米戦略国際問題研究所の四つのシナリオ 《イラン情勢シリーズ#14》

今日はこの話題です。
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1.革命防衛隊による機雷敷設


3月11日、ロイター通信は関係筋2人の話として、イランがホルムズ海峡に約12個の機雷を配備したと報じました。また、CNNは、10日、情報筋の話として、イランがここ数日で同海峡に数十個の機雷を敷設し、さらに数百個を敷設する能力があると報じています。

当初イランは大型の専用敷設艦を使用しようとしましたが、米軍の攻撃を受け、現在では2〜3個の機雷を搭載可能な小型艇を多数投入する戦術に切り替えているとアメリカ当局者は明かしています。もっとも、今回の機雷敷設作業は遅々として進まず、効率も高くなく、更に機雷のほとんどの位置は判明しているとのことです。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、イランのイスラム革命防衛隊は数百隻もの機雷敷設用のボートを配備することができ、長年にわたり米海軍の艦船を含む大型艦船を嫌がらせするために使用してきたとのことです。

イランは機雷の除去速度を上回るペースで機雷を敷設することで、海峡を通過する船舶の航行をさらに阻止しようとしている狙いと見られています。

これに対し、アメリカ軍はイランの機雷敷設を「経済と航行の自由に対する脅威」と位置づけ、強硬な阻止作戦を展開。かつて中南米などで麻薬密輸船を取り締まる際に使用した監視・打撃技術を応用し、イランの小型艇を、夜間や悪天候下でも高い精度で捕捉・追跡しているとのことです。

実際、小型艇は通常の民間船舶と区別がつきにくく、機動性にも優れているため、広大な海域でこれらの動きをすべて察知して阻止することは極めて困難であることも事実です。

3月10日、アメリカ中央軍は機雷敷設任務に従事していたイランの船舶16隻を攻撃し、破壊したと発表。トランプ大統領はSNS等を通じて「機雷は直ちに撤去せよ」と警告し、応じない場合は「前例のない軍事的代償を払わせる」と強いメッセージを発信しています。


2.機雷除去の難しさ


機雷は、船を損傷または破壊するために水中に設置される爆発装置です。比較的安価であり、かつ探知が困難であるため、海戦で広く使用されています。爆薬の量は約100ポンド(約45kg)から2,000ポンド(約900kg)を超えるものまであり、防衛および攻撃の両面で利用されます。軍隊は、水域へのアクセスを阻止したり、海軍艦艇に損害を与えたり、船舶を標的にしやすい特定のルートへ追い込んだりするために機雷を使用します。一部の単純な接触機雷は1,500ドル程度で製造できるため、非対称戦における魅力的な武器となっています。

機雷は、どのように配置され、起動されるかによって次のように分類されます。
・係維機雷 (Moored mines): 海底や重りに係留され、水面下で浮遊します。機雷原に配置されることが多く、船が接触すると爆発します。
・浮流機雷 (Drifting mines): 海面を自由に漂流し、海流に乗って移動します。決まった位置にとどまらないため、追跡や無力化が困難です。
・沈底機雷 (Limpet mines): 磁石を使って船の船体に直接取り付けられ、通常は時限信管を使って爆破されます。
・海底機雷 (Bottom mines): 海底に設置されます。船の音響、磁気、または水圧のシグナルを感知するセンサーによって作動することが多いです。高度なものは直接接触しなくても、特定の艦船のシグナルを検知して爆発します。
機雷は、海軍艦艇、潜水艦、航空機、小型ボートなど、さまざまなプラットフォームを使用して敷設できます。伝統的には大型海軍艦艇が使用されますけれども、小型船でも特定の種類の機雷を敷設できるため、戦術の探知がより困難になります。潜水艦も魚雷発射管を使用して機雷を敷設可能です。

水中にある機雷が爆発すると、衝撃波と急速に膨張する気泡の両方が発生します。衝撃波は船の船体、電子機器、機械システムを損傷させる可能性があり、上昇する気泡は構造を持ち上げたり曲げたりすることで船を不安定にさせます。被害の程度は、爆薬のサイズ、機雷の深さ、対象となる船の種類などの要因によって異なります。

