中国軍事演習と頼総統演説

今日はこの話題です。
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1.中国軍事演習


昨年12月31日、中国軍は台湾周辺での軍事演習が終了したと発表しました。

中国軍は先月29日から3日間、台湾島を取り囲む形で軍事演習を行っていました。

演習は、陸・海・空・ロケット軍の各軍種が連携した統合演習で、軍用機は戦闘機、爆撃機、無人機など延べ89機以上が確認され、その多くが台湾の「応変区」に侵入しました。艦艇は、中国海軍の駆逐艦やフリゲート艦など14隻に加え、中国海警局の船艇14隻が軍と連携した「法執行パトロール」の形で参加。更に、ロケット軍として、地対艦・地対地ミサイル部隊も参加していました。

主な演習内容は、従来の「包囲」に加え、より具体的な「封鎖」と「攻撃」のシミュレーションが強化されたとみられ、12月30日には、台湾近海に向けて合計27発のロケット弾やミサイルを発射する訓練を実施。また、台湾の北部と南部の海域に地上から多連装ロケット砲を発射する長距離火力実弾射撃を実施したほか、東部の海域で駆逐艦や無人機などを展開し重要な港の封鎖を想定した訓練を行ったとしています。

今回の演習の特徴として、わずか1日前に事前通告したこと、海警局が「領海内パトロール」の名目で参加したことから、台湾側の即応能力を試すと同時に、実効支配を強める意図が感じられます。更に、台湾国防部によると、設定された射撃区域の一部が台湾の領海内に食い込んでいて、これまで以上に挑発的だったとされ、中国と距離をとる頼清徳政権に圧力をかけるほか、日本やアメリカを牽制する狙いがあると見られています。

中国外務省の林剣報道官は今回の演習について、「台湾独立勢力の「武力による独立」に対する厳しい懲戒であり、国家の主権と領土保全を守るための必要な行動である」と正当化しています。

今回の演習について、識者は次のようにコメントしています。
〇エコノミスト/経済評論家・門倉貴史氏
・航路に影響が出る軍事演習をわずか1日前に通知するようなことをすれば、台湾と各国を結ぶ航空便の突発的な欠航・遅延が相次ぐなど、航空便や物流のスケジュールに不確実性が高まり、周辺国の経済活動にも多大な影響が及んでくる。
・このようなリスクを回避するために、国際民間航空機関(ICAO)は、軍事演習の通知は遅くとも7日前までにするというルールを定めているのであり、中国は明確に国際的なルールに違反している。
・軍事演習にとどまらず、中国は海洋権益など様々な分野で国際的な取り決めやルールを逸脱して「ダブルスタンダード」で行動している。
・国際法違反を繰り返す中国は、国際社会からの信用を失い、貿易・投資・人的交流などあらゆる経済活動において国際的に孤立化していく可能性が高い。

〇米外交・安全保障専門誌「ディプロマット」東京特派員・高橋浩祐氏
・中国外務省の林剣報道官は29日、今回の軍事演習のきっかけとして、総額111億ドル(約1兆7000億円)に上る過去最大規模の米国から台湾への武器売却に言及した。
・この米台の取引には、高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」や携行型対戦車ミサイル「ジャベリン」などを含むさまざまなミサイルシステムと装備が含まれている。
・最も懸念されるのが、トランプ大統領の対応だ。トランプ氏は、今回の演習について「何も心配していない。何もない」「彼らは20年間もあの海域で海軍演習を行っている」などと述べた。4月の訪中での大きなディール(取引)の成立に向け、中国に対して、融和的な姿勢を取り続けている。

〇東京国際大学国際戦略研究所准教授・山口亮氏
・近年、中国の執拗で挑発的な軍事行動は常態化し続けており、我が国周辺での「グレーゾーン事態」が拡大・多様化しているだけでなく、戦闘能力と運用力の向上を反映している。
・中国のなりふり構わない振る舞いで、緊張が高止まりしているが、このままでは予測できない形で事態がエスカレートし、偶発的な衝突が発生するリスクが高まってしまう恐れがある。
・中国はこの先も、軍事力を強化し、より高圧的になると見られるため、日米韓台比豪やその他の国々が外交と防衛の面での協力・連携強化が求められる。



