
1.中南米の刑務所はなぜ世界有数の凶悪なギャングを生み出してしまうのか
今回のアメリカによるベネズエラ攻撃について、トランプ政権は、凶悪ギャング「トレン・デ・アラグア」の殲滅をその理由の一つに挙げていますけれども、「トレン・デ・アラグア」は、現在南米全土、そして北米にまで勢力を拡大しているベネズエラ発祥の巨大な国際犯罪組織です。
昨年12月11日、CNNは「中南米の刑務所はなぜ世界有数の凶悪なギャングを生み出してしまうのか 」という記事を掲載しています。
件の記事の概要は次の通りです。
〇 中南米における犯罪組織の真の温床としての刑務所国家警備隊や刑務所長でさえも「トレン・デ・アラグア」の命令に従っていたなんて、もう無茶苦茶です。
+ 政治家や当局が見落としている「刑務所」という重要な戦場
/ 国境や街中ではなく、過密で資源不足の刑務所内で組織が形成・強化されている
/ 地域全体で少なくとも10の主要犯罪組織が刑務所を起源としている
/ 事実上の自治が行われている施設が、メンバー勧誘や再編成の温床となる
〇 ベネズエラ発祥「トレン・デ・アラグア」の台頭背景
+ 2010年代初頭にアラグア州のトコロン刑務所内で結成
/ 非人道的な環境や国家の支援欠如に対する受刑者の憤りが背景
/ 組織が刑務所内の完全な支配権を握り、当局さえも命令に従う状態に発展
/ 受刑者への課税や禁制品の流通、刑務所外での強奪・誘拐を指揮
〇 ブラジルとエクアドルにおける刑務所支配の構造
+ ブラジルにおける深刻な過密状態と組織犯罪の歴史
/ 収容率140%という劣悪な環境への反発からPCCやCVといった組織が誕生
/ 組織が受刑者に衛生用品や法的支援、安全を供給するビジネスモデルを確立
/ PCCはサンパウロの刑務所の約90%を支配し、内部の殺人を抑制する皮肉な「鎮圧」を実現
+ エクアドルにおける刑務所の「私有化」と暴力の激化
/ 監房棟ごとに独自の経済圏と指導部が存在し、ギャングが私有化
/ 刑務所内の市場規模は年間2億ドルを超え、連邦の運営予算を大幅に上回る
/ リーダーの暗殺による権力均衡の崩壊が、数年で400人以上の受刑者虐殺を招く
〇 強硬策「マノ・デュラ(鉄拳)」の台頭と専門家の警鐘
+ エルサルバドルの「ブケレ・モデル」を模倣する政治的潮流
/ 大量収監と巨大刑務所の開設を基盤とするモデルが中南米右派の基準に
/ エクアドル、パラグアイ、アルゼンチンの指導者が同様の手法を誓明
+ 大量収監政策がもたらす長期的なリスク
/ 刑務所の無秩序と資源不足は、犯罪グループに管理の機会を再び与える
/ 軽犯罪者が生存のために派閥への加担を余儀なくされ、組織が肥大化
〇 犯罪の連鎖を断ち切るための根本的な課題
+ 社会における教育と機会の欠如がもたらす弊害
/ 本やペンよりも銃や麻薬が手に入りやすい子供たちの現状
/ 刑務所内での非人間的な扱いが、出所後に彼らを「犯罪の兵士」に変貌させる
/ 最初のチャンスさえ与えられない層に対し、社会的な支援と更生の道が必要
2.ドンロー・ドクトリン
今回のアメリカのベネズエラ攻撃は強烈な外交的メッセージを各国に送ることとなりました。
1月3日の演説でトランプ大統領を始め、ヘグセス長官、ダン・ケイン参謀本部議長は次の主旨の発言をしています。
〇 西半球におけるアメリカの優位性(ドンロー・ドクトリン)トランプ大統領は、アメリカの外交戦略として「ドンロー・ドクトリン(Donroe Doctrine)」を打ち出しています。この言葉は。1823年にアメリカ合衆国の第5代大統領ジェームズ・モンローが提唱した「モンロー・ドクトリン」を捩ったものだと思われます。
+ 「私はこれを『ドンロー・ドクトリン(Donroe Doctrine)』と呼んでいる。モンロー主義をさらに強力にしたものだ。もはやこの西半球において、中国やロシアのような外国勢力が介入し、略奪することを一切許さない。この地域はアメリカの裏庭であり、我々が秩序を守る」(トランプ大統領)
