
1.動き出す金融庁
今回の「SANAE TOKEN」騒動については、国会でも取り上げられました。
3月4日に衆議院財務金融委員会で、中革連の伊佐進一議員は「SANAE TOKEN」を巡る質疑を行いました。
そのやりとりは次の通りです。
伊佐進一議員:話から私がいきなり最初取り上げるのは、あの「サナエトークン」の話をさせていただきたいというふうに思っております。これ、私基本的に政府参考人と議論をさせていただこうと思っているんですが、ただ最後、この議論を聞いていただいた上で、もし大臣の方から何かご所見あればいただければと思っております。金融庁は、「SANAE TOKEN」を発行した主催者は暗号資産交換業として登録されていないと発言。「無登録で暗号資産交換業を行った場合は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれが併科される」と述べています。
このサナエトークンについてなのですが、これ、高市総理の名前が入っている暗号資産ですね。主催者側は、もう高市総理にお墨付きをもらっているかのような広告宣伝をした。実際、高市さんサイドとはコミュニケーション取らせてもらっているというような発言も私も拝見いたしました。暗号資産を発行して、発行後値段が上がり続けた。何十億にも価値が上がったと言われています。その後、高市総理から「全く知らない」「承認を与えたもんじゃない」というふうにXでポストをされました。
高市サイドと主催者が言っているのは、「チームで日本を変える」という講演会組織であります。その講演会からはどういう声明が出ているかと言いますと、主催者側からあった話というのは、あくまで「民意を広く聞いて政策に反映させる」、いわゆる「ブロードリスニング」をデジタルでやるという話を聞いて、「それいいじゃないか」と。「いい意見を出した人にはポイントを与える」、それがこのトークンの意味ですと。講演会の皆さんは聞いていたので「いいね」と言ったわけですが、ところがブロードリスニングが始まる前に暗号資産(仮想通貨)として発行された。「こんなん聞いてない」ということになったわけです。無関係と言われたので一気に根崩れを起こしました。今、金融庁が実態把握に乗り出しているというのが現状です。
まず、この新しいコインの発行にはルールがあります。自主規制団体・JVCAというところが、この新しいコインの適格性をチェックします。匿名性が担保されているか、投資家保護がなされているか、反社会団体との関係がないかなど専門的な観点でチェックした上で、大丈夫であれば登録する。最初の質問は、このサナエトークンについて、主催者は暗号資産交換業として登録をしているのかどうか伺いたい。
岡田審議官(金融庁総合政策局):お答え申し上げます。金融庁が登録を行っております暗号資産交換業者28社の中で、当該トークンを取り扱っている業者はございません。
伊佐議員:本来しなきゃいけないところを登録していないということですね。業として行っていれば登録が必要ですが、今回のトークンの発行・運用は、どういう要件を満たせば「業として行っている」と言えるのでしょうか。
岡田審議官:我が国で一般的に、自社が発行している暗号資産についても、日本の居住者を相手方として販売を行う場合には暗号資産交換業に該当するものとされております。判断においては、反復継続性であったり、対集性といったことを踏まえて個別事例ごとに判断することとされております。
伊佐議員:不特定多数に対して行っているか、繰り返し行っているかということですね。今回、仲間内で価格が数十億円になったというのはなかなか想像しづらく、業としての可能性も高いと思います。総理サイドと関係があるように見せかけ、実際に被害が出ているのであれば詐欺に当たる可能性もある。主催者あるいは関係者を罪に問うことができるのか伺いたい。
岡田審議官:個別事例については回答を差し控えさせていただきますが、一般論としては実態把握に基づき、利用者保護の観点から適切に対応していきたいと考えております。
伊佐議員:金融監督の観点で、無登録を含めた罰則はどうなっていますか?
