えていたからです。なのでゼレンスキーに「交渉から立ち去れ」と言ったわけです。2022年の3月、4月のことです。NATOが加われば、ウクライナとNATOでロシアを実際に戦場において打ち負かすことができるだろうと彼らは考えていたわけです。

それにプラスして、経済制裁を行うことでロシアの経済を弱体化させる。これによってロシアを負かすことができると考えました。実際に2022年の終わり頃には、ウクライナは2回、大きな勝利を収め、その頃はウクライナが優位な状態にありました。タカ派がウクライナで勝った理由は、彼らが「素早く簡単に勝利できる」と信じていたからです。

ただ一方で台湾となりますと、そのような「簡単に勝てる」と思っている人はどこにもいません。それが根本的な違いであると思います。

軍事戦略における逆説的な側面ですが、戦争というのはその結果が壊滅的であればあるほど、戦争は起こりにくくなります。それが核抑止です。ご存知のように、核兵器は大量破壊兵器であり、これが使用されれば本当に壊滅的な状態になります。だからこそ、戦争が起こりにくくなります。

台湾の戦争となれば、核兵器が使われなかったとしても、通常兵器だけの戦争であっても、かなり壊滅的な状況が生まれ、戦争は長引くと想定されます。しかも、この戦争においては核保有国であるアメリカと中国が関与しており、核を使用する方向へエスカレーションしないとは誰も言えないわけです。そのような脅威があるからこそ、抑止として働いております。

及川幸久:
神谷さん、残り時間で、改めてこのステージで教授にお聞きしたいことはありますか。

神谷宗幣:
私は今日、ロシアのところをしっかりと聞きたかったので、そこがきちっと聞けて非常に満足しています。日本がウクライナのケースと台湾のケースは違うんだということも聞けたので、ちょっとゆっくり寝れるなと思っています。
ミアシャイマー教授は、神谷氏のウクライナ戦争をやりたかった人たちが、台湾で戦争をやりたがっていないかという質問に対し、ウクライナ戦争が起こったのは「簡単に勝てる」と思っていたからだと述べ、それに対し、台湾戦争については「簡単に勝てる」と思っている人はいない、という根本的な違いがある、と指摘した上で、台湾との戦争は、たとえ核を使わなくても相当な被害が出ることが予想され、であるが故に戦争にはなりにくいと述べています。

ミアシャイマー教授は、このフォーラムの基調講演で、中国は、台湾を征服しようとするときであっても、勝てないかもしれないと少しでも考えた場合には、台湾を攻撃しないと述べています。つまり、台湾有事に対するコストをうんと高めることそれ自体が抑止力になるというのですね。

習近平主席に対し、台湾侵攻には、敗北リスクも戦争コストも大きい、そう思わせることを日米が協力して行っていくことが大事ではないかと思いますね。






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