2.回復力の島、希望の光


当然、台湾も黙っていません。

1月1日、台湾の頼清徳総統は、「回復力の島、希望の光」と題する新年の演説を行いました。

その中で頼総統は次のように述べました。
【前略】

中国の増大する拡張主義的野心に直面し、国際社会は台湾の人々が自衛の決意を持っているかどうかを注視しています。総統としての私の立場は、常に明確です。国家主権を断固として守り、国防と社会全体の強靭性を強化し、効果的な抑止力と民主的な防衛メカニズムを包括的に構築することです。

昨年、我々は17の国家安全保障戦略を打ち出し、国家安全保障に関する10法の改正を加速させ、8年間で1兆2500億台湾ドルの特別国防予算を投入し、戦闘能力を全面的に強化し、国防産業を強化し、国家安全保障と社会の安定を強化しました。今年は、これらを一つ一つ実行に移していきます。

新年初日に改めて訴えたいことがあります。中国の強大な軍事的野心に直面している台湾には、もはや待つ時間はなく、時間を無駄にする余裕もありません。多くの問題で意見の相違があるかもしれませんが、強固な国防なくして国家は存在せず、互いに議論する場も存在しません。これは党派を問わず、すべての国民の共通認識であるべきです。与野党が協力し、この重要な国防予算の円滑な成立を願っています。

【以下略】
そして頼総統は、新年の4つの総目標を掲げその4番目に、中国との対話条件について明らかにしています。

件の発言箇所は次の通りです。
第四に、民主団結の台湾を促します。過去一年、法案が政治的ボイコットで延滞し、違憲の疑いがある法案が強行されました。

民主の本質は、意見が違っても憲法を遵守し、憲政秩序を公約数にすることです。憲法は権力分立と人民の権利の保障です。体制が守られず、権力が無限に拡大すれば、人民が苦しみ、国が壊れるのです。

憲法法廷に感謝します。2025年の膠着が2026年に続かないことを期待します。総統として積極的に行動し、与野党協力を促します。対立解消に役立つなら、憲法の方式で立法院へ国情報告に行く用意があります。

私もここで重ねて表明します。中国が中華民国が存在する事実を正視し、台湾の人々の民主的で自由な生活様式と意志を尊重しさえすれば、対等と尊厳の原則の下で、我々は喜んで中国と交流・協力を行い、両岸の平和的共栄と発展を促進する用意があります。与野党が共に努力し、団結して内外の挑戦に立ち向かい、新局を開きましょう。

2026年は総統直接選挙30周年で、台湾に重要です。私たちは良い基礎を築きました。経済の成績、国際企業の投資、世界中が台湾を評価しています。国際社会の支持は途切れません。米、日、英、欧州連合などが台湾海峡の平和を支持しています。米国の軍事売却や戦略報告は、台湾が「不可欠」で「信認できる良善な力量」だと示しています。

待つ時間はありません。国家は前進すべきで、後戻りしてはいけません。民主は争論する権利をくれますが、国がなければ自由もありません。私は民選総統として、国を保護し、民主自由な生活を守ります。政治的膠着で立ち止まりません。風を受けても昂首闊歩し、国を率いて前進します。

【以下略】
このように、頼総統は、「中国と対等かつ尊厳ある立場で交流と協力を行い、台湾海峡を挟んだ平和で共有された環境の促進に努める用意がある」とし、その前提条件として、中華民国を認めよと宣言しているのですね。

これは非常に重要な宣言だと思いますけれども、ひとつ引っかかる事があります。今回の頼総統の新年演説は、台湾の中華民国総統府の公式サイトに掲載されているのですけれども、前述の新年の目標の4番目の箇所を引用すると次のようになっています。
第四に、民主的で統一された台湾を育成しなければなりません。過去1年間、国と国民に利益をもたらす多くの法律が政治的妨害により大幅に遅れ、さらには憲法違反の恐れのある法律が強制的に可決されました。

同胞の皆様、民主主義の真髄は、たとえ意見の相違があっても、皆が憲法を遵守し、憲法秩序を最大公約数として受け入れる姿勢にあります。憲法は三権分立と牽制・均衡を重視し、国民の権利を保障するものです。憲法制度が守られず、一つの勢力が際限なく拡大すれば、国民は苦しみ、国は滅びるのです。

