
1.利上げは景気が悪くなる愚策
今回の日銀利上げについて、市場は既に織り込んでいたことは昨日のエントリーで取り上げましたけれども、今利上げするのは、景気の足を引っ張るのではないかという指摘もあります。
12月19日、嘉悦大の高橋洋一教授は、自身のネット番組で、今回の利上げについて「景気が悪くなる愚策」だと厳しく批判しています。
件の動画の概要は次の通りです。
〇日銀による追加利上げの決定と物価の現状高橋氏は、自身の試算で「年収の壁」撤廃による減税効果は1〜3年目でGDPを0.1%ずつ増やす一方、今回の0.25%の利上げによって、GDPは1年目で0.1%減。さらに2年目は0.25%減、3年目は0.3%減くらいとなり、利上げのマイナス効果の方が大きくなると指摘。
+最新の消費者物価統計では上昇率が鈍化している
/総合指数は2.9%に低下し食料品価格も下落傾向
/エネルギー価格も今後の下落が見込まれている
+物価が落ち着き始めている局面での利上げは不合理である
〇経済対策への悪影響
+「年収の壁」撤廃による減税効果が相殺される
/減税によるGDP押し上げ効果を利上げのマイナスが打ち消す
/3年目には利上げによるGDP損失が0.3%に達する見込み
+苦労して実現した経済政策が日銀の判断で無効化される懸念
〇金融業界への利益供与
+日銀当座預金への付利引き上げによる問題
/金融機関への利息支払いが年間1.2兆円規模で増加する
/金融業界の要望を優先した「お小遣い」政策の側面がある
+国民生活よりも金融機関の利益が優先されている現状
〇今後の展望と対策
+高市政権と日銀の政策が矛盾している(アクセルとブレーキ)
+景気悪化を防ぐための財政出動が不可避となる
/来年6月以降の景気減速を見越した補正予算の必要性
/次回の総裁人事まで正しい人選を行うことが重要である
苦労して実現した経済政策が日銀の判断で無効化されると懸念を示しています。
2.利上げの黒幕
また、経済評論家の三橋貴明氏も今の時期の利上げは駄目だと自身のネットチャンネルで発信しています。
件の配信の概要は次の通りです。
〇 日銀による0.75%への利上げ決定と反対理由ここで気になるのは、今回の利上げの黒幕に財務省がいるのではないかと指摘している点です。
+ 2025年12月19日に政策金利(無担保コール翌日物)が引き上げられた
+ 利上げは短期プライムレートの上昇を招き企業の資金調達を困難にする
/ 短期プライムレートは2%を超え、優良企業以外はさらなる高金利を強いられる
〇 本来の利上げと日本経済の現状
+ 利上げは景気加熱(デマンドプル型インフレ)を鎮静化するための手段
+ 現在の日本企業は「資金過剰(借金返済超過)」であり投資過熱の状態にない
/ バブル期とは異なり、民間にお金を借りさせない政策は不適切である 〇 物価高の正体と解決策の阻害
+ 現在の物価高は円安や輸入物価より、供給能力の不足(インフレギャップ)が主因
+ 高市内閣の補正予算は設備投資による供給能力向上を企図している
/ 企業の投資資金は銀行借入が主であり、利上げは供給力強化を妨害する
〇 日銀と財務省の思惑に対する批判
+ GDP成長率がマイナスのタイミングで利上げを強行する不自然さ
+ 日銀は単に将来の利下げバッファーが欲しいという組織論理で動いている
/ 財務省は金利上昇を「PB黒字化目標」維持の口実に利用しようとしている
動画から該当箇所を抜き出すと次の通りです。
でもいずれにしてもその(国債の)金利が上がっていくっていうような、その空気が醸成されるんですよね、日銀の利上げによって。これはもう完全イメージの問題です。利上げすることで、国債金利を上げ、PB黒字化目標をキープさせようというのですね。
すると、「これからは国債金利が上がっていくので、プライマリーバランス黒字化目標を維持しなくちゃいけない」という、彼らの欲望と言っていいですよ、あるいはその邪(よこしま)な欲望ですね。はい。というプライマリーバランス黒字化目標の維持を推進できるんですよ。国債金利が……ま、もちろん数字の問題だから、だから上がったからこれがなんだって話はやればいいんだけど、そういう議論しないじゃん日本って。
その「上がってくんだ」っていうこう、イメージ印象操作をするわけですね。すると「名目GDPが増えても国債金利が上がっていけば政府債務対GDP比率上がってくじゃないか。だからPB黒字目標が必要だ」っていうような路線に持ってきたいんだろうな。これは見え見えですよ。財務省の方は。日銀の方はよくわかんないね。はい。「何? バッファーが欲しいから利上げすんの?」という話なんです。
