常態化する中国のグレーゾーン戦術

今日はこの話題です。
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1.アメリカ国民の対台湾防衛意識の変化


昨日のエントリーでは、中国に台湾侵略のリスクとコストの大きさを意識させることが抑止力なることを述べましたけれども、では、果たしてアメリカは、台湾をちゃんと守るのかどうかという問題があります。

これについて、12月19日、元拓殖大学海外事情研究所教授の澁谷司氏が自身の動画で、アメリカの最新の対中・対台湾世論調査について解説しています。

件の動画のポイントは次の通りです。
〇米国における最新の対中・対台湾世論調査(2025年)の結果
 +調査の概要と主要な数値
   /2025年10月末から11月初旬に実施された「レーガン国防調査」に基づく
   /米軍による台湾防衛への直接関与に対する支持率が60%に到達(前年比12ポイント増)
   /中国が台湾に侵攻した場合の軍事介入を77%が「重要」と回答
 +具体的な防衛措置への支持状況
  /対中経済制裁の実施:74%の支持
  /台湾への軍事装備増強の支持:71%
  /未納兵器を含む台湾への兵器移送の促進:70%
  /台湾周辺への飛行禁止区域の設置:62%

〇アメリカ国民が台湾を支持する主要な背景
 +戦略的および経済的パートナーシップ
  /中国への覇権譲渡を阻止するための防衛ライン(日本・台湾)としての重要性
  /TSMCを中心とした半導体サプライチェーンの安全保障
 +価値観と抑止力の観点
  /民主主義的価値観および主権維持への支持
  /「核保有国同士は戦争しない」という通説への反論(通常兵器による紛争リスクの指摘)
  /米国民の強い民意が中国の暴走を止める抑止力として機能

〇今後の展望と日本への示唆
 +米国内の政治状況
  /共和党・民主党の支持層間で台湾防衛に関する意見がほぼ一致
  /議会やホワイトハウスだけでなく、一般市民の意識も対中強硬・台湾支持で固定化
 +日本国内の意識との乖離
  /米国に比べ、日本国内での軍事防衛支持が過半数に達するかは不透明
  /日米台の連携において民意のサポートが大きな鍵となる
澁谷氏は、今回の世論調査で、アメリカ国民の台湾問題に対する関与の姿勢が、昨年から今年にかけて急激に積極化していると指摘。その理由として「台湾が戦略的パートナーである」という回答が最も多かったと述べています。

そして、他にも、台湾の民主主義と主権の防衛、経済サプライチェーンの構築、中国の拡張主義への阻止、道徳的義務などが挙げられていることに降れ、中国の軍事的圧力が高まる中で、アメリカ社会が台湾の重要性と民主主義的価値観をますます認識している証拠だとし、アメリカ議会やホワイトハウスだけでなく、民意までもが台湾支持でまとまったことは非常に大きな意味があると述べています。




2.米中経済安全保障検討委員会の年次報告書


ただ、中国は「三戦」でも分かるように、正面からガチンコでアメリカと戦争するとは思えません。やれることは何でもやってくる国だとみるべきだと思います。

アメリカ連邦議会は2000年10月に、米中間の経済・貿易関係が米国の国家安全保障に与える影響を調査・分析し、議会に提言することを任務とする超党派組織「米中経済安全保障検討委員会(USCC: U.S.-China Economic and Security Review Commission)」を設置しています。

11月18日、この米中経済安全保障検討委員会が、2025年の年次報告書を発表しています。報告書は計12章で構成され、(1)過去1年間の総括、(2)世界秩序再編に向けた(中国による)取り組み、(3)フロンティア市場での競争、(4)中国による経済的ゆがみと強制、そして(5)台湾と香港に関する分析、という5つのパートに整理されていて、議会に対し28の提言をし、うち10項目を最重要と位置付けています。

この中の「第2章:米中の安全保障および外交情勢」で、中国のやり口について分析しています。

件の報告書の概要は次の通りです。
第2章:米中の安全保障および外交情勢(年間の回顧)
1. 国内情勢:不透明な外部環境下での社会安定の追求 中国共産党(CCP)指導部は、2025年も引き続き「激動する」外部環境に直面し、国内の社会的な安定維持を最優先課題とした。習近平国家主席は2025年の新年演説において、外部環境の不確実性と経済的圧力による困難を認めつつも、国民に対してこれらを克服する自信を持つよう呼びかけた。2025年の「両会(全国人民代表大会・政治協商会議)」では、目新しい大規模な経済刺激策や政策転換は見られなかった。その代わりに政府は、国内産業の強化と燃料・食料の十分な備蓄確保を通じて、国家の自給自足能力を倍増させる方針を鮮明にした。