憲法裁判所が憲法と国民の期待に沿った決定を下し、その業務再開と国民の権利の保護を可能にした専門性と倫理的な勇気に対して、私は憲法裁判所に感謝したいと思います。今日、夜明けとともに、多くの人が同じ思いを抱いていると思います。それは、この新たな始まりにおいて、2025年の膠着状態が2026年まで続かないように、そして、国家の生存と発展に不可欠な建設プロジェクトがボイコットによって阻止されることがないように、という願いです。総統として、私は与野党間の協力を促進するために積極的に行動します。また、対立の解決と合意形成に役立つ限り、憲法補則第4条第3項及び2014年の憲法裁判所判決(憲法裁判所第9号判決)に基づき、立法院において国情演説を行う用意があることを改めて表明します。新年を迎え、与野党が共に国を一つにし、内外の課題に共に立ち向かい、新たな未来を切り拓くことを心から願っております。

台湾の皆様、2026年は台湾総統直接選挙30周年にあたり、台湾にとって重要な年となります。私たちは確固たる基盤を築き上げました。世界から称賛される目覚ましい経済実績に加え、国際企業による投資も増加し続けており、世界中が台湾に楽観的な見方を寄せています。

一方、台湾への国際社会の支持は途絶えることはありません。米国、日本、英国、欧州連合(EU)をはじめとする多くの国々が、台湾と台湾海峡の平和と安定への支持を表明しています。米国による台湾への史上最大の武器売却の発表や、米国国家戦略報告書における台湾の重要性への言及は、台湾が国際社会において「不可欠」であるだけでなく、信頼でき、責任感があり、慈悲深い力であることを物語っています。

同胞の皆さん、私たちには待つ時間も、無駄にする時間もありません。我が国は大きく前進しなければならず、決して後戻りしてはなりません。民主主義は私たちに議論し、互いに意見を異にする権利を与えます。しかし、国家がなければ、そのような自由も権利も存在しません。私は民主的に選出された大統領であり、全国民の希望を託されています。祖国を守り、国民が苦労して築き上げた民主的で自由な生活を守るために、全力を尽くします。政治の行き詰まりにひるむことなく、むしろ希望を抱き、積極的に行動し、たとえ困難に直面しても、胸を張って国を前進させてまいります。
中華民国総統府の公式サイト掲載の頼総統演説書き起こしの筈なのに、肝心な中華民国を認めよの部分「我也要重申,只要中國正視中華民國存在的事實,尊重台灣人民民主自由的生活方式意願,在對等、尊嚴の原則下,我們很樂意跟中國交流合作,促進兩岸的和平共榮發展。」が、すっぽりと抜け落ちています。
★筆者がこの箇所が抜け落ちているのに気付いたのは、他のメディア報道では、この部分に触れられているからと原文で確認しようとしたら見当たらなかったからです。そこで頼総統の演説を書き起こしして、該当箇所が確かに発言されていることを確認しています。

この抜け落ちがわざとなのか偶然なのか分かりませんけれども、なにかすっきりしません。




3.現状変更は平和的かつ相互の合意に基づくものでなければならない


西側各国も抗議の声を上げています。

昨年12月31日、日本の北村俊博外務報道官が談話で、「今般、中国軍が台湾周辺で実施した軍事演習は、台湾海峡において緊張を高める行為であり、わが国の懸念を中国側に伝達しました」と述べ、「台湾をめぐる問題が、対話により平和的に解決されることを期待するというのが、政府の従来から一貫した立場です……台湾海峡の平和と安定は国際社会全体にとって重要です。引き続き、関連の動向を強い関心をもって注視してまいります」とコメントしました。

フランスも先月30日、外務省が声明で「フランスは、特に武力や威圧による現状の一方的な変更に改めて反対し、全ての当事者に対し、いかなるエスカレーションも控えるよう求める」と中国軍の軍事演習について懸念を表明するとともに、世界の安全保障と繁栄に不可欠な台湾海峡の平和と安定維持へのコミットメントを改めて示しました。

