トランプの強がりとホルムズ海峡のショートカット 《イラン情勢シリーズ#17》

今日はこの話題です。
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1.NATOや日本はもはや必要ない


3月17日、アメリカのトランプ大統領は、イランが船舶を攻撃しているホルムズ海峡の安全確保を巡り、北大西洋条約機構(NATO)加盟国や日本などの艦船派遣は「もはや必要ない」と自身のSNSに投稿しました。

件の投稿の内容は次の通りです。
NATOの「同盟国」のほとんどから、中東におけるイランのテロリスト政権に対する我々の軍事作戦に関与したくないとの連絡が米国に寄せられた。

これは、ほぼすべての国が我々の行動に強く賛同し、イランがいかなる形であれ核兵器を保有することを許してはならないという事実にもかかわらずだ。

しかし、私は彼らの行動に驚かない。なぜなら、我々が毎年何千億ドルもの資金を投じてこれらの国々を守っているNATOは、一方通行の関係であると常に考えてきたからだ。我々は彼らを守るが、彼らは我々のために何もしてくれない。特にいざという時にそうだ。幸いなことに、我々はイランの軍事力を壊滅させた。海軍も空軍も、対空兵器やレーダーも、そしておそらく最も重要なことに、ほぼすべてのレベルの指導者たちが排除された。

二度と我々や中東の同盟国、そして世界を脅かすことはないだろう。我々は軍事的にこれほどの成功を収めたため、もはやNATO諸国の支援を必要ともせず、望みもしない。そもそも必要としたことなど一度もない。日本、オーストラリア、韓国についても同様だ。実際、世界で最も強力な国であるアメリカ合衆国の大統領として申し上げるが、我々は誰の助けも必要としない。この件にご関心をお寄せいただき、ありがとう。

ドナルド・J・トランプ大統領
文面を見る限り、トランプ大統領はブチ切れているように見えます。

その後、トランプ大統領はホワイトハウスで記者団との質疑で次のように応じています。
記者: 国家対テロセンター局長のジョー・ケント氏が、イランとの紛争を支持できないとして辞任しました。これについてどう思われますか?

【前略】

トランプ大統領:NATO諸国はイランが脅威であることは認めている。しかし、助けようとはしない。これは非常に愚かな間違いだ。我々がウクライナにあれだけの支援(数百億ドルから数千億ドル)をしたのに、彼らは我々を助けない。これはNATOにとって非常に悪いことだ。

記者: NATOとの関係を再考し、脱退する可能性はありますか?

トランプ大統領: NATOには失望している。我々は何兆ドルも費やして他国を助けているのに、彼らは助けてくれない。この決断に議会の承認は必要ない、私自身で決められることだ。今すぐどうこうする予定はないが、現状には全く満足していない。
また、対イラン軍事作戦を巡る今後の方針についても「まだ撤退の準備はできていないが、かなり近い将来に撤退する」と語る一方、長期戦となる可能性について「何も恐れていない」と述べ、戦闘を継続する構えがあることも強調しています。




2.安全保障の空白


これらについて、3月16日、読売テレビニュースは読売テレビ報道局特別解説委員の高岡達之氏は次のように解説しています。
高岡目線です。日本時間でイランの攻撃が始まってから17日目です。大きなニュースは「ガソリン価格はどうなるのか」、そして「日本にいる在日米軍の部隊が中東に派遣された」ということです。
さらに、日本から艦船を出してくれと言われれば、当然自衛隊になるわけです。トランプ大統領から、ホルムズ海峡を通る船の護衛のために艦船を出してほしいという要請、あるいは希望が発信されました。
この時間は、特に派遣された在日米軍の部隊がどのような部隊なのか、そして間もなく控えている高橋総理とトランプ大統領との会談に向けた「頭の体操」についてご説明します。

まず、トランプ大統領の発信についてです。軍の移動に関してアメリカ政府が公式に発言することは稀ですが、佐世保の米軍基地に配布されている情報では、強襲揚陸艦「トリポリ」を中東へ移動させるとのことです。この船には沖縄の海兵隊部隊がセットで載っています。軍事的に言えば、船は佐世保、海兵隊員は沖縄、戦闘機は岩国と分散していますが、これらを一気に乗せて動くのが海兵隊のパターンです。

今回派遣された「第31海兵遠征部隊(31st MEU)」について説明します。私は何度も同行取材や訓練を共にしました。これは全海兵隊の中から選りすぐられたスペシャリスト集団で、世界に7つある部隊の一つです。唯一、米国外(沖縄)に常駐している部隊であり、アジア太平洋からインド洋まで広く担当しています。彼らの訓練は過酷です。沖縄のジャングルでの接近戦、水陸両用車での上陸、ホバークラフトでの車両陸揚げなどを行います。