岡田審議官:無登録で暗号資産交換業を行った場合は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれが併科されるということでございます。
伊佐議員:このコインについて申し上げると、日本では厳格にやっていると言われますが、世界では数千のコインが取引されています。ルールに則って損得があるのは当然ですが、虚偽の情報やいい加減な体制で投資家が資産を失うようなことはあってはならない。ここまでで大臣のご所見があれば。
片山大臣:総理は前日Xで「関係ない」「承認もしていない」と発信されており、私もそれをリツイートし、何千万人が見ている。本日のお昼に、サナエトークン関連企業とされるノーボーダーDAOのXアカウントで、保有者への補償や名称変更、第三者検証委員会の設置などが公表されたと聞いています。私どもに相談があったわけではないですが、そのような対応をされているようです。
現在、金融庁実態把握を行い、利用者保護の観点から適切に対応するとしていますけれども、Japan is Backプロジェクトが、「SANAE TOKEN」の発行を取り止めたとしても、既に行われた取引がある以上、なんらかの対応は必要になるのではないかと思います。
2.資金決済法
サナエトークンの法的問題点について、アディーレ法律事務所の橋優介氏が動画で次のように解説しています。
〇 サナエトークンの法的問題点について橋弁護士は、現在、金融庁が資金決済法違反の可能性について調べようとしているとし、無登録で暗号資産交換業を行った場合、資金決済法違反とされる可能性があると述べています。
+ 資金決済法違反(無登録の暗号資産交換業)の可能性
/ 暗号資産交換業には内閣総理大臣の登録が必要だが、運営側は未登録である。
/ トークンの宣伝、DEXへの供給、取引環境の整備により、実質的に暗号資産の売買の媒介を行っているとみなされる可能性がある。
/ 「事業として(対価性・反復継続性)」の要件を満たすと考えられ、違法性が問われる可能性がある。
+ 詐欺罪の成立について
/ 現時点では「騙す意図(故意)」が明確ではなく、直ちに詐欺罪が成立するとまでは言えない。
/ 利益確定の否定や被害者への補償の表明があるため、警察が立件に動く可能性は低い。
+ 金融商品取引法および権利侵害の可能性
/ 高市首相の名前等の使用は、虚偽表示等を禁じる金融商品取引法に抵触する可能性がある。
/ 本人の承諾なく名前やイラストを用いたことは、顧客誘引力を不正利用したとして、パブリシティ権や肖像権の侵害となる可能性がある。
+ 今後の動向
/ 金融庁や検証委員会による実態調査の結果と、被害者への補償が実際に履行されるかが焦点となる。
ここで、暗号資産交換業を行ったとする要件ですけれども、大きく2つあって、それは次の通りです。
1)運営側がトークンの流通に関して事業として行為を行ったといえること。金融庁のガイドラインでは、対価性があり、不特定多数の人を相手にして繰り返し交換行為などと定められています。今回の場合、1)については、サナエトークンの取引が可能な状態になっていることから、不特定多数の人を相手にして、運営が保有するトークンに関して継続的な売却などを行っていくことができるため、事業として行うに当たると考えられ、2)についても、運営が積極的にマーケティング活動を行っていたことや、総量の10%を自らDEX(分散型取引所)に供給するなど、一般ユーザーがサナエトークンを広く取引できる状態にしていることから、運営がトークンの売買を媒介したといえる余地があると述べています。
2)暗号資産の売買や交換、それらの媒介などを行ったといえること。
つまり、サナエトークンの運営が「無登録で暗号資産交換業を行ったもの」と見なされ、資金決済法に違反したと判断される可能性があると解説しています。
3.勝手に利用される儲け話
今回のサナエトークン問題については、経済学者の高市洋一氏も自身の動画で次のように述べています。
〇サナエトークン問題の概要高橋氏は、運営に警察の調査が入る可能性があるとし、トークンの購入を少しでも斡旋・媒介したと見なされれば、法的責任を問われるリスクがあると述べていますけれども、先述のアディーレ法律事務所の橋優介弁護士の解説を考えると相当程度アウトではないかという気もします。
+高市早苗氏による関与の完全否定
/高市氏の名前を無断利用した仮想通貨がネット上で拡散し、被害が発生。
/高市氏本人および事務所は、当該トークンの承認や関与を一切否定し、注意喚起を行っている。
+トークン価格の暴落と被害状況
/先月発行後、一時的に価格が上昇したが、現在は暴落。購入者による経済的被害が出ている。
〇関係者の関与と主張
+推奨関係者の声明
/藤井氏は、政策形成プロジェクトへの協力として関与し、トークンの発行や販売には関与していないと主張。
/事後的に大量の外部供給を知ったとしており、政治的混乱を招いたことに対し反省を示しているが、謝罪の形ではない。
+その他の当事者の動向
/溝口氏は、本件による収益は得ていないと主張し、事実確認の上で対応する姿勢を見せている。
〇法律的および行政的観点
+現状の法規制と無登録営業の疑い
/現行の資金決済法では発行自体への規制は緩いが、交換業には登録が必要。登録がない場合、無登録営業の可能性が高い。
+今後の法整備
/金融商品取引法の改正により、今後、発行時の開示義務や業者への規制が強化される予定。