2. 国家安全保障と開発の権利 中国が発表した最新の白書では、国家安全保障のレベルをより高めることが、中国の開発を推進するために必要不可欠であると正当化されている。この中で中国は、米国による関税や制裁を「発展の権利」を侵害するものとして強く非難し、米国の同盟システムを「中国の内政干渉」であると糾弾した。

3. 米中関係と対外戦略:代わりの世界秩序の構築 北京は、自らをその中心に置く「代替的な世界秩序」の構築に向けた努力を継続している。これを象徴したのが2025年の北京での軍事パレードであり、習近平主席の背後にはロシア、北朝鮮、イラン、および約20カ国の権威主義国家の指導者たちが集結した。 中国は、ロシアに対してデュアルユース(軍民両用)物品を供給し、ウクライナに対する戦争継続を支援することで、暴力と不安定化を煽り続けている。また、中東ではイランとその代理勢力であるテロ組織に資金を提供し、米国および世界各国へのサイバー攻撃を激化させている。

4. 軍事動向とグレーゾーン事態 中国軍(PLA)の台湾に対する姿勢は、単なる威嚇から「実戦的な準備」へと移行した。最近の演習は、台湾侵攻に向けた「実際の予行演習」として描写されている。同時に、台湾近海やバルト海での海底通信ケーブルの切断、南シナ海での船舶への嫌がらせといった「グレーゾーン」戦術を常態化させており、戦争の閾値(しきいち)を下回る形での威圧を強めている。

5. サイバー脅威:ボルト・タイフーン 中国のサイバー作戦は、単なる諜報活動から「事前配置」へと進化している。「ボルト・タイフーン(Volt Typhoon)」と呼ばれるキャンペーンでは、米国の水、電力、輸送などの重要インフラに侵入。紛争が発生した際に、米国内でパニックを誘発し、米軍の動員を麻痺させることを明確な意図としている。

6. 経済戦:チャイナ・ショック 2.0 北京は、国内の経済停滞を「輸出」によって脱しようと試みている。消費よりも国家主導の製造業を優先することで、中国は約1兆ドルに達する貿易黒字を生み出した。補助金を受けた人工的に安価な製品の大量流入は、グローバル・サウス諸国において「早すぎる脱工業化」を引き起こし、西側諸国の産業の存続を脅かしている。 また、米国が最先端のAIチップに焦点を当てる一方で、中国は「基礎的(レガシー)」な半導体や重要鉱物の市場独占を急速に進めている。この戦略は、世界の電子機器に必要な基本コンポーネントを掌握し、貿易戦争において中国が「エスカレーションの主導権」を握ることを目的としている
報告書では、中国の「軍事的動向」として、単なる威嚇から「実戦的な準備」へと移行し、台湾近海やバルト海での海底通信ケーブルの切断、南シナ海での船舶への嫌がらせといった「グレーゾーン」戦術を常態化させていると警告しています。


3.海底ケーブル切断装置


中国の「グレーゾーン」戦術の一例として、海底通信ケーブルの切断が挙げられていますけれども、今年3月、中国船舶科学研究センター(CSSRC)が世界で最も強固な海底通信線や電力線を切断できる小型の海底ケーブル切断装置を開発したと、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが配信しました。

このCSSRCのケーブル切断装置は2月24日に中国の学術誌「メカニカル・エンジニア」で論文を公表しています。

それらから明らかになったケーブル切断装置の諸元は次のようです。
〇 技術的背景と設計思想
 + 海底資源開発や救助活動において、不要になったケーブルや障害となる索具を切断する必要があるとして開発の正当性を説明。
 + 既存の切断装置は低速であるか、あるいは深海での高い水圧に耐えられないという欠点を指摘。

〇 主要な設計スペック
 + 作動深度: 最大水深4,000m(約400気圧に耐える設計)。
 +中国の有人無人の最先端の深海潜水艇と統合できるように設計。
 + 切断メカニズム:
  / 直径150mmのダイヤモンドコーティング砥石を採用。
  / 1,600rpm(回転/分)の高速回転により、強固な鋼鉄装甲を摩擦切断。
  / 鋼鉄、ゴム、ポリマーで被覆された装甲ケーブルをターゲット
  /切断装置の破裂を防止し、作業中の海洋堆積物の撹拌を最小限に抑えるなど技術的課題を克服
 + 動力システム: 1kWの電気モーターと8:1の減速ギアを搭載し、高トルクを実現。
 + 保護構造:
  / チタン合金製のハウジング(シェル)で全体を包囲。
  / オイル補償式シール(Oil-compensated seals)を採用し、内部と外部の圧力を均衡させることで、深海での圧壊を防止。