+ 「『ドンロー・ドクトリン』の下、我々はアメリカの安全保障に直接的な脅威を与える勢力を排除した。これは単なる政権交代ではなく、西半球の再編である」(ヘグセス長官)
〇 近隣諸国および敵対勢力への警告
+ 「コロンビアのコカイン工場、そしてキューバの破綻した体制。これらが我が国に麻薬と犯罪を輸出している。我々はもう我慢しない。誠実な対応を求める。さもなければ、マドゥロが今日どうなったかを見るがいい」(トランプ大統領)
+ 「全てのならず者国家、特に麻薬を武器として利用する政権への明確なメッセージだ。我々の忍耐は限界に達している」(ダン・ケイン議長)
〇 世界各地の紛争解決への意欲
+ 「このベネズエラでの成功は始まりに過ぎない。私はプーチンともゼレンスキーとも話をし、ロシア・ウクライナ戦争を終わらせる。無意味に失われる人命を救う。世界中で起きている悲惨な戦争を、アメリカの圧倒的な力と外交によって解決していく」(トランプ大統領)
+ 「大統領の決意は固い。マドゥロの拘束によって証明された軍事的能力と意志は、世界中の紛争地域における抑止力として機能するだろう」(ヘグセス長官)
トランプ大統領自身、ドンロー・ドクトリンはモンロー・ドクトリンを更に強力にしたものとのべていますけれども、当初、モンロードクトリンは「アメリカとヨーロッパは、お互いの領域に口出ししないようにしよう(相互不干渉)」を意味するものでした。それがやがて「孤立主義」の象徴とされ、20世紀に入ると、「ヨーロッパの介入を防ぐためなら、アメリカが中南米の警察官として介入してもよい」という考えに変質していったとされています。
トランプ大統領が件の演説でドンロードクトリンについて述べた箇所を引用すると次の通りです。
「はるか昔、モンロー主義にまで遡るのだ。モンロー主義は確かに重要なものだが、私たちはそれをはるかに凌駕している。本当にはるかに。今では「ドンロー・ドクトリン」と呼ばれている。このようにトランプ大統領は西半球でのアメリカ地域覇権を確立すると宣言しています。
モンロー主義だ。私たちはそれを忘れていた。とても重要なことだったが、忘れていたのだ。もう忘れることはない。私たちの新たな国家安全保障戦略の下、西半球におけるアメリカの優位性は二度と疑われることはない。決して疑われることはない。つまり、結論として、何十年もの間、他の政権は西半球におけるこうした増大する安全保障上の脅威を軽視し、あるいはむしろ助長してきたのだ。」
昨年12月23日のエントリー「コア・ファイブとトランプの引き剥がし」で筆者は、ロシアと比較的ロシアに近いオーストリア、ハンガリー、イタリア、ポーランドと比較的ロシアに近いヨーロッパの国々を親アメリカ国にしてこの地域の疑似地域覇権国状態にすることができれば、アメリカもヨーロッパから手を引くこともできるのではないかと述べたことがありますけれども、ドンロー主義、西半球の地域覇権確立を目指すという宣言と合わせて考えると、符号はあってくるように見えます。
3.資源帝国主義
一方、今回のベネズエラ攻撃について、リベラル・メディアや欧州のメディアは、アメリカの真の目的がベネズエラの膨大な原油埋蔵量にあると批判しています。
昨年12月24日、イギリスのガーディアン紙は「専門家によると、トランプ大統領のベネズエラ原油に対する主張は、より広範な「資源帝国主義」の一部である」という記事を掲載しています。
件の記事の概要は次の通り。
〇トランプ大統領によるベネズエラ石油接収の主張と背景アメリカの安全保障(ドンロードクトリン構築の一環)と石油資源獲得のどちらが主でどちらが従なのか分かりませんけれども、ドンロードクトリンを徹底するならば、ベネズエラおよび周辺地域の秩序が回復すれば、速やかに撤退していく流れになる筈です。
+ベネズエラ産石油を運ぶタンカーを拿捕し、米国資産としての没収を示唆
+麻薬密売阻止や安全保障を口実とした、マドゥロ政権への圧力強化の一環
+専門家はこれを「資源帝国主義」および「資源ナショナリズム」と定義
〇トランプ氏が一貫して掲げる資源獲得の論理