また、ドイツ外務省も同様の懸念を表明し、台湾海峡の安定は国際安全保障と繁栄に極めて重要だと強調。「現状変更はいかなるものであっても、平和的かつ相互の合意に基づくものでなければならない」と述べた。

更に、イギリス外務省報道官も声明で、台湾周辺での中国の軍事演習は、台湾海峡両岸の緊張とエスカレーションのリスクを高めていると指摘。台湾問題は関係当事国による「建設的な対話を通じて平和的に解決されるべき問題」と、平和と安定を損なうリスクのあるさらなる行動を回避するよう改めて求めています。

アメリカも1月1日、国務省のトミー・ピゴット報道官が声明で、「台湾や地域内の諸国に対する中国の軍事活動と言動は、不必要に緊張を高めるものだ。中国政府に対し、自制し、台湾への軍事的圧力を停止し、有意義な対話を行うよう強く求める……アメリカは台湾海峡の平和と安定を支持し、武力や威圧などによる一方的な現状変更に反対する」と中国政府に対し「軍事的圧力を停止」するよう求めています。

そして、下院で中国問題を扱う超党派特別委員会の指導部は12月30日付声明で、中国軍による台湾周辺での軍事演習は「意図的なエスカレーション」と非難。この委員会の委員長を務める共和党のムーレナール議員と、民主党のクリシュナムルティ議員は「これらの演習は、台湾およびインド太平洋地域の他の民主主義国家を威嚇し、地域全体の平和と安定を損なうことを意図している」と非難しています。


4.いかに日本を参戦させないか


中国は台湾有事に日本が介入することを物凄く嫌がっているように見えて仕方ないのですけれども、そのことは数年前から指摘されていました。

2021年5月配信の、ネット番組「虎ノ門ニュース」に出演した、元海自・海将の伊藤俊幸氏が海自の実力について次のように述べています。
海上自衛隊は昔からネイビー・トゥ・ネイビー・トークスということでアメリカとは当然やるんですけど、同時に同じレベルでイギリスともやってたんですね。同じような感覚でやってて、アメリカとイギリスもめちゃくちゃやってますから、この3か国というのは海の世界から見ると全く主要国なんですよ。

ちなみに日本の海上自衛隊はアメリカが言うにはもう世界第2位の海軍力なんですね。だから世界70か国から参謀長が集まる海軍シンポジウム、1回アメリカのニューポートというところの海軍大学でやるんですけど、

そうするとその時の夜のディナーパーティーがあるんですけど、ラウンドのテーブルがたくさん並んでですね、円卓が並んでそしたらそれをメインテーブルは向こうのさっき言ったCNOですよね、アメリカの海軍作戦部長がいて、ここにイギリスの第一海軍卿がいて、ここの海上幕僚長ですかね、ほら3人がメインテーブル。めっちゃかっこいいじゃないですか、ちょっとゾクゾクします。

ずっと昔からですから、僕らにとってはこれが当たり前でずーっと見てきてるから。だからいろんな議論で戦略もそうだけど、海上自衛隊を軽く見せすぎじゃないのと、世界的にそういう目線なんですよ。

それが当たり前で、実際に会議をセットしてきたし、そういう場にいた人間からすると、いや全然評価は知られてないなと。

海からすると日英とアメリカの3か国海軍が対等な関係であってもっと言うと、でもイギリスはまだ一緒にやれないレベル低くて一緒にやれないんですよ。こういう関係なんですぶっちゃけ。

だからイージス艦のレベルないですからね。そこを皆さんわかんないけど、今度クイーン・エリザベス、これ日本へ来るとか大騒ぎしてます。搭載になってるのは海兵隊のいわゆるV/STOL機のF35Bっていうのは乗ってるんですよ。だから船だけ貸しているんですね、イギリス船を動かす人で、搭載に実際戦闘する飛行機は全部アメリカの海兵隊なんです。
世界1,2位の海軍力を持つ日米が組んだらそれは、中国軍も勝ち目はないでしょう。これ自体は4年前の話ですけれども、最近のISISのシミュレーションでも日米が共に台湾有事に介入したら、中国は負けるという結果が出ていますしね。

日本が台湾有事に介入するという意思を見せること自体が対中牽制になる現実を忘れてはならないと思いますね。






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