ま、でもちょ、ま、相当財務省との、ま、連携はあったと思います、私は。はい。ということでですね、今の日本企業はこの供給能力を引き上げるためにお金を借りて投資することが求められてると。それは高市内閣の補正予算でもちゃんとそうなっているにもかかわらず、利上げをされて金を借りられない状況になっていくわけですよ。だから反対だと言っていたわけです。ご納得いただけましたか。
3.財務省・日銀・メディアによる抵抗の構造
また、12月11日配信のネット動画「デイリーWiLL」では、クレディ・アグリコル証券チーフエコノミストの会田卓司氏をゲストに迎え、高市政権の経済政策や「日本成長戦略会議」や財務省・日銀との関係について解説しています。
件の番組の概要は次の通りです。
〇 財務省・日銀・メディアによる抵抗の構造こちらの番組では、日銀の利上げは、予算膨張を阻止するための工作だという説を唱えています。
+ 予算膨張を阻止するための「利上げ」工作説
/ 日銀が政権の意向に反して利上げを急ぐのは、予算編成を妨げる財務省の意向が背景にある
/ 「金利が上がるから予算は増やせない」という論理構築に使われている可能性
+ オールドメディアによるレッテル貼りの実態
/ 積極財政を「放漫財政」として批判し、アベノミクスと同じだと誤解させている
/ 良い金利上昇(経済成長への期待)を悪い金利上昇(財政不安)とすり替えて報道している
〇 高市型経済政策(サナエノミクス)の真実
+ アベノミクスとの決定的な違い
/ 需要喚起(アベノミクス)ではなく、将来の供給能力拡大(高市政権)に重点を置く
/ 効率重視の新自由主義から、官民連携による付加価値創出型の成長へ転換する
+ 財務省との最終決戦「PB目標の撤廃」
/ プライマリーバランス黒字化目標は投資競争の時代において日本を縛る足かせである
/ 6月の骨太の方針でこの目標を完全に消すことが、積極財政実現の鍵となる
〇 防衛財源と財務省ルールの矛盾
+ 民主党政権が生んだ「財源確保ルール」の弊害
/ 全ての恒久的支出に恒久的財源を求める日本独自のルールが防衛増税論を生んでいる
/ 欧米のように社会保障以外は柔軟に対応する「裁量的支出」として扱うべき
/ 経済成長による自然増収を充てることで、増税なしでの防衛力強化は十分に可能である
放送での件の箇所のやり取りは次の通りです。
会田: 高市政権は企業の投資を後押ししたいわけですから、金利は低い方が望ましい。しかし、日銀や財務省は、予算を増やしたくないという思惑から利上げを急いでいる節があります。利上げをすれば「金利負担が増えるから予算は増やせない」という論理が使えるからです。このように、今の時期に利上げに踏み込んだのは、「金利負担が増えるから予算は増やせない」という理屈で来年度予算を増やさせないという日銀と財務省の思惑があるというのですね。
山根: メディアも「アベノミクスの再来」といったレッテル貼りをしていますね。
会田: 高市型(サナエノミクス)はアベノミクスとは全く異なります。アベノミクスはデフレ脱却のための「需要の押し上げ」でしたが、高市政権は「将来の供給力を増やすための投資」です。新自由主義的な効率重視ではなく、官民連携で社会課題を解決し、付加価値を生む成長を目指しています。
山根: 今後の財務省との戦いのポイントはどこでしょうか。
会田: 最大の焦点は、来年6月の骨太の方針で「プライマリーバランス(PB)の黒字化目標」を完全に撤廃できるかです。グローバルな投資競争の中で、日本だけが「税収の範囲内で投資せよ」という制約を自らに課していては勝てません。
4.政府が利上げを黙認した理由
けれども、このような財務省や日銀の企みなど、高市総理や片山財務相なら分かっていそうなものです。であるならば、なぜ今回の利上げを認めているのか。
これについて、12月25日、ネット番組「真相深入り! 虎ノ門ニュース」が「高市政権が利上げを許した本当の理由」と題して、経済財政諮問会議・民間議員の永濱利廣氏をゲストにその内幕について解説しています。
件の動画の概要は次の通りです。
この動画の中で、日銀の利上げ容認について触れられているのですけれども、該当部分のやりとりは次の通りです。