ホルムズ海峡への機雷敷設について、海上自衛隊出身で、笹川平和財団の河上康博・日米・安全保障研究ユニット総括・交流グループ長は、「実際にホルムズ海峡を封鎖するには数千個の機雷が必要だが、機雷敷設の噂が立つだけでも海峡を事実上封鎖でき、原油価格が上昇する。非常に心理的効果の高い戦略兵器だ」と説明しています。安い機雷なら一つ20万円程度で製造できるといい、軍事力が高くない国にも使い勝手が良いとのことです。非対称戦にはもってこいという訳です。

河上氏は「機雷の運搬は漁船でも可能で、あらゆる手段がある」とし、機雷による脅威は依然として強いと指摘。更にイランが使用するのは、第二次世界大戦時に使われた機雷と同タイプの比較的古い機雷の可能性があると述べています。

米CBSテレビは、イランが推定2000~6000個の機雷を保有していると報じていますけれども、河上氏は「イランが機雷の敷設を実行した時は、長期戦を想定している可能性が高い。日本の商船がホルムズ海峡を通航するには、戦闘の終結が前提になるだろう
」と述べています。

日本は世界トップくらいの機雷除去能力があると、よく言われますけれども、90年代の湾岸戦争では、戦争終結後に日本の自衛隊の掃海部隊がペルシャ湾に派遣された結果、34個の機雷撤去に約3ヶ月を要しています。


3.ハールク島爆撃


3月13日、アメリカのトランプ大統領は、イランの原油輸出の9割を担うペルシャ湾のハールク島の軍事標的を爆撃したとSNSで発表しました。

件の投稿は次の通りです。
つい先ほど、私の指示により、米国中央軍は中東史上最も強力な爆撃作戦の一つを実行した。そして、イランの至宝であるハルグ島のすべての軍事目標を完全に破壊し尽くした。

我々の兵器は、世界史上最も強力で高度なものである。しかし、良識の観点から、島の石油インフラを破壊しないことを選択した。ただし、イラン、あるいは他の誰かがホルムズ海峡の船舶の自由かつ安全な航行を妨害するようなことがあれば、私は直ちにこの決定を再考する。

私の最初の任期中、そして現在も、私は我が国の軍隊を、世界のどこにも負けないほど致命的で強力かつ効果的な軍隊へと再建した。

イランは、我々が攻撃したいものを防御する能力を全く持っていない。彼らにできることは何もない!

イランは決して核兵器を持つことはなく、アメリカ合衆国、中東、そして世界を脅かす能力を持つこともない!

イラン軍、そしてこのテロ政権に関わる全ての者は、武器を捨て、残されたわずかな国土を守るべきである。

この件にご関心をお寄せいただき、ありがとう。
ドナルド・J・トランプ大統領
ハールク島については、識者の間では注目されていたようです。

3月12日、日経ビジネス紙は、「イラン原油の『頸動脈』、ハールク島に漂う不穏な空気 油価150ドルのリスク」という記事を掲載しています。

件の記事の概要は次の通りです。
〇ハールク島の戦略的重要性
 +イランの原油輸出の8~9割を占める「イラン経済の頸動脈」である
  /ホルムズ海峡内のサンゴ礁の島であり、超大型タンカーの接岸に適した地形を持つ
  /イラン本土からのパイプラインが集約され、日量150万〜160万バレルを輸出する

〇米国による攻略シナリオとリスク
 +トランプ政権内で、イランの交渉力を削ぐための攻略オプションが議論されている
  /ハールク島制圧は、イラン本土への大規模侵攻なしに経済的圧力をかけられる手段とされる
  /ただし、島が本土に近いため、イラン側からのミサイルやドローンによる激しい反撃リスクがある

〇原油価格への影響と予測
 +ハールク島の封鎖が起きた場合、原油価格が少なくとも10~12ドル上昇すると予測される
  /中核施設が完全に破壊され復旧不能となれば、1バレル150ドルに達する最悪のシナリオも想定される
  /イランが湾岸諸国の原油設備を巻き添えにしてでも対抗する覚悟を示しており、世界経済への影響は甚大