この部隊は、東日本大震災の際、宮城県気仙沼市の離島「大島」での人命救助や、仙台空港の復旧にも尽力してくれました。彼らはエリート部隊であり、災害救援だけでなく、人質救出や敵国トップの拘束といった特殊任務もこなします。

しかし、今回派遣された「トリポリ」は特殊な船です。通常、強襲揚陸艦は後部が開いてホバークラフトが出入りしますが、トリポリはその蓋がされており、航空能力(ステルス戦闘機やオスプレイの運用)を優先した設計になっています。つまり、地上戦よりも空からの攻撃を重視している可能性があります。

日本にとっての懸念は、在日米軍が中東へ向かうことで生じる「安全保障の空白」です。中国や北朝鮮がこの隙に挑発してくる危険性があります。また、トランプ大統領は日本、韓国、中国、イギリス、フランスなどを名指しして、自国の船は自国で守るよう期待(ホープフリー)すると発言しました。韓国は慎重、イギリスは協議中、中国は静観、フランスは独自の対話を模索しているようです。

高橋総理はこれを断れるのでしょうか。「存立危機事態」という言葉も出ていますが、日本の本土に対する危機(北朝鮮のミサイルなど)とは法的な立て付けが異なります。ミサイルへの対応は1分1秒を争うため、現場の司令官に権限が与えられていますが、遠方の中東への派遣は非常に高いハードルがあります。石油の備蓄放出などのカードを使いつつ、自衛官の命をどう守るのか、しっかりとした法的な根拠と責任を持って議論しなければなりません。
高岡氏は在日米軍が中東へ向かうことで生じる「安全保障の空白」の懸念を挙げつつ、トランプ大統領との会談に向けた戦略の必要性と安易な派遣ではなく、自衛官の命の保証と法的な整合性の徹底的な議論が求められると解説しています。




3.トランプの本音と強がり


また、3月18日、MBS NEWSは、早稲田大学・中林美恵子教授と中継で繋ぎ解説を仰いでいます。

件の番組の内容は次の通りです。
司会者: それでは見ていきましょう。ここまでもトランプ大統領の発言はコロコロ変わっています。昨日(日本時間)の発言では、改めて艦船の派遣を要求しました。ホルムズ海峡の封鎖を念頭に、艦船を出してほしいということです。詳しく見ると「日本は95%、中国は90%、欧州諸国も相当量の石油がここを通る。こうした国には支援に加わってほしい」と発言しました。一方で「協力要請は反応を確かめたいからだ」とも言っています。高市総理は「法的に可能な範囲で何ができるか政府内で検討する」としていました。ところが今日の発言です。「要求は撤回する。NATO加盟国の大部分から参加したくないと連絡があった。日本など各国の支援はもはや必要ない。NATOや他の一部の国に失望している」と。各国の対応をまとめると、ドイツ・オーストラリアは不参加、中国・イギリスは明言せず、韓国は検討中、フランスは要請受け入れ、日本は精力的に検討となっています。先生、これはどう見ればいいでしょうか。

中林教授: トランプ大統領の本音と強がり、現状認識を分けて考える必要があります。本音では非常に困っています。ホルムズ海峡でタンカーが通れないことで原油価格が上がり、車社会のアメリカ国民がガソリン代の高騰に悲鳴を上げています。原油価格を下げるために同盟国の協力が必要だというのは本音でした。しかし、同盟国が二の足を踏んでいる状況を見て、自分が「間違っていた」とは絶対に言えないので、「試したかっただけだ、もういらない」と強がっているのです。

司会者: 国内の空気はどうなのですか?

リポーター: アメリカでは「世界の警察」という役割をもう担いたくないという流れが長く続いています。イランとの戦争に対しても疲れが見え、政権内でも批判が増えています。

司会者: 本音が「助けが必要」なら、もっと協力的な姿勢を見せるべきではないでしょうか。

中林教授: 普通はそうですが、トランプ大統領の頭の中では「アメリカは戦後復興からずっと他国を助けてきた。欧州や日本、韓国が繁栄しているのはアメリカのおかげだ」という思いが非常に強いのです。だから「同盟国ならそれくらいやって当然だ」と考えています。

