
1.尖閣も同時に取られる
昨日のエントリーでは、中国の習近平主席が尖閣占領計画を立てていることを紹介しましたけれども、台湾有事と並行して尖閣も危ないことは前々から指摘されていました。
プレジデントオンライン誌は、2021年12月31日の記事「「尖閣諸島も同時に取られる」台湾有事は"日本有事"であると元外交官が断言するワケ」で警告しています。
件の記事のポイントは次の通りです。
〇台湾有事と日本の安全保障の密接な関係尖閣をはじめとする南西諸島は、台湾本土に近いことに加え、韓国のような軍隊もなく駐留米軍もいないため、抑止力が弱く、台湾有事で、中国軍の台湾進出がそのまま南西諸島を飲み込むリスクになるというのですね。
+台湾有事は高い確率で「日本有事」に直結する
/先島諸島(与那国、尖閣、石垣、宮古など)は沖縄本島より台湾に近い
/与那国島から台湾までは約100キロしか離れていない
+朝鮮有事と台湾有事の決定的な違い
/韓国は自前で強力な軍事力を持ち、米軍も常駐しているため抑止力が働く
/台湾有事では中国軍の進出が直接南西諸島を飲み込むリスクがある
〇自衛隊の現状と課題
+防衛予算と周辺国との比較
/中国の防衛費は日本の4倍以上に達している
/経済規模が日本の3分の1である韓国にも防衛費で抜かれる可能性がある
+運用の問題点
/個々の装備は一流だが、陸海空の統合運用がほとんど進んでいない
/有事のリーダーシップを発揮できるのが総理と防衛大臣のみという脆弱さ
〇尖閣諸島を巡る中国の戦略
+領土問題の「捏造」プロセス
/石油の埋蔵可能性が報告されたことをきっかけに領有権を主張し始めた
/漁船団を送り込むことで既成事実を作り、意図的に紛争化させている
+台湾有事に乗じた同時侵攻の懸念
/台湾を攻める際、中国軍は必然的に周辺海域の支配を狙う
/その過程で尖閣諸島や他の先島諸島に上陸・占拠するリスクが極めて高い
〇今後の日本が取るべき備え
+日米安保体制の再認識
/日米同盟の射程は韓国やフィリピンまで及ぶ広範なものである
+防衛体制の抜本的な強化
/台湾有事が「対岸の火事」ではないという前提で防衛計画を練り直す必要がある
/先島諸島への自衛隊配備や国民保護の体制構築が急務である
2.中国が尖閣を奪う三つのシナリオ
また、これも2021年に初出の記事ですけれども、webVoice誌が「中国が尖閣諸島を奪う“3つのシナリオ”」で、尖閣占領の狙いについて述べています。
件の記事の概要は次の通りです。
〇中国が尖閣諸島を日本から奪取するために想定している3つのシナリオこの記事では、中国が尖閣を奪う方法として「軍事占領」「国際裁判」「外交交渉」の3つを挙げ、そのうちの「国際裁判」と「外交交渉」は実現可能性が低いとして、「軍事占領」の可能性があるとしています。ただし、そのためには、アメリカ軍が軍事介入しないことが絶対条件で、裏を返せば日米連携が死活問題になるということです。
+軍事作戦による奪取の検討
/中国が勝利するための絶対条件は、圧倒的な軍事力を持つ米国との直接戦争を回避することである
/核戦争や全面戦争は米国の介入を招き、共産党政権の崩壊に直結するため、中国にとって合理的な選択ではない
/小規模な「局地戦争」は、米国が介入をためらう可能性があり、敗北しても政権が維持できるため、中国には魅力的な選択肢となる
+国際裁判による決着の可能性
/中国は500年前の古文書を根拠とするが、日本は国際法上の「先占」による実効支配を根拠としている
/南シナ海での仲裁裁判で中国の主張が否定された前例もあり、中国が法的に勝利できる見込みは極めて低い
+外交交渉による奪取の限界
/「固有の領土」は外交的な譲歩(ギブ・アンド・テイク)の対象にはなり得ない
/そのため、実効支配している日本側が交渉で領土を手放すことは考えられず、実現性は皆無である
〇現状の分析と日本が取るべき抑止策
+最も現実的な脅威としての局地戦争
/米国が小さな島のために軍事介入しないと中国が誤認した場合、局地的な軍事行動が引き起こされる危険がある
+日本に求められる覚悟とメッセージ
/中国の野心を抑止するためには、日本人が正義のために犠牲を恐れず戦う勇気ある国民であることを明確に示す必要がある
3.いま尖閣で何が起きているのか?