+行政の素早い対応の背景
/法改正を控える中、本件が規制の必要性を示す「格好の案件」であることや、財務省・金融庁の関連性が背景にある可能性がある。
〇法的リスクと教訓
+斡旋・媒介による責任追及
/実被害が出ているため、今後警察の調査が入る可能性がある。
/トークンの購入を少しでも斡旋・媒介したと見なされれば、法的責任を問われるリスクがある。
+政治家・有識者の防衛策
/過去の安倍政権時と同様、自身の名前が勝手に利用される儲け話は多い。
/個別銘柄や仮想通貨の推奨は一切行わない姿勢を貫くことが、自身を守るための必須の危機管理である。
4.金融庁の手仕舞い説
一方、今回の騒動について、金融庁は注意するだけで手仕舞いするという説もあるようです。
3月7日配信のネット動画「SAKISIRU」で、新田氏は次のように述べています。
・金融庁が3月5日にホームページを更新し、政府要人や著名人の画像利用について注意喚起を出したタイミングと重なったため、ついに金融庁がロックオンしたのではないかと噂されていました。しかし、昨日の片山大臣の発言が話題になっています。予算審議に差し障りが出るから、この問題は早く幕引きしたいという説のようですけれども、ナントカ連という野党は、カタログギフトであれだけ騒ぐのですから、サナエトークン騒動など絶好の餌にしかならないと思います。予算審議を捨て置けとはいいませんけれども、やはり、それなりの厳正な対処は必要になるのではないかと思いますね。
・改めて大臣の発言を振り返ります。女性記者が「事業者側は金融庁の調査に対して誠実に活動するとSNSで発信していますが、一方で資金決済法の違反ではないとしています。ヒアリングの進捗はありますか。また、所有者から被害相談が来ているのか伺いたい。著名人の名前を勝手に使う暗号資産が他でも確認されていますが、現状についての大臣の考えを伺いたい」と質問しました。
・それに対し、片山大臣は「これは個別の事例ですので、他の案件と並べてどういう状況かとは申し上げられません。一般論として、利用者保護の観点が一番大事ですので、何らかの状況があれば実態把握には努めますが、実態把握は『調査』とは言いません。そういったことも含めて適切な対応になると思います。また、プロジェクトの中止については公式Xで声明が出たと秘書から聞きました。プロジェクトを中止するとXが出ていて、それを今私はいただきました」と淡々と回答しました。
・この「実態把握は調査とは言わない」といった発言や淡々とした対応に対し、SNS上では「ロックオンしたのに調査しないのか」「手仕舞いさせるのか」といった観測が広がり、物議を醸しました。
・実はこの「手仕舞い説」について、3月5日の時点でメンバーシップ向けの配信において、ある官僚OBの方が触れていました。私としては、もし手仕舞いであれば、まさかこんなに早く行われるとは予想外でした。
・ただ、見方は分かれています。予算通過後に対応するのではないかという見方もあります。元経産官僚の宇佐美氏は、「文献調査から任意のヒアリング(実態把握)、そして法律上の立ち入り検査を用語として切り分けているだけではないか。そもそも、この短期間での予算審議中に個別案件の調査をする余裕はない」と指摘しています。確かに、霞ヶ関は年度内成立に向けた予算審議でリソースがひっ迫しており、この指摘には納得できる部分があります。
・また、JPYCの岡部氏もこの分野のプロですが、「万引きを中止して棚に戻しても無罪にはならない。これでおしまいという受け取り方はできない」と指摘しています。ノーボーダー側が主張する「違法性はない」という見解を否定しています。
・一方で、金融庁勤務経験がある野村修弁護士の見解が注目されています。野村氏は「資金決済法上の暗号資産に該当することに争いはない。流通に分散型取引所(DEX)を利用し、当事者同士がスマートコントラクトに基づく相対取引を行うことから、暗号資産交換業に当たらないと考えたのかもしれないが、反復継続する意図を持って流動性供給を行った行為や、ネットを通じてトークンの取得を促そうとした行為は、無登録営業に当たる可能性が高い」と指摘しています。これは、切り分けて回避したつもりの事業者に対し、実態を見て判断すべきだという専門的な見解です。
・さらに野村氏は、「勧誘に総理の画像を用いたことが問題である。これにより政府公認であるかのような外観が生まれ、価格急騰を招いた。今後、誰が考え、誰が利用したのかを詰める必要がある。総理の画像を使うのを見て危ないと思わなかったのなら安易だったと言わざるを得ず、道義的責任は免れない」と述べています。この視点は非常に重要であり、インパクトがあると感じています。
・結局、当局が動くのかどうかは気になるところです。私自身、昨日もこの問題について取材を続けており、非常に興味深い情報をキャッチしました。これについては、サキシルのメンバーシップ限定でお話ししたいと思います。
・現状、予算通過が最優先であり、多少のトラブルがあっても国会対応にリソースを割かざるを得ないというのは、宇佐美氏の言う通りかと思います。だからこそ、こうした事案で野党が騒ぐネタを作ったことに対し、怒りを覚えています。これにより予算審議に遅れが出れば国民生活に影響します。当事者が認めておらず配慮もない点も問題です。
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