司会者: 日本の対応は難しくなりますね。機嫌を損ねると不利益があるのでしょうか。

中林教授: トランプ大統領は「自分が欲しいものをどれくらい出してくれるか」を重視します。かつての他国首脳との会談のように、地雷を踏むと険悪になります。数字の間違い(石油の通過率など)をいちいち本人の前で修正してはいけません。機嫌の良いところでこちらの要求を飲んでもらう組み立てが必要です。

司会者: 今後の軍事作戦についてはどうでしょうか。

中林教授: 本音は「やめたい」のですが、終わらせ方が見えていません。イスラエルは生存をかけて戦っており、アメリカの目的とは違います。トランプ大統領が一人で「やめる」と言っても、イスラエルやイランの動向次第で原油価格は左右されます。

司会者: 明日の首脳会談、日本はどう出るべきでしょうか。

中林教授: 艦船派遣はハードルが高いので、焦点をそらして機嫌を取る必要があります。アラスカ産原油の調達などのコストはかかりますが、日本の国益を守るために、アメリカにばかり利益を取られないよう詳細を詰める必要があります。
状況の解説はよいとしても、対策が「ご機嫌を取れ」では、ちょっとお粗末に過ぎるのではないかと思います。もうちょっと何かないのかという気がします。




4.ホルムズ海峡はショートカットできるか


そこへいくと、経済学者の高橋洋一氏はもう少し具体案を出しています。

3月18日、高橋教授は自身のチャンネルで次のように述べました。
アシスタント: トランプさんがですね、ホルムズ海峡が同盟の試金石だと。反応を知りたいと日本に対して提言して、そこに艦船を出すのか出さないのかみたいな話になり始めてますが。

髙橋: 本当に大変だね、これはね。まああの、19日に日米首脳会談があるんだけど、それ聞くよ。どうやって答えるかってのは色々あると思うけど。

髙橋: まず今の現状を考えると、多分今の現状では「存立危機」という状態には多分なっていないから、「ちょっとあの日本の制度では難しいです」って言わざるを得ないんだけどね。それを言った時のトランプさんが面白いと思うんだよね、あの反応がね。

アシスタント: 「なんで?」って聞くんでしょうね。

髙橋: うん、でその時にあれだよね。その路線でずっと話するとね、「日本には憲法がありまして」つってね。「なんで、憲法誰が作ったんだ?」って。「いや、アメリカです」って言うんだよ。「アメリカに戦後作ってもらって、それが改正もできなくて。改正要件がすごくて、衆議院と参議院で2/3取らないとできない」と。

髙橋: 「だから、衆議院は自分は取ったけど、参議院は取れないし、半分ずつの改選だから、あと4年ぐらいかかるんですよ」って言うんだろうな。「4年ぐらいかかって、ずっと自分の力があれば2/3になって、そしたら改正します」という言い方になるんだ。「それまでなんとかなんないのか?」「ちょっとこれ法律だからね、アメリカさんの作った憲法だから」って言うんだろうな。困っちゃいますね。

髙橋: いや「そんなバカな憲法誰が作ったんだ」って言ったら面白いんだよな。さすがにそこへは、アメリカも自分たちのことだから自覚するだろうけどね。でもそういうことをこれをきっかけにして、憲法改正の議論に持ってって、「サポートしてください」と。それに至るまで、安倍さんが作った「平和安全法制」っていうのでできる限りのことをやりますっていう言い方が、一番無難なんだな。

髙橋: 存立危機事態にならなくても、細かい話はたくさんあるけれど、例えばペルシャ湾の中に入らなければいいとか、いろんなことができるんだよね。だからペルシャ湾の外で米艦隊の給油をしますとかね、いろんな手はあると思うよ。細かい話はたくさんあるけど、「できる限りやります」っていう言い方が一つの言い方だよな、これはな。

アシスタント: あれ、護衛で行くとやっぱり結構問題になっちゃうんですか?

髙橋: 問題になっちゃう。だって戦争地域に入っちゃうから。でもさ、「戦争地域に入らない軍隊なんてあんのか?」ってトランプに言わせたら面白いんだよね。「いや、日本は軍隊じゃない」って。「これ軍隊じゃないってしたのはアメリカなんです」って言いたい。これも非常に困ってます、という言い方をしたらトランプも面白いと思うけどね。

髙橋: だから「できる限りのことはやりますけれど、基本的にはなかなか難しい、憲法の制約がありまして」と。そこに「アメリカが作った憲法」って入れるかどうかは別としてね。というのが普通の対応になりますね。で、ずっとペルシャ湾の外までは頑張りますとか、中には入りませんとか、こんな感じになる。そうすると他の国の軍隊から見たらおかしいよな。「なんで日本だけあそこで止まるんだ?」ってことになるよ。