須田慎一郎:そしてね、ちょっと話、パッと変わるんですけど、僕驚いたのは、あれ10月ぐらいだったかな。11月か。11月にかけての会合で、たまたまある会合で永濱さんにお会いしたんですよね。そしたら、え、12月に利上げしてくんじゃないか、ということを予言されて。それがズバリ的中したということなんですけども。このそのあの時点でやっぱり、日銀が利上げを上げてくるなっていうのは、なんか予感としてあったわけじゃないですか?近く解散総選挙があるとの観測もある中、円安を抑えるための為替介入を行うアリバイ作り的な意味で利上げしてみせる必要があったというのですね。だとすれば相当政治的な理由で利上げを容認したというのですね。中々難しいですね。
永濱利廣:えっと、あの、ま、多分利上げを日銀がしようと思っても、多分官邸サイドが、あの、止めたら多分上げなかった可能性もあると思うんですけど。ま、裏を返せば、ま、あの官邸サイドが容認した、っていうことだと思うんですね。え、となった場合、じゃあ官邸サイドってその当時の状況をどう考えるかと。うん。いうとですね、当然その、いわゆる、国内のその危機管理投資とか成長投資だけを考えれば、うん、あの金利は低い方がいいわけですよね。でも、それって結構成果が出るまで時間がかかるじゃないですか。
須田慎一郎:はい、はい。
永濱利廣:で、おそらくその高市総理の政策を成功させるためには、ある程度の長期安定政権にならないと難しいと。え、ということは、あの、ま、今はね、あの衆議院は一応過半数は超えたんですかね。うん。ただ、まだ参議院がありますね。で、となるとやはり、ある程度、ま、目先、その高市政権の、いわゆる、その求心力を高めるためにも。ええ。そんなに遠くない将来に、私は、私はというか、多分多くの人も考えると思うんですけど、解散総選挙。
須田慎一郎:うん、はい、はい。
永濱利廣:え、を、多分やるんじゃないかなということを考えた場合に、え、やはりそこで、え、最善の選択をするのであれば、うん。あ、ま、ここは少し目をつぶって、ま、利上げを容認することによってですね。やっぱり足元の、だから、多分利上げしなかったら、もう少し円安が進んじゃった可能性があるんで。利上げをすることによって、で一方で、え、経済対策その、なんだ投資減税とかの政策もセットであるので、そこはマイナスの部分はある程度カバーできるのかなと。さらにあともう1つ、私、この影響もあったのかなと思うんですけど。うん。え、ま、そもそも為替の管理って、要は日銀・財務省なわけじゃないですか。
須田慎一郎:うん、うん。
永濱利廣:で、え、じゃあ財務省ってどうやって為替に影響を及ぼすかっていうと、うん、為替介入ですよね。
須田慎一郎:はい、はい。
永濱利廣:でも、ま、伝え聞いてるところによるとですね、やっぱりアメリカはあの為替介入には、あまりいい顔をしないらしくてですね。
須田慎一郎:そう、うん。
永濱利廣:で、そういう中でもやっぱり、ま、為替介入せざるを得ないっていう時はですね、え、とりあえず一旦日本が、ま、利上げをして、ま、円安を抑えるために努力をしましたよっていう、こう事実があるのとないのとでは、おそらく為替介入、そこあるんじゃないかと。で、多分ね、これ、私や、多分そうだなと思ったのが、ええ。えっと、あの日銀の利上げをやった後に、また円安がちょっと進んだじゃないですか。で、その後に片山財務大臣が、それまでまったく発言されなかった言葉を発言されたんですね。何かと言うと、あの「政策についてもフリーハンド」って言ったんです。
須田慎一郎:あぁ、なるほど。言いましたね。
永濱利廣:日銀の利上げの前、言ってないんです。ええ、ええ。っていうことは、おそらく「あの、とりあえず一旦日銀が利上げすれば、一応ね、努力を見せれば、態度を見せれば、ま、為替介入やりやすくなる」っていうことで。「もう利上げしたからもうフリーハンドだよ」っていう。そういう意図はあったんじゃないかなっていう風に、勝手に思ってます。はい。
須田慎一郎:うん。でもあのタイミングでは、やっぱり利上げは、だったら、こう政権とかとりあえずその長期的な政権を目指すんであれば、やめなかったという。ま、総合的な判断。
永濱利廣:うん。総合的に、いろんな、こう、天秤をかけたら、まあ、しょうがなかったんですね。
高市政権の支持率が高いといっても、内実はギリギリの政権運営であることは否定できません。もしこれで内閣支持率が下がっていたら、やりたいことも出来なくなってしまいます。今後の成り行きを見守っていきたいと思います。
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