〇さらなる情勢悪化の懸念
 +ホルムズ海峡だけでなく、紅海の入り口であるバブ・エル・マンデブ海峡の封鎖リスクが浮上
  /戦闘が長引くほど、米・イスラエル・イラン双方がエネルギーインフラを攻撃する「過激な一手」を選択する懸念がある
  /イラン新指導部の強硬姿勢により、衝突は短期決戦ではなく長期戦になる可能性が高い
記事によると、トランプ大統領は1988年、英紙ガーディアンのインタビューについて触れていますけれども、トランプ大統領は当時、大統領になったら、イランについてどう対処するか問われ、次のように答えています。
イランには厳しく対処するだろう。彼らは我々を精神的に打ち負かし、愚か者の集団のように見せかけている。我々の兵士や艦船に一発でも銃弾が当たれば、ハールク島を徹底的に叩き潰す。乗り込んで占領するだろう。イランはイラクにすら勝てないのに、アメリカを翻弄している。世界が彼らに立ち向かうのは良いことだ。
イランがホルムズ海峡というチョークポイントに機雷を撒いて、首を絞めるのなら、トランプ大統領はハールク島という頸動脈を切る、そうなったらエスカレーション一直線です。


4.米戦略国際問題研究所の四つのシナリオ


更に記事では、「米戦略国際問題研究所(CSIS)は2026年2月18日のリポートで、米国がタンカーを拿捕(だほ)してハールク島を封鎖するなど複数のシナリオを予想した」と記しているのですけれども、そのレポートは、2月9日付の「トランプがイランを攻撃した場合:石油供給途絶シナリオの分析」という、クレイトン・シーグル戦略国際問題研究所(CSIS)のエネルギー安全保障・気候変動プログラム・上級研究員のレポートのことと思われます。

件のレポートには4つの石油供給途絶シナリオが述べられています。それは次の通りです。
〇シナリオ1:米国またはイスラエルがイラン産原油の輸送を妨害する

これは、イラン産原油を船舶に積み込む主要施設であるハルグ島を封鎖または占拠すること、およびイラン産原油を輸送する石油タンカーを拿捕することといった形をとる可能性がある。

これは、イランの原油輸出のうち最大160万バレル/日を混乱させる可能性があり、そのすべてが中国向けである。しかし、石油は世界的に流通する代替可能な商品であるため、どこかで供給が途絶えれば、世界中の価格に影響が及ぶ。イランからの原油供給が途絶えれば、中国は代替供給を求めて入札するだろう。これはおそらく、世界の原油価格を少なくとも10~12ドル上昇させるだろう。このシナリオは可逆的であり、米国またはイスラエルはいつでもイランからの原油輸送に対する作戦を中止することができ、恒久的な損害は発生せず、その後輸出量は回復する可能性がある。これは、米国がベネズエラ産原油の輸送を検疫した後に見られた現象である。保険料や戦争リスク保険料は、実際の供給途絶よりも長く価格を高止まりさせる可能性がある。

シナリオ2:イランがアラビア湾の石油輸送を妨害する

この作戦は、ホルムズ海峡を通過する湾岸諸国からの輸出貨物を標的とする可能性が高い。ホルムズ海峡の航路は、出入りする船舶の航路幅がわずか2マイルしかない。イランは、石油タンカーの航路変更や乗っ取りを試みるほか、高速攻撃艇、ドローン、対艦ミサイル、機雷などを用いて直接攻撃する可能性もある。イラン産以外の原油および精製石油製品の輸送量は、最大で1日あたり1800万バレル(場合によってはそれよりはるかに少ない)まで抑制または一時的に停止される可能性がある。

このシナリオでは、同盟国の海軍がエネルギー貨物輸送に対する海上および陸上からの脅威を無力化できるまで、数週間にわたり数百万バレル/日の輸送が中断される可能性がある。運賃と保険料が急騰し、一部の船舶運航会社がこの地域から撤退する可能性が高く、輸出能力がさらに低下するため、原油価格は当初急騰するだろう。トレーダーが物理的な混乱の量と期間を評価するにつれて、原油価格は1バレルあたり90ドルを超え、米国のガソリン小売価格は全国平均で1ガロンあたり3ドルをはるかに超える可能性がある(一部地域ではさらに高い)。シナリオ1と同様に、この一連の出来事は可逆的である。テヘランはいつでも妨害活動を中止する可能性があり、あるいは国際社会が妨害の試みを鎮圧し、湾岸諸国の輸出量が回復する可能性がある。

シナリオ3:米国またはイスラエルがイランの石油施設を直接攻撃する

このシナリオでは、空軍と海軍がハルグ島とその補給線、沖合生産プラットフォーム、そして(可能性は低いが)イランの石油精製所を攻撃するだろう。ハルグ島のイランの輸出ターミナルは、平均輸出量160万バレル/日のほぼ全てを占めている。ハルグ島は、船舶積載設備(ホース、ポンプ、接続金具)を無効化または破壊したり、石油貯蔵タンクを損傷したり、海底パイプラインを経由してハルグ島に到達する石油の流れを遮断したりするなど、いくつかの方法で操業停止に追い込まれる可能性がある。ハルグ島への石油供給の要衝には、陸上のグッレブースターステーション、ガナヴェのマニホールドステーション、そしてパイプライン自体が含まれる。