髙橋: そういうのは、この際あえて見せた方がいいかもしれないね。日本の限界をね。それで途中で日本の艦船だけは途中で止まって、「行ってらっしゃい」って。他国の人が見たら「なんであいつだけあそこで外にいて」って言うだろうな。

アシスタント: 昔、湾岸戦争かなんかで日本だけ派遣できなくて、お金だけ出して全然感謝されなかったみたいなことありますよね。

髙橋: そう。お金だけよりかは、まあそばまで行くっていうので、それでも戦争地域に行かなかったら「やっぱりなんだ」って話になるよ、おそらく。ドイツとかイギリスは派遣しないみたいなことを決めたみたいですけど、それは関係ない。あまり原油をもらってないし、関係ないから行かないんだよ。

髙橋: 一番影響があるのは中国、インド、日本、韓国。この4国だよね。インドは備蓄が少ないから、艦隊派遣というよりかはイランと交渉して「うちだけよろしく」と。そんな報道もありましたよね。下手に西側諸国と一緒になると、一緒にやられちゃうかもしれないじゃない。だから「うちは独自に」という抜け駆けの形もあるかもしれない。インドは石油備蓄が70日だから耐えきれない。

髙橋: 日本は250日、韓国は200日、中国が200日。日本が一番耐えられる。だからギリギリまでイランの方に走らないで、同盟国を守る可能性はあるよね。中国は全く違うから、イランに「うちは通せ」って言うだけでいい。

アシスタント: それでもそのやり方だと、機雷を避けることは無理ですよね。

髙橋: 機雷が選別的に中国やインドの船を感知すれば別だけど、なかなか難しい。そばに来たらドーンといくから。当分の間、インドや中国がそう言っている時には機雷を敷設しづらいよね。リスクは冒さないだろうけど。



髙橋: 次の手としては、ホルムズ海峡のUAEのところで、パイプラインのショートカットがあるんだけど、あれを突貫工事でやる手はあるかもしれない。普通にやると1、2年かかるけど、突貫なら半年ぐらい。攻撃されるリスクはあるけど、他に手がなきゃしょうがない。

髙橋: 空は完全にアメリカが握っているから、そこに来るミサイルだけ打ち落とす形にして、日本の技術と資本で突貫工事をする。もともと中国が作ったんだけど部品は日本だったりするから、ノウハウはある。日本の資本で作れば感謝されるかもしれない。日本は時間的に余裕があるから、その間にパイプラインの増強を考える。

髙橋: 日本は備蓄が9ヶ月あるし、省エネや代替エネルギー(石炭火力、原子力)を稼働させればもっと余裕ができる。そういうのをやりながらパイプライン増強も考えてみるべきだと思います。
高橋教授は、日本は「アメリカ」がつくった憲法の縛りがあり、うまくいっても憲法改正まで4年くらいかかるから、それまでは「平和安全法制」で、できる限りのことをやるという言い方しかないだろう、と。そして、たとえ 存立危機事態にならなくても、ペルシャ湾の中に入らなければいいとか、ペルシャ湾の外で米艦隊の給油をするとか、いろんな手はあると指摘しています。

筆者が面白いと思ったのは、中国はホルムズ海峡を通せとイランに言うことができ、インドは交渉して通して貰っているまではよいとして、機雷は船の国籍を選べないから、中国とイランの船がホルムズ海峡を通過している間は大々的に機雷は撒けないのではないかというのですね。なるほどそういう見方もあるのですね。

とはいえ、一個でも機雷があるかもとなれば、やはりビビッて通ることは難しいでしょう。

高橋教授は、UAEにホルムズ海峡をショートカットするパイプラインがあると述べていますけれども、確かにUAEには、ハブシャンのアブダビ陸上油田から海峡の外側に位置するオマーン湾に面したフジャイラ港まで結ぶ、アブダビ原油パイプライン(ADCOP:Abu Dhabi Crude Oil Pipeline)、別名「ハブシャン=フジャイラ・パイプライン」というのがあります。

全長は、約360〜380kmで、日量約150万〜180万バレルの供給能力があります。高橋教授は、比較的時間に余裕がある日本は、省エネや代替エネルギーを稼働させつつ、パイプライン増強を考えてはどうか、と提案しています。ただしフジャイラ港はドローン攻撃による混乱に見舞われたことがあり、リスクゼロという訳ではありません。

果たして、日米首脳会談でどういう結論が出るのか。要注目です。

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