では、2025年の今はどうなっているのか。これについて、5月29日に、BSフジ「PRIME NEWS」が元自衛隊最高幹部の河野克俊氏、岩田清文氏、杉山良行氏の三氏をゲストに招き、中国空母の尖閣沖展開と最新の領空侵犯について分析した内容を報じています。
番組内容の概要は次の通りです。
〇 中国空母艦隊による尖閣沖での展開と訓練の深刻度ここでも、同盟・パートナーシップの深化が語られ、「中国が演習を行えば、日本も即座に対抗演習を行うなどのリアクションが必要」と語られています。
+ 2025年5月に中国海軍の空母「遼寧」を含む艦隊5隻が、尖閣諸島北方の公海上で戦闘機の発着訓練を実施
+ 尖閣諸島に近い海域での訓練は初と見られ、軍事的なエスカレーションが一段階上がった状態にある
+ 戦略的な位置付けと意図
/ 中国は、第一列島線の内側における制海権・制空権の確保を米中対決の前提としている
/ 2027年までの台湾侵攻能力構築に向けた具体的なリハーサルの一環である可能性がある
/ 尖閣から200kmの地点に移動式の航空基地(空母)が配置されることは、日本の対処を著しく困難にする
〇 中国海警局による領空侵犯と「認知戦」の激化
+ 5月3日、中国海警局の船から飛び立ったヘリコプターが尖閣周辺で日本の領空を侵犯
+ 中国側は「警察権の行使」を主張し、日本側の民間機の飛行に対して法執行を行ったとする認知戦を展開している
+ 日本政府の対応に対する専門家の懸念
/ 中国の行動がエスカレートしているにもかかわらず、日本側の対応が抑制的すぎて主権維持の姿勢が弱く見える
/ 日本の領空であるはずの場所を「危険だから民間機は行くな」と指導することは、自ら主権を否定しかねない危うさがある
〇 航空自衛隊の負担増大と今後の防衛体制の課題
+ 中国機に対する緊急発進(スクランブル)が急増しており、特に那覇基地を擁する南西方面隊の負担が限界に近い
+ 現場の隊員への影響
/ 日常的な訓練時間が奪われ、部隊全体の錬度維持や次世代の要員育成に支障が出ている
/ 速度やコストの異なるヘリや無人機に対しても高コストな戦闘機で対応し続ける「消耗戦」を強いられている
+ 今後の具体的な対策案
/ 将来的には無人機による対処も検討すべきだが、現状はパイロットによる高度な判断と意思表示が不可欠である
/ 尖閣周辺に限定して、海上保安庁に航空警察権(領空侵犯への対応任務)を付与し、装備と人員を拡充する案
/ 日本が尖閣の実効支配を継続する強い意思を、日米共同演習や高官の駐在などを通じて内外に示す必要がある
〇 中国が描く尖閣諸島占領のシナリオ
+ 漁民を装った海上民兵による「実効支配」の試み
/ 海上民兵を尖閣に上陸・占拠させ、既成事実化を狙う作戦が懸念されている
/ 民間人を装うことで、自衛隊の出動や武力行使を法的に困難にさせる狙いがある
+ 台湾有事との連動
/2027年までの台湾侵攻準備の一環として、尖閣を自軍のコントロール下に置こうとしている
/ 台湾有事の際、中国軍は主力を台湾に集中させるため、尖閣は「海警局(第2海軍)」に任せる役割分担が想定される
〇 急速に強化される中国海警局(海警)の能力
+ 海軍並みの重武装化
/ 従来の警察車両的な装備から、海軍の護衛艦と同等の76mm砲を搭載した大型船が投入されている
/ 海軍基地と隣接した広方支援拠点を整備し、補給や整備の回転率(オペレーショナル・テンポ)を大幅に向上させている
+ 法的基盤と指揮系統の整備
/ 中国共産党・軍の指揮下に完全に入り、外国船の拿捕・交流などの法的根拠を独自に整備した
/ 南シナ海などで培った臨検・拿捕のノウハウを、尖閣周辺でも訓練・実施し始めている
〇 日本が対抗するための防衛装備と戦略
+ 最新鋭装備の開発と期待
/ ドローン対策としての「高出力レーザー」や、新たなゲームチェンジャーとなる「レールガン」の開発
/ 射程1000kmを超えるスタンドオフ防衛能力(12式地体感誘導弾能力向上型など)の配備
+ 現場の「数」の確保と連携強化
/ 少人数で運用可能な新型護衛艦(FFM)を量産し、中国の数的な圧力に対抗する
/ 海上保安庁と海上自衛隊が「マリタイム・フォース」として一体運用できるよう、連携容量を具体化する
〇 今後の日中関係と国際連携への提言
+ 国家の意思の明確化
/ 中国を「刺激しない」という姿勢を改め、日本の主権を譲らない「国威」を明確に示すべきである
/ 中国が演習を行えば、日本も即座に対抗演習を行うなどのリアクションが必要
+ 同盟・パートナーシップの深化
/ 米国をアジアから引き離さないよう、日本が対等なパートナーとして責任を果たす覚悟を持つ
/ オーストラリア、フィリピンなど価値観を共有する国々と「4カ国連携」を強固にし、包囲網を構築する
4.台湾海峡地獄絵図