イランの原油輸出量160万バレル/日(ハルグ油田に限定した場合)だけでなく、国内の石油生産量150万バレル/日(プラットフォームや油田が標的になった場合)や、ガソリンなどの輸送燃料の国内供給(製油所が損傷した場合)も危機に瀕している。原油価格への影響は、シナリオ1で想定される1バレルあたり10~12ドルの急騰よりも大きくなる可能性が高い。理由は2つある。(1)イランのインフラが損傷または破壊されると、原油が長期間市場に出回らなくなる可能性がある(OPECの予備生産能力の稼働によって相殺される可能性もある)、(2)イランがシナリオ4(後述)のような事態でさらにエスカレートすると予想される。したがって、このシナリオでは原油価格は1バレルあたり100ドルを超える可能性がある。

シナリオ4:イランがアラビア湾岸の石油施設を直接攻撃する

この結果には、生産油田、集荷・処理拠点、石油輸出ターミナルなどが含まれる可能性がある。このシナリオでは、どの施設が操業停止となるか、またその期間によっては、湾岸地域からのイラン以外の石油輸出量1,800万バレル/日の相当部分が危機に瀕することになる。影響を受ける国々の国内原油原料および精製製品供給においても、日量数百万バレルの損失がリスクにさらされる可能性がある。

このシナリオは、ロシアによるウクライナ侵攻後の2022年に記録した1バレルあたり130ドルを超える可能性のある、歴史的な原油価格の高騰につながる可能性がある。当時リスクにさらされていた原油供給量は約500万バレル/日であった。

シナリオ3と同様に、このケースでも石油施設が甚大な被害を受けたり、破壊されたりして、輸出能力が長期間にわたって失われる可能性がある。これは陸上インフラだけでなく、特に輸出能力の重大なボトルネックとなっている海上積載プラットフォームにも当てはまる。

この脆弱性の一例として、イラクの湾岸諸国への原油輸出量350万バレル/日が、イラン領海に非常に近い沖合積載施設に依存していることが挙げられる。これらの沖合積載施設の修復には相当な時間がかかる場合があり、11月29日にウクライナ軍が黒海のカスピアン・パイプライン・コンソーシアム・ターミナルにある同様の沖合積載プラットフォームを攻撃した際には、ターミナルの生産量の3分の1にあたる1日50万バレルの原油が数ヶ月間停止した。

陸上施設も脆弱ではあるが、利用可能な修復資源によってはより迅速に修復できる。例えば、2019年9月にサウジアラムコのアブカイク原油処理施設が攻撃を受けた際、当初は日量約500万バレルの処理能力が停止したが、迅速な修復作業により、その大半は2週間以内に復旧した。

新たな大火災が発生した場合、ホルムズ海峡を通って世界市場へ輸送される液化天然ガス(LNG)の流れも途絶える可能性がある。

カタールの1日100億立方フィートを超えるガス輸送量は、機雷の設置やガスタンカーへの直接攻撃、あるいはラスラファン港の輸出ターミナルの機能停止によって減少または遮断される可能性がある。そうなれば、遠く離れた米国でも電力価格が上昇し、米国の消費者の電力価格負担軽減を目指す政策立案者の取り組みが複雑化する恐れがある。
今、起こっていることは、シナリオ2の「イランがアラビア湾の石油輸送を妨害する」です。シナリオ3については、トランプ大統領の「島の石油インフラを破壊しないことを選択した」という声明が本当であれば、まだギリ成立していないことになります。

ただ、シナリオ2であったとしても「同盟国の海軍がエネルギー貨物輸送に対する海上および陸上からの脅威を無力化できるまで」石油の輸送は中断。その期間は数週間にわたると予想しています。

アメリカおよび同盟国が、中東石油輸送において海上および陸上からの脅威を無力化できるのに果たしてどれだけかかるのか。たとえ陸上からの脅威を無力化できたとしても、日本の掃海部隊ですら数ヶ月で30個くらいしか撤去できない機雷が撒かれてしまったホルムズ海峡が数週間で回復するのか。

じわじわと長期戦の足音が聞こえてきたような気がします。



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