〇 実験結果と性能評価
 + 地上および高圧試験機内でのテスト結果を公開。
 + 直径60mmまでの装甲付きケーブルを、周辺の堆積物を過度に乱すことなく、迅速に切断できることを実証。
 + ロボットアーム(マニピュレーター)への取り付け互換性を持ち、深海潜水艇「奮闘者号(Fendouzhe)」などのプラットフォームで運用可能。
御存知のとおり、海底ケーブルとは、インターネットなどの通信データをやりとりするため海底に設置された光ファイバーの束のことです。世界中の海底に約500本張り巡らされています。国際通信の99%以上がこうした海底ケーブルを使用しているのですけれども、アメリカとアジア各国の中間に位置する日本は、海底ケーブルのハブ(中継地点)となっていて世界的に重要な場所となっています。

海底ケーブルの業界団体である国際ケーブル保護委員会によると、去年の海底ケーブルの修理件数は204件。その原因は、底引き網の使用など漁業活動によるものが4割と最も多く、船舶の錨の使用や、海賊など第三者による切断など、人為的な活動によるものでくくると6割ほどを占めています。

総務省によると、東シナ海・南シナ海地域にケーブルが多く、損壊事案が集中。世界的にみても修理の発生頻度が著しく高いのだそうです。

こうした中、海底ケーブルが集中している台湾近海で、船によってケーブルが切断される事件が相次いでいます。

台湾には14本の国際海底ケーブルがあるのですけれども、今年1月、台湾南部の海域で香港の企業が運行する船舶が、追跡システムを停止したうえで錨をケーブルに引っ掛け、台湾とアジア、アメリカを結ぶ重要な回線を切断する事件が発生しています。

更に、2月には、中国人乗組員を乗せた船が台湾と離島を結ぶケーブルを切断する事件も発生しました。この船は中国の「影の船団」の一部とみなされており、所有者を隠すため頻繁に船名や船籍を変更していたそうです。

追跡システムをオフにしたり、頻繁に船名や船籍を変更するなど、最初からケーブル切断を目的にしていたのではないかと穿ってしまいます。

実際、アメリカの戦略国際問題研究所は、中国は海底ケーブル切断を目的とする新たな装置を公開したことで、ケーブルの破壊などを戦略的手段とみなしていると指摘しています。




4.台湾統一の秘策


けれども、大なり小なり被害がでる戦争より、もっと手軽に占領できる方法があるのなら、誰しもそちらを選ぶ筈です。

12月5日、ジャーナリストの鳴霞氏が自身の動画で、中国が2028年に台湾統一する秘策を持っていると解説しています。

件の動画のポイントは次の通りです。
〇習近平政権による武力を使わない台湾統一計画の全貌
 +2027年の軍事侵攻説とは別の「静かなる侵略」が進行している
 +2028年の台湾総統選挙をターゲットにした高度な世論・選挙工作
  /台湾国内の親中派勢力を利用し内部から崩壊させる手法  
  /武力行使による国際的な非難や介入を回避する狙い

〇100万票の操作による「民主的統一」の演出
 +全有権者約1800万人のうち、当落を左右する100万票を確保する工作
 +国民党支持層や親中派住民への働きかけと事務所設置による組織化  
  /多額の工作資金を投入し選挙結果を中国有利に導く  
  /「台湾住民自らの意思」という形を作ることで国際社会を沈黙させる

〇親中派指導者と工作の実態
 +台湾立法院長などの有力政治家を通じた中国共産党の関与
 +地方政府や企業への利権供与を伴う浸透工作の深刻化  
  /台湾が「第2の香港」となり共産党の支配下に入るリスク  
  /日本人や台湾人の多くがこの具体的な計画を知らない現状への危惧

〇今後の国際情勢と日本への提言
 +米大統領交代などの政情不安に乗じた中国側の動きへの警戒
 +台湾の主権を守るための情報の拡散と注視の必要性  
  /日米による防衛支援が困難になる前に工作を阻止すべきとの主張  
  /民主主義的手続きが悪用されることへの警鐘
中国が台湾の総統選挙に介入して、親中の総統を選ばせれば、労せずして台湾が手に入るというのですね。確かにこの方法は「武力による現状変更」ではありませんから、国際的批判を受けることはないと思われます。台湾を第2の香港にする。一番あり得る手だと思います。

中国の浸透工作については、台湾は日本よりずっと敏感かつガードしているとは思いますけれども、日本は、台湾と連係して中国の浸透工作を排除するよう考える必要があるのではないかと思いますね。






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