実際、12月12日、海上自衛隊は海自の護衛艦「あきづき」と、米海軍の原子力空母「ジョージ・ワシントン」、イージス駆逐艦「デューイ」が関東南方の太平洋上で8~11日に共同訓練を行ったと発表しています。発表によると、訓練は、海自の戦術技量や米海軍との相互運用性の向上が目的で、3隻が陣形を組んで航行し、戦術に関する情報を共有するなどしたようです。
遼寧は6日に沖縄本島・宮古島間を南進して太平洋に出た後、北大東島の北側の海域に進出。12月5日~8日の艦載機の発着艦は約140回に上り、8日には、発艦した戦闘機が緊急発進した空自の戦闘機に例のレーダー照射を行っています。
空母「ジョージ・ワシントン」は北上して、11日には横須賀に入港したことから、「遼寧」の進路を制限したとも見られています。
そして、空自機へのレーダー照射があった2日後の10日、アメリカ軍は、イージス巡洋艦「ロバート・スモールズ」と強襲揚陸艦「トリポリ」がベトナムのダナンに入港させています。
このダナン港は、中国が保有する空母3隻中2隻と大型水上戦闘艦の母港で、アメリカやヨーロッパを狙える戦略ミサイル原子力潜水艦6隻の基地でもある中国海軍重要拠点の海南島から約500㎞の距離にあり、「ロバート・スモールズ」と「トリポリ」の攻撃射程範囲内にあります。
つまり、アメリカ軍は、「遼寧」艦隊が日本を緊張させた直後に中国海軍の喉元に刃を突き付けた訳です。
これらがあった4日後、「遼寧」艦隊は太平洋から東シナ海に戻っています。

無論、アメリカ軍は、とっくに台湾有事については警戒しています。
今年2月、アメリカのサミュエル・パパロ・インド太平洋軍司令官は、「中国は危険な道を歩んでいる……台湾周辺で行われている攻撃的な行動は彼らが言うところの演習ではなくリハーサルだ。これは台湾を中国本土に強制的に統一するためのリハーサルだ。北京の軍備増強、グレーゾーン作戦、台湾に対する軍事的威圧は日に日に懸念を強めている」と述べ、中国、ロシア、北朝鮮を「台頭する独裁国家の枢軸」と呼んで、爆撃機による共同哨戒から衛星攻撃能力や潜水艦といった先端技術の共有に至るまで広い範囲で連携していると指摘しています。
もちろん、アメリカ軍も手をこまぬいているわけではありません。
現在、アメリカと台湾は、台湾海峡を「地獄絵図(ヘルスケープ)」にする準備を進めています。
これは2023年にジョン・アキリーノ提督が提唱し、現在の米インド太平洋軍司令官サミュエル・パパロ提督も採用した言葉で、台湾海峡を数千の空中・水中ドローンや自爆型ドローンを使用して、中国人民解放軍の侵攻を阻止・無力化する戦略です。
これについて、台湾公共放送局「TaiwanPlusが制作・配信している『Taiwan Talks』」が5月30日に「地獄絵図:米・台湾が中国に対抗しドローン戦争を推進」という番組を配信しています。
件の配信の概要は次の通りです。
〇台湾海峡における「地獄絵図(ヘルスケープ)」戦略の概要中国の人海戦術にはドローンの海で対抗する、結局「戦いは数だよ」の格言は、今でも通用するのかもしれません。尖閣防衛もこのドローンの海で地獄絵図にすることを考えてもよいかもしれませんね。
+米台が協力して推進する非対称戦術
/数千の空中・水中ドローンを用いて中国軍の侵攻を1ヶ月間阻止する
/従来の大型兵器よりも低コストかつ少人数の人員で運用可能
+ウクライナ戦争からの教訓
/小規模な軍隊が大国の海軍(黒海艦隊)に大打撃を与えた成功例の適用
〇台湾のドローン産業と「ゼロ・レッド(中国製ゼロ)」方針
+サプライチェーンにおける中国依存の脱却
/中国製ソフトウェアによる遠隔機能停止(レンガ化)リスクの回避
/民主主義諸国による信頼性の高い供給網の構築
+台湾の製造能力と目標
/2028年までに月間1万5,000機の国内生産を目指す
/IT・半導体産業の強みを活かした低コスト・大規模生産の実現
〇技術的課題と進化する戦術
+強力な電波妨害(ジャミング)への対抗策
/物理的な光ファイバーを用いた有線通信ドローンの導入
/AI搭載による自律的な目標識別とジャミング下での飛行能力
+異なる役割を持つドローンの組み合わせ
/低コストな「使い捨て」ドローンによるスウォーム(群れ)攻撃
/高価なセンサーを備えた高性能ドローンによる指揮・監視
/垂直離着陸機(VTOL)によるロジスティクスと物資補給
〇国際的なパートナーシップの重要性
+民主主義陣営の強みの連結
/米国のイノベーションと台湾の量産・半導体技術の融合
/ウクライナの実戦データに基づいた3〜6ヶ月単位の迅速な製品改善
+グローバル市場への展開
/バルト三国など、同様の脅威(ロシアのジャミング等)に直面する地域との連携
/「コンピュータ王国」としての台湾が担う世界的な供給ハブとしての役割
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