+過去の紛争(イラク・シリア)における石油接収の正当化
/イラク戦争の費用回収として石油を奪うべきだったと主張
/シリア東部油田の管理を米軍駐留の主目的として維持
+戦略的資源(レアアース・重要鉱物)への支配権拡大
/グリーンランドの鉱物資源確保のため、武力行使を含む強硬姿勢を誇示
/ウクライナへの軍事支援の対価として、重要鉱物への優先アクセスを要求
〇専門家による戦略的・政治的分析
+米中対立に伴うサプライチェーン支配の激化
+過去の米政権との比較における特異性
/戦略的支配という目的は共通だが、トランプ氏は建前を排除し直接的な「収奪の論理」を用いる
+国際規範および環境への影響
/気候科学を無視し化石燃料の覇権を優先する姿勢が、将来的に壊滅的な損失を招く懸念
4.焦点はベネズエラの今後
国際関係ジャーナリストの及川幸久氏は自身の動画で、今回のベネズエラ攻撃について次のように解説しています。
◆ 1/3配信:トランプの電撃的ベネズエラ攻撃, 2時間でマドゥロ大統領拘束, 米軍の死傷者はゼロ
〇米軍によるベネズエラ電撃攻撃の概要
+2026年1月3日、米軍がベネズエラを電撃的に攻撃
+わずか2時間の作戦でマドゥロ大統領を拘束
+米軍側の死傷者はゼロという圧倒的な軍事的勝利
〇作戦の特異性と背景
+全面的な軍事進行ではなく、特定の拠点を狙った「外科手術」的な襲撃
+イラン製の防空システムが作動しなかった背景に内部買収や事前通告の可能性
+フロリダのマー・ア・ラゴでの国家安全保障会議を経て決定された周到な計画
〇トランプ政権の狙いと正当化の論理
+米国で年間30万人以上の死者を出す麻薬「フェンタニル」の撲滅が主目的
+麻薬密輸を国家の安全を脅かす「テロ行為」および「大量破壊兵器」と定義
+ベネズエラを麻薬テロ拠点、中国を原料供給および経済的支援の黒幕と特定
〇国内外からの批判と今後の懸念
+「非介入主義」を掲げるアメリカファーストの公約に反するとの批判
+ロシアの思想家ドゥーギン氏らによる「バイデン政権と大差ない」との非難
+過去のリビアやイラクの事例と同様、政権転覆後の統治失敗のリスク
◆ 1/4配信:トランプのマドゥロ捕獲作戦, 側近の裏切りとCIAの工作及川氏は今回の電撃作戦の周到さとその裏にCIAの工作があったと指摘した上で、ベネズエラの今後がどうなるかが焦点だと指摘しています。
〇マドゥロ大統領拘束作戦の実態
+米軍特殊部隊デルタフォースによる電撃的な身柄拘束
/CIAの情報支援と政権内部の協力者が不可欠な役割を果たした
/インフラ攻撃を避け、ターゲットを個人に限定した精密な作戦
〇国際的な反応とトランプ政権の論理
+主権侵害との批判に対し、米側は「刑事事件の容疑者逮捕」と主張
+イーロン・マスク氏は「独裁者への明確なメッセージ」と評価
+ベネズエラ国民からは、長年の独裁からの解放を喜ぶ声も上がっている
〇CIAの役割と組織の変化
+ラトクリフ長官のもと、CIAが本来の情報収集・工作機能を遂行
+ディープステートのネットワーク解体の可能性が示唆されている
〇不正選挙と「司法取引」の疑惑
+マドゥロ氏が知る「世界の選挙操作の手口」が暴露される可能性
/米国内の不正選挙に関わる勢力の情報を供述する取引の噂
+トランプ氏がドミニオン社に関する動画を投稿したタイミングの妙
〇ベネズエラの現状と今後
+世界最大の石油埋蔵量を持ちながら、ハイパーインフレで経済が崩壊
+今回の政変が、国内外に逃れた国民を救う転換点となるかが注目される
また、及川氏が指摘するように、ベネズエラ国民からは、長年の独裁からの解放を喜ぶ声も上がっていることは事実です。問題はベネズエラを独裁ではなく国家運営をしていける人物を指導者にできるかどうか。本番はこれからだと思いますね。
この記事へのコメント
pedant
Mainstream Media Spreading FAKE AI VIDEOS From Venezuela! w/ Max Blumenthal
https://www.youtube.com/watch?v=48eVxJZw3Iw